待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「領域展開」
儂の領域は、外部からの侵入を拒まぬ。故に侵入者がその気になった時点で、術師が帳を通り抜けるかのように中に入って来れてしまう。代わりに、内殻の強度は凄まじいんじゃけどな。奉迎赭不浄は、儂が最後まで呪い合いを楽しむ為のもの。そして、決して相手を逃がさぬ為の檻じゃ。
「
そんな儂の領域に入って来た輩は、二人。片方は一つ目じゃ。入ってくるなり領域を開き、儂の領域を押し潰そうと押し合いを仕掛けてくる。から、領域の維持に意識を集中する。あやつの術式は、火じゃ。赤血操術の天敵の一つと言って良い。そんな術式による領域展開は、相性が悪いなんてものじゃない。下手をすれば一瞬で領域を塗り替えられてしまう。
そうなれば、儂はともかく被身子が死ぬ。それは駄目じゃ。ここで死なせるわけには行かぬ。儂自身も死ぬ気は無いんじゃ。
「ちっ」
もう被身子に構っている場合じゃない。治崎を殺したいが、そんな余裕は無いっ。何より、どういう訳か一つ目の脇にえりがおる。何でじゃ、
……いや。そうか、一つ目か。奴ならば、楽にえりを拐う事が出来る。くそっ、だから儂も護送に加わらせれば良かったんじゃ!
「よく粘る。この領域前に、こうも押し合えるのか。
やはり貴様は、殺しておこう」
喧しい、話し掛けるな。喋る余裕なぞ、今の儂には無い。貴様、今すぐ祓ってやるから大人しくしておれっ。何でこんな時に儂の前に現れるんじゃ! 今はとても楽しめないから止さぬか……!
くそっ、くそ! 領域が押される! しかし塗り潰されてはいかん! そんな事になれば、被身子もえりも死んでしまう……!!
「ここで死んで貰うぞ、廻道円花。儂はその為に、今日まで渡り歩いて来た」
ぐっ、く……っ。押される。直に儂の領域は潰されてしまうじゃろう。かと言って、あやつに攻撃を仕掛けるような余裕は無い。必中は押し合いで消えている。どうする? どうする、どうする……っ!?
「……よくエリを奪い返して来たな。化け物」
「あんな程度の連中に手こずる神経が理解出来ん。皆殺しにするのは容易だったぞ」
「認識されないんだ。そのくらいは出来て当然だろう」
くそ。治崎が動けるようになってしまった。殺せる機会は有ったのに、被身子め。邪魔しおって……! どうするんじゃこの状況っ。事態は悪くなっていく一方なんじゃけど!?
……落ち着け。慌てるな。儂の領域が潰されてしまう前に、打開策を考えろ。無理にでも、治崎を殺すか? いや、悪党連合と結託している以上、一つ目の奴が止めに掛かるじゃろう。そもそも今、領域の押し合い以外をするような余裕は無い。しかしこの押し合いだけに専念していても、いずれ儂も被身子も殺される筈じゃ。死んでやるつもりは無いが、分が悪過ぎるのも事実。
それに、えりの事も考えなければ。いや、無理矢理にでも今すぐ動かなければ。もう、治崎がえりに向かって歩き始めている。取り巻き二人を治してるのも見た。今すぐにでも止めなければ。じゃけど……!
領域が、侵食されていく。血の海が、一つ目の領域で徐々に焼き払われていく。
「……大丈夫じゃ。儂を気にするな」
何を言っとるんじゃ、こやつ。おい、貴様を気にしないなんて真似は出来ぬ。状況が分かってるのか? 儂の領域が潰されれば死ぬかもしれないんじゃぞ。何を考えているかは知らぬが、頼むから大人しくしてくれっ。
儂の姿をしている被身子が、一つ目や治崎に向かって両手を伸ばす。そして。
風が、吹き始めた。
……は? おい。どういう訳じゃそれは。何で貴様が、儂の個性を使えるんじゃっ。
「何か、出来る気がしたんじゃよなぁ。じゃからほら、取り敢えず吹き飛ばすが……良いかの?」
良くないわ、たわけ!! おい待てっ、そんなにぐるぐる空気を回すなっ。やり過ぎたらどうなるか貴様は知ってるじゃろうっ!?
なんて思った次の瞬間。領域内に、小さな竜巻が出現した。それは勢いを増してはいるものの、儂が作るものよりは弱々しい。竜巻であることに、変わりは無いんじゃけども。
しかし、竜巻は竜巻じゃ。儂の血を巻き込みながら、前へ向かって進んでいく。直後、被身子は膝から崩れ落ちた。あ、いかん。あれは目が回っておる……!
「うぇえ……っ。これ、きっつ……! おえっ」
おい、悪党を前に吐くな。反動が辛いのは分かるが、もう少ししっかりしろ。何なんじゃ貴様は。まっこと分からん。いつだって好き勝手にしおって……!
じゃが、これは好機じゃ。血の竜巻を前に、治崎が身を固くした。一つ目の意識も、儂から逸れた。領域の押し合い、その形勢が僅かに変わる。そのわずかさえあれば、十分っ!
血を飛ばし、えりを血で汚す。綺麗な髪を汚してしまうのは申し訳ない。後でちゃんと謝ることにする。
そして、無理矢理にでもえりを儂の手元に引き寄せる!
「わっ、わわ……っ!?」
高速で飛んできたえりを抱き止め、ついでに儂の前で動けなくなっている被身子を儂の後ろへ。状況は依然、最悪なままじゃ。取り敢えず一旦、二人を儂の側に引き寄せただけ。ここからどうするかなんて、何も考えておらん。そもそも考えたとしても、儂にやれる事は限られている。やる事も、決まっている。
どこまでやれるかは、分からん。じゃけど、二人は守る。治崎は殺し、一つ目は祓う。そうしなければならない。なのにっ。なのになのに……! この押し合いは、これ以上どうする事も出来ぬ……! 儂の領域で一つ目の領域に対抗し続けるのも、無理がある。これ以上押し込まれてしまえば、それこそ領域が塗り潰されてしまう!
「おい。呆気なく奪い返されてどうする?」
「どの道、廻道円花は殺す。それ以外は、全て些事。小僧は黙っとけ、それとも先に死ぬか?」
「ちっ。ちゃんと協力しろよ、
余裕そうにしおって。さては貴様等、この状況になる事が分かって動いていたな? 悪党連合め……。余程儂を殺したいと見える。いったいどこまで、儂について治崎に話した?
どうやら互いに協力しているようじゃが、そこまで互いに信頼が無いのがせめてもの救いか。
殺せるものなら、殺してみろ。儂は、死なんぞ。
「極ノ番。隕」
―――っっ!! いかん、あれはいかん!! 儂等を纏めて殺すつもりじゃっ!! 必中はまだ無いが、それでもあれをどうこうすることは出来ぬ!!
くそっ!!!
燃え盛る巨岩が、迫る。領域の維持は持続しなければならない。じゃが、この攻撃を避ける事も防ぐことも難しい。まさかここまで、一つ目と相性が悪いとは……!
領域を維持したまま、限界まで呪力を纏う。赫鱗躍動・載、血星磊による肉体強化も重ね合わせて、押し合いに意識を向けたまま、全力で拳を振りかぶるっ。
「ぬ、ぉおおおおっっ!!」
迫る巨岩を迎え撃つ為に、拳を叩き付ける。が、駄目じゃ。亀裂を入れることは出来たが、砕くことは出来ぬ。体が押し潰されそうになる。このまま受ければ、死ぬ。じゃけど避けようものなら、被身子もえりも死んでしまう……!
拳は砕かれ、焼かれていく。咄嗟に左腕でも殴ってみるが、右拳同様に亀裂を生じさせただけ。これだけの質量、威力を儂の体で止めることは物理的に不可能じゃ。
両の拳は砕け、焼かれ、もう拳ではなくなった。手首から先は潰され、もはや巨岩を支えることなど……。
「く、そ……!」
止めなければならない。何としてでもこの一撃を、止めきらなければ。領域の押し合いを諦め、領域そのものが消されてしまう前に穿血や苅祓を巨岩に向かって放ち続ける。
やがて。一つ目の一撃を、どうにか砕けた。が、領域はもう殆ど潰されている。まだ辛うじて必中効果は消えているが、それも時間の問題じゃ。
「あっつ!? 熱い……!!」
「っっ、ぅううっ!!」
いかん。領域の環境要因が、被身子やえりを焼こうとしている。いや、実際に焼いている。儂は呪力があるから問題無いが、こやつ等はそうじゃない。咄嗟に二人を抱き寄せ、儂ごと呪力で覆う。これで余計に呪力が使わされ、状況は更に悪くなっていく。
「終わりだ。廻道円花
極ノ番。隕」
……!! それは、いかん!! この期に及んで、もう一度あれを使われたらどうしようもない……!! くそっ、くそ!!
最後の一撃が、放たれようとしている。その時。
領域が、揺れた。……何じゃ? 誰が領域を外から殴っている? 儂の領域外殻を通り抜け、その内側にある一つ目の領域外殻を、誰が殴って……。
この異変に、一つ目の奴も動きを止めた。
「―――ヨリミナ!! 渡我先輩、エリちゃん!!」
領域の一部が、砕かれた。同時に、この場に姿を見せたのは……。
その身に呪力を纏った、緑谷じゃった。
奉迎赭不浄は、蓋棺鉄囲山に対してガン不利です。とことん相性が悪く、どうしようもない。それでも円花は粘りましたが、危うく三人死ぬところでした。
トガちゃんがさらっと円花の個性を使ってますが、これのメカニズムについては変身の成長以外に訳があります。そもそもこの物語のトガちゃんは変身が成長する環境下に居ないので原作通りにとは行きません。まぁ愛だよ愛!で済ませても良いんですけど、もう少し補強します。独自解釈やら独自設定のオンパレードにはなりますけどね!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ