待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「まず最初は、食べ物からだよね! エリちゃん、朝飯前だから!」
「……おなか空いた……」
「貴様、朝食も摂らせずに連れ出したのか」
「まぁまぁ屋台とかいっぱいあるしさ。お腹いっぱいで臨んじゃ勿体ないって」
「って言っても、エリちゃんはそんないっぱい食べれないと思いますよ?」
「そこは、ほら……。みんなで分け合う、とか?」
「んー……それやと、たこ焼きとか? ちょうど六個入りで売っとるよ?」
とまぁ、そんなやり取りを交わした後。儂等六人は、取り敢えずえりの胃袋を満たす為に動き始めたわけじゃ。じゃから一番始めに足を運んだのは、校門から昇降口までの距離の間に飲食系の屋台が乱立する区域。経営科やら普通科やらが、通り道を挟んで火花を散らしている。何故か売り上げ勝負が行われているらしい。普通科が経営科に挑むには分が悪いと思うんじゃけど、何か秘策でも有るんじゃろうか? いや別に、結果は気にならんのじゃけど。
「たこやき?」
「もしかして、食べたこと無い? たこ焼きって言うのはね、丸くてたこが入った……結構みんなが好きな食べ物……かな。こういうお祭りでは、よく売ってるんだ」
「蒟蒻が入ってたりすることもあるよ!」
「お餅入れると美味しいんだよねぇ……」
……蒟蒻? 餅はまだしも、蒟蒻……? 通形よ、貴様いい加減なことを言っとらんか? いやまぁ、料理上手の被身子が何も言わないのであながち嘘ではないのかもしれぬが……。まぁ、とにかく。えりはたこ焼きを食べた事が無いようじゃ。であれば、……うむ。取り敢えずたこ焼きを買うことにしよう。何事も経験じゃからの。
しかしたこ焼き、たこ焼きか。祭りの中でたこ焼きを食べるのは、果たしていつ以来じゃ? 実は苦手なんじゃよな、あれ。じゃって、舌を火傷してしまう。出来れば食べたくないが、まぁひとつだけならば良いか。
「たこ焼き、六個入りのをひとつ」
「へーい、たこ焼き一丁!」
取り敢えず、注文しておいた。頭に鉢巻きを巻いた誰とも知らん生徒が、手際よくたこ焼きを作っていく。中々動きが素早い。器用なものじゃの。今の内に支払いの準備を……って、財布どこじゃっけ。確か、制服の
「財布ならトガが持ってるのです。円花ちゃんに持たせとくと、落っことしちゃうので」
「あー……、ぽんこつやからね……。落としそう落としそう……」
「いや、そこまでぽんこつではない。第一、儂はぽんこつではないが?」
「いやいや、ブラッディはポンコツで有名だよ。しょっちゅう迷子になるんだって?」
「は?」
じゃから、誰がぽんこつじゃって? どいつもこいつも、ぽんこつ扱いばかりしおって。そろそろ怒るぞ? 儂、怒って良いよな?
あとっ、ぽんこつで有名ってなんじゃっ。そんな変な扱いで、有名になどなりたくないんじゃけど!?
「ぽんこつ?」
「あ、それは円花ちゃんが今日もカァイイって意味なのです」
「まどかさんが、今日もかぁいい……」
いや、違う違う。そんな意味ではない。被身子貴様、えりに嘘八百を教えるのは止さぬか。将来、それでえりが恥をかくかもしれんのじゃぞ。そこはしっかりと正しい意味を教えておけ、まったく……。
「へい! たこ焼きお待ち! 400円ね!」
……四百? 随分と安いの。昔、両親に屋台で買って貰った時はその倍以上はしたと思うんじゃが……。まぁ、良いか。値段なんて、特に気にしなくとも。
「ちな、カップル割りで最大100円安くなるけど、どうする?」
「あ、じゃあそれで」
「あいよ。それじゃあ、カップルって証明して貰おうか!」
「は?」
は?
「ですって、円花ちゃん。じゃあ、しちゃいましょうか」
何を? 暖簾にぶら下げてある
って、こら被身子。両肩を掴むな。迫るなっ。
「ちょっ!? ちょっ、エリちゃんは見たらあかんよ!?」
「え、エリちゃんっ! あっちのベンチに、一緒に行って待ってよう! 廻道さんと渡我先輩が買ってきてくれるから……!」
「……? ……うん?」
緑谷と麗日が、大慌てになってえりを何処かに連れて行った。まぁ、えりみたいな幼い子に見せるべきでは無いのは分かる。分かるんじゃけど、その反応は若干解せぬ。それと、通形の姿が見えぬ。あやつ、何処に行った?
なんて考えていたら、音を立てて
「デートは出来ませんでしたけど、イチャイチャするのはありですよね!」
儂を抱き締めながら、被身子が高らかに宣言した。それには同意じゃ。儂じゃってそうしたい。えりの前でする事では無いとは思うが、思い返してみれば儂の両親も儂等が幼い頃に人目も憚らずに愛し合っていたの。流石に手を繋いだり、
なら、それと同じぐらいの事はしても良いじゃろう。そうこうしている内に、紙の容器に入った出来立てのたこ焼きが手渡された。ので、それは被身子に持って貰う。儂は、被身子の手を取り腕を抱き寄せた。うむ、このくらいなら良いじゃろう。最近は、いつもしているような気がしないでもないが。
◆
たこ焼きは、うむ。味については言及しないで置くとする。舌を火傷することが分かっていたから、ある程度冷めるのを待ってから儂は食べた。と言うより食べさせて貰った。そして舌を火傷した。表面は冷めてそうな感じじゃったのに、何故中身はまるで冷めていないのか。直ぐに治せるとは言っても、解せぬものは解せぬ。儂、もうたこ焼きは被身子のしか口にしない。そう決めた。
たこ焼き以外にも、まぁ色々と口にする羽目になった。焼きそばとか、お好み焼きとか、ふらんくふるととか。通形があれやこれやとえりに食べさせたがって、あれやこれやと買ってきおった。で、えりはそれらを一口二口ずつ食べてお腹いっぱいになってしまった。残りは儂等で消化することになったんじゃが、儂は今朝のくれえぷのせいか食欲が無い。いやそもそも、外食じゃとどうにも食欲がじゃな……。
……ううむ……。胃袋を掴まれているどころか縛り付けられているような気さえしてくる。文句は無いがの。今更、被身子の手料理以外を好きになるつもりは無いし。じゃけどこう、掴まれっぱなしと言うのも何か負けた気がするの。やはり覚えるか、料理。なに、夜中にこっそり練習すれば止められることも無いじゃろう。そうしよう。
それはともかく。えりの腹が満たされたところで、儂等はまた動き始めた。雄英の敷地内は、広い。組も多い。つまり、見て回れるところは沢山有るという訳じゃ。通形や緑谷がえりが楽しめそうなところを幾つか提案して、その中からえりが興味を示したところを回るわけじゃな。で、最初に選ばれたのは……。
三年えいち組。渾身の息抜き作品、鏡の迷路じゃった。……迷路? 鏡? いや、何が楽しいんじゃそれ。と言うか、息抜きって何じゃ息抜きって。まさかとは思うが、片手間に作ったのか?
技術者とは変態の集まりだとは聞くが、ううむ……。まぁ、深くは考えないでおこう。そうしよう。深く考えてはいけない気がするんじゃっ。
「あはっ、凄いですねこれ……!」
「きれい……」
「うわぁ、幻想的やねぇ……」
案内役から説明を受け、中に踏み入ってみると
じゃけど、それよりも。反射した光に当てられた被身子に目が奪われる。普段より……何じゃろう? 三割増しぐらいに、魅力的に見えるというか何と言うか……。
「なるほど、どっちかって言うとステンドグラスに近い感じなんだ。透明感が凄い。でもしっかり顔が写るし、これはマジックミラー的な感じなのかな? あ、よく見ると小さな照明が向こう側にあって、それがこの幻想的な光を作り上げて……」
「解析かよ!? 物好きだな君も!」
……。何か、台無しにされてしまった気分じゃ。どんな感想を抱こうが貴様等の勝手ではあるんじゃけど、空気を読め空気を。もうこの迷路の中では無視してしまおう。
それにしても、それにしてもじゃ。光を浴びた被身子に、つい目を奪われてしまう。愛おしいのはいつもの事じゃけど、こんなに愛おしかったけのぅ……?
「まどかさん」
「ん、どうした?」
「……いこ?」
えりが、儂の手を握った。儂等が立っているのは、まだまだ入り口。迷路の始まりでしかない。迷路なんじゃから、ちゃんと攻略しなければな。いつまでも突っ立っていると、後続の客の邪魔にもなるじゃろうし。
「うむ。行くとするか。はぐれたら大変じゃから、手を離すなよ?」
「うん」
「それは円花ちゃんもです。ぜっったい、迷子にならないでくださいね?」
「廻道さん、渡我先輩から離れたらあかんよ? エリちゃん、廻道さんから手を離さないでね。このお姉ちゃん、目を離すとすっごい迷子になっちゃうから」
「うん。はなさない……!」
おい、何で儂が迷子になる前提で話を進めるんじゃ貴様等。この状況で迷子になる筈が無いじゃろう? まったく、いつまでも儂を方向音痴扱いしおって。儂は断じて方向音痴などでは……。いや、……方向音痴……なのは、とっくに認めているところではあるが。
しかし、しかしじゃなぁ!? こうも方向音痴扱いされれば、歯向かいたくもなるんじゃけど!?
で、この後。儂等六人はまず目の前の迷路を探索したり、別の出し物を見に行ったりと、大いに文化祭を楽しんだわけじゃ。えりが疲れ切って、眠くなってしまうまで。
結局。被身子との
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ