待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
えりと遊び呆けること、数時間。遊び疲れてしまったえりは、今は儂の膝を枕に
あれで許すことにしてやったんじゃ。被身子に感謝するんじゃな。貴様もじゃ相澤。被身子に足を向けて寝れると思うな。今後被身子を抑止出来るとも思うなよ。儂の許嫁に指図して良いのは、此処では儂だけなんじゃ。……強いて言うなら、じゃけど。
と言うかじゃな。何でえりと楽しい時間を過ごした後で、嫌いな奴の顔を見なければならぬ? ないとあい共々、儂の前に面を見せるな。やはり普通科に編入するべきかもしれん。貴様等
「……色々聞いたよ。ナイトアイを殴って、鼻を折ったんだってな?」
相澤が、えりを起こさぬよう小声で話す。……そうか、鼻が折れてたのか。ふんっ、軟弱な奴じゃ。呪力も術式も使っとらん儂に殴られて骨折とは。何と情けない。まぁ渾身の力で殴ったのは事実なんじゃけども。
「それが何じゃ?」
「お前が殴りたくなる気持ちは、……分かるよ。渡我を巻き込んだのは俺達だ。それについてはすまないと思ってる。ただ、色々棚上げして言わせて貰うんだが……」
「んぅ……」
っと。えりが愚図った。片耳を塞いで、頭を撫でよう。ほれほれ、安心すると良い。満足するまで寝てても良いんじゃぞ? その間、儂は枕になっておるし。こうして子守りをするなんて、いつ以来じゃろうか。子供はかぁいいのぅ。眺めてるだけでも心が癒される。もはら被身子とは別の方向で愛おしい。……浮気かこれ? いや、浮気などでは無いと思うんじゃが……。
「あの時のお前は、何をしでかすか分からない危うさが有った。情けない話、それを止めれるとしたら渡我しかいないと考えた」
「じゃから、被身子を頼ったと? 囮にしたと?」
「……そう言うことになる」
「殺すぞ貴様。おいこら、殺すぞ」
儂を止める為に被身子を利用した? ふざけるな。まっことふざけるな。戯言を口にするのもいい加減にして欲しいのぅ。儂の機嫌を損ねたいのなら、それはもう十分に果たされた。これ以上儂の気に障ると言うのであれば、……分かっとるんじゃろうな貴様。
あぁ、いかん。抑えろ、抑えろ。被身子の側に居続ける為に、殺しは無しじゃ。暴力も、するべきではない。分かっとる、分かっとるんじゃよ。それでも、それでも……っ。
「円花ちゃん! ただいまなのです!!」
相澤を睨み付けていると、それはもう上機嫌な被身子が帰って来た。おい、えりが寝てるんじゃから少し静かに……。いや、良いか。今は被身子の顔が見れて、嬉しく思う。何やらこやつは浮かれているようじゃが、多分今夜の事を考えているからじゃ。楽しみを前に気分が上がるのは当然の事じゃ。大目に見てやろう。……へんたいっ。
「……って、相澤先生も円花ちゃんもどうしたんです?」
「……渡我。すまないが廻道と話したい。今は席を外してくれ」
「え? 嫌です。絶対、ヤ。今日のトガは円花ちゃんにべったりするので、誰にも貸しません。
……それに、お話は当面止めといた方が良いのです。今の円花ちゃん、相澤先生と……多分ヒーローも大嫌いですので」
……ううむ。何で一目見ただけで分かるんじゃ。どうしてそこまで儂の腹の内を見透かせるのか。解せぬ。解せぬけども、悪い気はしない。被身子が見てくれてると思うだけで、なんじゃか嬉しい。どうも今朝から、調子が変じゃ。被身子を前にすると、こう……むず痒くなると言うか、落ち着かなくなると言うか。
あぁ、もう。何もかも放り投げて、被身子と二人で居たい。なんじゃってこんなに……、ぐぬぬ……。
「ぁ、エリちゃん来てたんですね。誰がお世話するんですか?」
「……基本的には俺が。後は教師数名で」
「えぇ……? 相澤先生が子守りとか……悪影響じゃ」
「おい」
「いやぁだって……身なり汚いですし。もう少し清潔感を持ったら良いと思うんですけど。そんなんじゃエリちゃんと出歩いたら職質なのです」
「……」
まぁ、確かに。相澤の身なりでは、えりを連れ歩いていたら不審者と勘違いされてもおかしくない。警察に声を掛けられずに雄英まで帰って来れたのは、もしかすると奇跡か何かじゃ。良いぞ被身子、そんな奴にはもっともっと言ってやれ。良い、儂が許す。
「……身なりは気を付けるよ。あまり合理的には思えんが」
「は? お洒落は大事なのです。エリちゃんはカァイイんですから、エリちゃんに負けないくらい身なりを整えてください。職質されたいならご自由に!」
「ぉ、おう……」
圧倒されている。被身子の前でそんな口振りをするから、そうなるんじゃぞ。良い気味じゃ。ふふん。
被身子、もっと言ってやれ。やってやれ。何なら今日も隠し持ってる刃物で刺しても……。
……流石に、それは駄目じゃの。やるなら言葉でやるんじゃっ。
なんて、思っていたら。
「ん、んん……?」
えりが起きてしまった。うっすらと目を開いたえりは、しばらく何処かを眺めた後、ゆっくりと体を起こしていく。
「あ、こんにちはエリちゃん。よく眠れました? 円花ちゃんの膝って、結構良い枕ですよねぇ」
「……、こんにちは……。ひみこ、さん」
「そうそう、おやつ食べますか? 昨夜、林檎でお菓子作ったんですけど」
「林檎……」
「いや渡我、悪いが……」
「じゃあ後で食べられるよう、お土産にしますね。ちょっと待っててくださいっ」
……被身子は鞄を儂の横に放り投げて、騒々しく食堂へと駆けていった。落ち着きがない奴め。そんな姿をつい目で追っていると、えりが
「エリちゃん。そろそろ行こうか。新しいお部屋を用意してあるから」
「……うん」
「はい! 持ってきたのです! 相澤先生、これ後でエリちゃんに食べさせてくださいねっ!」
被身子が直ぐに戻ってきた。手には、赤い布巾が掛かった編み籠を持っておる。甘い匂いが漂っているのは気のせいではない。それを押し付けられた相澤は、少し戸惑いながらもしっかり受け取った。えりは籠の中身が気になるようで、視線が釘付けになっている。儂も中身が気になる。この匂いは……焼き菓子? いや、たると……とか言うやつじゃ。間違いない。
そう言えば被身子、儂のおやつは? なぁ、儂のは? それ、儂も食べたいんじゃけどっ!
「じゃあエリちゃん、また今度。いつでも遊びに来てくださいね。おやつ作って、待ってますから」
「……うん。遊びに、くる」
「えへへぇ。またねエリちゃんっ」
えりの事を抱き締めて、被身子は笑った。いつものように、では無いんじゃけども。それでも、笑顔は笑顔じゃ。抱き締められたえりは少し困惑しているようじゃの。この手の事に慣れていないように見える。
……いかん。もしかして被身子が抱き締めるのは、何かこう、悪影響なのでは……?
そんな事は無い、よな? 誰か無いって言ってくれ。
そんなこんなで。えりは相澤に連れられて、寮を去っていった。相澤なんぞに任せて大丈夫なのか? 儂は不安じゃぞ。
「まーどーかー、ちゃんっ!」
「んぐっ」
「ただいまなのです。良い子で留守番してましたか? エリちゃんに粗相はしてないですよね? あとぉ、トガにも膝枕してくださいっ」
「ん、んぐぐ……っ」
くっ、苦しい……! おい、待て被身子っ。抱き締めるのは構わんし、飛び付くなとまでは言わんっ。むしろ望むところなんじゃけどもっ、顔に胸を押し付けるのは止さぬか! 息が、息が詰まる……! さては窒息死させるつもりか貴様っ!?
「んふふっ。二人きり、ですねぇ……」
そうじゃけど。まだ寮には、誰も帰って来ておらん。その内くらすめえと達の誰かが帰ってくるとは思うが、もう少しぐらいは二人きりで居られるじゃろう。ところで、何で
お、おい。被身子……っ。
「おやつの前に、ヨリくんを食べたいなぁ……。なんて……♡」
……へんたい。馬鹿、阿呆っ。たわけ!
し、仕方ないのぅ。そんなに求めるのなら、うむ……仕方ない。仕方ない仕方ない。じゃから、ほら。別に良いぞ? 好きにしてくれて……。
両腕を、被身子の首に回す。目を合わせてじっと見詰めると被身子は頬を染めて、にたりと笑った。完全に肉食獣のそれじゃ。草食獣になったつもりは無いんじゃけど、草食獣の気持ちが分かった気がするのぅ。
被身子が、徐々に近付いてくる。から、目を閉じて待つ。服が、はだけさせられた。あぁ、始まってしまうんじゃなぁ。こんなところで。でもまぁ、今日ぐらいは良いか。今すぐ誰かが帰ってくるとは思えぬし、少しぐらいなら……。
「あーー!! ちょっ、二人とも此処で何してるの!? 何してるのかなぁ!?」
「ちょっ……!? 何を始めようとしてんの!? 幾らなんでもヤバイって!!」
「男子ー! まだ入って来ないで! 廻道と渡我先輩がしでかしちゃってるから!!」
「廻道さん! 渡我先輩! 相思相愛なのは素敵な事ですが、流石に節度と言うものを……!!」
……空気の読めん奴等め。そこは静かに回れ右をして欲しかったんじゃけど、これも仕方ないか。居間で始めようとしてたのは儂等じゃし。目蓋を開いて被身子の目を見ると、軽く
「……お部屋、戻ります? それともぉ……見せ付けちゃったり……?」
「……どちらでも。好きにしたら良い」
「んふふっ、もぅ……円花ちゃんはえっちなのです♡」
「そうさせたのはお主じゃろ。責任取れ」
「もっちろん。じゃあ、たぁっぷり気持ち良くして……」
「ちょぉおおっと待ったあ!! はい確保! 渡我先輩確保ーー!!」
「廻道もこっち来て。流石に離れて!」
……ぐぬぬ。邪魔されてしまった。被身子は葉隠によって儂から引き離されて、儂は耳郎に引っ張られた。で、猛烈な勢いで芦戸が走って来たと思ったら儂等は割りと勢い良く頭を叩かれた。
「ちょっ、透ちゃんっ。離してくださいっ、今からヤることヤるのですっ」
「うんうん、そういうのは部屋で二人っきりの時にね!?」
「廻道、あんた渡我先輩を甘やかし過ぎじゃない? たまには厳しくしないと……! いや、渡我先輩が廻道を甘やかし過ぎだったり……?」
「ヤオモモ、牢屋作って牢屋! 二人とも反省するまで閉じ込めておくから!」
「牢屋……、なるほど! 座敷牢でしょうか!? お任せください、少々時間は掛かりますが……!」
ううむ。騒々しいの……。何でこんなに騒々しくなってしまったんじゃ。いやまぁ、儂が居間で被身子に好き勝手させようとしたのが原因なのは、分かっとるんじゃけど。
でもでも、じゃって。今日はそういう気分じゃったと言うか、拒否したくなかったと言うか……。別に甘やかしては居ないんじゃ。ただその、……その。今は、何でも許したいだけで……。
で、この後。儂と被身子は八百万謹製の座敷牢に被身子と一緒に放り込まれた。格子の向こう側に立つ
説教の内容は、まったく頭に入らなかった。じゃって被身子が儂にちょっかいを掛けてくるし、儂も仕返しとしてちょっかいを掛けたし。手を繋がれたり、頬をつついたり。
……被身子が、好きなんじゃもん。離れたくない。嫌われたくない。いつまでも愛し合っていたい。じゃから、じゃから。
良いよな? もう、人目を憚らず愛し合ったって。
円花、自重を失うの巻。
次回より溺愛期に突入しますので、人前でも結構派手にイチャイチャするのが文化祭編です。特待生剥奪が懸かったチキンレースが始まったとも言います。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ