待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「―――ヨリミナ!! 渡我被身子、エリちゃん!!」
「何っ!?」
緑谷が、領域内に侵入した。と、同時。緑谷は拳は一つ目に駆け寄り、その勢いのまま一つ目を蹴り飛ばした。その一撃は、腕によって防がれてしまう。が、その防御は無駄に終わった。
緑谷の一撃が、黒く光ったからじゃ。
これには、流石に驚かされた。どうしても呪力が遅れてしまうのに、この土壇場で黒閃を決めるとはの。
黒閃の威力は、生半可なものではない。咄嗟に呪力で防ごうとした一つ目は、想定外の一撃で腕が消し飛んだ。だけではなく、黒閃を受け止め切れる事が出来ずに吹き飛んだ。祓えてはいないが、それ相応の傷を負ったようじゃ。領域が、緩んだ。であれば……! 今ならば……っ!
この機を逃すなんて選択肢は、今の儂に無い。全力で領域を押し返す。緑谷が姿を現したことは、決して喜べることじゃない。じゃけど、助けられたのは事実じゃ。こやつが来なければ、間違いなく死んでいた。じゃから儂も、緑谷を死なせない。そもそも子供じゃ。守らなければならぬ。
今の儂に出来ることは、少しでも長く領域の押し合いを続けること。儂の領域が塗り潰されれば、一つ目の術式が必中になってしまう。残り呪力は、そう多くない。多くはないが、それでも絞り出せ……!
「すいません! やっぱりちょっと、話聞いても良いですかね!?」
「あの時の……!」
緑谷に遅れて、るみりおんが領域に飛び込んできた。るみりおんは、治崎に飛び掛かっている。
「ヨリミナ、渡我先輩っ。それにエリちゃんも! 大丈夫、みんな救けに来たから!!」
そして、麗日まで。続々と、緑谷が開けた穴から領域に入り込んで来ている。状況は、未だ良くならない。悪化していると言って良い。これでは、儂の呪力が尽きると同時に全滅してしまう……!
くそっ。何でこんな状況になってしまった!? こんな事は、儂は望んで居ないと言うのに……!
でも、じゃけど……! 今やれる事をしなければ。全員、儂が守り通さねば……!!
ああ、もうっ。苦渋の決断じゃぞ緑谷!!
「緑谷!! 儂等でそやつを祓うぞ! 今すぐ領域を潰さねば、全員死ぬ!!」
「っっ、任せて!!」
「麗日、二人を頼むっ。緑谷が開けた穴から、連れ出してくれ……!」
「うん、分かった……!」
「るみりおん!!」
「こっちは任せて欲しいんだよね!!」
今、畳み掛けるしかない。領域の押し合いを続けながら、儂も一つ目へと駆ける。両手を治すことは、出来ない。押し合いの最中に、
「どっ、こいせぇえ!!」
黒閃により吹き飛んだ一つ目が立ち上がらぬ内に間を詰め、その面を全力で蹴り上げる。途中治崎が動こうとしたが、それはるみりおんが止めてくれた。今はもう、治崎なぞ気にしている場合じゃない!
今は貴様じゃ、貴様だけに集中する……!
「ひ、とつ目ぇえ!!」
拳は、無い。じゃけど関係無い。全力で、殴り抜く……!!
その時。儂の呪力も、黒く光った。
「がっ、ぁあ……!?」
無い拳を腹に捩じ込む。一つ目は再び吹き飛び、姿勢を崩す。そこに、追い付いた緑谷が再び足を振るう。
「マンチェスター・スマーーッシュ!!」
振り上げ、そして振り下ろされた踵が一つ目の頭を蹴り抜いた。領域が、ひび割れ始める。押し合いが、僅かに楽になった。じゃがそれでも、まだ手を緩める事は無い。一つ目を完全に祓うまで、止まることは出来ぬ……!
緑谷と共に、立て続けに一つ目を殴り、蹴り続ける。それでもまだ、領域は消えない。もう時間が無い。儂の呪力は、もう尽きてしまう。くそっ、押し合いで殆どの呪力を使わされてしまった。これでは、治崎を殺す事が難しくなってしまう……!!
「舐めるなよ小童がぁあ!!」
一つ目が、拳を振るおうとしている。狙いは、儂ではない……!
―――っ、いかん! 緑谷!!
咄嗟に、一つ目と緑谷の間に跳び込む。盾となる為に。そして。
一つ目の拳は儂の左肩に触れ、その際。呪力は黒く光った。
「が、あ……っ!?」
「うぐ……っ!?」
緑谷ごと、儂の体は吹き飛ぶ。黒閃の衝撃で、押し合いから意識が一瞬逸れてしまった。僅かに持ち直した領域が、塗り潰される。じゃけど、その時。
一つ目の領域は、消え失せた。深傷を負ったせいか? それとも、呪力切れ? いや、どちらでも良い。とにかく、領域は消えた。儂の術式も焼き切れてしまったが、それは一つ目も同じ事じゃ。
「げほっ、ごほ……っ」
左肩から先が、消し飛んだ。ふざけおって……! 貴様まで黒閃を起こすとはの……!
この傷は、駄目じゃ……っ。残る呪力を使って、
じゃけど、それでも。ひとまずお互いの領域は消え失せた。そして、お互いに術式は使えぬ。ならば後は、殴り合うしかない。
「よ、ヨリミナ! 無事……!?」
「……ひとまずは、じゃけどな……。畳み掛けるぞ……!」
「うん……! 祓おう! 祓って、治崎を捕らえて……エリちゃんを救けるんだ!」
懸念すべきは、一つ目の術式回復。儂はもう、呪力が無いに等しい。呪力強化も、長くは維持出来ぬ。それでも、こやつだけは祓わなければ。もう一度、領域を展開される前に……!
もう一度、一つ目との間を詰める。今度こそ祓う為に、拳を振りかぶる。同時に、踏み込んだ儂にこやつは反応した。迎え撃とうとしている。互いの拳は交差して、一つ目の拳は儂の額を撃つ。儂の拳は、一つ目の胸を撃つ。
視界が揺れる。拳には、手応え。体が跳ね返されそうになるが、何とか踏ん張ってみせる。
「スマーーッシュ!!」
儂に気を取られた一つ目が、儂の後ろから跳んだ緑谷に殴られる。咄嗟に術式を使おうと手を突き出したが、まだ火は出て来ない。 それは、大きな隙じゃ。
足を払い、姿勢を崩させる。崩れたところに、また緑谷の蹴りが叩き込まれた。一つ目は床に倒れた。から、頭に狙いを定めて、上から拳を叩き付ける!
……が、寸前のところで転がって避けられた。それを緑谷が追って、更にもう一度蹴り飛ばす。
一つ目は壁に叩き付けられ、呻く。更なる追撃を転がって避け、何を考えたか壁を殴り穴を開けた。
「……ちっ。今は分が悪い。
「貴様……、儂が逃がすと思うか?」
「まだ祓われるつもりはない。あの男との、縛りがある」
殴り合いの中で、術式は回復した。逃すつもりはない。両手を叩き合わせ百斂を始めるが、術式が回復したのは向こうも同じのようじゃ。儂等に手を向け、火を操り始めた。
「次は殺すぞ。廻道円花」
「ほざくな。今、儂が祓う」
穿血を放つ。同時に炎の壁が儂等の視界を塞いだ。炎は壁や天井を焦がしたが、短い時間で消え失せた。穿血は……避けられたようじゃ。壁の向こう側に、もう一つ目の姿は無い。
「……くそ。逃がした……!」
「僕が追う!」
「いや待て、行くな。それより治崎じゃ。治崎を殺す……!」
もう、呪力は尽きた。領域の押し合いの不利が大き過ぎた上に、
じゃけど、好都合じゃ。もう呪術は何一つ使えぬが、まだ個性が有る。ならば、治崎を殺せる。殺さなければ……!
「……お前は、俺の為に死んでくれるよなぁ。音本……!」
治崎に意識を向けると、るみりおんに追い詰められていた。が、それが良くなかった。追い詰められた人間は、大抵がろくな事をしない。悪党であればある程に。
治崎が、取り巻きの一人と自分に触れた。二人の姿は一瞬血飛沫となり、そして。
まるで両面宿儺のように、奴は四本腕となった。
緑谷くん、黒閃経験の巻き。
漏瑚くん、黒閃経験の巻き。
ボッコボコにされて漏瑚は撤退しましたが、ボッコボコにされた治崎が四本腕に。
円花は呪力切れ。相性ガン不利の中で領域勝負をした結果です。
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
-
要らん
-
良いから一人称で突っ走れ