待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
『―――ちゃん!』
……誰かが呼んでいる。気がする。背中が痛む。息をすると、脇腹が酷く痛む。体が動かん。目蓋が開かぬ。どうやら死んでは居ないようじゃが、これでは当面動けぬじゃろう。起きなければならぬのに。まだ、治崎を殺していない。あやつをこの手で殺すまで、倒れてなんか居られないんじゃ。
なのに、なのに……。体が、動いてくれない。目蓋すら、開かない。
『―――どかちゃん!!』
……被身子の声が、する。起きなければ。起きて、動かなければ……。
「円花ちゃん!! しっかりして!!」
っっ。
「ぐっ、げほ、ごほ……っ!!」
「!! 円花ちゃん、円花ちゃん……!!」
……っ、ああ、いかん……これはいかん。気を、失っていた。何があった? ここは、外か……? 確か、限界を越えてまで個性を使って、それから……恐らくは自ら作り出した竜巻で吹き飛ばされて。そうか、それで今、病院の外に居るのか。起きなければ。起きて、治崎を殺す。そして緑谷とるみりおんを、そしてえりと被身子を、麗日も、儂が守らなければ……。
儂、どのくらい意識を失っていた? 短時間か? それとも長時間?
……、……。戦闘音が聞こえる。まだ緑谷達が治崎と戦っているようじゃ。ならば、気絶していたのは短時間じゃろう。早く、動かねば……。
ここは、……病院の裏手。駐車場、か……? とにかく開けた場所ではあるが……。帳は、消えておるの。恐らく一つ目に消されたんじゃろう。それらしい残穢がある。
「ヨリミナ、しっかり! でももう、動いたらあかん! 肋骨が折れて……!」
「……問題ない。治る」
骨がへし折れるのは、果たしていつ以来か。呪力は、……? 何じゃ? 何で、呪力が戻っている? まさか、長時間意識を失っていたのか……?
とにかく、直ぐに戻らなければ。痛みは凄まじく、個性の反動でまだ目が回っておる。吐き気も酷い。それでも、呪力が戻っているのなら問題ない。細かい事を考えるのは後じゃ。とにかく今は、負った傷を
多少ふらついてしまったが、問題ない。儂の顔を心配そうに覗き込んでいる被身子を撫でてやってから、いつものように立ち上がる。自分の個性で吹き飛ばされて骨折とは。まっこと、情けない。
ところで被身子、何で裸……。いや、変身が解けたのか。それでも、外じゃぞここは。せめて服を……着ている場合でもないか。
取り敢えず、
歩き始めると、えりと目が合った。暗い顔をしている。何か思い詰めているようじゃの。……と、思ったら。この子は火傷を負った腕で儂の腰に抱き付いてきた。痛々しい。この傷は、儂のせいじゃ。
「……もぅ、いい……です……! ごめん、なさい……!」
「……謝るな。お主は何も悪くないんじゃ」
「わたしが、逃げた、から……っ。だからみんな、けが……して。ヒーローさんも、死んじゃって……!」
そうじゃろうな。一つ目に襲われたんじゃ。
とにかく。えりは何も悪くない。こんなにも優しい子が悪いなんて話が、有ってたまるか。
「えり。悪いのは治崎じゃ。えりは、何も悪くないんじゃよ」
余裕は無いが、それでも出来るだけ優しく話す。頭を撫でてやって、えりの背中に手を回す。きっとこの子は、戻ろうとしてしまっている。知崎の下に自分が戻る事で、事態が丸く収まると思ってしまっている。
そんなえりを見て、より強く思う。治崎は殺す。殺さなければならない。
「……守ってやれなくて済まなかった。手、痛いじゃろ?」
その場でゆっくりとしゃがみ込み、えりと目を合わせる。手を優しく包み上げると、……火傷が酷い。痛くて痛くて堪らない筈じゃ。それでもこの子は弱音を吐かず、むしろ儂等の心配をしている。それは、度が過ぎる程の優しさじゃ。
儂が
「……いたく、ない……」
「そうか。えりは強いな。被身子じゃったら文句を言ってるところじゃぞ」
「……ちがぅ、の。わたし、わたし……呪われて……るから」
「そんな事は無い。えりは呪われてなんかおらぬ。それは儂が保証する。何たって儂、呪いを祓う……、……
じゃからほら、分かるんじゃよ。がははは!」
えりが呪われている? 呪術的な意味合いでは無いじゃろう。治崎め、この子に何を吹き込んだ? 殺してやるから、大人しく待っていろ。次は確実に殺すぞ。この呪力量なら、もう一度領域を使っても良い。
「そうですよ、エリちゃん。円花ちゃんは、呪いを祓うヒーローなのです。だから、もしエリちゃんが本当に呪われちゃってても、必ず円花ちゃんが助けてくれますから!」
……。何じゃ貴様。たまには良い事を言うんじゃな。普段からそのくらい物分かりが良ければ、儂も苦労しないんじゃけどなぁ。
いや、良い。貴様の我が儘なぞ、儂が全て受け止めてやる。今は駄目じゃけどな、今は。
「麗日。引き続き、えりと被身子を頼む。儂は治崎を殺してくる」
「任せて。みんなが来るまで、ううん、みんなが来ても私が守るから」
「助かる。被身子、大人しくしてるんじゃぞ」
「……キスしてくれたら、良いですけど。それと、人殺しは無しなのです。だって私、止めたもん」
いや、じゃからあれは止めた内に入らぬじゃろうが。そんなに睨んだって駄目じゃ。儂は殺す。殺すったら殺す。まぁ、でも。
子供の前でするのは気が引けるが。まぁ、最後かもと思ったら……。
……なんで喧嘩なんてしてるんじゃろうな、儂。こんなにもこやつが好きで、大切なのに。
「ん……」
「んん……っ♡」
「ちょっ……! 二人とも、こんな時にまで……!?」
「こんな時だからこそ、ですよぉ。愛の力は無限大なので!」
じゃから、大人しくしろと儂は言ったんじゃけど? 麗日に絡むでない。まったくこやつは。まっことどうしようもない。あぁ、そうじゃ。指輪。後で返しておかなければ。
「えり。悪い奴は倒しておくから、気にするな。お主は、幸せになることだけ考えておけば良いんじゃ」
「……しあわせ、……に?」
「そう、幸せに。やりたい事、したい事。たくさん考えたら良い。皆が全部、叶えてくれるから」
「……でも……」
最後にえりの頭を撫でて、立ち上がる。その時、病院の壁を突き破る形で緑谷が吹き飛んで来た。から、血を付着させ軌道を変える。取り敢えず麗日に受け止めさせるとしよう。被身子やえりでは無理じゃからの。
崩壊した壁の向こう側には、治崎が立っておる。儂等を見下し、そしてえりを見て呪力を溢れさせた。
「わっ!? で、デクくん!? 大丈夫……!?」
「げほっ、ぅ、ウラビティ。ありがとう、平気。それより気を付けて。治崎が……!」
「治崎……!? あれが!?」
まぁ、驚くのは仕方ないところでもあるの。今の治崎の様相は、人間のものとは掛け離れつつある。とは言えこの時代、人の姿形は多種多様じゃ。個性は何でもありじゃからのぅ。四本腕ぐらい、何も珍しくはなさそうなものじゃが。
「おい。るみりおんはどうした?」
「ルミリオンなら」
「ここに居るんだよね!」
……急に地面から姿を見せるな。どうやら無事らしい。とは言え、疲労が顔に滲んでいる。すり抜ける個性を使い続けているんじゃ。緑谷との連携もある上に、触れられようものなら即死する状況が続いている。神経が磨り減らされても仕方ないじゃろう。緑谷も、手傷が増えている。
あまり、長い時間は掛けられない。
「領域展開」
もう一度、もう一度じゃ。今度こそ、殺し切って見せる。
「奉迎赭不浄」
何故円花の呪力が突然回復したのか。これはトガちゃんが円花の個性を使えた事に関わりがあります。この辺り、インターン編の終わりに書きます。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ