待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
……麗日辺りが直してくれんかのぅ。無理か。儂が被身子を甘やかしてしまうように、多分麗日も甘やかしてしまうじゃろう。と言うかそもそも、二人は友人以上の関係にならなさそうじゃし。
「という訳で、お茶子ちゃんに緑谷くんっ。ダブルデートしましょう!!」
「え゛っっ」
「だっ、ダブ、デェッ……!? 」
出し物の後始末として氷の残骸を処理していると、未だにめいど服な被身子が大きな声でそんな事を宣った。氷を浮かばせ運んでいた麗日は突然汗をかきだして硬直し、緑谷は目を丸くして固まった。被身子、まだ諦めていなかったのか。まぁ諦める筈が無いか。儂の許嫁はわがままじゃからの。こうしたいとか、あれがしたいとか思ったら引くことは無い。
「な、何を言っているんだっっ!?」
何を言っとるんじゃろうなぁ……。儂にも分からん。いや、分かりたくない。
「しましょう、ダブルデート! 私と円花ちゃんと、お茶子ちゃんと緑谷くんで!」
「で、ででっ、デートって言うのは恋人同士が遊園地でクレープを半分こすることだろっ!?」
まぁ、間違いではない。……と思う。間違ってはいないと思うんじゃ。なのに何故かこう、致命的に間違っているように感じてしまうのは何故じゃろうか。そもそも、くれえぷをどうやったら半分こ出来るんじゃ? あれはそういう食べ物ではなくないか……?
うむ、深く考えるのは止そう。何と言うか、知らん方が良い気がするからの。いやしかし、どうしても気になる。
「くれえぷって、半分に出来なくないか……?」
聞かない方が良い気がするのに、つい聞いてしまった。じゃって気になるんじゃもん。
「あー、それは好きな子と分け合って食べたいってことですよぉ。あーんですよ、あーん」
なるほど。そういう事、なのか? 緑谷を見てみると、何を想像したのか顔が真っ赤じゃ。同時に汗が酷く、何なら徐々に青ざめているような気さえしてくる。どうやら被身子の言う通りらしいの。まぁ確かに、食べさせ合うのは悪いことではない。何と言うかこう、幸せじゃものな。
で、麗日。何故緑谷を見て、真顔になっているのか。何か思うところが有るんじゃろうけど……。
「という訳で、しましょう! みんなでデートなのです!」
「と、渡我先輩っ! しない、しないから……っ!」
「そ、そうだよっ! う、麗日さんと僕なんかがデートなんてそんな……っ! し、失礼だよ!?」
「……」
あ、また麗日が真顔になった。目が何かを言いたそうにしている。どうも緑谷の言い分に納得していないようじゃ。
二人は乗り気では無いようじゃ。まぁそうじゃろうな。しかし、何と言うか諦めてくれ。こうなった被身子は止まらんから、抵抗するだけ無駄なんじゃ。流されるだけ流されておけ。最終的には良かったと思えるから。最終的にはの。うむ……。
「かっ、廻道さん! 渡我先輩を何とかして……!?」
「緑谷、諦めろ。時には諦めが肝心じゃ」
「遠い目をしてる……っ!?」
それはこの間、麗日にも言われた気がするの。別にそんな目をしてるつもりは無いんじゃけどなぁ。ただ少し、被身子のわがままについては何も言うつもりが無いだけで。それに、好きにさせてやるのが一番じゃと思っとるし。
大丈夫じゃ、最後は良かったと思えるから。黙って流されるのが肝じゃぞ。うむ。
「と、とにかく! ダブルデートはしないから。もぅ、渡我先輩っ! からかうのは止めて……!」
「からかってませんよぉ。本気の本気なのです。お茶子ちゃんは頑固ですし、トガも譲れないので」
「だからって……!」
「まぁ、落ち着け。別に悪意が有るわけじゃないんじゃよ」
悪どい笑みを浮かべてはいるものの、そこに悪意が無いのは儂が一番知ってることじゃ。大抵、儂にとってろくでもない事なだけで。でも結局は、それも悪くないと思ってしまうからの。被身子はまっこと仕方のない奴じゃけども、人が本気で嫌がるような真似はしない。その辺はしっかり線引きがじゃな?
っと。誰か近付いて来たの。誰かと思えば、通形じゃ。それと、えりじゃ。今日はおめかしをしておるの。うむ、可愛らしいものじゃ。
「まどか、さん。ひみこさん。でくさん、うらびてぃさん」
「エリちゃん……! 見に来てくれたんだね……!」
「ぅ、ん……。外、こわい……けど。でも、まどかさんが、大丈夫って。るみりおんさんも居てくれて……だから」
「そうじゃ。大丈夫じゃったろ? そもそも、えりは呪われてなんかおらんからのぅ」
えりの前でしゃがみ込んで、いつものように頬を撫でてやる。本音を言えば、外に出てくるとは思わなかった。どうやら通形が連れ出したようじゃが、結果としてそれは正解じゃったらしい。とは言え、儂に一言言って欲しかったがな。お陰で驚かされた。ぴっくを落とさなかったのは、運が良かったとしか思えん。
とは言え、良かった。えりが外に踏み出せた。なら、これからは大丈夫じゃろう。まだまだ見守り続けることに変わりは無いがの。
「……あのね。さいしょは、くらくて怖くて、おっきな音がして、もっと怖くて……。でも、るみりおんさんが居て、ひみこさんも来てくれて、それでね……」
「うむ」
「それで、ぴかって光って、うらびてぃさんの手に触ったら、ふわふわってして、それで……。わぁーって、言っちゃって……!」
「……うむ」
そうか。……良かった。楽しんでくれたなら、こうして笑ってくれるようになったのなら。それだけで、頑張った甲斐が有ったと言うものじゃ。被身子も満足してくれてたしの、今日の演奏は、踊りは、儂としては文句無しじゃ。
「すっごく、楽しくって。面白くって、だから……。また、見たいなって……」
「……! うん! 明日も、明日もあるからおいでよエリちゃん! 僕、もっと頑張るから……!」
「良かった、エリちゃんが笑えて……! ほんま、良かったぁ……!」
「んふふっ。カァイイねぇ、カァイイねぇ……♡」
いや、被身子。子供相手にその反応はじゃな……。と言うか貴様。えりは、確かにかぁいいが……それは浮気か? さては浮気か? 堂々と目の前で浮気するなど、許さんぞ。これは後でお灸を据えねばなるまい。浮気じゃ浮気っ!
「……あしたも、見て良い……?」
「もっちろん! 大歓迎だよ!」
「明日も見に来てね、エリちゃん」
まぁ浮気については、ひとまず置いておくとして。とにかく、えりがこうして笑えているのなら良かった。
さて。それじゃあさっさと片付けを終わらせて、それから被身子と
「という訳でさ! 俺はエリちゃんと一緒に回ろうかと思うんだけど、みんなも一緒にどうかな?」
……何じゃって?
「い、良いと思う……! ね、麗日さん!」
「うん、そうだねっ! みんなで回ろうよデクくん!」
これ幸いとばかりに、緑谷と麗日が通形の提案に飛び乗った。それは別に良い。被身子は不服に思うじゃろうけど、だぶるでえとの機会は……またと言うことで。しかし、しかしじゃな。ひとつ大きな問題が有る。儂、今日は被身子と
……じゃけど。ここで通形の提案を断ってしまうと、もしかしたらえりが悲しんでしまうかもしれん。事ここに来て、悲しませるような真似はしたくない。したくないんじゃけども……っ。
……ぐぬぬ……!
「んー……。それは、……むぅー……」
被身子が拗ね始めた。儂を見て、拗ねている。そんな顔をしないで欲しい。儂じゃって、お主と
いや、待て。体がふたつあったとしても、結局こうなる気がしてならん。じゃって、どちらも被身子と
被身子と顔を見合わせること、数秒。やがて被身子が、何故か徐々に悪どい笑みを浮かべ始めた。……おい、貴様いったい何を思い浮かんだ? さては、ろくでもない事じゃな?
「……じゃあ、良いですよ? お供しても。でもその代わり、緑谷くんとお茶子ちゃんにはひとつ条件を呑んで貰うのです!」
「えっ」
「明日ぁ、ダブルデートしましょう! そしたら今日一日、トガは我慢しますので!」
……ろくでもない事じゃった。緑谷と、麗日にとっては。
「えっ、いやっ、待って渡我先輩!? その話はもう終わった筈じゃ……!?」
「終わってませんよぉ。今日はみんなで文化祭を楽しみましょう。代わりに、明日はダブルデートなのです!」
「だぶるでーと?」
「あ、ダブルデートって言うのは、男女の蜜月な行楽だよね!」
「みつげつなこうらく?」
おい。おい通形。貴様はえりに何を教えようとしてるんじゃ。余計な知識は教えんで良い。えりには、まだ早い。
「ダブルデートしてくれないなら、トガは円花ちゃんとデートしに行きます。そしたらエリちゃんが悲しんじゃうかもしれないですねぇ……」
「……」
「……」
「いや、待て被身子。それは駄目じゃ」
流石に、子供をだしにするような真似は止さぬか。それは許さん。お主がどれだけ、だぶるでえと……をしたいのかはよく分かった。よく分かったが、えりを利用しようとするのは許さぬ。
……じゃから、仕方ない。今回は、儂が一肌脱ぐとしよう。要するに、麗日や緑谷と文化祭を回りたいってことじゃろ? じゃったら、簡単じゃ。そう難しいことでもない。
「緑谷、麗日。明日、儂と被身子と一緒に文化祭を見て回らんか? だぶるでえと、とかではなくて。友人として、四人で遊ぼう」
「……そ、そういうことなら別に……。僕は、麗日さんが良ければ……」
「麗日、どうじゃ?」
「んん……。と、渡我先輩を止めてくれるなら……」
「善処する。約束しよう」
「じゃあ、えっと……。それなら、私も明日は四人で遊びたいかな……なんて」
「……と言うわけじゃ。これで良いじゃろ?」
緑谷と麗日の同意は得られたので、最後に被身子に問い掛ける。これで拗ねられたら、もうどうしようもない気がするの。その時は……いっそ二人に頭を下げてみるか?
しかしまぁ、良くない考え方じゃのこれは。結局、子供の善意を利用する形になってしまうからの。
「んんん……。分かりました。じゃあ明日は……四人で、デートとかじゃなくて遊ぶのです。その代わり、今日はみんなと文化祭を回るのでっ」
相変わらず拗ねているが、一応は首を縦に振ってくれた。決まりじゃの。かなり惜しい気持ちは有るが、今日はこの場の全員で文化祭を見て回る。その代わり、明日は四人で文化祭を楽しむ。
ひとまずは、これで何とかなったと思いたいのぅ。なったよな? 誰か、なったと言ってくれ。
さて、それじゃあ……。やはり惜しくはあるんじゃけども、えり達と文化祭を見て回ることにしよう。
そう言えばスマホを新しくしたことで作業環境が変わったので誤字脱字がヤバい程増えるかもしれません。すまぬ。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ