待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
儂は平安時代に、呪術界の御三家『加茂』家の嫡男として産まれた。名は、頼皆。意味は、皆を頼らず生きていけるようにと。そう言う意味で名付けられた。相伝の術式『赤血操術』を持って産まれての。じゃから、最初は跡取りとして期待されていたんじゃ。その期待に応えるつもりも、有った。飽くまでその時は、じゃけど。
ただ、今となっても当主を継げなかった事は心残りじゃ。
加茂の長男として育てられた儂は、少なくともある日までは御三家の跡取りらしく生きていたと思う。幼い頃から経験を積み、呪術界について教え込まれ、その際に天元の奴とも顔見知りになった。結界術はあやつから直接学んだ。まぁ学んだと言っても、ほんの少し齧った程度じゃけども。それもたった数刻程。基礎中の基礎と言うか、基礎に至る触りを教わったと言うか。
まぁ、とにかく。
そのお陰で、将来的に彌虚葛籠や領域を会得出来たんじゃから無駄ではなかったの。その点は感謝しているとも。それ以外は別に、あやつに対して特別思う事は無い。そんな奴も居たな程度じゃ。
ある日、儂の世界に変化が訪れた。
弟の『頼人』と、妹の『比奈』が産まれての。双子じゃった。呪術的に双子は同一人物として見なされ、例え相伝の術式を継いでいたとしても役立たずの忌み子として扱われる。現に、二人が産まれた瞬間に糞親父が殺そうとしたぐらいじゃ。儂が居る以上、必要無かったからの。
じゃけど、これに母が猛反発した。腹を痛めて産んだ子じゃ。儂の母、『加茂
弟と妹は、母の忘れ形見でもあった。それに、これが中々可愛くての。
臆病で、じゃけど弟として儂を支えようとしてくれた頼人。兄ちゃんの出来ないことをしたいと、日々鍛錬していた。少し悪戯好きで、何度悪さをされたかは分からん。そんな姿も可愛いものじゃったけど。
気丈じゃけど泣き虫で、鍛錬を直ぐ止めてしまう比奈。じゃけど母に似て優しい性根をしておっての。頼人との喧嘩は絶えなかったが、それでも儂等の中でもっとも家族愛が深かったと思う。あの糞親父ですら愛してたぐらいじゃ。今もそれだけは理解出来ぬが、まぁ……母の娘じゃからの。分からんでもない。
いや、分かりたくないが。あの男は殺したかった。やはりこの手で殺せなかったのは、一生の不覚じゃ。
二人を溺愛するようになってから、違和感を感じるようになった。加茂家の、御三家の有り様に。何故こんなにも可愛い子供を、蔑ろにするのか。双子じゃからって理由で、術式に恵まれてないなんて理由で、どうして二人を蔑ろに出来るのか。頼人は結界術の才能に恵まれていたのに。比奈は、反転術式を外に出力出来たのに。
二人とも、きっと儂よりも才能が有った。
なのに、大人は誰もが二人を蔑ろにする。特に糞親父は見ようともしなかった。許せなかった。
いつからか、外で子を蔑む大人を見ると居ても立っても居られなくなっての。相手が誰であろうと喧嘩を売った。最初は命までは奪わなかった。じゃけどある日、頼人と比奈を殺そうとした輩がおっての。後になって分かったが、それは糞親父の差し金じゃった。
あの時。二人は死にかけた。
それが許せなかった。
そして二人を守らなければと、より強く思うようになった。その頃から、人を殺すようになった。二人を守るために。いつからか、戦いを楽しむようになった。最初は呪霊が怖かったのに、恐ろしく思っていたのに。気が付けば、そうなっていた。恐怖心を歪んだ形で克服してしまった自覚はある。まぁ、それも儂じゃ。今ではすっかり楽しいんじゃから、それで良いじゃろ。
そして。加茂家当主になろうと思った。弟妹の居場所を、作りたくて。加茂を変えたくて。
十歳になった時。人を殺し過ぎて、家から追い出されることになった。その際、売り言葉に買い言葉で喧嘩となり、糞親と殺し合った。殺せなかったがの。儂は死にかけた。比奈が治療してくれなかったら、
二人を連れて行きたかったが、儂も十歳になったばかり。傷も癒え切ってはいなかった。頼人も比奈も儂より幼く、外では生きて行けぬじゃろうと思ったから連れて行けなかった。あの時代の呪術界は、子供が親元を離れて生きれる時代ではなかったからの。……言い訳じゃ。無力感に苛まれて、逃げただけじゃ。儂は、死にたくなかった。何より、もう加茂を名乗りたくなかった。少なくともその時は。
……僕達が十になったら迎えに来てと、泣きそうな顔で頼人は言った。儂の懐に雀の死骸を入れたのは、流石にやり過ぎじゃったが。直後比奈に殴られておったわ。そんな姿も愛おしかった。
今一番大変なのは兄さんだから、我が儘は言わない。私達はここで待ってると、比奈は笑顔で言った。結局最後は大泣きじゃったけど。あやすのが大変じゃった。でも、比奈らしいと思った。
こんな二人の兄で居ることが、誇らしくもあった。
真夜中に二人が、見送ってくれた。それが、二人との最後の会話じゃった。
四年後。二人が十歳になる直前。呪霊を誘き寄せる為の餌にされて死んだ。遺品ひとつすら無かった。儂は、約束を果たせなかった。
その時、儂の中で何かが壊れたんじゃと思う。あの日以来儂は、きっと何も変わっていない。
守りたかった二人が居なくなって、代わりに誰かを助けることに固執した。恵まれぬ子供達を、虐げられる子供達を、数え切れぬ程に助けて来た。数え切れぬ程に、大人を殺した。
殺して、殺して、殺して殺して殺して。いったいどれだけの屍を積み上げたか分からぬ。でも、殺し続けてきた。そうすればきっと、頼人や比奈のような子供達が救われる世界になると信じて。
何十年も、殺し続けた。日本中を歩き回って、何度も何度も、何度でも。
多くの子供達を救った。多くの大人達を殺した。そうやって生きてきた。それ以外の全てが、どうでも良かった。
いつからか、『加茂の鬼』だの『赤鬼』だの呼ばれるようになった。変な呼び名を付けるのは止めて欲しい。
それからは、何十年と日本中を渡り歩いて、殺し続けた。儂以外は全て子供達だけの村を作ったこともある。あの村はどうなったんじゃろうか。結局、途中で儂は村を離れたからな。
……何? ぽんこつなのにどうやって旅をしながら生きてたじゃと? まず、儂はぽんこつじゃない。呆けても無いぞ。それと、何でか儂に付いて来たがる輩が多くての。やたらと世話したがるものじゃから、好きにさせておいた。言っても聞かぬから、突き放すのも面倒じゃったし。
おい、何じゃその目は。じゃから儂はぽんこつではないっ。徘徊呆け爺でもないんじゃからな! まったく、どいつもこいつも……!!
で、じゃ。
最期は、当主にしてやるなんて甘言に惑わされて両面宿儺に挑み、……呆気なく死んだわ。尚、加茂家当主は糞親父の隠し子が継いで居た。まっこと、ふざけた父親じゃ。有り得んじゃろ、あんなの。今でも殺してやりたい。今なら殺せる。まぁ今となっては、それは叶わんのじゃけども。
結局のところ儂は、死ぬまで変わることは無かった。いや、死んでも変わらない。ただひたすらに、子を蔑ろにする輩が許せない。憎くて憎くて、殺さなければ気が済まない。
じゃから、儂は治崎を殺す。子を蔑ろにする奴は、子を傷付けるような輩は、一人残らず儂が殺す。もう人殺しをしないなんて選択肢は無しじゃ。被身子にも両親にも迷惑を掛けてしまうけれども。そして儂は、悪党になるじゃろう。それでも構わん。少しでも、多くの子供達を助けられるのなら。
じゃから。じゃから、被身子。頼むから帰ってくれ。もう儂の事は、愛さなくても良いから。憎んでくれても良い。それでお主が幸せに生きれるのなら、儂はそれで良いんじゃから。
以上、加茂頼皆:原点でした。ほぼ、頼皆についての総まとめですね。新規情報ちょくちょく挟んでるつもりですが、どっかで書いてたかもしれねぇです。いずれ加茂頼皆:昇華や廻道円花:オリジンを書きたいですね。いつになることやら。
廻道円花:オリジンについてはワンチャンこのタイミングかなって目星を付けましたが、ちょっと保留中ですね。
ちなみにもし、双子の内どちらかだけが死んだ場合。
・対呪術特効の結界術の担い手、頼人or比奈。
が爆誕します。この二人の才能はマジに頼皆以上です。惜しい才能を使い潰しましたね糞親父。相伝なんかに囚われるからこうなる。もっとも、どちらか片方が生き残ったとしても加茂家からは出て行っちゃうんですけどね!何なら頼皆と結託して加茂家滅ぼしにかかりますねぇ!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ