待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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文化祭準備。逢瀬の約束

 

 

 

 

 

 結局。儂は英雄(ひいろお)科に残ることにした。今後、人殺しは視野に入れぬ。入ったとしても、殺さないように努める。それは何より難しいと思うんじゃが、やるだけやってみるとしよう。この行為は子供達からすれば妥協でしかなく、同時に形ある挫折となった。儂が英雄(ひいろお)科に居続ける限り、儂に負けて理想を通せなかった現実を味わうことになるじゃろう。こうなってしまったことが、正しいのかは分からん。しかし、この挫折が良い方向に働いてくれたのも事実じゃ。

 

 あの日から、くらすめえと達全員が以前よりも熱心に訓練に臨むようになった。以前は熱心ではなかった、と言うわけではない。前よりも更に集中して訓練するようになったって話じゃ。

 

 ……まぁ、悪く言えば入れ込み過ぎなんじゃけども。しかしの、強くなるには我武者羅に鍛練する事が必要な場合もある。しばらくは見守ってやるとしよう。何かおかしな方向に向かい始めることがあれば、その時は頭に拳骨でも落とそう。

 

 他に変わった事があるとすれば、それは儂が午後の授業に出ることが少なくなったことぐらいか。ここ一週間程、毎日五限目から七限目まである英雄(ひいろお)基礎学の授業は半分以上欠席しておる。授業に出ないことで出来た時間は、睡眠に充てたり、どうもまだ元気が出ないえりの下に顔を出したり、個人的な鍛練の時間として使っている。と言っても、その殆どが走り込みによる基礎体力の向上なんじゃけども。時たま、領域の洗練を目論んであれこれやってみてるんじゃけど……どうも上手く行かん。

 

 で。たまに訓練に参加した時は、主に轟と手合わせをしている。一つ目を祓う為に、炎への対策を模索しているところじゃ。ついでに氷結への対策も気分転換にやったりやらなかったり。まぁ、どちらも少しばかり手応えを感じている。もっともっと詰めていかねばならんのじゃけど、どうしても午後の授業に出る気がしなくてのぅ……。飯田に叱られようが、他の者に白い目で見られようが、相澤に文句を言われようが、出たくないものは出たくない。

 被身子は、そんな儂に「嫌なら出なくて良いのです。サボタージュしましょう!」と言ってくれた。被身子はちゃんと授業に出ているのに、授業を受けるか受けないかの相談に乗って貰ったのは何じゃか申し訳ない。

 

 ……ところで、さぼたあじゅって何じゃ? 英語か? よく分からん言葉を使うのは止めてくれ。

 

 そうそう。総監部に頼まれた呪眼(のろいまなこ)の作成は順調じゃ。連れ出した被身子がちょっかいを掛けてきて、手が止まってしまうのが難点じゃけど。まぁこれは仕方ないと割り切っている。あと数日で、ひとまず頼まれていた分は作り終えることが出来そうじゃしの。

 それ以外の呪術師としての活動は、ひとつ面倒な事があるだけで他はいつも通りじゃ。何が面倒って、教師達から教師達に見合った呪具を作ってくれないかと頼まれていてのぅ。これがまた面倒で面倒で、どうにもやる気が起きぬ。何で相澤の眼鏡(ごおぐる)を作ってやらねばならぬのか。解せぬ。

 

 まぁ、とにかく。色々と変わったことがあったり、中々変化しないことがあったり、それでも日々は進んでいくものじゃ。九月は終わり、もう十月がやって来た。高かった気温も下がりつつあって、最近は涼しい日が増えてきた。もう少ししたら、寒くなるじゃろう。寒いのも苦手なんじゃけど、夏よりは幾分か好ましい。

 

 

「文化祭があります」

「がっぽいのきたぁあああ!!!」

 

 

 ……喧しいのぅ。そんなに騒ぐことか? たかが文化祭で何をそんなに浮かれているのやら。しかしまぁ、文化祭。文化祭か……。最近、被身子と逢瀬(でえと)が出来ていないからの。二人で見て回るのも良いかもしれん。雄英の文化祭がどのようなものなのか、実は昨年経験済みじゃ。あの時の被身子と来たら、今思えば……うむ。ううむ……。思い出すのは止めておこう。思い出さない方が良い。

 

 ま、まぁ。とにかく、じゃ。相澤がわざわざ通達したのじゃから、文化祭が近いのは確かじゃろう。となると、何か出し物をしなければならん訳か。中学時代は茶屋をやったんじゃけど、教室の前で客引きとして座ってた事しか覚えとらん。何故か当時のくらすめえと達は、儂に何もさせようとしなかったからの。何でじゃ。別に配膳くらい余裕で出来るが? まったく……。

 

「良いんですか!? この時世にお気楽じゃ!?」

「切島、お前変わっちまったな……」

「廻道に殴られてから変になってねえか?」

「あー、最近ぐいぐい殴られに行ってるからな。この間ので変な癖に目覚めたんじゃね?」

「なってねーよっ!? でもそーだろ(ヴィラン)隆盛のこの時期に!!」

 

 まぁ、切島の言うことはごもっともじゃ。ごもっとも過ぎて、何も言えん。文化祭自体、今の時世では自粛するべきじゃろう。しかし雄英側はやる気満々じゃ。わざわざ儂を、緊急時の呪霊対策として使おうとしてるぐらいじゃからの。この旨を総監部の七山に話したら、あやつはかなり長い間を置いてから了承してくれたわけじゃが。後日、根津校長と滅茶苦茶揉めたとか何とか言っておったわ。

 何にせよ、近々文化祭が行われる。それまでの準備やら何やらで忙しくなりそうじゃ。それ自体は構わんし、何なら今から当日が楽しみではある。じゃってほら、被身子と逢瀬(でえと)が出来るからの。今年も楽しめれば良いんじゃけど、下手をすると昨年より大変な目に遭うかもしれん。去年の被身子と来たら、空き教室に儂を連れ込もうとしたからの。結局抵抗虚しく、連れ込まれてしまったわけなんじゃけど。

 

「ここからはA組委員長飯田天哉が進行をつとめさせていただきます! スムーズにまとめられるよう頑張ります!!

 まず候補を挙げていこう! 希望の有る者は挙手を!!」

「ハイハイハイハイハイ!!!!」

「ぐ……何と言う変わり身の早さだ……! ええい、必ずまとめてやる……!!」

 

 過去を思い返して、つい苦笑いをしていると話が進んでいた。飯田と八百万が教壇に立っておる。そしてくらすめえと達は、誰も彼もが一斉に元気よく挙手した。

 ……喧しい。いや、まっこと喧しい。まったく、どいつもこいつも楽しそうにしおって。もう少し落ち着きと言うものをじゃな……。いや、まぁ良いか。子供達がこうも楽しそうにしているのなら、文句は言わぬよ。むしろ、もっと楽しんだらどうじゃ?

 

「はい!!」

「上鳴くん!」

「メイド喫茶!!」

「奉仕か! 悪くない!」

「甘いわ上鳴!! オッパ」

 

 おっぱ、……何て? 峰田、今なにを言おうとしたんじゃ貴様。何か言い切ろうとして、即座に梅雨に簀巻きにされて吊し上げられてしまった。まぁ、どうせろくでも無い事じゃろ。特に気にしないでおくとしよう。

 儂自身、何がしたいとか特に希望は無い。なるようになるじゃろうし、そもそも子供達の好きにしたら良いと思う。この話し合い、もしや儂は参加しなくても良いのでは?

 

 そう言えば、二年しぃ組は何をするつもりなんじゃろうか。気になるから、携帯電話(すまほ)で聞いてみるとするか。流石に電話も音声操作もしないでおくか。ええっと、確かここをこう、で……こうして……。

 

『ぶんかさいのたしもの、ひみこは、』

『二年C組はメイド・執事喫茶ですよぉ。一年A組はどうですか?』

『しらん。いま、いめてる』

『円花ちゃんは、何かしたい事あります?』

『でえと、』

『私もしたいです!』

『しよう。でえと』

『はい!!』

 

 うむ。よし。逢瀬(でえと)の約束は取り付けた。文化祭当日が、もっと楽しみになった。周囲は相変わらず騒々しいんじゃけども、祭り事は子供達が騒ぐものじゃからの。

 ……思いっきり入力を誤ったが、無事解読してくれて何より。いつぞやみたいに、数字の羅列になってないだけ良しとして欲しい。携帯電話(すまほ)、分からん。使いこなせれば便利なんじゃろうけど、未だに慣れぬ。買い与えられてから長いこと経ってるんじゃけどなぁ……。

 

 まぁ、それはともかく。逢瀬(でえと)じゃ、逢瀬(でえと)。被身子と逢瀬(でえと)じゃ。楽しみじゃの。

 

 しかしまぁ、我ながら随分と惚れ込んだものじゃ。既に文化祭が待ち遠しくて仕方ない。そんなに逢瀬(でえと)したいのか? いや、したいけど。もう被身子さえ側に居てくれれば、何がどうなっても良いような気さえしてくる。それを不満に思うどころか、嬉しくて仕方ない辺り……毒されているのぅ。別に良いんじゃけど。幸せじゃと思っとるから。

 二年しぃ組は侍女(めいど)・執事喫茶じゃったの。どういう茶屋なんじゃそれは。何故侍女と執事が……? 行ってみれば分かるか。被身子と行こう。ついでじゃから、色々と見て回るとしよう。どんな祭りになるかは分からぬが、被身子が居ればきっと楽しい。そうでなくては困る。逢瀬(でえと)なんじゃから。

 

「……実に非合理な時間だった。明日の朝までに決めておけよ。決まらなかった場合は公開座学とする」

 

 ……気が付けば、撞鐘(ちゃいむ)が鳴り響いていた。結局、儂等は出し物を何にするか決めることは出来なかったようじゃ。飯田が教壇に手をついて、項垂れている。まとめられなかったの、委員長。何、次を頑張れば良いんじゃ。我の強い奴ばかりじゃけどな、この教室は。

 

 ところで、ひとつ気になることがある。知らなくても良いような気がするが、一応知っておかねば後で峰田を処せない可能性があるからの。聞くだけ聞いてみよう。ええっと、確か……。

 

 

「おぉい常闇。おっぱぶ? って何じゃ?」

 

 

 その時。教室の気温が猛烈に下がった。気がする。

 

「峰田ぁ!! 廻道に変な言葉覚えさせないでくれる!?」

「忘れて! 廻道ちゃん、それは忘れて良いから!」

「……廻道。頼むから大声でそんな事を聞かないでくれ……」

 

 芦戸や葉隠が騒ぎ始めた。怒り心頭になっているのは気のせいではない。常闇は、頭を抱えておるの。仕方ない、被身子に聞くとするか。被身子なら知っとるじゃろ。何か英語っぽいしの。

 

「常闇、お前ほんと苦労してんだな……」

「廻道ってさぁ、無防備で無知なところあるよな……。夏になりだちの頃とか」

「もはや災害。闇が更なる深淵に至る前に救世を求む……」

「災害は人の手ではどうこう出来ねーんじゃねぇか……?」

 

 何故、一部の男子達からぽんこつを見たかのような目で見られなければならないのか。解せぬ。さては、気になった事を聞いたらぽんこつ扱いされるのか? いや、それはおかしいじゃろ。どいつもこいつも……!

 

『ひみこ、おっぱぶ……ってなんじゃ?』

『それ、誰から聞きました?』

『みねた』

『ですよねぇ。ちょっと今から刺しに行きますね??』

『いい。くるな』

 

 ……ううむ……。峰田よ。女子(おなご)達に処されてないで、今すぐ逃げた方が良いぞ? 恐らく刃物を持った被身子が刺しに来る。一応止めたが、絶対に来るから今すぐ逃げ出せ。でないと、命に関わるから。

 

 この後。被身子は教室にやって来た。案の定、右手に刃物を持ってたわけじゃ。慌てて止めに入ったが、目が本気じゃった。峰田、お主そろそろ態度を改めた方が良いのではないか? いつか被身子に刺し殺されてしまうぞ? 儂もいい加減、庇うのが面倒なんじゃけども……。

 

 ……儂も、そろそろ峰田を叱った方が良いのか? そうなのか?

 

 

 

 

 

 









久しぶりに日常回を書けた気がします。こういう話書いてる時が一番筆が乗りますね。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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