待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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文化祭準備。勇気は、まだ無く

 

 

 

 

 

 

「儂の勝ちじゃの。ふふん」

「お、大人げない……! 廻道さん、それはどうなん……?」

「ほんっと、負けず嫌いなのです」

「まぁでも、次は勝てそうな感じがあるよね! もう一回!」

「つ、次こそは……! エリちゃん、頑張ろう……!」

「……がんばる」

 

 日曜日の昼。えりの様子を見に行こうとしたら被身子が同行すると言い出し、おやつを持って教員寮へ。そしたら、似たようなことを考えていたのか緑谷や麗日と教員寮の前で出会した。で、四人でえりを訪ねたら、通形までやって来た。ので、居間に全員で集まっておはじきをしたわけじゃ。結果は儂の勝ち。遊びでの勝負となれば、子供相手でも容赦してやるつもりはない。普段は被身子に勝てんからの。こういう時ぐらいに勝っておかねば釣り合いが取れん。我ながら子供っぽいとは思うが、負けたくないものは負けたくないんじゃ。ふふん。

 

「まぁトガはいつでも勝ってますから別に良いんですけど。何なら後で勝ちますし」

「は? 勝てると思うなよ??」

「じゃあ久しぶりに、今晩は勝負します? そう言えば、野球拳はまだしてなかったですねぇ……」

 

 ……野球拳? 何じゃそれ。また訳の分からん遊びを……。まぁ、受けてたってやるがな。もちろん、勝つのは儂じゃ。儂に勝てると思うなよ。普段は負かされっぱやしじゃけど、今回は違うんじゃからな……! 首を洗って待ってろ。今日と言う今日は儂が勝つ……!

 

「んふふ。今夜が楽しみなのです……!」

 

 ……なぁ、被身子。流石にえりの前でその悪どい笑顔は止さぬか? 色々と悪影響な気がしてならんのじゃけど。まぁでも、かぁいいから良しとするか。被身子の笑顔はこの時代一と言っても過言では……、……流石に過言か? いや、そもそも誰かと比べるものでもない。何と言ったかのぅ、確か……おんりい、わん……? とか言うやつじゃ。うむ、多分。間違っていなければ。

 

「おはじきの次は……トランプだよね!」

「絵札遊びか。良いぞ、掛かってこい」

 

 通形。絵札遊びでも、儂は負けてやるつもりはないぞ。勝てると思うなよ。ふふん。

 

「なら、エリちゃんに分かりやすくババ抜きにしましょう。神経衰弱も良いですねぇ」

「記憶勝負は狡じゃと思うが」

「え? 自信無いんですか?」

「は? 勝つが?」

 

 良いじゃろう。何じゃって受けて立つ。神経衰弱じゃろうが、ばば抜きじゃろうが、全て儂が勝つ。勝つったら勝つ。譲るつもりなど毛頭無い。ついでに夜にやる野球拳とやらも、儂が勝つんじゃからなっ。

 

 そんなこんなで。まずは、ばば抜きが始まったわけじゃ。全員の手元に、絵札(とらんぷ)が配られたので、各々が自分の手札を確認する。それから各々が揃った数字を捨てていくと、全員それなりに手札が減った。……何故儂の手札にばばが有るのか。まぁ良いか、誰かに引かせれば良いんじゃ。

 ちなみに、配ったのは被身子じゃ。

 

「じゃあ、トガから時計回りで!」

 

 そう言って、被身子が儂の手札を一枚引き抜いた。そして揃った数字を捨てる。ばばは引かれなかった。ちっ。

 

「はいエリちゃん。一枚抜いてください」

「うん。……じゃあ……」

 

 えりが被身子の手札から一枚引き抜いた。そして、えりも手札を二枚捨てる。順当に手が進んでいるようじゃ。

 

「るみりおんさん」

「ん、じゃあ一枚貰うねエリちゃん! はい次は麗日さん!」

「じゃあ……。あ、捨てれた。はいデクくん」

「うん。えっと……これにしようかな。はい、廻道さん」

「うむ」

 

 どいつもこいつも、順当に手札を捨てておるの。運が良いんじゃろうか? まぁババ抜きなんてそんなものか。緑谷から、絵札を一枚引き抜く。

 

 ……は? 捨てれんのじゃけど??

 

「じゃあはい、また貰いますねっ」

 

 手札を睨んでいると、横から伸びて来た被身子の手が儂の手札から一枚絵札を持っていった。で、また捨てた。そしたらえりも通形も、麗日も緑谷も簡単に捨てていくわけじゃ。何で貴様等だけ……。いや、良い。ここから巻き返せば良いだけの話じゃ。

 緑谷の手札を一枚引き抜く。が、また揃わん。何でじゃ??

 

「はい、上がりなのです」

 

 は?

 

「あ。……あがり」

「は?」

「俺も上がりなんだよね!」

「あ、私も」

「……ごめん廻道さん、僕も」

 

 は?? いや、おい。何でじゃ貴様等。何で儂だけ残して、そんな簡単に上がっとるんじゃ。

 

「負けちゃいましたね。大人げないからですよぉ」

「んん……渡我先輩。これは流石にどうかなって……」

「結果が良ければそれで良いのです。良かったですね、円花ちゃんに勝てて」

「……何かごめん、廻道さん……」

「は???」

 

 おい、何の話じゃ。被身子はしてやったりと笑っているし、緑谷はばつが悪そうにしているし。そんな二人を見て、えりと通形は首を傾げている。麗日は、儂と目が合うと直ぐに目を逸らした。

 

「んふふ。また私に負けちゃいましたね」

「……何をした?」

「何も? 試しにちょおっと配り方を工夫しただけなのです。初めてやりましたけど、案外出来るものですねぇ……」

 

 ……おい。おいこら、被身子。貴様は、さては狡したな? 何か狡をしたじゃろ? 悪びれもせずに笑いおって……! 狡は駄目じゃろ、狡はっ!

 

「つ、次は普通にやろっか! ふ、普通に!」

 

 ……許さん。許さんぞ被身子……! 貴様、(まこと)に末代まで呪うからな!? 逃れられると思うなよっ。儂に目を付けられて無事で済むと思うなよっ!?

 

「はぁい。じゃあ次は、普通にやりましょうか」

 

 舌を出して笑うな。お主なぁ、そうやって笑えば何でも儂が許してくれると思っていないか? そう簡単に許されると思うなよ、まったく……!

 

「あ、今日のおやつは林檎のコンポートなのです。後で、みんなで食べましょうね」

 

 ……。……まぁ、許してやるか。別に、おやつに釣られて許すわけではないがな。仕方ないから許してやるだけじゃ。仕方なくじゃ、仕方なく!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遊んでいると、時間の流れが早いものじゃ。気が付けば三時になって、五時になる。外はすっかり夕暮れで、なのにまだ騒々しい。雄英生徒達全員が、文化祭の準備で動き回っておるからの。来週の今日には、文化祭当日じゃ。今日と明日は、文化祭前の最後の休日でもある。じゃから、まぁ……。実は、これ以上遊び呆けているわけにはいかん。

 何せ儂や緑谷、そして麗日も文化祭までにやっておくべき事が山積みじゃ。いっそ教員寮に泊まってしまいたいとすら思うが、それは止めておく。えりの面倒は見ていたいが、相澤と顔を合わせたくないんじゃ。あやつ嫌いじゃ。腹の底から大嫌いじゃ。

 

 そろそろ、寮に帰らなければならぬ。各々が今日は楽しかった、また遊ぼうとえりに伝えて去ろうとしている。儂は最後にえりの頬や頭を撫でてやって、立ち去ろうしたわけじゃ。そしたら、立ち上がる際に袖を掴まれた。えりの目が、儂の目を見詰める。と思ったら、直ぐに目を逸らして袖を離してしまった。顔は俯いているが、どんな表情をしているかは分かる。

 

 じゃから、放っておけない。このまま、此所にえりを置いて帰るのは無しじゃ。

 

「よし、えり。今日は儂等の寮に泊まりに来るか?」

「……えっ」

「嫌なら良い。じゃけどまぁ、儂はもう少し遊びたいんじゃけど。なぁ被身子」

 

 しゃがんだまま、被身子の目を見詰める。そしたら直ぐ、頷いてくれた。

 

「はい、そうですね。トガも、もう少し一緒に遊びたいかなって思うのです」

 

 ありがたい。こうして被身子が直ぐに賛同してくれるのは、助かる。何せ、誰よりも儂の事を知っている。それを嬉しく思う。唯一、儂が何でも話せる相手じゃ。話して良い相手じゃ。そんな相手が居る事は、心強いものじゃ。

 後で、この分のお礼をしなければ。何をするべきじゃろうか? 儂に出来ることであるならなんだって……。あぁ、そうじゃ。何か贈ろう。服でも勉強道具でも、何か被身子の役に立ちそうな物を幾つも。

 

「……! お泊まり会か、良いね! 俺達以外の誰かと交流するってものも悪くないよね!」

「いや、他の子らと交流させるつもりはないが?」

 

 通形は何か勝手に思い至ったようじゃけど、そんな考えが有ってえりを誘ったわけじゃない。現状、この子を人前に晒すことが良いこととは思えぬ。じゃから、儂は別にこれ以上誰かに関わらせるつもりは無い。それをやるのは、えり自身が望んだ時だけじゃ。今はまだ、そんな時では無い。

 と言うかじゃな、通形。何か思い至ることは構わんが、口に出すな。えりが変に遠慮してしまうじゃろ。この子は、直ぐ遠慮してしまうんじゃから。

 

「儂等の部屋に泊まりに来ぬか? 今夜は三人で寝よう」

「……でも……」

「エリちゃん、歓迎しますよぉ。私と円花ちゃんの愛の巣に来ませんか? どうせなら一晩中、遊んじゃったりして」

「ちょっ、ちょっと待った二人共っ!? それ、何か変な事考えてへん……!?」

「は?」

 

 いや、何も考えておらぬが。

 

 ……変な事……?

 

 麗日、会話に加わるのは良いんじゃけど……訳の分からん事を言わないでくれ。何をそんなに慌ててるんじゃ貴様。挙動不審な奴じゃな。普段はそうでもないくせに。

 そんな麗日を見た被身子が、にたりと笑った。ううむ、我が嫁ながら悪どい。そういうとこに惚れてるかどうか聞かれたら、……まぁ首を縦に振ることにはなるんじゃけど。

 

 で、被身子。今度は何が思い浮かんだんじゃ? 程々にしておいてやれよ? お主、止まると言うことを知らんからのぅ。

 

「何もしませんよぉ。ただ三人で、朝まで一緒に過ごすだけなのです。ほんとですよ?」

「ほ、ほんまに……? 渡我先輩ってほら、最近廻道さんとあんな感じやから……こう、教育に悪いんじゃ……」

「じゃあお茶子ちゃんも来ます? ちょっと手狭になっちゃいますけど、四人でも何とかなりますし」

「えっ、ぃ、いやそれは流石に……!?」

 

 ううむ……。被身子が悪どい笑顔を浮かべているせいか、麗日が圧に負けて押されている。これはあれじゃ、押し切られて結局は……的な感じじゃの。

 

「えーっと……。じゃあ僕、先生に許可貰ってくるね。エリちゃん、今日はもっと一緒に遊ぼう?」

「……でも、わた……し……」

「大丈夫じゃよ。儂が付いとる。それとも、儂等がこっちに泊まろうか?」

「……でも」

「良いんじゃよ。何も気にすることは無い。

 ……じゃあそういう訳じゃから、緑谷。一応外泊許可を取って置いてくれ。ほら、教員寮とは言え生徒寮の外じゃし」

 

 えりを抱え上げ、ひとまず教員寮の中に戻るとする。許可が降りなかったとしても、問題無い。儂は教師の言葉に従うつもりは無いからのぅ。じゃってほら、まだまだ不良じゃからの。

 

「じゃあ、私は着替えとか取ってくるのです。お泊まりの件、耳郎ちゃんには話しておくので!」

「すまん、助かる」

「良いんですよぉ。じゃっ、直ぐに戻って来ますので!」

「ぐえっ」

 

 お、おい被身子っ。えりごと儂に抱き付くのはどうなんじゃっ? 危ないじゃろ、儂が踏ん張らなかったら三人とも転んでおったが? まったく……! やはり我慢と言うものを……!

 

 ……まぁ、良いか。今更我慢など覚えさせなくとも。止めても無駄じゃし。まぁその、抱き締められるのは良いことじゃからの。

 なんて考えていると、被身子は儂の頬に口付けをして元気良く去っていった。そんな姿も愛しく思ってしまうのは、……儂が被身子に惚れ込んでるからじゃの。

 

 とにかく、そんなこんなで。今夜は教員寮で過ごすことになった。

 

 

 

 

 

 









三人称による補完は要りますか?

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