待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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憤る英雄達。

 

 

 

 

 

「は?」

 

 七山……つまり公安。呪術総監部からの提案に、まず真っ先にイレイザーヘッドは不快感と怒りを顕にした。彼に同調するかのように、渡我被身子が何者かを知っているヒーロー候補生達も顔を顰める。

 

「……もう一度言いましょうか。渡我被身子さんに協力して貰いましょう」

 

 淡々と、粛々に。七山は怒りや困惑に染まる面々を前にして尚、もう一度同じ言葉を吐いた。その態度が、表情が、決して冗談を言っているわけでないと告げている。だからこそ彼は、雄英教師でもあるイレイザーヘッドは、目の前に居る公安を睨み付ける。

 

「聞こえてるから、は? と言ったんですよ。七山さん、貴方……何を言ってるのか理解してますか?」

「えぇ、してますよ。頼皆に死なれては困るんですよ、我々公安は。だから少しでも彼女が生き残る選択肢を取る。その為に、渡我被身子さんを利用します」

 

 自分が、自分が属する組織が何を言っているのか。それを理解していても尚、七山は……公安は主張を変えない。

 頼皆と言う対呪霊対策の要を失うかもしれない機会を前に、黙って何もしないなんて真似は出来ないからだ。もし彼女の命が失われてしまえば、この先がどうなるか分かり切っている。

 

 廻道円花を失えば、この国の秩序は保たれない。

 

 そんな事は、イレイザーヘッドも分かっている。分かってはいるが、納得はとても出来そうにない。まして一人の大人として、教師として、ヒーローとして公安からの提案に納得するわけには到底出来ない。

 

「この件に無関係な、それも一般人の子供を巻き込めと?」

「無関係とは言い切れませんね。渡我被身子さんは頼皆の婚約者ですから、喜んで協力してくれるでしょう」

「もう一度だけ、聞きます。何を言ってるのか理解してるんですか?」

「何度聞き直そうが変わりませんよ。頼皆が居なければ保てない秩序が有る。であれば、我々公安は何が何でも彼女の命を守らなければならない。

 ……だから、渡我被身子さんに協力を仰ぎます。あの子としても、頼皆を失うわけには行きませんからね」

 

 ヒーローが憤ろうが困惑しようが、七山は態度を変えない。どころか、まるで火に油を注ぎ込むかのような物言いを平然としてみせる。イレイザーヘッドの胸中どころか、周囲のヒーローの反応さえ無視しているかのようだ。取り付く島も無いように見える。

 

「頼皆は後方待機。もしオーバーホールと会敵してしまったら、その時は彼女の好きにさせてください。もっとも、彼女が死ぬようなら介入して頂きますが」

「ま、待ってください七山さん……! 確かに今のヨリミナは渡我先輩にしか頼めないかもしれないけど……! でも、だからって……!!」

 

 公安の命令に、今度はデクが口を開いた。七山の言葉に困惑し、反発しようとしている。そんなヒーロー候補生を見た七山は、わざとらしく溜め息を吐いた。そして、デクの言葉に耳を貸そうともせず再び淡々と命令を告げていく。

 

「……これは公安が降した決定事項です。この場に居る全員に協力して頂きますし、この件は箝口令を敷かせて貰います」

「待て待て待て。どんだけヨリミナを特別視してんだ公安は。訳の分からねぇ命令をされて、はいそうですかとは行かねぇぞ?」

 

 今現状。公安の命令に納得しているヒーローはこの場に一人も居ないだろう。それは当然だ。ヒーロー達からすれば、急にやって来た公安が現場を掻き乱そうとしているようにしか見えないからだ。何より、どうして公安がこうまで頼皆を特別視するのかが分からない。その事情の全てが伏せられたままでは、誰も納得出来ないだろう。

 そして、事情を把握している者達は絶対に納得出来ない。

 

「せめて事情を詳しく話すべきです、七山さん。公安が何を考えているのかを。そして何故、頼皆がオールマイト並みの存在であるのかを」

 

 ロックロックに続き、ナイトアイが口を開く。しかしそれでも、七山の態度は変わりそうにない。このままただ淡々と、粛々に同じ言葉を繰り返して行くのだろう。それがどれだけ周囲の不信感を買うことになるのか、公安が理解していない筈は無いだろうに。

 

「国家機密故、今はお話出来ません」

「七山さん」

「出来ません。ですが命令には従って貰います。納得出来ないのは重々承知していますが、この国の秩序を守る為と思って呑み込んでください」

 

 ……本当に、取り付く島も無い。公安は何も語らない。語ろうとすらしない。ただ命令に従えと、繰り返し通達するだけだ。今この場において、頼皆の、廻道円花の事情を知る者は何人か居る。だが彼等には呪術の秘匿義務が発生している以上、公安に代わって全てを説明することも出来やしない。それを破ることは簡単な事では有るのだけれど、まず信用が得られない。信用して貰うにしても、説明には余りに時間が掛かり過ぎる。

 

「……今はお話出来ないと言いましたね?」

「えぇ、今は。いずれ全てを説明する機会が有るでしょう」

「その機会が訪れたら、全て説明して貰いますよ。勿論、この場に居る全員に」

「それで構いません。では、頼皆は後方待機。場合によっては彼女に救援を。それから渡我被身子さんに協力してもらいましょうか」

 

 結局。誰が納得しなかったとしても、公安の命令に反発することは叶わないようだ。この後、頼皆をどう扱うかでヒーロー達は頭を悩ませ、最終的に渡我被身子に協力を仰ぐことになってしまった。

 

 

 

三人称による補完は要りますか?

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