待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
もう一度、領域を開く。招き入れる対象は、治崎のみじゃ。それ以外の全員は、領域の外に居て貰う。直ぐに中に入ってこられてしまうじゃろうけど、それよりも早く治崎を殺す。今度こそ、絶対にじゃ……!
両手を叩き合わせ、百斂を行う。これから数多の穿血を放ち、治崎を即死させる為に。運良く生き延びようが、関係ない。体内に儂の血が入れば、どのみち死ぬんじゃからな。
「またこれか……! いい加減にしろ、汚らわしい!!」
「……」
もう、言葉は要らん。こやつの話など聞くだけ無駄じゃ。治崎が血の海に触れようとするのと同時、儂は穿血を放つ。
幾つもの穿血が、奴を貫く。四本の腕も、体も、足も首すらも。じゃけど、頭だけは守られてしまった。治崎の体内に入り込んだ血を操作し、治崎の血液ごと体外に放出させていくが、次の瞬間にあやつは血飛沫となって消えた。そして、再び元に戻る。くそ、鬱陶しい個性じゃ。やはり頭を一撃で潰し、即死させねばならぬようじゃの。それか腕を全て吹き飛ばすかしなければ。僅かでも息があるなら、奴は受けた傷を直ぐに治してしまう。
鬱陶しいのぅ! 貴様!!
「苅祓!!」
触れれば肉も骨を裂く血の刃を、多量に飛ばす。赫鱗躍動・載と呪力強化を合わせ、距離を潰す。動体視力を極限まで引き上げて、その上で……。
「よっ、こいせぇっっ!!」
全力で、殴る!!
「ぐあっ!?」
手応えは、有る。如何に全身を呪力で強化していようが、付け焼き刃でどうにか出来る攻撃などしない。そもそもが必中じゃ。儂が繰り出す赤血操術を、こやつには避ける事が出来ぬ。
四本腕は、三本吹き飛ばした。一本は呪力強化で守られてしまった。切り落とした腕は、念の為赤縛で縛り上げながら遠くへと飛ばしておく。そして、その面を全力で……!! 殴り抜く!!
骨を撃ち砕いた感触がある。恐らく、頬骨が砕けた筈じゃ。しかし、まだ死んどらん。まだ生きている。治崎が死ぬまで、儂は絶対に手を緩めん。殺す、殺してやる……!!
「いい、加減にしろ……っっ!!」
腕の一本が、儂に迫る。それを赤縛で縛り上げ、腹を殴り足を蹴り払い、無理矢理血の海の中に倒れ込ませた。そして、足を振り上げる。その頭、踏み潰してくれる……!!
「ヨリミナ、待って!!」
「それはやり過ぎだブラッディ!!」
「円花ちゃん!!」
三人も、領域の中に入って来た。儂の領域は外からの侵入を拒まぬ以上、これは仕方ない。仕方ないが、邪魔はさせぬ。もう終わりじゃ。治崎の頭を踏み潰して、終いにする……!
足を振り下ろす。その時、儂の視界は大きく揺れた。どころか、体が吹き飛ばされた。
「待ってってば! 何をしてるんだよっ!?」
どうやら緑谷に、殴り飛ばされたようじゃ。お陰で治崎を殺し損ねた。どうしてどいつもこいつも、儂を止めようとするのか。理解出来ぬ。いい加減、邪魔するのは止さぬか。貴様等じゃって分かる筈じゃ。えりを助ける為には、こやつが邪魔なんじゃ。それに、儂が許せぬ。報いは、必ず受けさせる……!
「……っ、まどか、さん……!」
「駄目、エリちゃん! 中に入ったら危ないから……!!」
「でも、でも……!」
えりまで、領域に入って来てしまった。まったく、何をしとるんじゃ麗日。被身子が入って来てしまったのは仕方ないとして、えりは止めぬか。いや、止めたが無駄じゃったようじゃ。えり自身が自らの意思で入って来てしまったのなら、それも仕方ないのぅ。許してやろう、子供のした事じゃ。一つ目の領域のように、環境要因による危険が有るわけでもない。
「……! エリ……!」
おい。どの面で、えりを呼んでるんじゃ貴様は。それは貴様がして良い事じゃない。それに貴様が呼んでしまえば、えりが怖がってしまうじゃろ。よし殺す。もう殺す。踏み殺せないのなら殴り殺す。殴り殺せないのなら呪い殺す。
とは言え。どうせ何をしたって、周りが儂を止めようとするじゃろう。ならば、最も確実な方法で殺してくれる……!
「円花ちゃんっ」
「ぐえっ」
治崎の脳を潰すべく百斂で血球を作っていくと、今度は被身子に飛び掛かられた。下手に踏ん張ると危ないから、つい押し倒されてしまった。おい邪魔じゃ、覆い被さるな。今すぐ、そこを退け。今度こそ儂は治崎を殺すんじゃっ。
被身子の下から抜け出そうとするが、両手を掴まれた挙げ句に体重を掛けられる。別に跳ね除けるのは簡単じゃ。どうせ被身子の腕力じゃ、儂を止めることは出来ぬからの。それでも無理矢理退かすような真似は、……今はしたくない。最後の最後に、そんな扱いをしたいとは思わん。
「今度こそ止めたのです! ほら、だから素直に諦めてくださいっ!」
儂にのし掛かった被身子が、唇を尖らせながら下らない戯言を口にした。いい加減にしてくれんかのぅ。
「じゃから、これは止めた内に入らんじゃろっ。おい、いい加減に……!」
「止めたの! 止めたもん!!」
ああ、もうっ。鬱陶しいんじゃ貴様っ。邪魔をするな邪魔をっ! だいたい儂は、止められたいなんて思ってないんじゃ!
そうやっていつもいつも勝手な事ばかり言いおってっ。そろそろ愛想を尽かすぞ!? それでも良いのかたわけっ!!
もう良い。百斂は問題なく進んでおる。今は血液の圧縮が済んで、後は穿血として放つだけじゃ。狙いは当然、治崎の頭。脳みそじゃ。今度こそ貫いて、終わりにしてくれる……!
「もう終わりだ治崎。お前がした事は、到底許されることじゃないよね。……観念しろ」
「触れるな! 病人め……!」
「止血しなきゃ死ぬだろ。腕三本切り落とされてるんだ。残る一本切り落とされる前に、捕まっとけって」
おい、るみりおん。何しとるんじゃ貴様は。何でよりによって、治崎に手当てを施そうとする? そやつはこれから死ぬんじゃから、そんな真似をする必要は無いんじゃけど?
あと被身子、離れてくれ。息苦しいから、そんな抱き締めるな。
「……情けの、つもりか……!!」
「いやまぁ、情けなんて無いさ。でもヒーローは殺さないし殺させない。ヒーローでなくても、誰かを傷付けないなんて当たり前の事だろ?」
……ああ、それは正しいんじゃろうな。るみりおんが言うことは、きっと正しい。じゃけど、それだけで子供は守れぬ。助けることもじゃ。世の中、生きてはならぬ輩が居るんじゃよ。
じゃから儂は殺すんじゃ。子供達が傷付かなくて良いように。悲しまなくて良いように。
「夢に毒された病人が……!」
治崎が、るみりおんの腕を振り払って立ち上がる。同時にあやつは個性を使い、残った左手を拘束する儂の血を分解する。が、無駄じゃ。直ぐに赤縛で、再び手のひらを多い尽くす。足も縛って今度は立ち上がれないようにもしてやった。もう、何をしようが無駄じゃ。残る呪力量からそう長く領域を維持することは出来ないが、それでも殺すだけなら十分じゃろう。
覆い被さる被身子を無理矢理退かして、立ち上がる。後は穿血を撃ち込んで、それで終いじゃ。
「退け、るみりおん。そやつはここで殺す」
「駄目だよ、ヨリミナ。殺しちゃ駄目だ」
「退け、……でく」
「……ヨリミナ。許せないのは、分かるよ。でも、それで本当に殺しちゃったら……もうヒーローじゃあらへん。それは、
「円花ちゃんっ。絶対駄目なのです!」
……じゃから、何でどいつもこいつも儂の邪魔をするんじゃ。緑谷も麗日も目の前に立ち塞がるし、被身子は後ろから抱き止めてくるし。何で殺そうとしないんじゃ。殺す以外に選択肢など無かろう? この手の輩は、捕まったぐらいじゃ変わらん。また同じ事をいずれ繰り返す。そうなったら、誰かが被害に遭うんじゃ。次は、えりじゃないかもしれない。次も、えりかも知れない。
それを考えたら、やはり殺しておくに限るんじゃ。
「……まどか、さん」
「……何じゃ?」
えりまで、儂の前に立った。目を伏せて、何か言いたそうにしては口を閉ざす。やがて赤い瞳がゆっくりと儂を見て……。
あぁ、酷い面じゃ。えりの瞳の中に映る儂は、とても子供の前に立って良いような顔をしていない。
「……もう、だれにも傷付いて欲しくない。死んで、欲しくない……」
「……なぁ、えり。治崎は許されぬ事をした。また同じ事をするかもしれん。それでも、殺さぬのか?」
「……そんなの、……のぞんで、ない」
「
「……ほんと。もぅ、いや……だから」
……。……はぁ。くそっ、殺したい。やはり殺してしまいたい。じゃけど、じゃけどじゃけど。それを、えりが望んでいないのなら。なら、儂は、儂のするべき事は……。
ああ゛っ、もう!! 何でこうなるんじゃ!! 治崎は殺すべきなのに!! こんな奴は生きているべきではない!! 殺しておかねば、後で面倒なことになるじゃろう!?
それでも、それでも……! この子がそれを望まないのであれば、儂はもうとやかく言えん。子供の意思は、尊重してやるべきじゃから……!!
「……、分かった。殺、さないで、おいて、やる……っ」
「円花ちゃん……!」
おい、抱き締めるのは良いが首が絞まる。腕の位置を変えろたわけ。どいつもこいつも安心しおって。まだ気を抜ける場面じゃなかろう?
まったく。まっこと仕方のない奴等の集まりじゃ。
ただ、ひとつだけやるべき事がある。治崎は殺さん。殺したくて堪らないが、えりが望まないから仕方なく殺さない。その代わり。
「おい。糞野郎」
被身子を引き摺りながら歩いて、治崎に近付く。そして、全力で殴る。呪力も術式を使わん。
「ぐ……っ!」
「えりに免じて殺さないでおいてやる。次に同じ事をしてみろ? 本気で殺すからの」
頭を殴った後、顔面を蹴り上げる。殺さぬが、殺したい気持ちは変わらない。仰向けに倒れた糞野郎の胸を踏み付け、体重を掛けていく。呪術を使っていればとうに死んでいる。今生きているのは、儂が加減をしているからじゃと知れ。
あぁ、殺したい。殺してしまいたい。こやつを殺せと、本能が叫んでいる。
「が……っ!!」
痛みに呻く姿は、滑稽なものじゃ。笑えもせぬ程につまらんがな。
「ちょっ、円花ちゃんっ。ストップですストップ……!」
「駄目だヨリミナ! もうそんな事しちゃ駄目だよ!」
「うるさい黙れ。まだ終わっとらん」
治崎の胸の上に腰を降ろし、腕を振り上げる。そして、拳を顔面に向かって落とす。殴る。殴る、殴る殴る。
途中。左腕が緑谷に掴まれた。仕方ないから右で殴ろうとすると、被身子に抱き止められた。……ちっ。もう終いにしてやるか。
「儂は貴様を許さない。絶対に許さん。もしまた儂等に近付いたら、今度こそ殺すぞ」
「……ぺっ」
血を、顔に向かって吐き飛ばされた。くだらんな。挑発にもなっとらん。死に体が睨んで来たところで、ただただ滑稽なだけじゃ。
「……後は任せる。次にそやつの面を見たら殺すから、二度と儂の前に立たせるなよ」
緑谷の腕を振り払い、腕に抱き付いた被身子はそのまま放っておいて立ち上がる。領域を解き、それから治崎や緑谷達に背を向けて数
それまでは、まだ気を張っておく事にする。
……何をやっているんじゃろうな、儂は。こんな事になるのなら、あの時治崎を殺しておくべきじゃった。今でも殺したいのは変わらん。じゃけど、もう終わった事じゃ。ひとまず治崎は捕縛した。後ろで緑谷やるみりおん、あと麗日が治崎の拘束を始めたような気がするが、知ったことじゃない。取り敢えず、えりの手を引いてもう少しだけ距離を取る。
この後。病院の方から
……ふんっ。後で治崎を殺さなかったことを後悔したって、儂は知らんからな。手助けだってしてやるものか。まぁ、次に治崎に出会ったら殺してやるんじゃけど。
まぁ、とにかく。こうして、今回の事件は幕を閉じた。
あぁ、それと。えりは雄英高校で預かることになった。身寄りが無いことと、えり自身の個性制御の観点から相澤の側に置いておくのが良いらしいとか、何とか。
……うむ。ならばしばらく、えりの下に通い詰めるとするかの。この子が、しっかりと笑えるようになるその時まで。
治崎は無事(?)生存。ついでにナイトアイも生存。何か未来も捻曲がって、円花も無事です。ただしエリちゃんに掛かった呪いは解けてません。緑谷くんの優しい言葉も無茶も無いので。
書きたかったんですけどね、100%+呪力強化。いつか書きますが。
インターン編はもうちょい続きます。
次回。円花、ナイトアイと対談するの巻き。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ