待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「掛けなさい。色々と聞きたい事がある」
治崎が捕らえられた、その翌日。寮に朝も早くから、面を見たいとも思わぬ
それと、貴様がやって来たから朝食がまだなんじゃけど。儂、朝は被身子の味噌汁を飲まねば一日が始まらないんじゃ。話なんてさっさと済ませて、早く朝食をじゃな……。
……はぁ。溜め息が出る。何で休みなのに制服に着替えて、応接室に来なければならぬのか。さっさと済ませるとするか。取り敢えず、促されるままに
「何の用じゃ? さっさと済ませてくれ」
朝食が食べたいんじゃ。今朝は卵焼きなんじゃぞ。被身子が巻いてるところを見た。早く食べたいのぅ。ただ、今朝はどうしても被身子と顔が合わせづらいんじゃけども。……流石に嫌われてしまった気がしてならぬ。昨日までの儂は、色々と良くなかった自覚があるんじゃ。
じゃから、謝りたいと思っている。許して貰えると思ってしまうのは被身子に甘えているからなのか、それとも信頼しているからか。許して貰えなかったら……ううむ……。
「まずは、申し訳ない事をしたと謝らせて欲しい。この通り、すまなかった」
頭を下げられた。まぁ確かに、こやつらが被身子を巻き込んだことについては謝られようが許さん。到底許せるものではない。許される事でもないじゃろう。まして被身子をえりに変身させて、囮に使うなど言語道断。本音を言えば、儂はこやつや相澤の面を見たくない。うっかり殺しそうになるからの。
現に今も、許されるものなら殺してしまいたい。
ただ、どうにも。この時代は人殺しが禁忌とされている。いや、平安時代とて殺人は喜ばれたものでは無かった。それは事実じゃ。それでも儂は、何故悪党を殺してはならぬのかいまいち分からぬ。じゃって、生かして置くべきでは無いじゃろう? まして子供を危険に晒した輩など、儂からすれば生きている価値も無い。まぁ言ってしまえば、儂も死ぬべきじゃ。それでも今も生きているのは、儂個人のわがままでもある。あの時、結果誰も死ぬことは無かったとはいえ……被身子もえりも火傷を負った。緑谷は傷だらけになった。
それは、儂が守り切れなかったせいじゃ。儂が弱かったからじゃ。一つ目相手に苦戦などしなければ、きっとあんな事にはならなかったじゃろう。そう思うと、自分すら憎くなってきた。
「……貴様を殺してやるのは、簡単じゃ。首を刎ねて欲しいのなら、そうしてやるが?」
脳を潰してやっても良い。とにかく、こやつを殺すのは造作もない事じゃ。何も難しくはない。……んじゃけど、そんな真似をする訳にはいかんの。ここ数日の事は、これでも反省しておる。被身子を蔑ろにして、雑に扱ってしまった。生涯を添い遂げる伴侶として、愚かな真似をしてしまった。
流石に、嫌われたじゃろうか? 嫌われても仕方ないことをしたのは、儂なんじゃけども。……困ったのぅ。今から被身子無しで生きろと言われても、生きて行ける気がしない。身の回りの事は全てやって貰っているし、何より今日までずっと一緒に過ごして来たんじゃ。この十二年、被身子から離れた時間はごく僅かと言って良い。
……どうか、許して欲しいのぅ。嫌わないで欲しい。離れて欲しくない。そんなことになってしまったら、とても耐えられそうにない。……ぐぬぬ、何でこんなに不安になってしまうのか。儂にとって、被身子とはそこまで大きなものか?
……。……大きなもの、じゃ。無くてはならない人じゃ。失いたくない。愛していたいし、愛されていたい。
なら、その為にどうするべきか。どうしたら良いのか。その答えは、簡単なもので。じゃけどそれは、儂にとっては……酷く難しい事なのかもしれん。
じゃって。殺したいんじゃもん。目の前に居る男も、此処には居ない相澤も。今は塀の中か病院に居るであろう治崎じゃって、機会が有れば殺すと決めている。
「……殺されても、文句は言えない。それだけの事をしてしまった」
「そうじゃな。頼むから死んでくれ。儂は貴様の面など見たくない」
殺意を抑えるのは、どうにも疲れるのぅ。何で殺してはいけないのかと自問してしまうし、殺してしまえと心が叫んでおる。
……あぁ、早く儂の前から消えてくれ。二度と面を見せるな。
「だけどその前に、……頼皆。廻道円花さん。ありがとう、未来を捻じ曲げてくれて。
エリちゃんを守り通せたのは、治崎を捕らえることが出来たのは、君の働きによるところが大きい」
「……」
……礼などいらんわ、たわけ。儂は儂がすべき事をしようとしただけじゃ。結局治崎は殺し損ねたし、周囲に多大な迷惑を掛けてしまっただけじゃけども。
「それと、もうひとつだけ。話を聞いてくれないか?」
「遺言なら聞いてやっても良い。貴様、るみりおんの師……じゃったか? あの子に遺す言葉が有るなら聞いておいてやる」
最低限、そのくらいはしてやろう。るみりおんの師じゃから、少しは甘くしてやる。それに、こんなでも
「私の個性、予知は……未来を見る。そして予知で見た未来は、これまで決して変わることが無かった。何をしても、見てしまった未来は変わらずにやって来た」
「それで?」
「……なのに君は、何故生きている? いったい、何をした? どうして、未来を変えることが出来た?」
「知らん」
未来が変わった? 儂が変えた? そんな事は、知らんのじゃけど。実感も無い。じゃけど、何やらそれは、この男にとって見逃せないことらしいの。
……。少し、考えてみるとするか。例えば昨日、普段の儂と何が違った? 殺意に囚われていた? それはそうじゃの。しかしそんな程度の事で未来は変わらんじゃろう。
戦いを楽しまなかった? それもそうじゃけど、じゃからって未来が変わる程の事ではない。
そもそも。儂、細かい事を考えるのは得意ではない。面倒なんじゃ。
何か変わった事、変わった事……。あぁ、そう言えば。ふたつ、いつもとは違う不可解な事があった。
ひとつは、被身子が儂の個性を使ったこと。個性『変身』は声や姿形しか変わらぬ筈なのに、何故か儂の『回転』を使うことが出来た。本人曰く、何か出来そうな気がしたとの事じゃけど……。いやしかし、それだけで未来なんてものが変わるのか? まぁ、変わっとるから儂は生きてるらしいんじゃけども。
もうひとつは、儂の呪力が急に回復した事じゃ。回復したと言っても、半分程度じゃったけど。それでも領域展開をするには十分な呪力量じゃったし、お陰で治崎を……まぁ結果的に殺し損ねたんじゃけど。とにかく、捕らえることが出来たのは呪力が回復したからじゃ。そうでなければ、恐らく儂は死んでいた。あの四本腕は、個性だけではどうしようも無かったからのぅ。
いつの時代も四本腕な奴は化け物か何かなのか? いやしかし、宿儺と比べたらとても化け物などとは呼べぬが。
いつもと違ったことは、被身子と呪力のふたつ。このふたつに共通点は無い。うむ、分からん。知らん。予知とやらが外れただけではないのか? その方が納得出来るんじゃけど……。
……あ。もしかして……。いや、そんな事は無いじゃろ。有り得るのか? もしそれが有り得るのなら、確認しておかなければならぬ。
もし。もしも、じゃ。儂に変身した被身子が、呪術的に儂と同一人物として扱われていたら……?
……。……それならば、儂の呪力が回復した事に無理矢理ではあるが理屈が付けられる。
被身子が儂に変身したから、儂の呪力が半分被身子に移った。そして被身子の変身が解けたから、半分儂に戻って来た。意識を取り戻した時には、被身子の変身は解けていたからのぅ。
これは確認しておかなければならない。可及的速やかにじゃ。
……で、じゃ。これ、そのまま話したら呪術の秘匿に反してしまう。かと言って言葉を濁しては、多分こやつからの追究は続くじゃろう。ううむ、面倒じゃ。困った。朝から細かい事を考えさせおって。嫌いじゃこやつ。そもそも大嫌いじゃけど。もっと嫌いになった。もう知らん、こんな奴は……!
「……知らん! 儂は調べたい事が有るから、話は終いじゃっ」
勢い良く立ち上がって、回れ右。そして、今から被身子が居る教室に向かおう。確か二年しぃ組は……何階じゃったっけ。前に何度も足を運んだことがあるんじゃけど、すっかり忘れてしまった。まぁ、歩いてればいつか着くじゃろ。最悪
「……待ってくれ」
「は? 待たんが?」
応接室の扉に手を掛けると、後ろから声を掛けられた。無視じゃ無視。何やら深刻そうに口を開いているんじゃけど、どうせろくでもない頼み事をされるだけじゃ。言っておくが、今の儂は被身子とえりのお願い以外は聞かんからな。あ、そうじゃそうじゃ。えりに会いに行こう。今日、諸々の手続きを終えて雄英に来るそうじゃからの。
うむ、楽しみじゃ。何をして遊ぼうかのぅ。おはじき、は病院でしたから……外での遊びが良いかもしれん。竹馬、とか? 蹴鞠も捨て難い。音楽室に琵琶とか琴は置いておらんのか?
どうせなら、儂が雄英を案内してやるか。それも悪くないのぅ……!
よし。早く被身子に会おう。それからえりと遊んで……。
「頼む。こんな事を頼めるのは、君しか居ないんだ」
「……はぁ。聞くだけ聞いてやる」
「……オールマイトを、救って欲しい。もしお前に、未来を捻曲げる事が出来るのなら……! 彼を、彼こそを救ってくれ……!」
「……は?」
おおるまいとを、救う? 儂が?
……そんな必要は無いじゃろ。あの筋肉阿呆に助けが居るとは思えん。今も元気に、何処かで
「私は、彼の未来を見てしまった。
……いつか、オールマイトは惨たらしく死んでしまう。私はそれを、防ぎたいんだ」
なるほど。つまり、儂にまた未来を捻じ曲げろと言いたい訳じゃ。まぁ確かに、おおるまいとが死ぬのは困るの。あやつは死んではいかん。あやつが死ねば、緑谷が苦労することになる。今の状況では、の話じゃけど。
おおるまいとが死ぬ未来がいつ来るのかは分からぬ。そもそも儂は、ないとあいの個性を当てにしていない。未来で何かが起こるなどと言われても、信じられぬからのぅ。
と言うかじゃな。個性『予知』とやらは大した力では無いのでは? 現に儂、生きとるんじゃし。信じ難い事が起きてたかもしれんのは事実なんじゃけども。
まぁ、とにかく。おおるまいとに死なれてしまっては、緑谷が師を失うことになってしまう。あやつの為にもそれは避けれるのなら避けるべきじゃ。
……仕方ない。覚えておいてやるとしよう。緑谷の為じゃ。もっとも、儂に何が出来るとも思えぬが。
「覚えておく。期待するなよ」
さて。それでは被身子に会いに行こう。無駄に時間を取られてしまった。
まずは、確認からじゃ。儂の今後に関わってくるし、場合によっては……もう儂に変身させてはならぬのかも。もしかすると、何か変な作用が働いて被身子が儂そのものになってしまうかもしれん。まだ仔細は分からぬが、恐らく呪術的に同一人物になってしまうんじゃ。どんな事が起きてもおかしくはない。呪いってのは、そういうものなんじゃから。
あぁ、そうじゃ。その前にひとつだけやっておこう。
もう一度回れ右をして、ないとあいに向かって早足で近付く。低い机に足を乗せ、それから思いっきり拳を振りかぶる。そして。
手が痛い。呪力強化も赫鱗躍動も無しに、力任せに殴ったせいじゃ。この阿呆は殺してやりたい。その気持ちは変わらない。じゃけど、じゃけど……殺してしまったら被身子の側に居られなくなる。それが嫌じゃから、被身子から離れたくないから、今だけは我慢することにする。
「……それで許してやる。その面、二度と見せてくれるな」
殺したい。殺したい、殺したい。でもそれは、抑えなければ。また殺意に囚われて、被身子を蔑ろにするような真似はしない。
で、この後。儂は被身子が居る教室に向かおうとして、その途中で犬面の先生に盛大に吠えられた。うるさい、たわけ。誰が迷子じゃ、誰が。二年しぃ組への行き方を、うっかり忘れてしまっただけじゃっ。そんなに吠えるぐらいなら、さっさと道案内をしてくれ。儂は今、どうしても被身子に会わなければならない。確認しなければならん事が有るんじゃからっ!
円花、何とか我慢するの巻。でも内面殺したくて仕方ないですね。自他共に。トガちゃんに嫌われると想像しちゃって、しょんぼりしてます。カァイイね。まぁ自業自得なんですけども。
円花「被身子?? 儂と同一人物になってないか???」
ナイトアイ「なんかオールマイト助かるかも!!!」
呪術くん「……」
個性くん「……」
次回、回答になります。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ