待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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いんたあん。作戦前日

 

 

 

 

 

「儂の勝ちじゃの。ふふん」

「大人げないのです」

 

 おはじき。という遊びを、えりと被身子としている。まぁ被身子とは、一切口を聞いてないんじゃけど。じゃって喧嘩中じゃし。治崎を殺すまでは、無視じゃ無視。絶対相手にしてやらん。

 それはそれとして結果は儂の勝ち。ふふん、情けない奴等め。それに、これでもえりには加減しとるぞ。被身子には一切しとらんけど。喧嘩中じゃから、情けを掛ける理由は特に無い。たまには儂に負けてたら良いんじゃ。

 

「……」

 

 お、なんじゃ? どうしたえり。そんな交互に儂等を見詰めて。何か言いたい事が有るなら言っても良いんじゃぞ? して欲しい事が有るなら幾らでもしてやろう。何せ被身子に構い倒さなくて言い分、余裕があるからの。それに今は、えり優先じゃし。ほれほれ、幾らでも甘えてこい。何処までも甘やかしてやろう!

 

「……けんか、してるの……?」

「……いや、まぁ……」

 

 しとるけど。流石に面と向かって言われると、ばつが悪い。悟られてしまったか。まぁ、儂は露骨に被身子と喋らんからの。一言も言葉を交わしとらん。子供とて気付くじゃろう。

 これは、良くないか。しかしのぅ、仲直りするつもりはまだ無いんじゃ。それをするのは、もっと先の話なんじゃ。とは言え、えりに気を遣わせてしまうのは良くない。この子の前でだけは、いつも通りに接するか? いや、それはそれで教育に悪い気がする。特に今は、普段通りにしたくない。

 

「……愛のない、……ただれた関係……?」

 

 ……。おい、誰じゃそんな事を教えた輩は。緑谷か? いや、多分るみりおんじゃの。あやつ、後で拳骨しておくか。何をどこまで教えたんじゃあやつ。その辺も詳しく聞いておくとしよう。

 

「そんな事無いですよぉ。私と円花ちゃんは、愛が溢れる爛れた関係なのです」

 

 おい。貴様も貴様じゃ。妙なことを子供に教えようとするんじゃない。次の瞬間にはろくでもない事を言い出しそうじゃの。えりの耳を塞ぐのと、被身子の口を塞ぐのならどっちが安全じゃろうか。

 まぁどちらにせよ、えりの前では態度を改めるとしよう。いつも通り、は無理じゃけど口ぐらいは……。いや、やっぱり話したくない。顔も見たくない。

 

 あとなぁ。愛が溢れる爛れた関係ってなんじゃおいっ。爛れてなど……爛れ……。

 

 ……。……その通りかもしれん……。隙有らば求め合ってるのは、事実じゃの……。いや、しかし。しかしじゃな被身子っ。貴様がしつこいぐらいに儂を求めるから、仕方なく儂は許してしまってるだけであって!

 

 そう、貴様が悪いんじゃ貴様がっ! 儂は悪くないっ!! いい加減に我慢を覚えろ!!!

 

「じゃあ……みつげつの時間をすごす……仲?」

「はい。毎晩蜜げ、むぐむぐ……!」

 

 よし、そこまでにしておけよ貴様。これ以上えりに変な事を吹き込もうとするな。えりが知るにはまだ早い。この子は六歳なんじゃぞ。これ以上良からぬ知識を与えられてしまう前に、口を塞いでおこう。貴様、しばらく喋らせぬからな。しばらく儂の両手で口を塞がれておれ。まったく、こやつと来たら。何が「えりちゃんのお世話は私がします」じゃ。任せておけぬ。阿呆、たわけ。へんたい!

 

「んん……。んふ……っ」

 

 ……。おい。何で嬉しそうにしてるんじゃ貴様。口を塞がれて喜ぶな。笑うな。貴様の笑顔は子供には毒じゃ。後でえりの夢に出たらどうするんじゃこら。この子を怯えさせるんじゃない。

 

「えり。こやつの言うことは全て忘れて良いからな? 覚えるだけ無駄じゃからの!」

「ぅ、うん……?」

「それと貴様。妙な真似をするな。何しとるんじゃ」

「……んー、んっ♡」

 

 こやつ……っ。儂の手のひらを舐めておる……! おい、えりに見えないからって訳の分からん事をするな! そんなに舐めたいなら今度幾らでも舐めさせてやるから、今は止さぬか!

 何というかその、儂まで変な気分になりそうじゃろっ。相変わらず熱い舌をしおって! 頼むから音を立てるなよ!?

 

「ぁ、お客さん……」

 

 えりが、扉の方を見た。釣られて後ろを見ると、扉が少しずつ開いているようじゃ。向こう側に居るのは、緑谷じゃの。なんじゃ貴様。まだ交代の時間には遠いじゃろ。あと四時間は儂がえりを警護するんじゃけど? 邪魔は許さんぞ。大したようじゃ無いなら今すぐ出て行け。

 

「ごめんねエリちゃん。ちょっと、お邪魔しても良いかな……?」

「うん。なーに? でくさん」

 

 ……。……でく? おい。おい、貴様。いつの間にえりを手懐けた? いや、貴様もえりの警護をしてるわけじゃから一日に八時間はこの子と一緒なわけなんじゃけども。仲良くなっていても、別におかしくはない。おかしくはないんじゃけど、何か解せぬ気分じゃ。子守りは儂の担当なんじゃけど? まったく、どいつもこいつも……!

 

「その、ま、まどか……お姉さんに用があって」

「は?」

 

 あ、いかん。被身子が儂に口を塞がれたまま緑谷を睨んだ。そんなに緑谷が儂の名前を呼んだのが気に食わんのか。おい、衣嚢(ぽけっと)に手を入れるな。貴様、さてはまだ果物ないふを持っているな? もしくはそれっぽい刃物を隠し持ってるじゃろ? 後で取り上げるからな??

 

「……まっ、まままどか、……さん。その、渡我先輩と至急会議室に。エリちゃんは僕が見るから……」

「やじゃ。後で良いじゃろ」

「よ、良くないよっ。その、日付が決まったって」

「……相分かった。が、被身子は置いてくぞ」

「それも良くない、かな。その、渡我先輩にも協力して欲しいってナイトアイが……」

 

 ……は? よし、決めた。被身子を巻き込むというのなら、ないとあいは儂が殺す。殺してやろう。ついでに他の英雄(ひいろお)達も殺してやる。今回の件で、被身子を巻き込むじゃと? この病院にこやつを来させた時点で殺して置くべきじゃったか。どいつもこいつも儂の神経を逆撫でしおって。良いじゃろう、そこまで儂を怒らせたいなら望み通りに怒ってやる。どうなっても知らんからなっ。

 あと緑谷。儂を名前で呼ぶのは止めておけ。大方、えりに分かり易いように気を遣ったんじゃろうけども、……それでも止めておけ。被身子が睨んでおるぞ。

 

「……じゃあ、でくさんと、……おはじき……?」

「うん。じゃあ一緒におはじきしよっか。エリちゃんはどんな遊び方がしたい?」

「……えっと……。まどかさんに、勝ちたい……」

「……! じゃあ、頑張って倒せるようになろう! 二人で!」

「は? 儂は負けんが? 勝てると思うなよ??」

「そういう事なら、俺も協力したいんだよね!」

 

 うおっ。壁をすり抜けるな、るみりおんっ。えりが驚いたらどうするんじゃ貴様っ。扉から入ってこんか扉から!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何の用じゃ貴様等」

 

 会議室に入ると、ないとあいと相澤が居た。他の連中は居ないようじゃの。治崎を捕らえに行く手筈が整ったなら、さっさと仔細を話せ。その後で殺してやるから。そもそも、被身子に何を頼むつもりじゃ貴様等。場合によっては、(まこと)に許さんぞ? 儂が怒るとどうなるか、身を以て味わって貰おう。明日を迎えられると思うなよ……!

 

「まずは座れ、話はそれからだ。渡我、すまない。お前が居ないとこいつが暴れ出しかねん」

「はぁい。じゃあ、トガは円花ちゃんをしっかり抑えておくので!」

 

 ぐおっ。貴様、急に後ろから抱き付くなっ。体重を掛けるな! そのまま儂を座らせようとするなっ!

 

「助かる。その調子で頼む」

「……では頼皆。明日、我々が行う作戦を説明する。ただその前に、渡我被身子さん。これには貴女の協力が不可欠だ。そして、かなりリスキーな橋を渡ることになる」

「おい! 貴さ、むぐぅ……!」

 

 文句を言おうとしたら、被身子に口を塞がれた。こうなったら、噛み付いてでも手を振り払ってやろう。血が出る程に噛むからな? それが嫌なら、直ぐにでも手を離せ!

 

「円花ちゃんは黙っててください。それに円花ちゃんがどんなに嫌がっても、私はこの話を受けますから」

 

 は? おい貴様。いい加減な事を言うな。絶対ろくな事にならんから、こやつ等に協力するなんて馬鹿な真似は止めろ。

 

「……まず、私の個性について伝えよう。私の個性は、予知。対象の未来を見ることが出来る。この個性で先日、私は頼皆の未来を見た」

「……そうですか。それで、何か良くない未来でも見ましたか?」

「……。渡我、落ち着いて聞いてくれ。ナイトアイの予知によると、廻道は……」

「頼皆は殺される。そしてエリちゃんは、治崎に奪われてしまう」

 

 ……何言っとるんじゃこやつ。未来を見る個性? そんなものがあるなら、もっと別の未来を見たらどうなんじゃ。そもそも儂が死ぬ、じゃと? あり得ん。儂が被身子やえりを置いて死ぬと思うなよ。その個性、使い物にならないのではないのか?

 

「我々は、この未来を回避しなければならない。 無駄だと分かっていても、……だ」

「……それで、どうやって回避するんですか?」

「我々で死穢八斎會に強襲する。未来が訪れる前に事を済ませてしまえば、もしかしたら……」

「だが同時に、保険は打っておきたい。まずエリちゃんを安全な場所に隔離する。同時に、渡我。これはお前次第だが……エリちゃんに変身した上で廻道の側にいて欲しい」

「……要は私達に、ゴクドーの餌になれってことですね? 分かりました。やりましょう」

 

 よし、殺す。こやつ等はここで殺す。被身子にのし掛かられていても関係ない。血を飛ばして、その首を切り落としてくれる。

 

「待て渡我。頼んでいるのは俺達だが、そう簡単に引き受けるな」

「相澤先生、私は円花ちゃんが死ぬ未来なんて信じてません。もし本当に円花ちゃんが死んじゃうなら、その時は私も死ぬのです。だって、生きてる意味無いですから」

「おい、渡我」

「……そりゃ、死ぬのは怖いです。死にたくないのです。でも円花ちゃんが死んじゃうなら、私も死んで一緒に天国でも地獄でも行きます。

 トガは良妻ですから。いつでもどこでも、円花ちゃんの側に居るの! 喧嘩してたって、愛想尽かされたって、ぜーーったい離れない!」

 

 ……。……貴様。少し言葉を選べ。ないとあいが目を丸くしているぞ。相澤は眉間を押さえながら溜め息を吐いておる。貴様、儂の方が溜め息を吐きたいんじゃけど? 口を塞がれて溜め息が吐けぬ儂の前で、溜め息を吐くな。ふざけおって。

 それに、被身子も被身子じゃ。何じゃその物言いは。何か気恥ずかしくなって来た。人前で惚気るなとは言わんが、時と場合ぐらいは考えてくれ。こんな場で、変な事を言うのは止さぬか。まっこと、いい加減にしろよ貴様。

 

「円花ちゃんは、私が私らしく居られる居場所なの。それを失うぐらいなら、死んでやるのです。エリちゃんに変身して、ゴクドーに連れ去られたって良いです。どうせその後で殺されるでしょうから、都合が良いですし」

「すまない。ヒーロー候補生でもない君を、巻き込むことになってしまって」

「エリちゃんの為なら気にしませんよぉ。円花ちゃんもそう言うでしょうし。

 でも、色々と法的にアウトですよね? そこはどうなるのです?」

「……事情を話して、許可を取る暇はない。そもそも許可などされない。この件を知るのは、この場に居る我々だけだ」

 

 勝手に話が進んでいく。ふざけるな。儂の意見を聞け。貴様等だけで話を進めるんじゃない。そんなふざけた話を、儂が受けると思うな。予知とやらは信じられぬし、被身子を巻き込むことも許さん。何を考えてるんじゃこやつ等は。ないとあいも相澤も、殺してやるから首を差し出せ。頭でも良いぞ。一撃で脳を潰してくれる。せめて苦しまぬように殺してやるから、それを儂の慈悲と受け取れ。

 

 頭に来たから椅子に座らされたまま、両手を叩き合わせる。と、今度は両手を包み込まれた。特に指先は念入りに握られる。おい、被身子。危ないから止さぬか。貴様の手まで吹き飛ぶぞ。

 

「じゃあ、私はエリちゃんに変身して円花ちゃんと隠れてます。そしたら、治崎とか言う人は予知通り私たちの前に来るんですよね?」

「その通りだ。無論そうならないように明日の朝、我々は動く。事に備えて、今日はもう休んでくれ」

「……渡我。この後話そう。こんなやり方は合理的じゃないが、教えられるだけの事を教えておく」

「んー、それは嫌です。代わりにぃ、明日までここに誰も入ってこないようにして欲しいのです。それまでに、私が円花ちゃんを説得しますから!

 あ。あとベッドをひとつ用意して貰ってください」

 

 いや、説得など無駄じゃ。儂はこやつ等を殺す。被身子を危険に巻き込んだんじゃ。許してやる理由が無い。このまま穿血を放つから、いい加減に手を退けてくれ。貴様に怪我をさせたいとは思わないんじゃ。

 

「おい貴様等。殺してやるからそこに並べ。被身子を巻き込むんじゃない」

「こら、駄目ですよ円花ちゃん。殺したいなら、私の手ごとヤっちゃってください」

「……貴様。いい加減に手を離せ」

「あはっ、やっと口利いてくれました! んふふっ、良かったぁ……!」

 

 喜んでいる場合か。それに、口を利いたのじゃって仕方なくじゃ仕方なく。もうこれ以上口は利かぬからな! そんな安心しきった笑顔になっても、儂はまだ許したりしないんじゃからな!

 

「じゃあ二人とも、私が取り押さえてる間に出てってください。ついでに三時間、いや五時間は誰もここに入れないで欲しいのです!」

「……そうしよう。本当に殺されかねないからな」

「渡我、すまないが後は頼む。どうにか頭を冷やさせてやってくれ」

「んー、もっと熱くしちゃう予定ですけど。この後、抱きますし」

「は?」

「は?」

「喧嘩したら、仲直りえっちが定番ですよねぇ……」

 

 は?

 

 ……おい。おい貴様。いい加減にしろよ。調子に乗りすぎじゃ。相澤の前で、そんな阿呆な事を口走るんじゃない。今度こそ特待生で居られなくなってしまうぞ?

 おい、おいったら。手を握ったまま迫るな。首に顔を埋めるな。相澤、ないとあい! 褒美として殺してやるから、この阿呆を止めろ! 何で呆れた顔をして出て行くんじゃ!!

 

 

 

 

 

 








次回、仲直り?

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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