待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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麗日と緑谷。そのに

 

 

 

 

 

 

「デクくん、ちょっと良い……?」

「……うん。どうしたの麗日さん」

 

 雄英文化祭が迫り、その準備の為、より慌ただしくなっていく中。寮の中庭で芦戸の指導の下、ダンスの練習に精を出している緑谷に向かって麗日がこっそりと手招きをした。

 ちょうど練習に一段落が付いて、小休憩を取るタイミングだったので、緑谷は素直に麗日からの呼び出しに応じる。頬を伝う汗をジャージの袖で拭いながら、彼は彼女に連れられてひっそりと中庭を離れる。

 

 その時、緑谷は麗日の表情が気になった。いつもは明るく柔らかな表情が、何故か今は固いのだ。その原因が何であるのか少し考えて、彼は直ぐに思い至る。ここ最近、麗日は授業中も訓練中も物思いに耽ってる時間があったなと。きっとその事で相談がしたいのだと結論付けた。それに、どうしてか麗日が助けを求めているようにも見えた。であれば、緑谷出久は動いてしまう。

 

「……その、聞きたいことが有るんやけど……。あ、いや、こんな事聞いて良いのかも分からんへんけど……」

 

 男子寮へと入るための階段の前で、先を歩いていた麗日が足を止めて振り返る。

 

「うん? 僕で良ければ、幾らでも……」

「……ありがと。その、渡我先輩の事……なんやけどね」

「渡我先輩の?」

「うん。デクくんなら、もしかしたら知ってるかなって思って……。廻道さんとも、仲良いと思うから」

「僕が?」

 

 どうにも真剣な、でも何処か陰りがある面持ち。そんな麗日に質問されて、緑谷は首を傾げた。そして、少し思い返す。自分が、あの渡我先輩について知っていることについて。

 

 渡我被身子。二年C組の、学力特待生。個性は『変身』で、あの廻道円花の婚約者で、特待生特典を使ってまで寮では婚約者と同室で過ごせるように掛け合った、……何かと自由奔放な先輩。料理上手で、勉強上手。A組の中には、テスト勉強となると彼女に頼る者はそれなりに居る。

 時折、突拍子もない事を口走って主に廻道円花を振り回していたりもする。

 

 そして、特殊と言える趣味嗜好。それは、好きな人の血を思う存分に啜ること。

 

 そんな彼女について、麗日が聞こうとして居る。だから、自分が思い返せる範囲で緑谷は渡我先輩について思い出したわけだ。そして、麗日が真剣な顔付きをしていることから……ひとつの答えに辿り着く。

 

(……もしかして、渡我先輩の嗜好を見た……とか?)

 

 だとしたら、麗日の表情に納得してしまう。緑谷はI・アイランドで敬愛してやまない師(オールマイト)と共に渡我先輩の嗜好を目撃してしまった上、大慌ての廻道に全て告白された。

 

『これは被身子の嗜好のひとつで、同意の上じゃ。今は興奮しきっててこんなじゃけど、とにかく問題は無い。儂は血液を自分で増やせるし、傷も治せるし……幼い頃からいつもさせてる事じゃから、大丈夫じゃ。それと、ここだけの内緒にしておいてくれ』

 

 その告白に大いに驚いたが、その後で廻道自身が渡我先輩を慈愛に満ちたかのような目で見詰めていたから、告白も懇願も素直に受け止める事にした。邪推してしまう気持ちが無かったとは言えないけれど、二人の間に深い信頼が有ることは知っていたからだ。

 

「……麗日さんも、見たの?」

「……うん。そうじゃないかなって思ってたんだけど、この間教師寮に泊まった時にエリちゃんの部屋で……」

「えっ、あの時にエリちゃんの前で!?」

 

 これには、驚くしかなかった。あの嗜好を、まさか披露してしまうとは思っていなかったからだ。

 

「えっ? ぅ、うん。エリちゃんの前で……やけど。あ、でもエリちゃんは先に寝てたから……!」

「そ、そっか……良かった……」

 

 取り敢えずエリが見ていないと知って、緑谷は胸を撫で下ろす。そして、その行動が余計に麗日の表情を固くさせてしまった。

 

「……デクくんがそんなに慌てるってことは、深刻な問題……なんだよね?」

「深刻……と言えば深刻かも。でもこれは繊細な問題で、廻道さんが居るから大丈夫じゃないかなってオールマイトも言ってたし……僕もそうだと思ってたんだけど……」

 

 個人の趣味嗜好が常軌を逸している。しかし、それに同意している相手が居て、両者の間で秘密として成り立っている。それに介入することは決して簡単な事ではなく、そもそも介入して良い事なのかも分からない。ただ、もしもあの二人が人目も憚らずにあの行為をしていると考えてしまったら、それは流石にヒーロー候補生として黙っては居られない。

 

「え、オールマイトも知っとるん?」

「あっ、え、えっと……! じ、実はI・アイランドの時にたまたまね……!?」

「……でも、オールマイトも知ってるなら大丈夫……なのかな……? 私、どうにかした方が良いんじゃって思ってて……」

「……うん。廻道さんは大丈夫って言うけど、そうだよね。彼女だけに任せっきりにしちゃうのは……違う。

 麗日さん、僕も手伝うよ。本当は、もっと早くこうするべきだったのかもしれないけど……!」

「……! デクくん……!」

 

 緑谷は、ひとつ決意をした。そこには、少しでも廻道の役に立ちたいなんて思いも有ったのかも知れない。何かと背負うものが多い友人を、少しでも支えられたらと。

 

「だから、その、麗日さん。良かったら一緒に、廻道さんの負担を軽減する為に……渡我先輩に献血……? ……そう、献血しよう!」

「え、献血?」

「え?」

「え?」

 

「「……え?」」

 

 

 

 

 

 






秘密の共有、困難への挑戦。これって、距離を縮める為のスパイスですよね。出茶もトガ茶もするってことでもあります。なお、円花バリアーというぶち破れそうにない壁。

三人称による補完は要りますか?

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  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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