待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
病院が、騒々しくなった。治崎がえりを取り戻す為にやって来ているからじゃ。下の階から悲鳴やら戦闘音が響いているのは、この病院に残された
こうなってしまった時の事を考えて、殆どの患者や病院関係者は前もって避難させてあるらしいから、儂が変に心配する必要は無い。儂は、治崎を殺すことだけを考えれば良いんじゃ。それ以外は、もう何も考えない。考えたくない。
じゃから、さっさと此処に来い。儂が殺してやるから、早く姿を見せぬか。もういい加減、儂は待てんのじゃぞ。
「……闇より出でて闇より黒く
その穢れを禊ぎ祓え」
今の内に、帳を降ろしておく。これで病院内で何が起こっているのか、外に居る非術師は認識出来ない。儂にとってはその方が都合が良い。まぁもっとも、緑谷やおおるまいとは入ってこれてしまうがの。術師からすれば帳は目立つものじゃから、二人が来てしまうまでそう時間は無いじゃろう。あの二人が侵入出来ぬように帳の性質を変える手も有るには有るが、どうにも昔から結界外殻の条件付けが苦手でのぅ。構築速度にも影響が出るし、今は止めておこう。
と、その時。室内そのものが歪んだ。壁も床も天井も流動的に動いているようじゃ。咄嗟に被身子を抱き寄せると、壁も窓も扉も無くなった。……閉じ込められたの。治崎の個性か? いや、建物そのものが分解されたようには見えなかった。となると、あやつの部下か何かの個性じゃろう。まったく、個性は滅茶苦茶じゃ。何でもありも大概にしておけ。
まぁ、呪術も似たようなものじゃけど。中には空間を歪ませたり繋げてしまう術式や結界も有るからのぅ。
「ヨリくん、これって……」
「……ああ、そうじゃの」
「なんかうねうね動いて、凄いですね?」
「は?」
……。おい。何を楽しそうにしとるんじゃこやつ。そんな場合じゃ無いじゃろう。もう少し殊勝に、と言うか大人しくしていてくれ。調子が狂うんじゃ、まったく。
部屋そのものは相変わらず歪み続けている。この先、何がどうなるかは知らん。部屋そのものに潰される事は無いじゃろう。もっともその場合、周囲を軒並み壊せば良いだけの話じゃけど。
赫鱗躍動・載と呪力強化を重ね合わせ、備えておく。どうにも気が緩むような気がするが、集中じゃ。出会い頭に殺してくれる。儂はただ、待ち構えているだけで良い。
掌印を、組んでおく。あんな糞野郎には勿体無いが、確実に殺す為じゃ。こちらの備えもしておく。
やがて。部屋の歪みが収まった。目の前に捻曲がった通り道が出来た。その向こう側に居るのは……。
「エリを返して貰うぞ。廻道円花」
治崎じゃ。それと、取り巻きが二人。全員妙な被り物をしおって。さては阿呆の集まりか? まぁ、何人居ようが関係無いのぅ。どうせ、全員殺すんじゃから。
「―――領域展開」
貴様等の死に場に、招き入れてやろう。此処で終わりじゃ。鏖殺してくれる。
「奉迎赭不浄」
迎え入れるのは、四人。治崎とその取り巻き。そして被身子じゃ。被身子に関しては対象外にしても良かったんじゃけど、どうせ入って来てしまうからの。わざわざ被身子だけ招かない理由は無い。この光景はこやつの目には毒じゃが、気遣ってやる必要は無い。そんな余裕は、もう無いんじゃ。
「ちっ、汚らわしい。音本」
「へい、若。おい、どういう個性だ!」
取り巻きの一人が、話し掛けてきた。答えつもりは無い。これから死に行くだけの貴様等が知っても仕方ない事じゃろう?
「これは個性じゃない。まったく別の力じゃ」
……? おい、何で勝手に口が動いた。もしや呪言の類いか? いや、呪言のような個性か。鬱陶しいの。脳を呪力で守っておくか。
「個性じゃ、無い……? お前の個性は、操血の筈だろう!?」
「……」
……よし。今度は勝手に喋らぬの。どうやら取り巻きの一人は呪言に近い個性のようじゃ。呪力で脳を守っていれば関係無い。もう一人の個性が何かは分からぬが、警戒する必要は無いじゃろう。何せもう、終わりじゃからの。
「百斂」
足元の血を浮かせつつ圧縮し、血の球とする。それを幾つも作り上げていく。この全てで穿血を放つ。避けれると思うな、防げると思うな。儂が殺すと言った以上、貴様等の死は絶対なんじゃから。
「慌てるな音本。幾らでも対処出来る」
何をしようとしているのかは知らん。殺すことに変わりは無い。が、この先を考えるとひとつだけ知っておきたいことがある。じゃから、その動きは見逃してやる。その後、直ぐに殺してやるがな。
そもそも、何かしようとしてもこれで終いじゃ。
「穿血」
何を企んでいようが、もう関係無い。十を越える穿血が、治崎へと向かう。が。
飛来する穿血を、治崎は
ちっ。やはりか。やはりそうなったか。であれば、治崎の背後には
再び百斂を行いつつ、儂は被身子を置いて治崎へと間を詰める。瞬間、脇の二人が動こうとしたから赤縛と苅祓を同時に飛ばす。どうなったかいちいち確認するつもりはない。殺す気で放った上に、悲鳴まで聞こえて来たんじゃ。相応に傷を負ったか、死んだのじゃろう。
ならば、残るは……!
「治崎ぃい!!」
この糞野郎を、殺すだけじゃ!
「吠えるな、病人がぁ!!」
間を潰し、懐に潜り込み、そして力任せに拳を叩き付ける。腹を狙った初撃は右腕に防がれたが、お構い無しに殴り抜く。その時、左手が迫って来たから赤縛で手のひらを固める。恐らく、この男の個性は対象を手で触れる事が発動条件の筈じゃ。じゃからいつぞやに舎弟にしたように、まずは個性そのものを封じてやろう!
左手が儂の髪を掴んだ。構うことはない。蹴り折るつもりで足を払い、重心を崩す。それでも倒れぬから、両足を血で縛り固める。
―――崩した。
「穿血」
もう一度、穿血を放つ。今度は先程とは訳が違う。崩れた姿勢で受け流せるような甘い攻撃ではない。治崎を殺す為に、狙いは全て急所にしてある。そして。
「が……っ!?」
腹と胸、そして首を貫いた。急所を貫かれたこやつは儂の足元に倒れたが、まだ死んどらん。じゃから殺す。倒れた治崎の体内には、既に儂の血が入り込んでいる。腸を、引き摺りだしてやろう。臓物を吐き出して死ねるんじゃ。貴様には似合いの死じゃろう?
血飛沫が上がる。と、同時。儂の血で全身を赤く染めた治崎が、儂の足を掴もうと手を伸ばす。それを余裕を持って避けてから、足を振り上げる。狙いは、たった今伸びてきた右腕じゃ。
「よっ、こいせえ!!」
全力で、右腕を蹴り上げる。鈍い感触と、音がした。骨が砕け、右手があらぬ方向へと向く。ついでに左肩を踏み潰した。んじゃけども、鬱陶しい個性じゃ。傷を負わせても、一秒にも満たない時間があれば治崎は傷を治して復活する。肩を潰すのではなく、左手も蹴り折るべきじゃった。まるで
良いじゃろう、次は頭を潰すか腕を吹き飛ばすかしてくれる。再び穿血の準備を進め、同時に苅祓を放つ。逃げられぬよう、まず足を吹き飛ばした。治崎は直ぐに回復しようとしたから、赤縛で両手を縛り上げた。同時に、腕の筋肉や神経を断つ。肉の内に儂の血を流し込み、浸透させ固定する。これで、もう個性は使えないじゃろう。
「ぐっ、……く……! 貴様……っ!」
もはや、睨むしか出来ぬか。そうじゃろうな。呪力を練れるようになったとは言え、その扱いはまだまだじゃ。呪力操作自体は拙い。まぁ、緑谷よりは優れているかもしれんが。
「……もう死ね。これが貴様がして来た事の、報いじゃ」
「……! 円花ちゃん、待って!!」
止めるか被身子。もう間に合わんがな。後は穿血を放って、それで終いじゃ。貴様じゃ、どうあっても止められぬ。
今、止めの穿血を……。
「だ、から……! 待ってって言っとるんじゃ!!」
「おぐっ」
いつの間にやら儂に変身し直した被身子が、儂の横っ腹に飛び込んで来た。お陰で少し体勢が崩れた。貴様、何しとるんじゃ。ふざけた真似をするなっ。治崎もその取り巻きも死に体同然じゃから良かったが、そうでなかったら何をされていたか分からんぞ!?
まったく!! 被身子の阿呆っ。それと、何で儂に変身してるんじゃ貴様は!!
「ほら止めた! 止めたからな!? これで治崎を殺すのは諦めろ!!」
「止めれてないじゃろたわけ! 邪魔をするなっ!!」
「なら儂が殺すからお主は殺すな!! そもそも止めて見せろと言ったのはお主じゃからな!?」
……!! あぁ、もう!! 何でこんな時に、自分の面と喧嘩しなきゃならないんじゃ!!
頼むから邪魔してくれるな! もういい加減に諦めろ!!
「貴様、いい加減に……!!」
「これ以上は駄目じゃたわけ! 大人しく諦めるか、儂を共犯者にするかじゃ!!」
こ、の……! 何なんじゃもうっ! 止めたいのか共犯者になりたいのかどっちなんじゃっ!? 相変わらず訳の分からんことを宣うなっ。何で殺したい奴の目の前で、派手に喧嘩しなければならないんじゃっ!!
ああ、もう良い! どうせ口で何を言おうが、こやつは儂を止められないんじゃ!! さっさと治崎も取り巻きも殺して、それで終いじゃ!!
儂は被身子を無視して治崎を殺そうと、穿血を放とうとして。
その時。
「領域展開」
儂の領域に、何者かが踏み入った。
まぁ治崎の個性なら呪力得られるよねってことで呪力持ちになりました。いったい誰が脳の弄り方教えたんですかねぇ(すっとぼけ)。
まぁ原作でも親父の脳みそ弄ってますし、ぶっちゃけ無為転変みたいなものですからねオーバーホール。
とは言え呪力持った程度で領域に対応出来る訳がないのでボコボコに……。トガちゃんと侵入者が居なければマジで今話で殺してましたね。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ