待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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彼等の軋轢。寝落ち円花

 

 

 

 

 

「ちょっ、廻道っ。ヒーロー科辞めるってマジ!?」

 

 被身子と指を絡めるように手を繋いで、ついでに被身子の腕を抱きながら保健室から教室に戻ると、騒々しく出迎えられた。まずは芦戸に。

 

「考え直さない? 仮免取ったのに辞めるの、勿体無いじゃん」

「廻道! 辞めるなんて言うなよ……! 俺まだ、殴られ足りねーよ……!」

 

 続いて耳郎に、切島が詰め寄ってくる。それ以外のくらすめえと達も、そしてまだ教壇に立っている相澤なんかも儂を見詰めて、儂の言葉を待っているようじゃ。儂の隣に立つ被身子も、流石に目を丸くしておる。

 

 ……いや、おい。確かに儂は英雄(ひいろお)科を辞めてしまおうか考えていた。でもそれは考えてる段階でしかなく、まだ実際に辞めると決めたわけじゃない。そもそも被身子にすら話してないんじゃぞ。それを何で貴様等が知っているのか。謎じゃ。さては心を読む個性か? いや、そんな個性を持った輩はくらすめえとに居ない。であれば……。んん……? 何で知っとるんじゃ。おかしい。まっこと、おかしい。

 

 まぁ、でも。知られてしまったのなら、隠しておく理由は特には無いか。

 

「辞めようか考えてるところじゃ。まだ辞めると、決めたわけじゃない」

「そ、そうなの……!?」

「まぁ場合によっては即座に辞めるんじゃけど。……おい、相澤。普通科でも、ひいろお免許は取れるものなのか?」

 

 これだけが気になるんじゃ。分かり次第、直ぐに行動に移してしまおう。普通科に移るとなると、色々手続きがあるじゃろうし。と言うか、まず両親に連絡しなくてはな。盛大に叱られる気がするが、儂の気持ちは変わらぬ。辞めれそうなら辞める、辞めれなさそうなら辞めない。たったそれだけの事じゃ。

 じゃからのぅ、騒ぐのは止さぬか。喧しい。鬱陶しい。

 

 取り敢えず、教壇の相澤がどう答えるのか待つとする。で、返答や如何に?

 

「……受験自体は可能だ。一般人がヒーローに転職する事も有るからな。とは言え、ヒーロー科を通らないで受ける試験は合格率が低い。簡単じゃないぞ」

「そうか。なら近い内に普通科にでも移籍するから、そのつもりで進め……」

「ほんとに辞めちゃうの!!?」

「いや、廻道。何でだよ……! ぜってー凄いヒーローなれんのに……!」

「そーだそーだ! オイラまだ、挟まってねぇんだけど!? せめてオイラを挟んでから普通科に行ってくれよぉ!!」

 

 ああ、もう。喧しいの貴様等……。葉隠や上鳴まで押し寄せてきた。峰田は遠くで訳分からん事をほざいているが、とにかく儂に英雄(ひいろお)科を辞められると困るらしいの。

 

「待ったみんな! まず廻道くんの事情を聞こう! 引き止めるのはそれからだ!」

「そうですわ。家庭内のご都合かもしれませんし……。私達の一存で引き止めるのは……」

 

 ううむ……。何でこんな面倒な事になってるんじゃ? 別に儂が英雄(ひいろお)科を辞めてしまっても、誰も困らないと思うんじゃけどな。仮免は持ってるから、呪術師としての活動は特に制限されてないわけじゃし。何より、こればっかりは独りでも続けていくつもりじゃからの。

 

「……ヒーロー科、辞めちゃうんですか?」

「辞めたら嫌か?」

「んー、全然。円花ちゃんがしたい事なら、トガは何だって協力しますし、受け入れるので! あ。でもその場合って、寮はどうなるんですかねぇ……。今度は普通科の寮で一緒に暮らせるんです?」

 

 被身子だけは、儂を引き止めようとはしない。むしろ背中を押してくれるぐらいじゃ。それが、嬉しいのぅ。やはり、被身子なんじゃよなぁ。うむ、被身子じゃ被身子。もはや儂の事を分かってくれるのは、被身子だけで良いんじゃ。

 それはそれとして。確かに寮の事は気になるの。また一緒の寮で、一緒の部屋が良い。寝不足になる日はどんどん増えるんじゃろうけど、それはそれで。別々の寮と部屋、なんて事態だけは勘弁して欲しいところじゃが……。

 

「……と言うか、渡我。さも当然のように入ってくるな。授業中だぞ」

「あ、私は気にしないで授業を進めてください。静かに円花ちゃんとイチャイチャしてるので!」

「おい」

「それで、円花ちゃん。五限目はどんな授業してたんですか?」

「……ふたつに分かれて、人殺しの是非を討論しとっただけじゃ。儂は途中で抜けたがの」

 

 あれはまったく無駄な時間じゃった。こやつ等は殺さない、儂は殺す。言ってしまえばそれだけの話なのに、何でわざわざ議論する必要が有るのかよく分からん。舎弟はあの後、独りで十九人を相手に議論しておったのじゃろうか?

 椅子に座ろうとすると、まず先に被身子が腰掛けた。で、膝上を軽く叩いておる。……その上に腰掛けろと? まったく、仕方ないのぅ。椅子代わりにしてやろう。

 被身子の膝上に、横向きに腰掛けると抱き締められた。ついでに頭も撫でてくる。おい、止さぬか。そんな風にされたら寝てしまうじゃろ。今は授業を受ける気分じゃないとは言え、こうして教室に戻って来たからにはじゃな……。んん……。

 

「寝ちゃってて良いですよ? 代わりにトガが代弁しとくのでっ」

 

 都合の良い事を囁かれた。こやつ、さては儂を寝かし付けるつもりじゃな? 何でお主はそうやって儂を寝かせようとするのか。あぁ、駄目じゃ駄目じゃ。昼寝で消えた筈の眠気が、また出て来てしまった。目蓋が重いんじゃ。ううむ……。被身子の阿保、たわけ……。むぐむぐ……。

 しかし、しかしじゃの。ここで寝る訳にはいかんのじゃ。後で叱られてしまうじゃろ。じゃから、そうやって頭を撫でるのは止さぬか。まったく……。

 

「……はぁ。大人しくしてろよ。授業を邪魔するなら締め出すからな」

「はーい。静かにしてまーす」

 

 ……まことに? お主、(まこと)に静かに出来るのか? どうせろくでもない事をして、周囲を振り回すのではないのか? 儂はそんな気がしてならんのじゃけども……。

 まぁ、良いか。また眠くなって来たしの。幾ら被身子が愛しいからって、やはり朝まで求め合うのは良くないのぅ。朝までするのは翌日が休みの時とか、そういう時にじゃな……。いやしかし、突発的にしたくなってしまう時があるのが厄介じゃ。何とか自制しなければ。でもでもじゃって、したいものはしたいし。被身子は絶対我慢などしないし。それなら、別に儂も我慢する必要は……。

 

「……さて、授業の続きだ。先も言った通り、ヒーローは殺害を視野には入れない。とは言え、凶悪犯罪に関わっている内に命の取捨選択を迫られる時がある。

 この場合の対処法は現場での経験から来るものだが……お前達には早い段階から教えておく。例えば、これは難しいケースだが―――」

 

 ……。……相澤が授業をしている。何やら色々と話しているようじゃけど、まったく頭に入ってこない。どうやら被身子は話に耳を傾けているようじゃけど、この授業で得た知識はこやつの人生で何の役にも立たぬじゃろう。何なら、儂の役に立つことも無いかもしれん。

 ううむ、目蓋が重い。徐々に意識が薄れてきて、もう何も考えたくない。このまま目を閉じてしまえば、またぐっすり寝れるじゃろう。……ひみこぉ、夜になったら起こしてくれ……。むにゃ……。

 

 

 

 

 

 

 







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