待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「雄英は、文化祭当日に雄英高校呪術科を新たに設立するのさ!」
突然寮の居間に現れた根津校長が、相澤の肩の上によじ登って高らかにそう宣言した。
……何を言ってるんじゃこの鼠は。とうとう人語が話せなくなったのか? 個性が弱まったのか? 或いは、一周回って馬鹿になってしまったとか……。今は真夜中じゃし、さては寝ぼけているのか? どうやら鼠でも寝言は言うらしい。いや、根津校長が鼠と言えるかは怪しいところじゃけども。
とにかく。訳の分からんことを宣うのは止さぬか。儂も驚いたし、被身子も驚いている。訳が分からなさ過ぎて、つい被身子の目を見詰めると首を何度も横に振られた。まぁ、分からんよな。想像も付かんじゃろう。儂も分からんし、想像出来ん。
「校長。説明を」
「うん、そうだね。でもその前に、廻道さんには通知しなきゃならないことがある」
「……何じゃ?」
「率直に言うけど、最近の君は素行が悪い。もちろん、相澤くんやサー・ナイトアイと色々有ったことは把握してるよ。ナイトアイ共々、世界的偉
それに呪術師としての活動が夜から朝方に掛けての長時間であることが起因となり、睡眠時間が明らかに足りてないこともね。更には、相澤先生への強烈な不信感。それらが重なって、君は不良になってしまった」
……まぁ、その通りじゃけど。根津校長が言ったことは、概ね正しい。訂正する点は特に無い。最近の儂は、教師からすれば不良そのものじゃろう。
「ぶっちゃけ、職員会議で真っ先に名前が出ちゃうぐらい君は問題児なのさ! もちろん事情は分かってるし、情状酌量の余地もある。
……何より。君が素行不良になったのは、我々大人がしっかりしていなかったから。この一言に尽きる」
「……つまり、何が言いたいんじゃ貴様」
「結論は急ぐものじゃないよ。でも、ここはハッキリ伝えておこうか。
一年A組、 廻道円花さん。君を、ヒーロー科から除籍するのさ。理由は、度重なる素行不良や偏った思想を持っていることが危険だと判断したからだね。何より、君の現状をこれ以上看過できない」
……まぁ、それは別に良い。現状、儂が
特に、常闇と緑谷なんかは将来が楽しみじゃ。儂が本気を出せる猛者になれるかもしれん。轟や舎弟も捨て難い。他にも……例えば八百万とか切島も成長が楽しみじゃ。
「それで? 用件はそれだけかの?」
「まだ用件はあるのさ。さっきも言ったけど、雄英は文化祭当日に呪術科を設立するよ。だから君に、編入して貰いたい。緑谷くんにも打診するけども、彼はヒーロー科に残るだろうね」
そうじゃろうな。そうでなくては、困る。今更
「まぁぶっちゃけ、呪術科は君の為だけに設立するのさ。決して公表されることない、秘匿学科としてね。この事を雄英内部で知ってるのは、私が選んだ信頼の置ける教師と、今この場に居る君達だけ」
「……?」
秘匿された、学科? 何じゃそれ。訳が分からな……、いや。そうか。どうやらこれには、呪術総監部も一枚噛んでいるようじゃの。雄英も総監部も、何を考えているのやら。
「……秘匿された学科、ですか……? あの、それってトガは聞いて良いんですか?」
「うん、良くないね。だけど理解者は必要だからね。渡我さんには……廻道さんの理解者になって貰いたいのさ」
「それは、言われなくてもそうですけど。……分かりました。取り敢えず、協力するのです」
いや、被身子。そう簡単に協力しようとするな。こやつ等が何を考えているのか、まるで分からんままなんじゃぞ? もう少し様子を見てから、根津校長の言葉に頷いてくれ。
「私としてはね。君にはまだまだ此所で学んで貰いたい事があるのさ。このままだと君は、何も学ばない。例え学ぼうとしても、総監部からの依頼で時間が取れない。現に寝不足が祟って、ろくに授業を受けれてないからね。
だけど君は、対呪霊において秩序側の最大戦力。決して替えが利かない存在なのさ」
……。それもそうじゃな。その自負はある。現状、呪術界にもっとも詳しいのは儂じゃ。総監部もある程度の情報を持っているようじゃが、背広男の暗躍により歯抜けになってしまっている部分が多いと聞く。まして呪術師として活動出来るのはたったの三人。おおるまいとは日本中を駆け回って勝手に経験を積んでるようじゃけど、それでも呪術師としてはまだまだ青い。そもそも、
「その君から、教師として大人として、勉強の機会や場を取り上げたくない。何より、君にばかり負担が掛からないように努めたい。でも、総監部は君をもっと使いたい。今すぐ雄英を辞めて、公安お抱えの呪術師として働いて欲しいと思っている。
だから、
なるほど。つまり根津校長は、儂が総監部に良いように扱われる事を阻止するつもりのようじゃ。それに、儂からしても都合が良い。これ以上授業を欠席せずに済むかもしれんからの。つい頷きたくなるところじゃけど、そうも言ってられん。既に被身子が巻き込まれてしまっている上に、雄英や総監部が別の狙いを持っていることが分かる。例えば呪術科入れば、残る二年半を雄英で過ごさなければならない。呪術師として、じゃ。しかも呪術師としての活動が授業になると言うことは、誰かしら引率として教師が着くじゃろう。面倒この上ない。単純に邪魔じゃ。相澤なんか付いてみろ。呪霊に襲われても助けてやらんからな。
そして総監部は、今回の件を容認することで儂に恩を売っておこうとしているんじゃろう。卒業後、卒業までわざわざ待ったんだからこのくらいはしろ……的な感じで無茶振りをしてくる可能性が高い。既におおるまいとを全国何処にでも派遣しているからの。
「……円花ちゃん、どうします……?」
被身子が神妙な顔で問い掛けてきた。雄英の狙いや、総監部の狙いを感じ取ったのかもしれぬ。根津校長の言葉の裏に、どのような思惑があるのか。それを被身子なりに、感じているようじゃ。
……また、心配させてしまった。不安にさせてしまった。その事実が、腹立たしい。ひとまず、被身子を抱き寄せる。少しでも落ち着かせてやりたい。不安にさせてしまったことが、申し訳ない。
「……貴様等は、どうにも学習しないようじゃの。被身子を巻き込めば儂がどういう態度を取るのか、知らんわけではあるまい?」
この期に及んで被身子を巻き込むと言うのなら、もう儂は我慢出来ぬ。返答次第では、相澤ごと殺してしまおう。いや、人殺しは選択肢には入れない。子供達とそういう約束をした。なら、死なん程度にしてやるか。体は生きているが脳は死んでいる。或いはその逆。そんな状態にしてやろう。何、そう難しいことではない。
「……そうだね。渡我さんをまた巻き込んでしまったのは、申し訳なく思うのさ。言ってしまえば、彼女を利用して君を良いように使おうとしてるわけだからね」
「死にたいらしいな」
「君の気がそれで済むのなら、構わない」
……言ったな? 殺して良いんじゃな? よし、殺してやろう。首から血を出して、宙に浮かす。同時に、両手を叩き合わせる。咄嗟に相澤が身構えたが、関係無いのぅ。この距離で避けれると思うな。慈悲深く即死させてやるから、大人しく逝ね。
「……だーめ。円花ちゃん、メっ!」
「った」
鼻先を、指で小突かれた。何でじゃ被身子。止めるな。儂は殺すぞ。殺すったら殺す。こやつ等は殺されたいようじゃから、儂が殺してやるんじゃ! 幾らお主とて、その邪魔は許さんからなっ?
「駄目。殺しちゃったら、みんなとの約束を破ることになっちゃうのです。人殺しは視野に入れないって、言ったじゃないですか」
「……」
……。…………。
「……」
「んふふ。拗ねちゃってカァイイ……。そうやって私の為に本気で怒ってくれるところも、大好き」
……はぁ。仕方ない。人殺しを視野に入れぬと宣言したのは儂じゃ。そして、
何せ儂、不良じゃし。除籍されて当然か。
抱き付いてくる被身子を甘やかしながら、相澤も根津校長も睨み付ける。出した血は全て床に落とした。掃除はしないし、被身子にもさせん。
「……幾つか聞かせろ。秘匿された学科と言ったな。まず、寮はどうなる? 時間割りや、授業内容。現状と何がどう変わるのか、そこを知りたい。それと、呪術科でひいろお免許を取得出来るのか?」
「そうだね。君の疑問には、ひとつひとつ答えていくのさ。まず寮についてだけど―――」
……こうして。結局儂は、文化祭当日に呪術科に編入することになってしまった。この事は、両親にすら話してはならんそうじゃ。それと、根津校長の話が長引いて朝まで起きている羽目になってしまったけども。ただ、色々と聞くことは出来た。
翌日。儂は編入準備の名目で文化祭まで公欠と言う扱いになった。まぁ儂がやる事は殆ど無いんじゃけどな。ただ、文化祭が始まるまで待つだけじゃ。ちょうど良いから、夜はやるべき事をやってしまおう。
そう言えば。相澤がろくに喋らなかったのは根津校長から極力口を開かぬよう言い付けられていたから、だそうじゃ。これについては、良くやったと根津校長を褒めてやりたい。嫌いじゃからな。面を会わせたくなければ、声も聞きたくないからのぅ。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ