待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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彼等の軋轢。対廻道円花

 

 

 

 

 

 廻道円花に勝つ。それがどれだけ高い壁であるのか、A組の面々は知っている。赤血操術と呼ばれる術式を思うがままに扱う事が出来る技量の高さ、呪力による身体強化。個性の扱いはまだまだ改善の余地が有るとは言え、ただ全力でぶん回すだけでも竜巻を生じさせてしまう程の力を持っている。

 そして。こと戦闘においては、廻道円花程に立ち回れる生徒は誰一人としていない。それほどまでにズバ抜けている。そんな彼女に欠点があるとすれば戦闘そのものを楽しんでしまうバトルジャンキーであることぐらいだが、それも状況に応じて話は違ってくる。

 

 ……つまり。今の一年A組が廻道円花に勝つことは、とても難しいのである。可能性があるとするなら、それは轟焦凍ただ一人。彼の個性、半冷半燃は赤血操術にとって天敵のような力だからだ。

 

 それ以外の生徒では、まず勝ち目が無い。誰が何をしたところで、勝つことは出来ないだろう。才能マンと呼ばれる爆豪勝己ですら、体育祭では廻道円花に敗北した。彼女の本当の全力を引き出すこともなく。

 

 

 ……それでも。A組は今日、廻道円花に実力で挑む。

 

 

 と、言うのも。昨日ヒーロー基礎学で行われた、生徒間同士の討論が事の発端だ。この討論の議題は『ヒーローの殺人の是非』であり、これに対し円花は『人殺しを是』とした。しかしそれは、ヒーロー志望であるクラスメート達からすれば到底信じられない意見だったからだ。

 ヒーローとは、人を……(ヴィラン)を殺さない。悪事を働く者に一般市民を殺されることなく、かつ(ヴィラン)を殺すこともなく、凶悪犯罪を取り締まる。それが現代のヒーローの在り方であり、世間に求められる姿でもある。もっとも、その姿に疑念を投げ掛けるものが居たりもするのだが。

 

 とにかく。ヒーローは殺さない、殺させない。それがこの時代の常識であり、当たり前。なのに廻道円花は「悪党は殺すべきじゃ」と、クラスメート達に面と向かって言い切った。人殺しを悪と断じ、それでも尚、殺害を視野に入れる。そんな彼女の姿に、彼等は反発した。彼女の意見を受け入れることは、どうしても難しかったからだ。

 

 そんな彼女を否定してしまった直後。彼等は廻道円花がヒーロー科を辞めると聞いてしまった。これもまた、納得は出来なかった。意見は違えど、彼女はクラスメート達にとって友人の一人だ。或いは、仲間の一人。接する機会が少ない者も中には居るのだが、そんな者達ですらある程度の仲間意識がある。

 だから、ヒーロー科を辞めようとしている廻道円花をそのまま放っておくことは出来なかった。が、討論によって出来てしまった溝は彼等の想像以上に深かったのも事実。たかが授業での出来事と言ってしまえばそれまでなのだが、そんな一言で話を済ませてしまいたくはなかった。

 

 廻道円花の意見を受け入れることは、出来ない。しかし、だからと言って彼女を追い出したくはないのだ。出て行って欲しくもない。言ってしまえばそれは、単なる我が儘である。

 

 そして。渡我被身子に、廻道円花を除いた一年A組の全員が猛烈に煽られた。我が儘を通したいなら、実力を証明するしかないと。これにより顔が真っ赤になった者は多く、そして我を通したいなら力を示さなければならないと植え付けられてしまった者も居る。

 

 そんなこんなで、現在。五限目のヒーロー基礎学にて。今日の授業内容は、クラスメート全員で相澤先生に相談を持ち掛け、シンプルに廻道円花との組み手にして欲しいと嘆願した。意外なことに、相澤先生はこれを承認。午後の訓練は実戦形式による組み手となったのである。なのでTDLにて一年A組は廻道円花とその他の二手に別れ、打倒・廻道円花に向けて作戦を練っているわけなのだが……。

 

「あのぉ、円花ちゃんを倒すって……どうすればええんやと思う?」

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 麗日の一言で、全員が黙り込んでしまった。誰も口を開こうとしない。何故なら、誰一人廻道円花に勝利するイメージが湧かないのである。

 日々の訓練や、体育祭での結果。そして、実戦。廻道円花の有する戦闘能力の高さは、知れる範囲で知ってしまっているのだ。

 

「えっと、まず僕が突っ込もうと思うんだ。廻道さんと何度も組み手してるし、呪力もあるから適任……だと思う」

「いや、緑谷くん。まず現時点で分かってる廻道くんの戦力を共有しておこう! みんな、彼女について知ってる事は!?」

「えーっと、呪力っていう緑谷以外には見えない力でしょ? これは身体強化が主だよね? 攻防一体な感じ、……かな?」

「赤血操術……。血液を自在に操る力ね。距離を選ばずに戦えるわ」

「それと、傷を癒せる反転術式を普段から常時使用しているそうですわ。何でも、常に細胞と血液を新鮮にしてると」

「個性もある。あの竜巻は要注意だな」

「……いや、化け物かよぉ!? なんだそれぇ!?」

 

 峰田が叫ぶのも無理は無かった。渡我被身子に煽られ顔真っ赤になっていた男子達は、今では顔真っ青になっている。考えれば考える程に、知れば知る程に、廻道円花が如何に化け物なのかを再認識させられてしまうからだ。

 

「赤血操術には、幾つも必殺技があったよな? 緑谷、どれぐらい知ってる?」

「……えっと、遠距離捕縛用の赤縛に遠距離攻撃用の苅祓と穿血。あと近接攻撃用の赫鱗躍動。あと血星磊っていうのも……。あ、血星磊っていうのは血液を固めて弾丸みたいに射出したり、体内の血液を固めて切島くんみたいな硬化が出来るんだ。詳しい原理は聞いてみないと分からないけど、多分血中の成分を操作して硬くしてるんだと思う……!」

「距離が離れてんなら、初手は必ず穿血だ。でけえ溜めがある。そこをぶっ殺す」

「い、いや無理だよかっちゃんっ。隙があるって言っても一秒か二秒ぐらいで! それに穿血の初速って最低でも音速ぐらいで、しかも途中で軌道を変えられるんだよ!?」

「無理じゃねえわクソが! 前準備さえ出来りゃ俺は避けられんだよ!! 避けて見せただろうが!!」

「それ……前準備無かったら爆豪でも避けれないって事じゃん……」

「余裕で避けるわクソが!! 体育祭ん時と同じじゃねえんだよ!!」

 

 赤血操術。言ってしまえば血液を自在に操るだけの術式だが、実際にはやれることが多い。捕縛に攻撃、単純な自己強化。更には血液が付着した物を少しばかり操作することが出来る。反転術式がある以上使う必要はないのだろうが、怪我をしても出血を止めたりすることが出来る筈だ。

 廻道円花を倒すには、まずこの赤血操術の攻略が必須だろう。しかしその攻略法が、中々思い浮かばないのも事実だったりする。

 

「じゃあさ、轟が血を凍らせたり燃やしたりすれば良くない? あと、爆豪がぶっ飛ばしちゃうとか」

「それだ! 轟がぶっぱすれば良いんじゃね!?」

「バカ、上鳴。轟を最警戒してるに決まってんじゃん。決勝では氷と炎に手間取ってるみたいだったし」

「となると……如何に轟くんを活かすかが勝敗の分かれ目か……。緑谷くんは呪力への対処が出来る。」

 

 現状。もし彼等に対抗出来る術が有るとしたら。それは轟の力を有効的に活用することだろう。雄英体育祭で、円花と優勝を争ったのは彼だ。実際彼女は、半冷半燃を相手に手間取って居た。ならば今、廻道円花に対してもっとも有効な手を出せるのは轟ただ一人の可能性が高い。

 轟を軸にどうするか? 円花は当然警戒してくるだろうと、彼等二十人は言葉を交わす。あれやこれやと。ああでもない、こうでもないと。

 

 そんなクラスメート達を、遠く離れた場所で壁に寄りかかった円花は退屈そうに眺めている。何か作戦を考えているようには見えないし、何なら欠伸を繰り返しては溢れた涙を指で拭って、余裕を崩さない。

 

「……そろそろ始めるぞ。ルールは理解したな? どちらかを贔屓するつもりは無いが……それでも見せ付けてやれ」

 

 

 A組VS廻道円花。人によっては何の意味もないと一蹴するであろう戦いが、始まろうとしていた。

 

 

 

 






あ、今晩更新される話は普段の数倍長いです。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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