待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「お茶子ちゃん、緑谷くん。その格好は駄目です」
緑谷の鍛錬に付き合った後。文化祭二日目が開催される一時間前。居間の
……まぁ、二人の気持ちは分かる。何故駄目出しされてしまったのか、全く分からないからじゃ。現在、緑谷と麗日は制服を着ておる。文化祭が行われるのは学校じゃ。なら、制服を着てたって問題無い。むしろ制服を着ていないことの方が問題じゃろう。なのに被身子と来たら、二人が制服で居ることを嫌がった。……何故? 儂じゃって、制服なんじゃけど……?
「実は
「え゛っ。で、でも渡我先輩、別に制服でも」
「ヤッ!」
頬を膨らませた被身子が、思いっきり顔を逸した。そんなこやつを見た緑谷と麗日は、困った素振りを見せて儂を見詰める。いや、儂を見ないで欲しい。じゃって、解決策なんて無いんじゃもん。こうなった被身子は、梃子でも動かん。誰が何を言ったところで、意見を変えたりしない。つまり、儂等は振り回されるしかないってことじゃ。
まぁ、大丈夫じゃ二人共。最終的に、今日は楽しかったと言えるようになるからの。……最終的に。
「か、廻道さんっ。また遠い目をしてる……!?」
「諦めろ緑谷。規則上問題無いのなら、別に大丈夫じゃろ?」
「ん、んん……。まぁ、そうだけど……。
じゃあ、えっと……。着替えた方が良い感じ……?」
「うむ、そうしよう。麗日も、着替えよう」
「えっ、いやでも……っ。し、私服じゃなくてもええんちゃうかなっ? ほら、服装自由ってだけなんやから……!」
一理ある。それはそうじゃ。私服で過ごす事を許可されているだけで、私服でなければならないなんて事は無い。別に制服じゃって良いじゃろう。しかし、しかしじゃな麗日。こうなった被身子を説得するのは、儂の経験上、無理なんじゃ。大人しく従った方が、身の為じゃと思うが……。
被身子がどれだけ自由奔放でわがままなのか、今日まで関わって来て知らんわけではあるまい?
「雄英文化祭は、二日目に私服を着るのが習わしみたいなものなのです。制服で行ったら、浮いちゃいますよ? 伝統は重んじましょうよぉ」
……何にせよ。何にせよじゃ。被身子が望むのであれば、儂は私服に着替える。昨日、色々と服を買ったからの。せっかくじゃからそれを着よう。そしたら被身子がもっと喜ぶ。
「じゃあ、円花ちゃんは緑谷くんの服を選んでください! トガはお茶子ちゃんの服を選ぶので!」
「えっ、ちょっ……! 待ってってば渡我先輩! 話を聞いて!?」
聞かんぞ。諦めろ麗日。大丈夫じゃ、服のことは被身子に任せておけば間違いない。それよりも問題は緑谷じゃの。下手な格好をしてしまうと、被身子がどれだけ機嫌を損ねるか分からん。こうなったら、儂に出来る範囲で緑谷に良い格好をさせよう。そうしよう。
とまぁ、そんなこんなで。儂は緑谷の服選びを手伝うことになった。はてさて、上手く行くと良いんじゃけども……。それとすまん、麗日。しばらく被身子に振り回されていてくれ。儂にはどうすることも出来ぬのじゃ。
◆
さて。緑谷の部屋にやって来た。相変わらず、部屋中におおるまいとが居る。人形やら張り紙やら、何もかもおおるまいとじゃ。学校ならば本物と顔を会わせる機会が幾らでも有るというのに。どこまであの筋肉阿呆が好きなんじゃこやつ。この部屋におおるまいとが入ったら、流石に幻滅されてしまうのでは……?
……まぁ、部屋の事は良いか。それよりもじゃ。これから緑谷が着る服を、儂が選ばなければならない。洋服の事はいまいちよく分からない。が、昨日少し教えて貰ったからの。大切なのは配色と輪郭と言っていた。取り敢えず、教わった通りにやって見るとしよう。
「よし緑谷、取り敢えず服を全部見せてくれ」
「えっ、全部?」
「うむ、全部じゃ。そこからひとつひとつ選んでいこう。でないと……被身子が大変じゃからの……」
「ぅ、うん……。あの、廻道さん……。薄々感じてたけど、渡我先輩にはいつもこんな感じで振り回されてるの……?」
「そうじゃぞ。じゃけど、ああしてる被身子が一番かぁいいのも事実じゃ」
じゃから、心配そうな目で儂を見なくて良い。同情もいらん。そんなことより、お主は服選びに集中してくれ。儂もそうするから。
「えっと、じゃあ……上着はこれで、シャツはこっち。あとズボンはこんな感じ……です」
緑谷が、据え付けの戸棚から次々と衣服を取り出し始めた。それらは種類別に、寝具の上に並べられていく。……この中から、良い感じの組み合わせを探さねばならぬのか。中々大変そうじゃ。しかし、やらねば。朝から被身子の機嫌を損ねるような真似はしたくないからの。
ではまず、上着から見ていくか。上着は……前開きのぱあかあ……が多いの。色は単色の物が多い。選択肢が少ない気がするが、まぁ儂も自分で服を選ぶとなると着物になりがちじゃしの。緑谷は、こういう趣味なんじゃろう。
で、次に
最後に、
……ふむ……。となると、どんな組み合わせにしたとしても、ぱあかあ……は絶対か。上着はこれ一択な気がしてならん。
問題は、
「取り敢えず、上着はこれじゃの」
「う、うん。分かった」
ひとまず、
で……、じゃ。問題は
ぐぬぬ……。せめて、せめてまともそうな文字が書いてあるやつにしよう。どれどれ、ええっと。
……。…………。……………。
……あ、これじゃ。これにしよう。これならばまだ、他のよりは良い。と、思う。
「よし緑谷。これにしよう」
「ぅ、うん。な、なんかごめん……」
「そう思うなら、もう少し洋服に拘った方が良いぞ。儂が言えた義理でも無いが……」
洋服の事は、よく分からん。儂が選んだ服が正解なのかも分からん。多分、変な風にはなっとらんと思うんじゃけど……。
まぁ、被身子がどんな反応をするかは分からんがの。最悪、被身子に選んでもらうとしよう。そしたら、儂が選んだものよりは良い格好になるんじゃろう。……多分。
「あの、廻道さん」
「ん? 何じゃ、早く着替えろ」
「いやその、着替えるから……」
「……?」
「着替えるから、で……出てってくれると……」
……あぁ、そういうことか。なら仕方ないの、部屋を出て行かなければ。男が横で着替えたって儂は気にならんのじゃけど、緑谷としては気になるらしい。
ひとまず、部屋を出るとしよう。この時代、男の着替えは早いと言うし三分もあれば着替え終わるじゃろう。そのくらい経ったら、また部屋に戻るとするか。
麗日は今頃、どうなっとるんじゃろうか? それはもう被身子に振り回されて、目を回しているかもしれんの。緑谷の着替えが終わったら、様子を見に行くとするか……。
緑谷くんの謎シャツで格好良くコーデすることは不可能な気がしてなりません。何なんだあのダサシャツ。いや、変なシャツは結構好きですけども、何なんだあのシャツは……!
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