待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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彼等の軋轢。黒キ影、赤イ血

 

 

 

 

 

「っ、止せ! ダークシャドウ!!」

 

 常闇の悲鳴が聞こると同時。巨大化しただあくしゃどうが、儂に向かって腕を薙ぎ払った。 儂に対して思いの丈をぶつけた結果、感情が昂ったせいで常闇の個性は暴走してしまったようじゃ。

 振り下ろされる巨腕を前に、まず呪力強化と赫鱗躍動・載の合わせ技で身体能力を限界まで引き上げる。今のだあくしゃどうから見たら小枝にすら見えないであろう腕で、取り敢えず受けて止めてみることにする。が。

 

「……ちっ」

 

 案の定、踏ん張ることは出来ず吹き飛ばされてしまった。空中で体勢を整え、何とか太い枝の上に着地すると……今度は巨拳が突き出される。速度はそれなり、とは言え動体視力を高めた儂からすればまだまだ遅い。跳んで避けるのは……残念ながら止した方が良いじゃろう。後ろに跳ぼうが左右に跳ぼうが、迫る拳が巨大過ぎて傷ひとつなく避けるのは面倒じゃ。となれば、前に跳ぶか。

 

「静まれ、静まれ……っ! 頼む……!」

 

 儂に向かって突き出された巨拳を前方斜め上へと跳躍することで避ける。そしてだあくしゃどうの腕の上を駆ける。威力も範囲も中々じゃ。中々じゃけど、まだまだ鈍い。常闇が、何とかだあくしゃどうを抑え込もうとしているからじゃろうか。まったく、それではつまらんのぅ。もっと、儂を殺すつもりで来い。でなければ、儂に並び立つなど到底不可能じゃぞ?

 

 だあくしゃどうの腕、そして肩……と思われる部分を駆け抜け、跳ぶ。狙いは、随分と禍々しくなった、だあくしゃどうの面じゃ。拳を振りかぶり、狙いを定める。そして。

 

「どっ、こいせぇ!!」

 

 全力で、殴り抜く!

 

 ……手応えは、あった。現にだあくしゃどうの顔が大きく横に動いたからの。が、それだけじゃ。多少は怯んだようじゃが、まだまだ健在。本気で殴ったんじゃけどな。本気の拳に耐えるとは、やりおる。

 だあくしゃどうと、目が合った。次の瞬間、まだ宙に体が残っている儂を叩き落とそうと拳が迫る。あ、これはいかん。

 迫る拳に向かって腕を交差させ、何とか防御姿勢を取る。が、ここは空中じゃ。踏ん張ることは出来ぬ。そもそも、地面に居たとしても今のだあくしゃどうの攻撃を受け止めることは出来んのじゃけど。やはり体が軽いと、肉弾戦はどうしても不利じゃの。呪力強化と赫鱗躍動でどうにか誤魔化せる事もあるが、相手が規格外の大きさや腕力を持ってるとどうしてもな……。

 

「廻道っっ!!!」

 

 また、体が吹き飛ばされた。今度は運悪く、何度も体が木々にぶつかる。相当な勢いで吹き飛ばされてしまった。呪力強化していなければ、死んでいたかもしれん。まったくこやつめ、儂じゃ無かったら挽き肉じゃったぞ!

 

「げほ……っ、やってくれたな……!」

 

 殴り合いでは、どうにも部が悪い。体格の差が覆せそうにない。多少怯ませることぐらいは出来るが、正面からの力比べとなると不利じゃ。となれば、近接戦は諦めたと思わせるか。

 背中に痛みを感じつつも、立ち上がる。その場で両手を叩き合わせると、その音に反応してだあくしゃどうが拳を地面に叩き付けながら迫って来た。が、少し方向が違う気がするの。音に反応している、のか? 周囲が暗くなっているからか、それとも常闇が抑え込もうとしているからか。何にせよ、目で物を見ていない可能性が有る。ならば……。

 

「おいこっちじゃ! 常闇、抗わずに好きにさせとけ!」

 

 百斂を進めつつ、叫ぶ。だあくしゃどうは一瞬動きを止め、儂を見た。そして猛然と、迫ってくる。やはり音のようじゃ。目は殆んど見えていないらしいの。

 木々を薙ぎ倒しながら進んでくるだあくしゃどうに向けて、加減は一切せずに穿血を放つ。が。

 

「マ、ドカァアア!!」

 

 顔面に穿血を受けて、それでも動きを止めない。これには、驚かされた。とは言え足を止めてるわけにはいかぬ。あの巨拳が、再び振り上げられた。今度は叩き潰すつもりのようじゃ。受け止めようとするのは、流石に無理か? 仕方ない、避けるとするか。

 今度は、全力で背後に跳ぶ。木々に邪魔されては危険じゃから、苅祓を背後に向かって飛ばしつつじゃ。

 

 目の前に、拳が叩き付けられた。地面が揺れる、爆発でも起きたのかと思う程、拳の周囲に土が飛び散る。一瞬、前が見えなくなった。と思ったら、横から物凄い風切り音がしたのでその場で地面に伏せる。儂の真上を、巨腕が通り過ぎた。

 うむ、中々じゃ。中々に悪くない。欲を言えばもう少し精密に、そして速く動いてくれれば文句無しなんじゃけど……。まぁそこは、将来に期待しよう。

 

 さて。どうやって止めるかのぅ。穿血が効かぬとなると、中々に苦労することになる。あの大きさを赤縛で縛るのは止した方が良いじゃろう。やれば出来るとは思うが、流石に血液が足らん筈じゃ。ならば、ひとまずは苅祓を主に組み立ててみよう。

 

「ダークシャドウっ、頼む! 止まってくれ!!」

「オ、ァ、アア ア ア ッ ッ」

「ダークシャドウ!!!」

 

 常闇が、どうにか抗おうとしている。だあくしゃどうを抑え込もうとしているようじゃが、上手く行ってはいないようじゃ。ううむ、余計な真似を。そんな真似しなくても、何も問題はない。二度も吹き飛ばされれば、分かる。今のだあくしゃどうでも、儂を殺すことはまだ出来ぬ。

 

「じゃからっ! 好きにさせておけ!!」

 

 苅祓を放ちながら、叫んで駆ける。今のだあくしゃどうは巨体じゃからの。生半可に離れていると、かえって危ない。じゃから、まずは近付くことにする。この巨体相手に懐に潜り込んで、何が出来るかは分からんが……まずは近付く。

 腕が滅茶苦茶に振り下ろされるが、狙いが定まっていない。周囲からとんだ轟音がするし、地面は連続して揺れるが、何も問題ない。

 距離を詰め、懐に潜り込んだ。が、どうしたものかの。取り敢えず……腹に居る常闇を殴って気絶させるか。それで止まらなければ、また考える。

 

「常闇、歯を食い縛れ!」

「……!!」

「せぇ、のお!!」

 

 呪力は程々に。赫鱗躍動・載は切り、走る勢いのまま常闇の面を、殴るっ。

 鈍い音がした。同時に常闇の体から力が抜け、こやつは気を失った。そして、だあくしゃどうは……。

 

「ギャッ!!」

 

 悲鳴を上げ、動きを止めた。かと思いきや、勢い良く萎んでいく。どうやら暴走は収まったようじゃの。常闇を気絶させれば止まるのか。次にこういう機会が無いとは限らぬし、覚えておこう。

 にしても、じゃ。周囲が滅茶苦茶になってしまった。遠くで誰かが叫んでいるのが聞こえる。目を向けてみると、焦った顔をした緑谷やら轟が個性を使いながらこちらに向かって来ているようじゃ。これだけ派手に暴れていたからの。誰かが気付いてもおかしくはないか。

 

 ところで、緑谷。貴様、何故被身子を背負っているんじゃ? まったく、儂の許嫁じゃぞ。運ぶにしても、もっと丁重にじゃなぁ……。

 

「円花ちゃん!」

「廻道さん! 常闇く、うわっ!? ちょっ!?」

「廻道、常闇っ!」

 

 おぐっ。こ、こら被身子……! 勢いのまま抱き付いて来るなっ。踏ん張れなくて倒れたじゃろっ。頭を打つと痛いんじゃぞっ!

 

 ……はぁ、まったく。体が軽いと色々面倒じゃ。体重を増やさなければ。いやしかし、食べても食べても太らないんじゃよなぁ、儂……。

 取り敢えず被身子を落ち着かせて、それから……事情を話すとするか。儂が常闇と喧嘩した、なんて勘違いされたら面倒じゃし。

 

 よし、そうと決まればじゃな……。

 

「ほら被身子。儂は大丈夫じゃから心配するな」

 

 抱き付く被身子を抱き締め返しながら、頭を撫でてやる。鼻を被身子の匂いが擽って、なんじゃか少し落ち着かん。こうも抱き締められてしまうと、ううむ……。接吻(きす)、したいのぅ。

 

 ……してしまうか。別に誰に見られたって、もう構わんし。じゃからほら、顔を上げてくれ。接吻(きす)出来ないじゃろ、ほらっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寮に戻ると、まず相澤に事情を聞かれて叱られた。これは無視した。そしたら後で、飯田に叱られた。急に授業を抜け出したことや、相澤への態度の悪さが目に余ったらしい。ついでに被身子も叱っていた。先輩として節度有る行動が、どうとか。飯田、被身子に自重させようとするのは止した方が良いぞ。どれだけ言っても、ほぼ無駄じゃ。それに儂は、被身子に自重だの我慢だのをさせるつもりはもう無いし。幾らでも好きにさせてやろうと思う。好き勝手してる被身子は、素敵なんじゃもん。いつでも何処でも見ていたいとすら思う。

 

 うむ、愛しい。愛しいのぅ。大好きじゃ。こんな嫁を貰えて、儂は幸せ者じゃの。

 

 どれ、被身子。叱られた後じゃからの。甘やかしてやろう。ほれほれ、もっと近くに寄らんか。接吻(きす)したって良いんじゃぞっ。押し倒すのは、……まぁどうしてもしたいと言うのなら、許す。

 寮の居間。椅子(そふぁ)の上で被身子に寄り掛かり、手を繋いで腕を抱く。あと二時間もしたら、外に出なければならん。夕食はまだじゃけど、もう少しだけこうして被身子を感じていたい。こうして被身子に甘えていると……うむ。心が満たされるんじゃ。被身子と一緒に居ればいつでもどこでもこう出来ると考えたら、何で儂は部屋の外で自重していたのかよく分からん。もっと早く気付くべきじゃったのぅ。

 

 ちなみに。常闇は保健室じゃ。儂が殴って気絶させてしまったからの。りかばりぃがぁるが看ているから、何も問題は無いじゃろう。

 

「もぅ、いつの間にそんな甘えんぼになったんですかぁ」

「良いじゃろ別に。お主じゃって甘えん坊なんじゃから」

「そうですよぉ。もっと甘やかしてください!」

「おぐっ。これこれ、仕方ないのぅ」

 

 押し倒された。ので抱き締める。頭を撫でたり頬を撫でたり。そうすると被身子は嬉しそうに笑って、それが愛しくて仕方ないのぅ。うむ、もっと甘やかそう。そして愛でよう。

 儂を沢山愛してくれる被身子に、沢山の愛を返さなければの。今夜は流石に抱かれたり抱いたりは出来ぬから、その分を今の内にじゃな……。

 

「ちょっ、待った待った! また共用スペースで何してんの……!?」

「愛の確認作業なのです!」

「見ての通り甘やかしてる。邪魔しないで欲しいのぅ」

 

 被身子を愛で回そうと思ったら、慌てた様子で耳郎が割り込んで来た。空気の読めん奴じゃ。儂と被身子は許嫁なんじゃぞ。いつ何処で愛し合ったって良いじゃろうが。まったく……。

 

「響香ちゃん、もう諦めた方がええと思う……。この二人、もう止まらへん……」

「そこで諦めたらさぁ、もっと酷くならない? だって廻道だよ?」

「あー、まぁ……ポンコツやもんねぇ……」

 

 は? 儂はぽんこつではないが? おい、麗日。今どこに儂をぽんこつ扱いする要素があった? 許さんぞ貴様ぁ……!

 

「んふふ。私だけのポンコツ円花ちゃんなのです! 誰にもあげませんよ?」

「あー、いらないいらない。ポンコツ廻道は渡我先輩で管理してください」

「ぽんこつではないが???」

 

 被身子まで……! それに耳郎っ、なんじゃその言い種は……! まったく、どいつもこいつも!

 ふんっ。もういいっ。今に見てろよ……! 後で謝ったって、儂は許さぬからな! ふんっ。

 

「えへへぇ、まーどかちゃんっ」

「んぎゅっ」

 

 のし掛かられて、抱き締められた。少し息苦しい。胸に胸を押し当てるな。と言うかお主、また胸が膨らんだか? いや、気のせいか……? どうも柔らかさが増して……って。こら、被身子っ。お主まさかとは思うが、ぶらを外したりしてないじゃろうなっ!?

 

「……ぁ、気付きました? 暑かったんで、さっき部屋に戻った時に外しました……♡」

「たわけっ、何しとるんじゃっ!」

 

 とんでもないことを囁かれた。何しとるんじゃこやつっ!? 狡じゃ狡! 儂じゃって暑いから外したいんじゃけど!?

 

「だってぇ、もっと円花ちゃんに近付きたくって」

「……」

 

 ま、まぁ。そういう事なら。そういう事なら仕方ない……のか? いや、流石に駄目な気がするんじゃけど。まったく、こやつと来たら。まっこと仕方ない奴じゃ。

 

「……駄目だこりゃ。ウチ、ちょっと人手集めてくる」

「あー、じゃあ私は人払いしとく。先輩も円花ちゃんも、程々にせなあかんよ??」

「うーん、トガはアケスケなので!」

「そこはしまっといて!?」

 

 いや、被身子にそれが出来たら誰も苦労しないんじゃよ麗日。大丈夫じゃ、そのうち慣れる。もっとも、愛しくなったとしても誰にもやらぬがな!

 

 

 

 

 

 







ダークシャドウ(暴走)をスピード処理してトガちゃんとイチャイチャしてる円花です。自重しなくなったので、周囲は大変そうです。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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