待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
うっぷ。胸焼けじゃ胸焼け。被身子のくらすめえとから貰ったくれえぷが、常軌を逸した程に甘くての……。まさか朝からこんな目に遭ってしまうとは……。
ま、まぁ。朝から被身子がずっと笑顔じゃから良しとしよう。次にくれえぷを差し出されたら、流石に断るが。当面、甘いものは食べたくないのぅ。
「おそーーい! 何してたの!? みんな準備出来てるよ!?」
九時五十分と、少し。出し物の為に用意された特別会場の裏手にて、儂は芦戸に怒られた。集合時間に遅れてしまったのは、悪いとは思っている。悪いとは思ってるんじゃけど、仕方ない事情が有ったんじゃ。じゃって、被身子と
「すまん。直ぐ準備する」
「どうせ渡我先輩とイチャついてたんでしょ!? はい、これすぐ着て!」
「う、うむ。相分かった……」
裏手から会場に足を踏み入れつつ、芦戸に押し付けられた
とにかく、じゃ。
「廻道、やっと来た……! 準備は良い? 打ち合わせ通りにね!」
「うむ、すまん。大丈夫じゃ」
暗い舞台の上。耳郎に返答しながら、儂の立ち位置へ。右には耳郎、その向こう側には上鳴。その後ろには八百万。左には常闇。後ろには、舎弟がおる。さて、もうそろそろ始まるのじゃろう。舞台の上に、緊張が張り詰める。何となく左を見ると、常闇が深呼吸を繰り返している。ので、肘で右腕を小突いてやった。そしたら目が合って、常闇は黙って頷いた。後ろから舌打ちが聞こえたことは、気にしないでおこう。
前を見ると、沢山の観客。その中には、見覚えのある顔が幾つか有るような気がする。被身子の姿はまだ見えない。
「行くぞコラァアアアア!!」
舎弟が叫んだ。どうやら時間のようじゃ。
「雄英全員―――」
にしてしも、じゃ。急に叫ぶのはどうなんじゃ? いや、むしろ発破になるか。舎弟の声で、舞台の上の全員が気を引き締めたからの。
「音で殺るぞぉおおおお!!!」
とんでもない爆破音が背後から聞こえた。熱と、光と風も。まったく、それをやるなら事前に言わぬか。派手に始めおって。しかし、この上無い始まりのような気がするの。雄英全員、音で
何より、被身子と約束しとるんじゃ。格好良いところを、ちゃんと見せねば。
舎弟の出す音に合わせて、音を奏でる。ぴっくを落とさぬように、気を付けながら。隣の常闇は、……うむ。大丈夫そうじゃの。上鳴もじゃ。今日まで結構な時間を練習して来たんじゃから、そうでなくては困る。何度指が痛くなったか分からん。舎弟は怒鳴り散らしてばっかじゃったし、その度に耳郎と儂で縛り上げる羽目になったし。
それもこれも、今日と言う本番を成功させる為じゃ。失敗するつもりは、無い。
あぁ、何じゃ。儂、今日が楽しみじゃったんじゃな。被身子との
「よろしくお願いしまぁああぁす!!!」
さて。耳郎が歌い始める。集中するとしよう。今日まで、頑張っていたからの。儂等への指導も、歌の練習も。良いものを届けたいと、
儂等の前に立つ踊り組は、上手く踊っているのぅ。上鳴は……大丈夫じゃ。先走っていない。常闇も、しっかり音を立てている。八百万は、そもそも練習の時から文句無しじゃ。そして耳郎は、……うむ。大丈夫じゃの。なら、後は儂じゃ。ぴっくは落とさん。楽譜は覚えている。脳に叩き込まれたと言っても良いが。
そうこうしている内に、緑谷が青山を放り投げた。直後、眩しくなった。その時、観客席の真ん中辺りに被身子の姿が見えた。隣には、何故か通形。そして通形の腕の上には……えりが居る。
……は? 連れて来たのか? いや、良い。じゃったら尚更、頑張るしかないのぅ!
っと。いかんな。常闇、集中するのは良いんじゃが肩に力が入り過ぎじゃ。それを言葉で指摘するのは……良くないか。したところで、音が喧しくて聞こえないじゃろう。じゃから首から血を出して、常闇の肘に付着させる。そしたら直ぐ、常闇が儂を見た。ので、伝われば良いと思い微笑んでおく。一応、小声で力を抜けと言っておいたが。
「……」
頷かれた。大丈夫そうじゃの。
「サビだ! ここで全員……!!」
さて。ここからは忙しいの。演奏に、術式順転。合間を見て反転術式。まぁ、問題は無い。この程度、呪い合いと比べたら簡単なものじゃ。
「ブッ殺せ!!!!」
その通りにしよう。あくまでも主な手段は、音でじゃけど。首や肘から多量の血を出し、作り上げるのはだいたい原寸大の……だあくしゃどうじゃ。血液を操作し続け、だあくしゃどうが動き回っているように見せる。儂が作っただあくしゃどうの動きに合わせて、本物のだあくしゃどうが楽器を両手に踊り出す。これが中々に、苦しいものじゃ。何せ、結構な血液を体外に放出してしまっているからの。その上、血液を補充する暇がしばらく無い。なのに演奏は止められん。そんな真似は出来ん。倒れるわけにはいかんから、最後まで気張るとするがの。
ふと、被身子と目が合った。えりをしっかりと抱いて、浮いておる。二人共、麗日の手に触れたんじゃろう。儂を見て、笑っておる。あぁ、もう。そんな笑顔をされたら、尚更しっかりしなければ。
演奏が更に盛り上がっていくに連れて、追加で血液を体外に出していく。血のだあくしゃどうを膨らませて、形を変える。そして、より激しく動かし続ける。
まだ、演奏は続く。えりとも、目が合った。その時……。
えりが、笑った。
……あぁ、良かった。ここに連れて来られていたことに気付いた時は心配じゃったが、笑えたのなら、良かった。そう思う。少し音が遠退いた気がする。いかん、血液が不足している。行き過ぎた貧血じゃこれは。そろそろ血液を補充しなければ、倒れてしまう。それは駄目じゃ。もう少し気張れ。せめてこの演奏が終わるまで、倒れるな。
大丈夫じゃ。術式による貧血には慣れている。
さぁ、まだまだじゃ。まだまだ演奏は続く。儂のすべき事を、全てやろう。被身子の為に。そして、えりをもっと楽しませる為にじゃ。
やがて。儂等の出し物は幕を閉じた。結果と出来映えは、文句無しじゃ!
◆
……はぁ。疲れた。そして危ないところじゃった。この出し物を明日もやると考えると、今晩の内に血液の備蓄を作っておこう。体内の血液だけで行けると思ったんじゃけど、結構危なかった。が、無理をした甲斐はあったの。被身子もえりも、笑顔じゃった。後は良い、儂はそれだけで良い。会場裏でしゃがみ込んで居ると、誰かが儂の前に立った。と思ったらしゃがんだ。顔を上げると、そこに居たのは。
「……大丈夫ですか?」
被身子じゃった。心配そうな顔をしている。
「大丈夫じゃよ。演奏中は、流石に苦しかったが」
「いっぱい、血を出してましたもんね。貧血で倒れないか、ハラハラしたのです」
「すまん。もう大丈夫じゃ。血液は足りとるからの」
「はい。お疲れ様でした。とっても、カッコ良かったのです!」
「そうじゃろうそうじゃろう? ふふん。自慢しても良いんじゃぞっ」
もっと褒めろ。お主の為に、頑張ったんじゃから。明日も同じ事をやるが……何、今日よりは楽にやれるじゃろう。あの程度の貧血ならば、まだまだ耐えられる。倒れるまでは行かない筈じゃ。とは言え、被身子に心配されたくない。やはり、血液の備蓄を用意しておかねば。確か、この時代は血液ぱっく……とか言うので血を保存出来るんじゃったな。医療品じゃそうじゃから、りかばりぃがあるを頼るとしよう。
「でもぉ、ちょっと……トガには刺激が強かったかなー……なんて」
「……ん。おいで」
こうなることは、まぁ分かっていた。物欲しそうな顔をしおって。仕方ないから、両腕を広げて被身子を待つ。そしたら、直ぐに抱き付いてきた。だけではなく、儂の首に歯を押し当ててくる。一応、周囲を確認する。よし、誰も居ない。なら、大丈夫じゃの。
「良いぞ。ほら」
「ん……っ」
「っ、んん……!」
噛まれた。それが気持ち良くて、変な声が出る。ううむ……すっかり、この行為が気持ち良いものじゃと思うようになってしまった。心も、体もじゃ。
それを嫌とは思わん。むしろ、嬉しいかもしれん。こんなにも被身子に求められることが、悦ばしい。
「んっ、ひみ……こ……っ」
何じゃか、胸が高鳴って来た。もっとされたいとも思うし、別の事をされたいとも思ってしまう。出し物が上手く行ったからか、どうにも達成感と高揚感が強くて。今、被身子が欲しくて堪らん。流石に外で始めてしまうのは……。いや、でも……此所には誰も居ないんじゃよな。儂と、被身子以外。じゃったら、その……。
い、いや待て。流石に、流石に外でしてしまうのは駄目じゃ。誰かに見られてしまったら、それこそ大問題になってしまう。自制しなければ。今は、血を与えるだけじゃ。被身子と求め合うのは、文化祭が終わって……夜になってからじゃっ。
「んぅ……。ひみ、こ……」
でも、でも。
ああ、困った。これでは
「……好き、じゃ。愛してる……っ」
思いっきり被身子を抱き締めて、偽りの無い本心を口にする。そしたら、被身子はますます儂の血を吸い始めて。
結局、この後。たまたま麗日がやってくるまで、儂は被身子に血を吸われ続けた。こんな場面を目撃してしまった麗日は、流石に慌てていたの。申し訳ない。でもでもじゃって、ちうちうされると……儂も嬉しくてのぅ。つい、甘やかしてしまうんじゃ。
ダークシャドウ(血)とダークシャドウ(本物)のダンスセッションはホラーな絵面な気しかしませんが、まぁ照明効果で何とかなったと言うことでどうかひとつ。
それはそれとして、チウチウされると感じる円花です。そのうちイくようになるかもしれません。あーあ。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ