待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

244 / 553
雄英文化祭。買い出し

 

 

 

 

 

 雄英文化祭、当日の朝。文化祭が始まるまで数時間程度。今日は被身子と逢瀬(でえと)する気満々なんじゃけど、その前に緑谷の鍛錬に付き合うことになった。あやつの新技……要するに空気砲なんじゃけどな、これが中々に扱いが難しいようでの。立ち止まっての使用ならともかく動きながら連続で使用するとなると、個性の出力が足りなかったり、そもそも出力の切り替えが上手く行かなかったりと苦戦しておる。まだまだ頼りないと言いたいところじゃけど、目を見張るものがあるのも事実。

 何せ前回の校外活動(いんたあん)で、黒閃を経験しとるからの。それ故、呪力が何であるのか理解している。後は死にかければ呪力の核心をしっかりと捉えられるじゃろうけど、そんな事態になって欲しいとは思わん。代わりに、あと二度か三度は黒閃を経験して欲しいところじゃ。そんな機会が訪れるかは、分からんがの。

 

「にしても、こうなるとはの……」

「うん、私も想定外だったよ……。ここまでの威力になってしまうとは」

「よくよく考えれば分かったことなんじゃけどな」

 

 最近。森林の一部が滅茶苦茶になってしまっている。木の幹は砕けたり抉れたりと、元の姿は欠片もない。こうなってしまったのは、緑谷の変貌が凄まじかったからじゃ。呪術師として成長してしまっていると考えると、何とも言えぬ気分じゃけども。

 

「さて緑谷。買い出しに行くんじゃろ? 鍛錬はこの程度にしておこう」

「そ、そうだった……! ロープ!」

「ロープ?」

「出し物で使うんじゃよ。八百万に創って貰えば良いと思うんじゃけどな」

 

 何故わざわざ買い出しに行くんじゃろうな。緊急性が高いんじゃから、頼めばやってくれるじゃろうに。まぁ、芦戸が言っていた「便利道具扱いしないの!」という言葉にも一理あるんじゃが。

 そんなこんなで、朝早くに日用雑貨店(ほおむせんたあ)へ買い出しすることになった。雄英から徒歩十五分程度の場所に有るらしい。儂は九時までに二年しぃ組の教室に向かわなければならぬので、付き合ってる余裕は無い。んじゃけども、緑谷がこの調子じゃからの。時間の猶予は無いんじゃけど、付き合った方が良いじゃろう。出し物を成功させる為じゃ。儂に出来る事は、やってやるとしよう。

 

 と、言うわけで。これから緑谷と買い出しじゃ。被身子に何も言わんで出掛けると後でどんな反応をされるか分からないので、そこは緑谷に連絡して貰うことにする。今朝は携帯電話(すまほ)を忘れてしまったからの。

 

「急いで行こう。おおるまいと、またな」

「気を付けて行くんだよ。君達二人ってほら、色々しでかしちゃうから」

「善処する」

 

 何か失敬な物言いをされたような気がするが、反論出来る材料は残念ながら無いのぅ。儂は不良じゃし、緑谷は何かあれば飛び出してしまうからの。まぁ、ただの買い出しで何か問題が起きるとは思えぬが。

 

 さて。それでは買い出しに向かうとしよう。青山を吊るす縄を買うんじゃったな。多少値が張っても、とびきり頑丈なやつを買うとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日用雑貨店(ほおむせんたあ)での買い出しは、割りと順当に終わった。出し物の最中で万が一が有ったら大変ということで、店で一番頑丈な縄を購入しておいた。まさか緑谷と二人きりで買い物に出ることになるとはの。まっこと嬉しくない。こういうのは、被身子と一緒でなければ。緑谷の携帯電話(すまほ)に「円花ちゃんの浮気者」なんて文章が届いてしまったりしたので、後で謝らなければ。どんな目に遭わされるかは、想像し難いところじゃけど……。

 まぁ、とにかく。とにかくじゃ。買い出しは終わった。後は雄英に戻るだけ。この調子で戻れば、八時半頃には帰れるじゃろう。

 

「ありがとう廻道さん。忙しいのに、付き合って貰っちゃって……!」

「構わん。儂も出し物は、しっかり成功させたいからの」

「ほんと、ありがとう。後で僕も、渡我先輩に謝るから……!」

「覚悟しておけよ。刺されるかもしれんから」

「え゛っ」

 

 ううむ。緑谷が刺されなければよいが。儂が刺される分には問題無いんじゃけども、儂以外が刺されてしまうと大問題じゃからの。被身子を人殺しにするわけにはいかんから、最悪儂が盾になるとしよう。そうしよう。

 

 なんて、考えていると。儂は人にぶつかった。前を見てなかったわけでは無い。横から飛び出された形じゃの。曲がり角で見えんかった。

 

「っと、すまんな。不注意じゃった」

 

 儂がぶつかってしまったのは、長身の大人じゃ。外套を羽織っているから分からんが、細身とは言えん。ぶつかった感じ、多少なりとも身体を鍛えているように思える。

 

「おっと。すまなかったねお嬢さん。紳士として情けない姿を見せてしまった」

 

 ……紳士……? しん、し……? いやいや、その格好で紳士はどうなんじゃ。帽子やら眼鏡やら、覆面(ますく)なんかで顔を隠し切ったこの男が? 側に居る子供……子供? も、顔を隠し切っておるし。なんじゃこやつ等、見るからに不審者じゃ……。

 

「そこの君。ガールフレンドの事はしっかり守ってあげなければ。男子たるもの、紳士でなければな。随分と可愛らしいガールフレンドだ、さぞ……大切なんだろう?」

「え゛っ!? い、いや彼女とは、そういう仲じゃ無いです……っっ!!」

「なるほど、片想いか……」

「片想いね……」

「ちっ、違いますよ!?」

「しっ。まだ朝も早い。大声を出してはご近所迷惑だし、何よりゴールドティップスインペリアルの余韻が損なわれてしまうではないか」

 

 勝手な勘違いをされているようじゃが、放っておこう。というか、何じゃその……ごおるどなんちゃらの余韻とやらは。何処かで聞いたような聞いてないような……。まぁ良いか。英語は分からんからの。

 とにかく訳の分からん二人組じゃけど、背中を向けて去ろうとしている。儂等もさっさと雄英に戻らなければな。

 

「へぇ……。あの家、喫茶店かなんかなのかな。わかんないな……」

「!!」

 

 去っていこうとしていた紳士……のような不審者が猛烈な勢いで振り返った。

 

「ゴールドティップスインペリアルが何か知らなければその発想には至らぬわけだが、君分かる人間かね!? 幼いのに素晴らしい……!!」

 

 えぇ……? 両腕を広げながら近付いてきたんじゃけど……。これは、不審者では? もしかしなくても不審者では? 事案じゃ事案。どれ、赤縛で縛り上げて警察に通報……。

 

「あの、僕はそんなに……。と、友達が淹れてくれたから知ってただけで……」

「ホホゥ。そんな高貴な友が――……」

「はい、あの……人には恵まれてて……」

 

 ……ところで、緑谷。不審者と話すなとは言わぬが、その顔は何じゃ? 何か、引っ掛かっているような表情をしておるが。それは不審者の方も同じじゃの。さては知り合いか何かか? こんなのと?

 

 緑谷、付き合う人間は選んでおけ。お主、ただでさえ癖のある奴と幼馴染みなんじゃから。

 

「……では私はこれで。気を付けたまえよ、少年」

「待ってください。……ルーティーンってやつですか……?」

 

 ……。……事情は、知らん。まるで分からん。分からんが、緑谷の顔付きが悪党と対峙した時のそれになった。つまり、こやつにとってこの不審者二人は見逃せないと言うことじゃ。捕えるつもりか、倒すつもりか。どちらにせよ、変な事態になって来たのぅ。仕方ない、時間が無いんじゃから手早く済ませるとするか。早く戻らないと、被身子の機嫌が何処まで悪くなるかも分からん。

 

「……何の事かな?」

「動画、見ました」

「……ラブラバ、カメラを回せ」

雄英(うち)に、手ェ出すな……!!」

 

 いまいち分からぬ状況なんじゃけども、とにかく緑谷はこの不審者二人を止めるつもりのようじゃ。そんなこやつを見て、不審者共も臨戦態勢に入る。文化祭前じゃというのに、騒々しくなってしまいそうじゃ。

 

 では、手っ取り早く終わらせるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 






円花とジェントルって関わらせる必要無いかなーって思ってたんですが、何だかんだ書いておくべきかなと思い挿入投稿です。エアフォース強化回でもあります。
これにより円花のタイムスケジュールが滅茶苦茶忙しいことになるんですけど、まあ一晩中歩き回れる体力は有りますしセーフってことで。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。