待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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雄英文化祭。朝帰り

 

 

 

 

 

 昨晩は、まぁ大変な目に遭った。被身子と母が変な話題を繰り広げての。そのせいで、精神的に酷く疲弊させられてしまった気がする。その後は被身子に血や体を求められて、結局深夜まで交わってしまったし。実家を連れ込み宿の代わりにするのは如何なものかと思わんでもないが、儂はどうしたって被身子を止められぬからの。野球拳とか言う変な遊びも負けてしまったし、昨晩はまっこと散々じゃった。

 まぁ、別に良いがな。被身子がずっと嬉しそうにしていたから、文句は……有るには有るんじゃけど。それでも、許してやるとしよう。惚れた弱みってやつじゃ。でも、いつか勝つ。負けっぱなしは癪なんじゃ。そろそろ勝っても良いような気がするが、ううむ……。

 

 とにかく。そんなこんなで、儂と被身子は雄英に朝帰りしたわけじゃ。そしたら、寮に戻る途中で森林へと向かう緑谷を見掛けた。ので、被身子は先に帰らせて少し顔を出すことにした。また儂に気付いておらんようで、どうにも警戒が甘い緑谷は森林の奥へ。辿り着いた先には、やはりと言うか何と言うか、おおるまいとがおった。

 

 今朝も朝から鍛錬をこなすようじゃ。文化祭が始まれば麗日も交えて儂等と逢瀬(でえと)するというのに、何をやっとるんじゃか。友人として四人で遊ぶ予定ではあったが、それは被身子曰くだぶるでえと……らしいぞ?

 つまり、四人で逢瀬(でえと)するわけじゃ。鍛錬に勤しむなとは言わぬが、今日に限っては程々にしておいた方が良いと思うが。じゃって、被身子が居るんじゃから。

 

「朝から精が出るのぅ。調子はどうじゃ?」

「かっ、廻道さん……!?」

「やぁ、おはよう廻道少女。昨晩相澤くんが物凄く怒ってたけど、……何かしたの?」

「許可も取らず外出して外泊した」

「HAHAHA! この不良少女めっ。そういうのは、……止めようね……?」

「と、言われてものぅ」

 

 本音を言ってしまえば、相澤に対して遠慮をするつもりはない。じゃって嫌いじゃもん。あやつが何を考えて被身子を囮にしようとしたかは知らんが、理由が何じゃろうと儂は許してやらん。せいぜい手を焼け。両手が焼け焦げるぐらいに困らせてやろう。それに、もはやあの男は儂の担任の教師ですらない。儂、英雄(ひいろお)科は除籍されとるんじゃし。

 そういえば、緑谷は呪術科についてどう思ったんじゃろうな? まさかとは思うが、根津校長の話を受けては居ないよな……? これは、聞いておかなければの。

 

「そうじゃ緑谷。校長から話は聞いたか?」

「えっと……呪術科の事? それなら、うん……。聞いたけど……」

「受けてないじゃろうな?」

「……うん。断ったよ」

 

 そうか。なら、良かった。これで呪術科に移籍していたら、思わず殴ってしまうところじゃった。

 当たり前の事じゃけど、緑谷が目指すのは呪術師などではない。目指しているのは英雄(ひいろお)じゃ。それも、平和の象徴の後継。呪術師になってる暇など、こやつには微塵も無い。そんな暇が有るなら、一秒でも多くの鍛錬をして欲しいものじゃ。緑谷は、まだまだおおるまいとにはなれぬからのぅ。

 

「廻道さんは、受けたんだよね……?」

「……それについては、すまん。ひいろお科に残ると言ったのは、儂なのにな」

「んん……。でも、その……仕方ない部分も有るって分かってるから」

「すまん。約束を違えてしまった」

「……寮には、居てくれるんだよね?」

「表向き、ひいろお科のままじゃからの。寮は変わらん。ただ、授業には一切出ないで良くなった」

 

 もう、儂がくらすめえと達と同じ授業を受けることはない。雄英を卒業するその日まで、儂は授業の一環として呪霊を祓い続ける。出掛けるのは夜じゃ。子供達とは、生活時間が合わなくなってしまうじゃろう。

 それを寂しいなどとは思わんが、申し訳ない気持ちなのは(まこと)のことじゃ。

 

「たまには、訓練とかに顔を出してよ。みんな、廻道さん目指して訓練してるからさ……」

「相分かった。時折、顔を出すとしよう」

 

 儂自身、何人かに用があるからの。特に轟。あやつとは、これから先……何度じゃって手合わせしたいからのぅ。少なくとも、一つ目を祓うまでは。

 

「ところで緑谷。手合わせするか?」

「うんっ。よろしく廻道さん……!」

「廻道少女、出来れば遠距離戦主体でやってほしい。まだまだ少年には課題点が多いからね!」

 

 ……いや、まぁ。お主の目からすればそうじゃろうけど。しかし大抵の事を「こうかなっ!?」なんて言って簡単に済ませてしまうこやつの才能と緑谷の才能を比べるのはどうなんじゃ? お主、自分が常人の域に居ないことを自覚した方が良いぞ。何が「私は最初から何となく出来たからなぁ……」じゃ。いい加減にしろよ全く。黒閃を経験した途端に反転術式を体得しおって。儂は三年掛かったんじゃが?

 

「よし緑谷。手足を壊さぬよう、全力で来い」

「うん! じゃあ……、行くよ廻道さんっ!」

 

 呪術師の成長は必ずしも曲線では無い。伸びる時は急に伸びる。そしてそれは、英雄(ひいろお)も同じなのじゃろう。

 両手を叩き合わせると、即座に緑谷が構えた。両手には、専用の手甲(ぐろおぶ)。それは緑谷の指の動きに合わせて変形し、そして。

 

「スマーーッシュ!!」

 

 百斂より早く、緑谷が指を弾いた。それにより生じるのは、指向性を持った空気の塊とそれを覆うかのような呪力の膜。これを初めて披露された時は、驚いたものじゃ。直撃してしまったあの不審者が、痛みと衝撃で宙から落下してしまったのも仕方ないじゃろう。人に向けるには、大分威力が高い。命には届かんがな。

 飛んで来た空気も呪力も、その場で上体を屈めて避ける。百斂は継続中じゃ。手加減はしまくっとるがの。本気で穿血を撃つつもりは無い。飽くまでも、緑谷の実力に合わせて臨まなければならん。

 

「穿血」

 

 威力も速度も無い穿血を放つ。その射線上に、緑谷が再び放った呪力膜が重なる。それは儂の穿血を弾きながら、真っ直ぐ向かってくる。威力は中々。そして穿血と違い、連射が出来る。大したものじゃよ全く。

 穿血を弾き切り、そして儂へと到達寸前の呪力膜。それを呪力で覆った手のひらで受け止める。惜しいな。もう少し呪力が強ければ、儂に傷を付けれるんじゃが……。

 

 まぁ、それでも。手加減した穿血ならばこれ一つで対処出来る。儂や特級呪霊以外を相手にするならば、これは十分な武器じゃ。英雄(ひいろお)風に言うのなら、必殺技じゃの。

 

「まだまだっ!」

 

 呑気に呪力膜について考えていると、緑谷が左へ駆け出した。左手が儂に向けられている。指の形から、再び呪力膜を撃つつもりじゃ。百斂をしている暇は無さそうじゃの。なら、別の手で対応するとしよう。

 

「苅祓」

 

 首から出した血を、幾つもの血刃として飛ばす。もちろん手加減することは忘れていない。それら一つ一つは、様々な軌道を描きながら同時に緑谷へと向かう。狙うは両の手足、それと胸じゃ。威力自体はしっかりと下げてある故、当たっても深く肉が切れることは無いじゃろう。

 

「っ!」

 

 そんな弱い苅祓の内の一つが、呪力膜に撃ち落とされた。放ったのは五つなんじゃが、立て続けに更に二つ撃ち落とされた。残りの二つは、真上へと跳躍することで軽々と避けられた。……随分と速く、そして高く飛んだの?

 

「んぎっ……!」

 

 宙にいる緑谷が、顔を顰めて呻いた。なるほど。呪力膜の応用で、踏み込みの瞬間に個性の許容上限を限界まで引き上げたのか。結果として高く飛べはしたものの、どうやら右足を痛めたようじゃな。まったく、手と足の感覚は違うんじゃからいきなり上手く行く筈が無かろう?

 まぁ、何でも試すのは良い事じゃけどな。怪我をしない範疇でなら、幾らでも試行錯誤したら良い。今回は怪我をしたようじゃから、まるで駄目じゃけど。

 

「赤縛」

 

 縄状の血を、三条飛ばす。それを目視した緑谷は慌てて両手の指を弾く。計八つの呪力膜が、あちらこちらへと拡散していく。その内の幾つかが赤縛を撃ち貫いたが、一条は残った。それが右腕と胴体に絡まった。

 

「く……っ!」

 

 慌てた緑谷は、左手を儂に向けた。落下までもう時間は無いが、それでも儂に意識をしっかりと集中させた。

 

 それは、悪くないの。良くも無いんじゃけどな。

 

 また呪力膜が四つ飛んでくる。今回は、そのどれもが儂に向かって来ている。から、それら一つ一つの威力を苅祓で相殺する。結果、呪力膜は風船が割れるかのように弾け、空気をあちらこちらに飛ばす。その影響で、儂の血は弾けた。地面やら周囲の木々なんかに、血の雨が降る。反転術式(はんてん)で血液を補充すると、緑谷が何とか片足で着地した。が、姿勢が崩れている。

 隙だらけじゃから、更に隙だらけにしてやろう。地面に付着した血液を操り、土を持ち上げる。それは土埃の壁となり、緑谷の視界を塞ぐと同時に更に姿勢を崩す。儂は両手を叩き合わせ……。

 

「穿血」

 

 姿勢が崩れ切った緑谷に向けて、放つ。その直後。

 

「うわっ!?」

 

 土埃の向こう側から、大きな悲鳴が聞こえた。鈍い音もした。じゃから穿血を途中から赤縛に派生する。すると。

 

「そこまで。手合わせは一旦終わり!」

 

 おおるまいとから、少し慌てた口振りの号令が掛かった。何処に置いてあったのか、腕に救急箱を抱えている。あやつは土埃の中に入って行ったので、緑谷を縛り上げてあるであろう赤縛を解いておくとする。

 

 やがて土埃が風に流され何処かに流れていくと、はっきりと二人の姿が見えた。緑谷が、おおるまいとに手当てされている。頬が切れているのは穿血が掠めたからじゃろう。現に儂の血が付着しているし。じゃけど。

 おおるまいとは、頬の傷よりも右足を手当している。よく見ると、足首が紫色に変色しているの。

 

「おい、大丈夫か?」

「ぅ、うん……っ。へ、平、気……っっ」

「平気じゃなかろう。おおるまいと、どうじゃ?」

「……これは、リカバリーガールの所に連れてこう。骨……は大丈夫みたいだけど、筋肉が千切れてる……かも……?」

 

 ……まったく。手足を壊さぬよう、と儂は言ったんじゃけどな。壊してしまったのなら仕方ない。おおるまいとの言うように、保健室行きじゃの。

 

 この後。儂等は片足を痛めた緑谷と共に、保健室へと向かった。りかばりいがぁるが居てくれて一安心じゃ。もしも居なかったら、色々と大変な事になっていたところじゃ。

 

 

 

 

 

 







三人称による補完は要りますか?

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