待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

254 / 553
雄英文化祭。洋服選び

 

 

 

 

 

「お茶子ちゃん、緑谷くん。その格好は駄目です」

 

 緑谷の鍛錬に付き合った後。文化祭二日目が開催される一時間前。居間の椅子(そふぁ)に腰掛けた部屋着姿の被身子が、対面の席に腰掛けている緑谷と麗日に駄目出しをした。そして二人は石のように固まった。

 ……まぁ、二人の気持ちは分かる。何故駄目出しされてしまったのか、全く分からないからじゃ。現在、緑谷と麗日は制服を着ておる。文化祭が行われるのは学校じゃ。なら、制服を着てたって問題無い。むしろ制服を着ていないことの方が問題じゃろう。なのに被身子と来たら、二人が制服で居ることを嫌がった。……何故? 儂じゃって、制服なんじゃけど……?

 

「実は雄英(うち)の文化祭、私服でもおっけーなのです。だからぁ、せっかくだし私服で遊びましょう!」

「え゛っ。で、でも渡我先輩、別に制服でも」

「ヤッ!」

 

 頬を膨らませた被身子が、思いっきり顔を逸した。そんなこやつを見た緑谷と麗日は、困った素振りを見せて儂を見詰める。いや、儂を見ないで欲しい。じゃって、解決策なんて無いんじゃもん。こうなった被身子は、梃子でも動かん。誰が何を言ったところで、意見を変えたりしない。つまり、儂等は振り回されるしかないってことじゃ。

 まぁ、大丈夫じゃ二人共。最終的に、今日は楽しかったと言えるようになるからの。……最終的に。

 

「か、廻道さんっ。また遠い目をしてる……!?」

「諦めろ緑谷。規則上問題無いのなら、別に大丈夫じゃろ?」

「ん、んん……。まぁ、そうだけど……。

 じゃあ、えっと……。着替えた方が良い感じ……?」

「うむ、そうしよう。麗日も、着替えよう」

「えっ、いやでも……っ。し、私服じゃなくてもええんちゃうかなっ? ほら、服装自由ってだけなんやから……!」

 

 一理ある。それはそうじゃ。私服で過ごす事を許可されているだけで、私服でなければならないなんて事は無い。別に制服じゃって良いじゃろう。しかし、しかしじゃな麗日。こうなった被身子を説得するのは、儂の経験上、無理なんじゃ。大人しく従った方が、身の為じゃと思うが……。

 被身子がどれだけ自由奔放でわがままなのか、今日まで関わって来て知らんわけではあるまい?

 

「雄英文化祭は、二日目に私服を着るのが習わしみたいなものなのです。制服で行ったら、浮いちゃいますよ? 伝統は重んじましょうよぉ」

 

 (まこと)に? 被身子、それは(まこと)なのか? 嘘八百な気がしてならんぞ。いやしかし、今朝から外ですれ違う生徒は、私服を着ているものが多かったような……。たまたまか? それとも、被身子の言う通りの変な伝統が有るんじゃろうか?

 

 ……何にせよ。何にせよじゃ。被身子が望むのであれば、儂は私服に着替える。昨日、色々と服を買ったからの。せっかくじゃからそれを着よう。そしたら被身子がもっと喜ぶ。

 

「じゃあ、円花ちゃんは緑谷くんの服を選んでください! トガはお茶子ちゃんの服を選ぶので!」

「えっ、ちょっ……! 待ってってば渡我先輩! 話を聞いて!?」

 

 聞かんぞ。諦めろ麗日。大丈夫じゃ、服のことは被身子に任せておけば間違いない。それよりも問題は緑谷じゃの。下手な格好をしてしまうと、被身子がどれだけ機嫌を損ねるか分からん。こうなったら、儂に出来る範囲で緑谷に良い格好をさせよう。そうしよう。

 

 とまぁ、そんなこんなで。儂は緑谷の服選びを手伝うことになった。はてさて、上手く行くと良いんじゃけども……。それとすまん、麗日。しばらく被身子に振り回されていてくれ。儂にはどうすることも出来ぬのじゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて。緑谷の部屋にやって来た。相変わらず、部屋中におおるまいとが居る。人形やら張り紙やら、何もかもおおるまいとじゃ。学校ならば本物と顔を会わせる機会が幾らでも有るというのに。どこまであの筋肉阿呆が好きなんじゃこやつ。この部屋におおるまいとが入ったら、流石に幻滅されてしまうのでは……?

 ……まぁ、部屋の事は良いか。それよりもじゃ。これから緑谷が着る服を、儂が選ばなければならない。洋服の事はいまいちよく分からない。が、昨日少し教えて貰ったからの。大切なのは配色と輪郭と言っていた。取り敢えず、教わった通りにやって見るとしよう。

 

「よし緑谷、取り敢えず服を全部見せてくれ」

「えっ、全部?」

「うむ、全部じゃ。そこからひとつひとつ選んでいこう。でないと……被身子が大変じゃからの……」

「ぅ、うん……。あの、廻道さん……。薄々感じてたけど、渡我先輩にはいつもこんな感じで振り回されてるの……?」

「そうじゃぞ。じゃけど、ああしてる被身子が一番かぁいいのも事実じゃ」

 

 じゃから、心配そうな目で儂を見なくて良い。同情もいらん。そんなことより、お主は服選びに集中してくれ。儂もそうするから。

 

「えっと、じゃあ……上着はこれで、シャツはこっち。あとズボンはこんな感じ……です」

 

 緑谷が、据え付けの戸棚から次々と衣服を取り出し始めた。それらは種類別に、寝具の上に並べられていく。……この中から、良い感じの組み合わせを探さねばならぬのか。中々大変そうじゃ。しかし、やらねば。朝から被身子の機嫌を損ねるような真似はしたくないからの。

 

 ではまず、上着から見ていくか。上着は……前開きのぱあかあ……が多いの。色は単色の物が多い。選択肢が少ない気がするが、まぁ儂も自分で服を選ぶとなると着物になりがちじゃしの。緑谷は、こういう趣味なんじゃろう。

 

 で、次に襯衣(しゃつ)。……なぁ、おい。何でどの襯衣(しゃつ)も、何か文字が書いてあるんじゃ? 何で襯衣(しゃつ)に、てぃしゃつと書かれているのか。しいつ、とか……どれすしゃつ……とか。どうなっとるんじゃ。どれも単色なのは構わんが、何故文字が書いて……。謎じゃ。考えるのは後にしよう。

 

 最後に、洋袴(ずぼん)。これは短い物と、長い物がある。奇抜な色は無い。単色が多い。

 

 ……ふむ……。となると、どんな組み合わせにしたとしても、ぱあかあ……は絶対か。上着はこれ一択な気がしてならん。洋袴(ずぼん)は、長い物にしておくか。秋じゃからの。短いのを穿いては、寒くなるかもしれんし。

 問題は、襯衣(しゃつ)じゃ。変なものしか無いんじゃけど? これでいったい、どうしろと……。ううむ……。

 

「取り敢えず、上着はこれじゃの」

「う、うん。分かった」

 

 ひとまず、襯衣(しゃつ)以外を決めてしまおう。まずはこの、薄い緑色のぱあかあじゃ。で、洋袴(ずぼん)は……多分これじゃ。この、土埃色をしたやつ。確か、かあき色……じゃったか? 多分、上着と合わせても変な組み合わせにはならんじゃろう。緑谷に手渡しておく。

 

 で……、じゃ。問題は襯衣(しゃつ)じゃの。どうすれば良いんじゃこれは。何でどれもこれも、何か文字が書いてあるのか。何も書かれていない物は無いのか? うわ、無い。無い、じゃと……!?

 

 ぐぬぬ……。せめて、せめてまともそうな文字が書いてあるやつにしよう。どれどれ、ええっと。

 

 ……。…………。……………。

 

 ……あ、これじゃ。これにしよう。これならばまだ、他のよりは良い。と、思う。

 

「よし緑谷。これにしよう」

「ぅ、うん。な、なんかごめん……」

「そう思うなら、もう少し洋服に拘った方が良いぞ。儂が言えた義理でも無いが……」

 

 洋服の事は、よく分からん。儂が選んだ服が正解なのかも分からん。多分、変な風にはなっとらんと思うんじゃけど……。

 まぁ、被身子がどんな反応をするかは分からんがの。最悪、被身子に選んでもらうとしよう。そしたら、儂が選んだものよりは良い格好になるんじゃろう。……多分。

 

「あの、廻道さん」

「ん? 何じゃ、早く着替えろ」

「いやその、着替えるから……」

「……?」

「着替えるから、で……出てってくれると……」

 

 ……あぁ、そういうことか。なら仕方ないの、部屋を出て行かなければ。男が横で着替えたって儂は気にならんのじゃけど、緑谷としては気になるらしい。

 ひとまず、部屋を出るとしよう。この時代、男の着替えは早いと言うし三分もあれば着替え終わるじゃろう。そのくらい経ったら、また部屋に戻るとするか。

 

 麗日は今頃、どうなっとるんじゃろうか? それはもう被身子に振り回されて、目を回しているかもしれんの。緑谷の着替えが終わったら、様子を見に行くとするか……。

 

 

 

 

 

 







緑谷くんの謎シャツで格好良くコーデすることは不可能な気がしてなりません。何なんだあのダサシャツ。いや、変なシャツは結構好きですけども、何なんだあのシャツは……!

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。