待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「というわけで、ダブルデート! なのです!」
寮の玄関にて。
まぁ、儂等の格好は別に良い。それよりも問題は、緑谷と麗日じゃ。
「……」
「……」
「……」
「……」
胸に片仮名でひいろおと書かれた
「えっと、で……デクくん……」
「ひゃいっ!?」
ひゃい、て。思いっきり舌を噛んでおる。どうにか麗日から目を逸らそうとしているが、眼球が高速で動いている。どうやら、麗日から目が離せんらしいの。まぁ、普段の麗日と今の麗日は大分様相が違う。次にいつこんな格好をするのかは分からんわけじゃし、今の内に思う存分堪能したら良いんじゃないか?
まぁ、被身子が二人の仲を引っ掻き回す以上、また今の麗日を目にする機会は何度でも有るんじゃろうけども。
「そ、その……これは! 渡我先輩に無理矢理着せられたやつやから! 絶対変やから、あんま見んといて……」
「ご、ごめん。な、なるべく見ないようにするから……!」
「うん……。そうしてくれると、助かります…
…」
……気の利かん奴じゃの。そこはほれ、もっと言うべき事が有ると思うんじゃけど。漢気に欠けるというか、情けないと言うか。麗日は恥を忍んでその格好をしているというのに。抱いてやるの一言も言えんのか。仕方ない、儂が手本の一つでも見せてやろう。
「被身子」
「はい?」
「似合っとるぞ。かぁいい」
「んふふ。円花ちゃんもカァイイですよぉ。もちろん、お茶子ちゃんもっ!」
「ちょっ、渡我先輩……!?」
「は?」
……は? おい麗日。そこは避けんか。何を簡単に被身子に抱き締められているのか。さては浮気か? そして被身子、何をしとるんじゃ。おい、許さんぞ。絶対許さん。それは駄目じゃ。お主は儂のじゃろっ。
白昼堂々と浮気とは、良い度胸じゃな……! 貴様、後でどうなっても知らんぞ。せいぜい儂を怒らせたことを後悔すれば良いんじゃ!!
「あは……っ♡ もぅ、そんなにヤキモチしちゃって、カァイイんだから……♡」
うるさい黙れ。何で麗日に抱き付いたんじゃ貴様。この浮気者。儂が居ながら他の女に抱き付くなど、抱き付くなど……!
やはり一度、末代まで呪うしかないようじゃな。儂に本気で呪われて、無事で済むとは思うなよ。絶っっっ対に後悔させてくれる!!
ひとまず! 被身子を麗日から引き剥がす。それから、思いっきり抱き締めてくれる……!
もちろん、麗日を睨むことを忘れない。貴様も貴様じゃからな!? 被身子に抱き付かれそうになったら避けんか!
「えへへぇ。嬉しいなぁ……! 今日は楽しい一日になりそうです!」
儂は既に楽しくないが!? またそうやって調子に乗って……! 今日という今日は許さんからな!?
◆
何だかんだで、だぶるでえと……は始まった。今日は儂を含めた四人で、文化祭を見て回る。昨日はえりが楽しめそうな出し物しか見て回らなかったからの。
とにかく。今日も楽しむと決めている。望んだ形とは多少違うが、
「儂に勝てると思うなよ?」
「やるからには、負けないよ……!」
体育館。そこで行われている、かつての
それにしても、ばすけっとぼおるを持つのは久しぶりじゃの。最後に触ったのは小学六年生の時じゃったから、三年半……ぶりか? すっかり懐かしいのぅ。勘が鈍ってなければ良いんじゃけど、まぁやってる内に取り戻すじゃろう。
ちなみに、得点数で緑谷と勝負することになっている。儂に勝てたら、くらすめえと達の訓練に丸一日付き合うことに。儂が勝ったら、後でくれえぷ奢りじゃ。
「じゃあ、ルール説明させてもらうね」
「うむ」
「よろしくお願いします」
球を床に軽く叩き付けて跳ねさせる。それを繰り返していると、この出し物を提供している組の生徒が説明を始めた。しかしまぁ、よくも廃れた
……何で儂が通ってた小学校では、あんなに流行ってたんじゃ? 今思うと、中々に謎じゃ。
「―――という訳で、最高記録を作れた人には豪華な景品があるよ! 頑張ってね!」
景品? 何がどういう訳で? というか、いかん。
「もぅ、円花ちゃんって本当にルールを聞かないですよね。フリースローを十本、個性無しだと二点で個性有りだと一点。フリースローラインからシュートが基本で、3Pラインからゴール出来たら三点なのです。個性有りなら二点」
「……なるほど。いやすまん、考え事をしてしまっての」
「廻道さん……人の話はちゃんと聞かなあかんよ……?」
「すまんすまん。つい」
小学校時代の謎については、考えないでおこう。そういう流行りじゃったと思うことにする。
さて、それじゃ久しぶりにやって見るとするか。最初に投げる位置は……
三度、球を床で跳ねさせる。それからしっかりと球を保持して、狙いを定める。昔の感覚を思い出しつつ、放る。あ、いかん。少々高く投げてしまった。これは、届かないか外れるかするじゃろう。ま、まぁ久しぶりじゃからの。そんな事もあ……。
「あ」
「あっ」
「む……?」
……入ったわ。駄目かと思ったんじゃけどな。まぁ、幸運じゃったと思うことにする。後、九回も投げるのか。全部入れるつもりじゃけど、どうなることやら。
「ほれ、緑谷」
側に置かれた籠の中から、緑谷に球を投げ渡す。勝負じゃからの。交互に投げることになっておる。緑谷がどうするか、見物じゃの。
「頑張れデクくんっ」
「ぅ、うん」
「円花ちゃんは大人げないですから、気を付けるのです」
「はい、渡我先輩」
おい被身子。そこは儂の味方をせんか。何で緑谷を応援してるんじゃ? さては、また浮気か? 貴様、一度ならず二度までも……。とことん儂を怒らせたいなら、良いじゃろう。後でもっと大変な思いをさせてやる。ふんっ。
「あ」
「どんまいどんまい、次があるよ!」
「あー……、今のは入れたかったですねぇ……」
つい被身子を睨んでいると、どうやら緑谷が得点し損ねたようじゃ。ふふん、三点差じゃの。このまま大差を付けてやろう。簡単に儂に勝てると思うなよ? そもそも、
という訳で、次は儂の番じゃ。ここで六点差にしてやろう。緑谷から新たな球を貰い、また狙いを定める。さっきは少し強く投げてしまったからの。もう少し、力加減を弱めるとする。ところで被身子、何で遠い目をした?
「よっ、と……」
取り敢えず、球を放る。お、綺麗に入ったの。順調じゃ、順調。このまま勝って、緑谷にくれえぷを奢らせるとする。儂に勝つにはまだまだ早い。
さて、残るは八本。この調子で全部入れていくとするかの!
「……よし、次こそは。まずは二点。肘……肘だな、肘をしっかり伸ばそう。あとは、膝か? 膝もしっかり使って、ボールは高く、なるべく回転を掛けて軌道を安定させなきゃ……」
ぬおっ。何か緑谷が一人で呟いている。もはや持ち前の芸か何かな気がしてくるの……。お主、せめて口に出すのは止しておけ。隣で麗日が乾いた笑みを浮かべておるんじゃけど?
というか、儂の動きを分析するのは構わんが後で
緑谷が球を手に取った。それからしっかりと構えて、儂と同じように投げる。すると。
「あっ」
「む……」
「やった!」
「……よし、良しっ。入った、次もこの調子で……!」
入れおったわ。まずは二点か。儂とは、まだ四点差。次に儂が入れれば七点差。まぁ、儂が得点し続ける限りは逆転することは無い。この調子のまま、大差を付けて儂が勝つ。
「んふふ。頑張ってくださいね緑谷くん。勝てたらきっと、お茶子ちゃんがご褒美くれますから!」
「ちょっ、渡我先輩……!? 何を言っとるん!?」
「あれ、無いんですか? 頑張る男の子にご褒美は必須ですよぉ」
……また悪どい笑みを浮かべておる。被身子、お主……ご褒美と称して麗日に何をさせるつもりじゃ? 何で儂に向かって、目配せをした? さては、緑谷に勝たせろ……と?
やじゃ。断る。他の事ならまだ譲るが、勝負の場では譲らん。儂は負けんが? 絶対に負けんからな……!!
原作トガちゃんスタイルのトガマドです。
超常時代のスポーツってどうなってるんでしょうね。オリンピックが廃れてる時点で個性と競技ルールを噛み合わせることが出来なかったのか、細々とマイナージャンルとして続いているのか。気になるところではあります。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ