待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
飯田の案内で相澤への態度を叱られつつも寮に戻り、昼寝をすること三時間。喉が渇いて、目が覚めた。飯田に冷房をしっかり効かせて貰ったから寝汗はかいていないんじゃけども、それでも喉が渇いたのぅ。居間の
……被身子は? 目が覚めたら居ると思ったんじゃけど、姿が見えぬの。ううむ……目覚めに被身子が居ないと、どうにも調子が上がらんの。
なんて、思っていると。
「あ、起きました? 喉渇いてますよね?」
制服の上に
「いつもありがとう。助かる」
「いーえ。円花ちゃんのお世話はトガの役目なので!」
それは、そうかもしれぬが。しかしこうも世話をされっぱなしと言うのも気が引ける。何か儂に出来ることをしなければの。そうじゃ、今度街に出て、
麦茶を飲むと、少し体が落ち着いたような気がする。二口、三口と飲み進めながら再び
「で、何しとるんじゃお主等」
「何って、廻道が起きるまで待ってた」
「どうしても話したい事、あってさ……。やっぱ、直ぐ話さなきゃってみんなで決めて」
「……うん。あのね廻道ちゃん。聞いて欲しいんだけど……」
……何じゃもう。まさか、また儂の在籍について話したいのか? 今朝から何度も同じ事を言わせないでくれ。別に
「やっぱりみんな、円花ちゃんには辞めて欲しくないの。でも、我慢をして欲しくもないのよ。人殺しだって、嫌なの」
「……それで?」
「今日、みんなで勝ちたかったんだ。でもやっぱり、円花ちゃんには敵わなくって。円花ちゃんの強さと、自分達の弱さも知って」
「……うむ。それから?」
……まったく。誰も彼も、神妙な顔をしおって。まぁ確かに、くらすめえと達はまだまだ弱い。じゃけどそう悲観することでも無いと儂は思う。じゃって、成長の余地は幾らでも残っている。各々が、まだまだ強くなれるじゃろう。努力を惜しまなければ、或いは何人かは儂より強くなれるかもしれん。
「私達は、理想を追い求めたいんです。誰も殺さず、誰も殺させない。そんな、理想のヒーローに成りたくて……努力してきたつもりです」
「でも現実は、勝てなかった。ウチ等、理想を求めるにはまだ全然足りない。だからもし、廻道がさ。廻道が居ても良いって思ってくれるなら、ヒーロー科に残ってウチ等を鍛えてよ」
「もちろん、嫌だったり……ヒーロー科に居たくないって言うなら、……悔しいけど諦める……から。でもその時は、ちゃんと見送らせて!!」
……。……はぁ。まっこと、人の言葉を聞いてないなこやつ等。いや、聞きたくないのか。儂に妥協はされたくないと。妥協したまま、居て欲しくないと。この懇願は、そういうものじゃ。まったく、仕方のない。何なら、少し面倒になって来た気がするのぅ。
「……貴様等は勝って理想を通したかった。で、儂には勝てなかった。ここまでは理解しているな?」
「う、うん……」
「ケロ……」
「……なら、勝った儂の理想が通っても良いわけじゃ。であれば、儂の理想を通させて貰おうか」
「な、なにかな……?」
「儂は妥協して、ひいろお科に残る。嫌なら強くなれ。強くなって儂に勝って、儂の考えを改めさせてみよ。挑戦は随時受け付ける。……以上。この話の如何については、貴様等が儂に勝つまで二度とするな」
結局のところ、何が変わるわけでもない。儂は
それは、挫折じゃ。
負けてしまったから、自分達の理想を貫けない。挙げ句が、認めたくないものをこれから見続けなければならなくなる。理想を追い求める者にとって、これ以上に堪える事は無いじゃろう。人生、一度や二度は挫折するものじゃ。それを経験して、こやつ等がどう立ち上がるか。それは見物じゃの。
……もっとも。儂は手取り足取り、立ち上がり方を教えてやるつもりはない。強くなりたいのなら、勝手に這い上がってくれ。そうしなければ得られないものがある。這い上がることが出来ず心が折れるなら、その時はその時じゃの。
「以上、解散。儂は部屋に戻って寝る」
少々乱暴なやり方じゃとは思うが、ここで甘やかしてしまったら何にもならんからの。せいぜい辛酸を舐めてくれ。それでも立ち上がり、強くなる為に儂を頼ろうとするならその時は甘えさせてやろう。特に常闇は、儂好みに育つかもしれぬし。
「待って、廻道さん……!」
「何じゃ、緑谷」
「僕達、強くなるから。もっともっと強くなる。廻道さんの横に、並び立てるぐらいに……!」
まぁ、そう思うのは悪くない。やる気になるのは良いことじゃ。とは言え、尻を叩かれなければ意識を改められないのは如何なものか。
「……そうか。期待して待っとるぞ」
「……! うん!!」
……? 何でこやつ、顔を輝かせおった? 何か嬉しそうにしているが……喜ぶ場面か??
……。まぁ、良いか。やる気があるなら、それで結構。次に手合わせする時が楽しみじゃのぅ。
「むー……」
被身子? 何で儂を睨むんじゃ? それよりもほれ、早く部屋に行こう。夜まで、儂の抱き枕になってくれ。
「結局、円花ちゃんはみんなに甘々なのです。またトガの分が減っちゃいました……」
「……たわけ。お主の分は欠片たりとも減らんが?」
「ほんとですか? ほんとに減らないんですか?」
「減らん減らん。それよりも、むしろ……」
増えるぐらいじゃ。なんて言うのは、止めておこうかの。こう、始まってしまいそうな気がする。くらすめえと達の前で色々してしまうと、特に葉隠や峰田がうるさいからの。もう人目を忍びたいとは思わないんじゃけども。
ううむ、何故人前で
……。こんな考えをするようになってしまったのは、間違いなく被身子からの影響じゃ。前は、どうやって自制してたんじゃっけ? そもそも何故自制を? 忘れてしまったのぅ。
「……、むしろ?」
「後で言う。……ん!」
「もぅ。あとで、ちゃあんと言ってくださいね」
手を差し出すと、被身子が近寄って来て儂の手を握った。から、握り返す。いつものように指を絡めて、ついでに被身子の腕を抱く。最近は、こうしていると落ち着くんじゃ。いやむしろ、しないと落ち着かないと言うか……。
と、とにかくじゃ。部屋に戻ろう。話はそれからじゃっ。
◆
部屋に戻ると、早速求められた。手早く帯を緩められたし、袴は下に落とされたし。最近は、部屋に戻るなり直ぐそうやって儂を脱がすのが被身子じゃ。まだまだ暑いし、部屋では薄着で居たい。じゃから、駄目とは言わん。言わんけども……壁に押し付けるのは止めて欲しいのぅ。
最近、と言うかここ数日。どうも隙あらば、してしまっている気がする。肉欲と言うか、愛欲に溺れている自覚はある。人として駄目な方向に向かっているのは分かっているんじゃけど、どうにも自制が出来ないんじゃ。
これは、……あれじゃ。まだ暑いから、理性も溶けやすいだけじゃ。そう思うことにする。そもそも被身子の前で理性を保とうとすること自体が、間違いなのでは? うむ、そうじゃ。絶対そうじゃ。じゃから仕方ない、仕方ない……。
なんて言い訳を脳内で並べていると、被身子の顔が迫ってくる。から、目を閉じて待つ。直ぐ、唇が触れ合った。……ぞくりと、背筋が冷えた。いや……期待で震えたと言った方が正しいかのぅ。
「ん、ちゅ……っ。すっかり我慢の出来ない子になっちゃいましたね……♡」
「んん……。誰かさんの影響じゃろ」
「その誰かさんは、しっかり責任を取るので。だからヨリくんも、責任取ってくださいねぇ」
「当然じゃ。ちゃんと最期まで、責任は取る」
「えへへぇ。もぅ、直ぐそんな事言っちゃって……♡ あとが大変ですよぉ?」
「お主こそ。あとで覚えてろよ」
なんて、頭が悪いような会話をするのも最近はお約束みたいなものじゃ。ところで被身子、次はまだか? もうしないのか?
「……欲しがりなんですから。でもその前に、トガも少し……真面目なお話をしたいのです」
「何じゃ急に。珍しいの」
「まぁ、大事な事なので。あとでたっぷり、する事しますけど!」
……。なら、良いか。
それで? 今回は何が話したいんじゃ? 何でも言ったら良い。儂はお主の話なら、幾らでも聞くつもりじゃからの。
「……その。女の子の格好するの、嫌だったりします?」
「いや、別に?」
「え……っ?」
おい、何じゃその反応は。まぁ確かに、好ましくはない。好ましくはないんじゃけども、じゃからって着たくないとは言わぬよ。
でも、じゃって。被身子が大いに喜ぶからの。なら、儂が着ない理由が無い。
「まぁ洋服の事はよく分からぬ。何が良いのかも全然じゃ。……でも、着たらお主は笑うじゃろ? じゃったら、幾らでも着るが?」
「私が喜ぶから、着てくれるってことですか……?」
「うむ。お主の為なら幾らでも」
まぁ、たまには手加減して欲しいとは思うんじゃけど。基本的に和服の方が落ち着くからの。好ましさで言えばそちらの方が上じゃ。
でも。結局、儂は被身子の笑顔が一番じゃから。いつの間にかそうなっていて、その為だったら何だってして良いと思うようになって。
……あぁ、うん。こういうのも、伝えた方が良いんじゃろうか? 赤裸々に告白するのは気恥ずかしいんじゃけども。じゃけど……。
「……お主の笑顔が何より好きでの。じゃから、その為じゃったら幾らでも……」
いかん。流石に気恥ずかしい。求め合うことには慣れて来たと思うんじゃが、こういうのはまだ気恥ずかしさが強い。目を合わせて言いたかったんじゃけど、途中から目を逸らしてしまった。何なら顔も。多分今の儂は、耳まで赤い。
「……」
「……」
「……」
「……」
被身子の視線が、突き刺さる。お、おい。何か言ったらどうなんじゃ? 儂、変な事を言った覚えは無いんじゃけど?
なぁ、被身子。被身子ったら……。
「……ん、ふふっ。そんなにトガを甘やかして、どうするつもりなの? もぅ、もぅ……♡」
甘えた声で、抱き締められた。から、儂も抱き締めてみる。別に、幾ら甘やかしたって良いじゃろ。被身子は色々頑張っているし、やるべき事ばかりで大変じゃろうに、甲斐甲斐しく儂の世話までしてくれる。そんな被身子を甘やかすことを咎めることなんて、誰一人出来ぬじゃろ。それに、儂が許さん。
「……良いじゃろ、別に。好きなんじゃから」
「えへへぇ。好き、大好き。私もぉ、円花ちゃんが、ヨリくんが一番なのですっ!」
おぐっ。床に押し倒されたわ。儂の上に覆い被さった被身子は、それはもう良い笑顔で。
「……一生、甘やかすからの。逃がすつもりはないから、覚悟しとけよ?」
「もう逃げれませんよぉ。逃げるつもりなんて、これっぽっちも無いですけどっ」
A組には、ここから終章に向けて猛レベリングして貰う予定です。原作以上に成長して貰わないといけない理由が有りますので。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ