待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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雄英文化祭。バスケットボール

 

 

 

 

 

 

「というわけで、ダブルデート! なのです!」

 

 寮の玄関にて。水兵(せえらあ)服の上にかあでぃがんを着た被身子が、高らかに宣言した。私服で参加すると言っておきながら、何故制服のような格好をしているのか。いや、まったく同じ物を儂も着せられてるんじゃけどな。つい疑問に思ってしまうが、無理矢理言い訳をするのなら被身子と儂が着ているのは私服じゃ。水兵(せえらあ)服は、雄英が指定している制服ではないからの。扱い的には私服になるんじゃろう。多分、知らんけど。気分的には、こすぷれをさせられている感じじゃけども。あと眼鏡、被身子に掛けろと言われたから掛けているんじゃけど……どうにも視界が狭い。

 まぁ、儂等の格好は別に良い。それよりも問題は、緑谷と麗日じゃ。

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 胸に片仮名でひいろおと書かれた襯衣(しゃつ)洋袴(ずぼん)とぱあかあを合わせた緑谷と、普段の何割か増しにかぁいい格好となっている麗日。そんな二人は、お互いを見た時から硬直したり挙動不審となったりと落ち着きがない。大丈夫かこやつ等? これから四人で、逢瀬(でえと)なんじゃけど?

 

「えっと、で……デクくん……」

「ひゃいっ!?」

 

 ひゃい、て。思いっきり舌を噛んでおる。どうにか麗日から目を逸らそうとしているが、眼球が高速で動いている。どうやら、麗日から目が離せんらしいの。まぁ、普段の麗日と今の麗日は大分様相が違う。次にいつこんな格好をするのかは分からんわけじゃし、今の内に思う存分堪能したら良いんじゃないか?

 

 まぁ、被身子が二人の仲を引っ掻き回す以上、また今の麗日を目にする機会は何度でも有るんじゃろうけども。

 

「そ、その……これは! 渡我先輩に無理矢理着せられたやつやから! 絶対変やから、あんま見んといて……」

「ご、ごめん。な、なるべく見ないようにするから……!」

「うん……。そうしてくれると、助かります…

…」

 

 ……気の利かん奴じゃの。そこはほれ、もっと言うべき事が有ると思うんじゃけど。漢気に欠けるというか、情けないと言うか。麗日は恥を忍んでその格好をしているというのに。抱いてやるの一言も言えんのか。仕方ない、儂が手本の一つでも見せてやろう。

 

「被身子」

「はい?」

「似合っとるぞ。かぁいい」

「んふふ。円花ちゃんもカァイイですよぉ。もちろん、お茶子ちゃんもっ!」

「ちょっ、渡我先輩……!?」

「は?」

 

 ……は? おい麗日。そこは避けんか。何を簡単に被身子に抱き締められているのか。さては浮気か? そして被身子、何をしとるんじゃ。おい、許さんぞ。絶対許さん。それは駄目じゃ。お主は儂のじゃろっ。

 

 白昼堂々と浮気とは、良い度胸じゃな……! 貴様、後でどうなっても知らんぞ。せいぜい儂を怒らせたことを後悔すれば良いんじゃ!!

 

「あは……っ♡ もぅ、そんなにヤキモチしちゃって、カァイイんだから……♡」

 

 うるさい黙れ。何で麗日に抱き付いたんじゃ貴様。この浮気者。儂が居ながら他の女に抱き付くなど、抱き付くなど……!

 やはり一度、末代まで呪うしかないようじゃな。儂に本気で呪われて、無事で済むとは思うなよ。絶っっっ対に後悔させてくれる!!

 

 ひとまず! 被身子を麗日から引き剥がす。それから、思いっきり抱き締めてくれる……!

 もちろん、麗日を睨むことを忘れない。貴様も貴様じゃからな!? 被身子に抱き付かれそうになったら避けんか!

 

「えへへぇ。嬉しいなぁ……! 今日は楽しい一日になりそうです!」

 

 儂は既に楽しくないが!? またそうやって調子に乗って……! 今日という今日は許さんからな!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何だかんだで、だぶるでえと……は始まった。今日は儂を含めた四人で、文化祭を見て回る。昨日はえりが楽しめそうな出し物しか見て回らなかったからの。小冊子(パンフレット)を見るに、幾つか気になる所が有るからそれは是非見て回りたい。もちろん被身子や緑谷、麗日が興味を示したものも見て回る。せっかくの祭りなんじゃ。存分に楽しまなければ損じゃ損。まぁ、昨日と同じく途中で組の出し物に出るんじゃけども。しかも昨日とは違う曲を演奏することになる。そちらについては、まぁ問題無い。昨日は上手く行ったから、今日も上手く行くじゃろう。練習はしっかりとしたからの。途中で失敗してしまうなんてことは、無い筈じゃ。多分。

 

 とにかく。今日も楽しむと決めている。望んだ形とは多少違うが、逢瀬(でえと)であることは変わり無い。そういうわけで……。

 

「儂に勝てると思うなよ?」

「やるからには、負けないよ……!」

 

 体育館。そこで行われている、かつての運動(すぽおつ)文化体験の出し物。そこで籠球(ばすけっとぼおる)による、得点競いが有った。儂が通っていた小学校では超常時代以前の運動(すぽおつ)が流行っていたんじゃけど、緑谷や麗日の学校ではそこまで人気ではなかったらしい。個性を使わないという決まりが、個性を持つこの時代の子供達にはつまらなかったのが原因かもしれないとか、何とか。かつての緑谷は無個性じゃったわけじゃけど、どんな気分で参加してたんじゃろうな。

 それにしても、ばすけっとぼおるを持つのは久しぶりじゃの。最後に触ったのは小学六年生の時じゃったから、三年半……ぶりか? すっかり懐かしいのぅ。勘が鈍ってなければ良いんじゃけど、まぁやってる内に取り戻すじゃろう。

 ちなみに、得点数で緑谷と勝負することになっている。儂に勝てたら、くらすめえと達の訓練に丸一日付き合うことに。儂が勝ったら、後でくれえぷ奢りじゃ。

 

「じゃあ、ルール説明させてもらうね」

「うむ」

「よろしくお願いします」

 

 球を床に軽く叩き付けて跳ねさせる。それを繰り返していると、この出し物を提供している組の生徒が説明を始めた。しかしまぁ、よくも廃れた運動(すぽおつ)を出し物として提供する気になったの? おりんぴっく、とか言う何年かに一度の国際競技大会が廃れてしまった程に、運動(すぽおつ)は衰退しとるからの。情報や記録、知識としては残っているようじゃけど、わざわざ行う者は少ないそうじゃ。

 

 ……何で儂が通ってた小学校では、あんなに流行ってたんじゃ? 今思うと、中々に謎じゃ。

 

「―――という訳で、最高記録を作れた人には豪華な景品があるよ! 頑張ってね!」

 

 景品? 何がどういう訳で? というか、いかん。規則(るうる)を聞いていなかった。

 

「もぅ、円花ちゃんって本当にルールを聞かないですよね。フリースローを十本、個性無しだと二点で個性有りだと一点。フリースローラインからシュートが基本で、3Pラインからゴール出来たら三点なのです。個性有りなら二点」

「……なるほど。いやすまん、考え事をしてしまっての」

「廻道さん……人の話はちゃんと聞かなあかんよ……?」

「すまんすまん。つい」

 

 小学校時代の謎については、考えないでおこう。そういう流行りじゃったと思うことにする。

 さて、それじゃ久しぶりにやって見るとするか。最初に投げる位置は……三得点線(すりいぽいんとらいん)にしようかの。随分と久々じゃけども、何とかなるじゃろ。被身子が見ている手前、相応の結果を残したいところじゃ。狙うは当然、得点十回。三十点が目標じゃの。

 

 三度、球を床で跳ねさせる。それからしっかりと球を保持して、狙いを定める。昔の感覚を思い出しつつ、放る。あ、いかん。少々高く投げてしまった。これは、届かないか外れるかするじゃろう。ま、まぁ久しぶりじゃからの。そんな事もあ……。

 

「あ」

「あっ」

「む……?」

 

 ……入ったわ。駄目かと思ったんじゃけどな。まぁ、幸運じゃったと思うことにする。後、九回も投げるのか。全部入れるつもりじゃけど、どうなることやら。

 

「ほれ、緑谷」

 

 側に置かれた籠の中から、緑谷に球を投げ渡す。勝負じゃからの。交互に投げることになっておる。緑谷がどうするか、見物じゃの。

 

「頑張れデクくんっ」

「ぅ、うん」

「円花ちゃんは大人げないですから、気を付けるのです」

「はい、渡我先輩」

 

 おい被身子。そこは儂の味方をせんか。何で緑谷を応援してるんじゃ? さては、また浮気か? 貴様、一度ならず二度までも……。とことん儂を怒らせたいなら、良いじゃろう。後でもっと大変な思いをさせてやる。ふんっ。

 

「あ」

「どんまいどんまい、次があるよ!」

「あー……、今のは入れたかったですねぇ……」

 

 つい被身子を睨んでいると、どうやら緑谷が得点し損ねたようじゃ。ふふん、三点差じゃの。このまま大差を付けてやろう。簡単に儂に勝てると思うなよ? そもそも、籠球(ばすけっとぼおる)は得意分野じゃ。負けてやるつもりは毛頭無い。ふふん。

 

 という訳で、次は儂の番じゃ。ここで六点差にしてやろう。緑谷から新たな球を貰い、また狙いを定める。さっきは少し強く投げてしまったからの。もう少し、力加減を弱めるとする。ところで被身子、何で遠い目をした?

 

「よっ、と……」

 

 取り敢えず、球を放る。お、綺麗に入ったの。順調じゃ、順調。このまま勝って、緑谷にくれえぷを奢らせるとする。儂に勝つにはまだまだ早い。籠球(ばすけっとぼおる)での勝負については、三年ぐらい練習してから出直して来い。そしたら良い勝負になるんじゃないか? それでも勝つのは、儂じゃけどな。

 

 さて、残るは八本。この調子で全部入れていくとするかの!

 

「……よし、次こそは。まずは二点。肘……肘だな、肘をしっかり伸ばそう。あとは、膝か? 膝もしっかり使って、ボールは高く、なるべく回転を掛けて軌道を安定させなきゃ……」

 

 ぬおっ。何か緑谷が一人で呟いている。もはや持ち前の芸か何かな気がしてくるの……。お主、せめて口に出すのは止しておけ。隣で麗日が乾いた笑みを浮かべておるんじゃけど?

 というか、儂の動きを分析するのは構わんが後で筆記帳(のおと)に纏めるなよ? まさかとは思うが、こんな事まで書き込んだり……しないよな……? いやしかし、あの筆記帳(のおと)の惨状を見るに可能性は捨て切れん。

 

 緑谷が球を手に取った。それからしっかりと構えて、儂と同じように投げる。すると。

 

「あっ」

「む……」

「やった!」

「……よし、良しっ。入った、次もこの調子で……!」

 

 入れおったわ。まずは二点か。儂とは、まだ四点差。次に儂が入れれば七点差。まぁ、儂が得点し続ける限りは逆転することは無い。この調子のまま、大差を付けて儂が勝つ。

 

「んふふ。頑張ってくださいね緑谷くん。勝てたらきっと、お茶子ちゃんがご褒美くれますから!」

「ちょっ、渡我先輩……!? 何を言っとるん!?」

「あれ、無いんですか? 頑張る男の子にご褒美は必須ですよぉ」

 

 ……また悪どい笑みを浮かべておる。被身子、お主……ご褒美と称して麗日に何をさせるつもりじゃ? 何で儂に向かって、目配せをした? さては、緑谷に勝たせろ……と?

 

 やじゃ。断る。他の事ならまだ譲るが、勝負の場では譲らん。儂は負けんが? 絶対に負けんからな……!!

 

 

 

 

 

 

 




原作トガちゃんスタイルのトガマドです。

超常時代のスポーツってどうなってるんでしょうね。オリンピックが廃れてる時点で個性と競技ルールを噛み合わせることが出来なかったのか、細々とマイナージャンルとして続いているのか。気になるところではあります。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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