待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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言葉足らず。

 

 

 

 

 

 

 犬面教師の案内で、儂は二年しぃ組の教室前にやって来た。今すぐ教室に入って被身子を連れ出したいぐらいなんじゃけど、ここまで中々辿り着けなかったせいで授業が始まってしまった。ので、仕方なく次の休み時間まで待つことにした。じゃってほら、被身子の勉強を邪魔するわけにはいかん。学力特待生は色々と大変なんじゃ。

 じゃからこうして、廊下にしゃがんで授業が終わるのを待っているんじゃけど……。ううむ、どうにも退屈じゃ。校内を散歩していても良いが、ここに戻ってくるまで時間が掛かってしまうじゃろうし。暇じゃ、暇。何か時間を潰す方法は、……無いか。どうしたものかのぅ。

 

「やぁ! こんなところで何をしてるんだい!」

 

 聞き覚えがある声で話し掛けられた。ので顔を上げたが、人の姿は見えぬ。周りを見てみたが、人影は無いのぅ。さては幻聴か? そこまで耄碌した覚えは無いんじゃけど、……歳が歳じゃからな。知らん内に呆けていてもおかしくはない。いや、肉体は十六なんじゃからそれは無いか。

 

 では、この幻聴は……? いかん、退屈過ぎて頭がおかしくなったか? 馬鹿な、脳も全身も反転術式(はんてん)で常に新鮮なのに。呆けとは反転術式(はんてん)では治せぬのか? いやいや、それは中々恐ろしいんじゃけど……。

 

「こっちさ、こっち」

 

 こっち? どっちじゃ……? あぁ、下か。

 視線を下げると、二足歩行の鼠が見えた。根津校長じゃ。相変わらず小さいのぅ。その姿で廊下なんて歩いていたら、誰かに蹴り飛ばされてしまうのでは?

 

 で。何でこんな所にこやつが居るんじゃ?

 

「おはよう廻道さん。今日は休みじゃないのかい?」

「被身子に用が有っての。じゃから、授業が終わるまで待っとるんじゃ」

「……なるほど。つまり暇してるって事だね? ちょうど良い、お願いが有るのさ!」

「やじゃ。儂はここから動かぬぞ」

 

 絶対動かぬ。どうしても、被身子に確認したい事が有るんじゃ。それを邪魔しないで欲しいのぅ。こやつの話は長いで有名じゃし、下手に時間を取られてまた待ち惚けなんて事になりたくない。

 

「いやいや、そうは言わずに。君にとっても悪い話じゃないからね」

「……何の話じゃ?」

 

 おい。勝手に膝上によじ登るな。こんな場面を被身子が見たら、儂が大変じゃろ。いい加減、儂に気軽に接すると儂が後で大変じゃって事を全員理解して欲しい。被身子の嫉妬深さを知らん連中め。末代まで呪うぞ? まったく……。

 仕方ないから校長を摘まみ上げ、手のひらの上に乗せる。すると勝手に、儂の手の中で腰を降ろした。おい、窓から放り投げるぞ貴様。被身子に見付かったら、(まこと)に放り投げるからな?

 

 よし、今のうちに窓を開けておこう。いちいち立ち上がるのも面倒じゃから、数滴だけ血を飛ばし、それで窓を開く。

 

「廻道円花さん。今、雄英は(ヴィラン)対策として全寮制になってるのは知っているね?」

「知っとる。寮暮らしじゃぞ、儂」

「確認は大事だよ。君って、雄英一のポンコツだから」

「あ゛? じゃからポンコツではないと何度言えば……!」

「さっきだって迷子になっていたのに?」

 

 ……、うるさいのぅ。別に迷子になっとらん。何処を進めば二年しぃ組に辿り着けるか、それを忘れてただけじゃ。誰じゃって、うっかり物忘れしてしまう時が有るじゃろ。と言うか、何で知っとるんじゃ。さては、犬面教師から聞いたな? そうじゃろ貴様。なぁ、そうなんじゃろ? 握り潰すぞ貴様ぁ……!

 

「そんな我が校なんだけど、文化祭を開催したい。二度も(ヴィラン)連合の襲撃が有ったことで、雄英のセキュリティは警察からも世間からも疑問視されててね。今、開催するかしないかでくっそ揉めてる」

 

 ……文化祭? あぁ、学校でやる祭りか。中学生の頃にやった覚えがある。高校生になってもやるのか……。まぁ、悪くないのぅ。被身子と逢瀬(でえと)出来るんじゃし。

 中学の頃の文化祭は……まぁまぁ大変じゃったな。ずっと被身子に振り回されてた記憶しかない。今年もそうなるじゃろう。別に、嫌ではないんじゃけども。

 

「僕は、文化祭を是非開催したい。その為に協力して欲しい。もちろん、君も文化祭を楽しめるように便宜を図る。

 若者の青春はね、誰も取り上げることが出来ないものなのさ」

「……で? 儂に何をさせたいんじゃ?」

「そんなに難しい事じゃないよ。文化祭の前日、及び当日の二日間。呪術総監部からの依頼を断って欲しいのさ」

「つまり、儂を使いたいと?」

「呪霊に襲撃された場合の対抗策としてね。無論、君に頼るのは最終手段さ」

 

 なるほど。だから儂に総監部からの依頼を断れと。何かあった時に儂が寝てる、なんて事態を避けたいのじゃろう。この話を断る理由は、実はあまり無い。昨日までの埋め合わせを、被身子にしなければならぬじゃろうし。実際そうするつもりではあるからの。それで許して貰えるかは、分からぬが。

 とは言え、根津校長の提案をそのまま呪術総監部に伝えると……何かと面倒かもしれん。向こうは向こうで儂を使いたいからのぅ。何であっちもこっちも儂を引っ張ろうとするんじゃ。儂の体はひとつしか無いんじゃけどなぁ。

 何より今は、被身子とえりを優先すると決めている。

 

「……まぁ、せいぜい総監部と揉めてくれ。儂はどうなっても知らん」

 

 根津校長や総監部からの依頼が有ろうと無かろうと、文化祭は被身子と過ごすつもりじゃ。儂のやる事は特に変わらん訳じゃし。そう考えると、こやつのすこぶるどうでも良い。

 そんな事よりも、早く被身子に会いたい。あやつの変身について、詳しく知っておかなければ。

 

「好きにしろって解釈するよ?」

「好きにしろって言っとるんじゃ。話は終わりか?」

「いや、もうひとつ。せっかくだから、勉強していこうか! 君は特に英語の成績が悪かったね!」

 

 嫌じゃ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 授業終了を告げる、撞鐘(ちゃいむ)が鳴り響いた。ので、儂の手の上でひたすら英語の授業をしていた根津校長を廊下に放り投げ、儂は教室の扉を勢い良く開く。大きな音がした。いかん、力を込め過ぎたか。もしかしたら扉が壊れたか? いや、そんな事に構っている場合ではない。今は、確認しなければならん事が有るんじゃっ。

 

「ま、円花ちゃん……!?」

 

 お、居た。何故か被身子は驚いた顔をしている。まぁ急に教室にやって来たんじゃから、そうじゃろうな。儂も被身子が急にやって来たら驚くし。

 被身子のくらすめえと達の視線が一斉に儂に向いたが、これも気にしてる場合ではない。そんな事より、今すぐ確認すべき事を確認しなければ。

 

 遠慮無く教室に踏み入り、儂は被身子が居る教室の奥へ。まだ椅子に座っているこやつの前に立ち、被身子の両肩に手を置く。そして。

 

「被身子、脱げ」

「えっ」

「良いから脱ぐんじゃ。ほら、さっさと裸になれ」

「えっ、え……っ!?」

 

 何を困惑しとるんじゃ。らしくない。早く服を脱がぬか。お主、儂に変身する時はいつもそうじゃろうが。変身する際、いちいち裸にならねばならぬとは不便な力じゃの。まぁ、同じ服を用意する手間が省けてるんじゃから、実は利点と言えば利点……なのか?

 いや、どちらでも良い。とにかく、何をもたもたしとるんじゃ貴様。仕方ない、儂が脱がすか。

 

「ま、待って円花ちゃんっ。そんな人前で、急になんて……」

「何でじゃ。いつも人前でしとるじゃろ?」

 

 良いから、早く儂に化けんか。かあでぃがんも制服も脱がしてやるから、ほら早くっ。あ、そうじゃ。儂の血が必要か。忘れるところじゃった。取り敢えず被身子の口に儂の指を突っ込んで、噎せないように気を付けながら少しずつ血を出していく。

 

「ま、まひょはひゃ……!?」

「ちょい、すとーっぷ」

「ぐえっ。誰じゃ貴様っ!」

 

 誰かが儂の後頭部を叩いた。ので、後ろを見ると……知らん奴じゃ。被身子のくらすめえとじゃろう。何じゃこやつ、派手な髪色をして……。

 

「なにしようとしてるの?」

「何って、被身子を脱がそうとしてるんじゃけど!?」

「なんで?」

「服を脱がんと変身出来ぬからじゃっ!」

「……ちゅぴっ。そう言うことですか……。もぅ、急に求められたのかと思っちゃいましたよぉ」

 

 おい。音を立てて指を口から抜くな。まったく行儀が悪い。そんな嫁にした覚えは無いんじゃけど? 人前でぐらいもう少ししっかりして欲しいものじゃ。儂の嫁なんじゃから。

 で。何でこの派手髪は儂の頭を叩いた? 切島みたいな髪色をしおって。さては切島の姉か何かか?

 

「ことばたらず?」

「……な、時もあるのです」

「ふーん。どーりで……」

 

 おいこら。今度は何なんじゃ貴様。人を睨め回しおって。喧嘩でも売っとるのか? 買うぞ? 儂に勝てると思うなよ??

 と言うかじゃなお主。(まこと)に友達なんておったのか……。そうか、居たのか……。

 

「ええっと、円花ちゃん。変身すれば良いんですか?」

「うむ、してくれ。今すぐ。今」

「……? はい。……これで良いか?」

 

 被身子が儂に変身した。その時、儂の呪力が半分減った。

 

 ……(まこと)に? そんな事が有り得るのか? いやしかし、確かに儂の呪力は半分減った。急に呪力が減ってしまった。

 

「……変身、解いてくれ」

「?? うむ……。……ん、はい」

 

 被身子が、元の姿に戻った。その瞬間、半分減っていた儂の呪力が元に戻った。

 

 ……おいおい。これは、とんでもない話じゃの……。

 

 どうやら被身子は、儂に変身すると呪術的に儂と同一人物として扱われるらしい。信じ難い事じゃけど、実際に儂の呪力が減ったり増えたりしたんじゃ。理屈は一切分からぬが、事実じゃ。まさかそんな事が起こるとはのぅ。流石に驚かされた。

 ただ、これで合点がいった。あの時呪力が回復していたのは、儂が気を失ってる間に被身子の変身が解けたから。となると、あの時は呪力が半分も減っていたのか。自身の事なのに、まるで気が付かなかったのぅ……。昨日までの儂は酷く視野が狭まっていた自覚があるが、じゃからってこんな重大な事に気が付かなかったとは。不覚じゃ不覚。下手をすれば、これが原因で全滅していた。

 

 そして、被身子のお陰で助かったのも事実じゃろう。……そうか、知らず知らずの内に助けられていたのか。散々迷惑を掛けておきながら、助けられた事にも気付かずに居たとは……。

 

 ううむ、我ながら情けない……。

 でもでもじゃって、こんな事になるとは誰も思わんじゃろう?

 

 ……いや、言い訳はいい。とにかく真実は、儂が被身子に助けられたと言う事のみ。

 

「……昨日儂に変身した時、何か普段と違うことは有ったか?」

「え? んー……、なんか……いつもより円花ちゃんになれたなってあの時は思ったのです。だから個性も使えるんだろうなって思って、試してみたら使えたんですけど……」

 

 なるほど。よく分からん。よく分からんが、変身中の被身子は確かに儂と同一人物扱いじゃ。なら、儂の個性だって使えてもおかしくないじゃろう。こやつを呪術師にするつもりなどまったく無いんじゃけど、後で呪力を見れるかどうか、感じられるかどうか試してみるとしよう。この現象については、詳しく知っておかなければ駄目じゃ。

 しかし、被身子にどんな呪術的作用が加わるかも分からん。あまり変身させるのは良くないかもしれん。

 

 とにかく。とにかく、じゃ。こんな訳の分からん事が起きていたんじゃ。もしやこのせいで、未来が変わった……とか?

 

 ううむ、分からん。未来なんて、誰も分からないものじゃ。予測はある程度出来るかもしれぬが、それも確実とは決して言えない。

 

「……円花ちゃん?」

「ん……いや、何でもない。ありがとう」

「……? はい……」

 

 うむ。もう良い。もう細かい事を考えるのは疲れた。やはり儂には向いていない。世の中、もう少しざっくりしたものにならんかのぅ。ならんか。いつの時代じゃって、複雑なものなんじゃし。まぁとにかく、これは伝えておこうかの。

 

 

「被身子。愛してる」

「……もぅ。急に何なんですかぁ。でも、……んふふっ」

 

 何じゃもう。そんな嬉しそうに笑いおって。最近は言うようにしとるじゃろ、まったく。

 

 

「私も、愛してます!」

 

 

 あ、いかん。気恥ずかしくなってきた。そんな風に笑うのは、狡じゃ狡っ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







トガちゃんが回転を使えた理由は呪術的に同一人物判定されるようになったからです。後は愛ですよ愛。
また、同一人物判定に伴い、円花の呪力は半減したり元に戻ったりします。つまりトガちゃんは呪術界のバグ枠(?)になりました。だから因果(予知)はぶっ壊れて円花生存となります。本来は呪力切れ+重傷で戦闘継続でしたので、四本腕治崎に殺されてます。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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