待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
くれえぷ屋で甘味を堪能した後。儂等がやって来たのは、
「廻道さんは、何作るの?」
「いや、別に何も? 儂は見てるだけで良い」
なので。儂は何も作らん。作りたくない。ちなみに被身子と麗日は、一足先に説明を受けて儂等とは少し離れた場所にある機械で、二人で物作りに挑戦しておる。何を作るつもりなのかは全く分からん。一応聞きはしたんじゃけど、教えてはくれなかった。しかも、何故か後で全員の作成物を披露し合うことになってしまった。何も作りたくないんじゃけどな……。
機械は便利じゃけど、爆発したり泡を吐き出し続けたりするからのぅ。さてはて、どうしたものか。
「お客さん、何作ります?」
「あ、えーーっと……。じゃあ、Tシャツを。素材は……綿とポリエステルの混合で」
「はいはい、それだと五百円ね」
「あ、はい」
「じゃ、裏で素材セットしてくるからね。手元の青いボタンが光ったらそれ押して。デザインなんかは自分で入力してね。それと、赤は間違っても押さないように」
緑谷から五百円を受け取って、儂と緑谷の相手をしていた生徒が一通りの説明の後に大きな機械の裏側へと歩いていった。この機械、随分と大きいが見覚えがあるような気がするの。何処で見たんじゃっけ? 見たことがあるような気がするんじゃけど。……はて?
……。まぁ、別に気にしないで良いか。機械のことはよく分からん。便利じゃとは思うんじゃが、儂が触れると変な挙動をしてしまうからの。冷房を動かそうとしたのに暖房が動くなんてしょっちゅうあることじゃ。
いや別に? 儂が機械音痴なんてことは無いが??
「うーーん、デザイン……。デザイン……?」
「どうかしたか?」
「んん……。Tシャツのデザインなんてしたこと無くって。だからどうするべきかなって……」
なるほど。つまり
「取り敢えず、しゃつに変な文字を入れるのは止しておけ」
「えっ?」
えっ? ではない。何で貴様は変な
「廻道さんはどんなTシャツを着て……。って、レディースのデザインはメンズのデザインとは違うか……。うーーん、どうしようかな……。自分で一から決めるってなると……それはそれで難しいな……。何でも作れるってなると、逆に選択肢が多過ぎて悩ましいぞ? 取り敢えず素材は混合にしてあるから、あっ、ここで混合の比率を変えられるのか。ってなるとスポーツウエア的な物を作れそうだし、逆に全然普通のTシャツも作れる。プリントシャツ、も有りだな……」
何やらぶつぶつと真剣に呟いておる。
緑谷は暫く時間を掛けそうじゃから、被身子と麗日の方を見てみるとするか。あの二人は何を作ってるんじゃろうな?
少し離れた位置に居る二人へと近付く。何やら話し合っている……と言うより被身子が振り回しているようじゃ。麗日の両肩に手を載せて何やら至近距離で囁いている。きっと悪どい事を吹き込んでいるのじゃろう。じゃってほら、麗日が変な汗をかいて固まっているし。
そのまま放っておいても良いんじゃが、被身子と密着してることがどうにも気に食わんから、……助けてやるとするか。
「二人は何を作ってるんじゃ?」
「か、廻道さん……! たっ、助けて!? 渡我先輩が色々吹き込んで来るんやけど!?」
「……まぁ、そこは諦めろ。そもそもお主が素直になれば被身子は何もしないと思うんじゃけど」
「そうですよぉ。お茶子ちゃんがあけすけになれば、トガは何も言わないのです!」
「で、デクくーんっ! な、何作ってるん!?」
あ、逃げた。どうも、素直になれんようじゃ。被身子のように強要するつもりは無いが、少しぐらい素直になっても良いと思うんじゃけどなぁ。まぁ、好意の伝える伝えないは人それぞれじゃとは思うが。
麗日は汗だくのまま緑谷の側に向かって行った。被身子、少し手加減してやったらどうじゃ? いや、お主が我慢出来ない質なのは儂が誰よりも把握しているところじゃけども。
「うーーん……。逃げられちゃったのです。せっかくのオーダーメイドなんですけどねぇ……」
「一応聞いておくが、何を作らせるつもりじゃったんじゃ?」
「何って、ベッドの上で披露するものですけど」
「……」
聞くんじゃ無かった。何を披露するのかは分からぬが、多分下着じゃろうな。かぁいい下着選びも、被身子が好む所ではあるしの。しかし緑谷に披露する下着は、麗日には早いと思うが。じゃってまだ、そういう関係ですら無いからの。儂等とて、寝具の上で交わるようになったのは出会ってから八年後じゃったわけで。儂と被身子は幼馴染みでもあるからの。
……もう、あれから十二年も経つのか。思えば不思議なものじゃ。まさかこんなにも、被身子を愛おしく思う日が来るとは。
「程々にしてやるんじゃぞ? 儂みたいに何でも受け入れてくれる奴なんて早々居ないと思うが」
「それは分かってますけどぉ。でも、我慢出来なくって」
舌を出して、悪戯っぽく笑うな。まったく、仕方のない奴め。仕方なさ過ぎるから、儂が一生面倒を見てやるがの。……一生面倒を見られる、の方が正しいような気がするのは……何か負けた気分じゃけども。
「逃げられちゃいましたし、こうなったら円花ちゃんの下着でも作りましょうかねぇ。まずは……ブラから!」
「……まぁ、好きにしてくれ」
どうせ何を用意されても、最後は聞かせられるんじゃし。今更どんな下着を用意されようが、何とも思わん。余程奇抜な物は勘弁して欲しいところじゃけど、かぁいい物を好む被身子じゃから変な物は用意しない……と思う。しないよな?
「んふふ……。どんなのにしましょうかねぇ……」
「……」
背筋が凍えた。何を言っても無駄じゃから、もう放っておくとしよう。儂も緑谷の所に向かうとしよう。こうなった被身子は、しばらくそっとしておくに限る。じゃって、何を言い出すのか分からぬし。下手に藪蛇を突くような真似をすると、どうせ大変な事になってしまうからの。
そんなこんなで。儂等は被身子に振り回されたりしながらよく分からん機械による物作りを体験したわけじゃ。後で気付いたんじゃけど、この出し物で使用されていた機械は
ううむ……。出来れば、会いたくないんじゃけどなぁ……。
◆
結局。被身子は儂と麗日の分の下着を、上下合わせて作成した。何故麗日が着用している下着の大きさを知っているのかは、後で詳しく聞くとする。
……まぁ、それはともかく。麗日は完成した下着を前に一度は固まり、後に悲鳴を上げたりしていた。緑谷は、麗日に協力して貰った事で至極普遍的な
で、麗日は手袋を作った。聞いた話によると、こやつは就寝時に個性を発動してしまわないよう、手袋をして寝ているそうじゃ。触れた物を浮かしてしまう個性じゃからの。寝てる間に寝具やら自分やらを浮かさないようにする為らしい。儂もそういう対策をしておくべきかもしれん。寝てる間に竜巻を起こした、なんて事態が起きないとも限らんからの。一応これまで、寝てる間に物を回転させてしまった覚えは無いが。そんな事があったら大惨事じゃ。被身子が危ない。
ううむ。今からでも気を付けるべきじゃの。今度、就寝用の手袋を用意しよう。寝る時に手袋をしなければならないのは、少しばかり億劫じゃけども。
まぁ、とにかく。物作りはそれなりに楽しめた。目の前で物が出来上がっていく様を見るのは、それなりに楽しい。平安時代にもあの機械があれば、道具に困ることは無かったじゃろう。
で、じゃ。今日はあれやこれやと文化祭を見て回った儂等が最後に向かったのは、寮の食堂。つまり台所じゃ。何故かと言うと、林檎飴を作る為じゃな。えりに食べさせてあげたいと全員の意見が一致したから、作って届けようと言うことになったんじゃ。
しかし、現在。儂だけが台所から追い出されてしまった。儂じゃって、えりに林檎飴を作ってやりたいんじゃけど!?
「ぐぬぬ……」
「ま、まぁまぁ廻道さん……。廻道さんは味見役だから。だ、大事な仕事だと思うよっ?」
台所から追い出されてしまった儂は仕方ないから椅子に腰掛けた。で、仲良く林檎飴を作ろうとしている被身子と麗日を睨んでいると苦笑いを浮かべた緑谷が声を掛けてきた。どうやら緑谷も台所から追い出されてしまったらしい。何でじゃ? こやつも料理が出来ないのか?
……まぁ、良い。そちらについては深く気にしない事にする。ところで被身子、たまに儂を見ては嬉しそうに笑うのはどういう腹積もりじゃ? 不機嫌な儂を見て楽しむのは、性根が悪いと思うんじゃけど。まったく! 仕方ない奴め……!
「別に料理ぐらい、儂も出来ると思うんじゃけど?」
「……えーー……っと……」
おい。何じゃその顔は。目を逸らすな、顔を逸らすな。さては貴様、儂は料理が出来ない奴じゃと思っとるじゃろ?
「ま、まぁちょっとずつ覚えていこうよ。ほら、僕も……て、手伝うから……」
「……」
「……ご、ごめん。か、廻道さんは台所に立たない方が良いと思う……」
「……ふんっ。今に見てろ。料理ぐらい、直ぐ出来るようになる」
「……まず台所に立たせて貰えないと思うけど……。みんな、止めちゃうんじゃないかな……?」
解せぬ。何故止めようとするのか。まぁ、儂が料理をしたら多少失敗してしまうことはあるじゃろう。経験は殆ど無いからの。それでも、うどんと粥ぐらいは作れるんじゃぞ。じゃから他の料理じゃって、それなりに出来る筈じゃ。練習を重ねれば、いずれ問題無く料理出来るようになるじゃろう。
なのに、その機会すら与えられぬとは……。
良いじゃろ、別に。少しぐらい失敗したって。今は何でも作れる被身子じゃって、最初の頃は塩加減とか焼き加減とか失敗してたんじゃぞ? それを母の指導で克服して、今や儂の胃袋を掴む程になったんじゃ。じゃったら儂も料理を続けさせて貰えればなじゃな? それなりに出来るようになると思わんか? 思えっ。
「……あのさ。廻道さん」
「何じゃ?」
「渡我先輩のこと……なんだけど」
「その話はしたくない」
そもそも、する必要が無い。被身子には儂が居る。儂さえ居れば、何の問題も無い。必ず生きて帰ると誓っている。被身子に、儂自身に。
……そうじゃ。儂は被身子の居る所に、生きて帰る。呪術師としては、絶対に死なんと決めている。その心構えを変えるつもりはない。今更になって、変えたりするものか。儂がそう決めたんじゃ。
「廻道さんが居れば、大丈夫だとは思うよ。だって渡我先輩の事、凄く大事にしてるから。
でも、廻道さんは呪術師で……ヒーローだから。いつ何が有ってもおかしくないと思うんだ」
「儂は、ひいろおではない」
「……廻道さんは、立派なヒーローだよ。だってUSJの時も、ステインの時も、I・アイランドや合宿、神野だって。死穢八斎會の時も。一番前に立って戦って、みんなを守って……エリちゃんを助けて。君は、僕達の中で一番強いから」
……まぁ、一理有るか。じゃけど緑谷、それでも儂は
「だから僕、廻道さんの事も心配で。少しでも力になれたらって、思うんだけど……」
「そう思うなら、さっさと強くなれ。お主、儂の心配をしている場合か? さっさとあの阿呆の後を継げ。そしたら儂も少しは楽じゃ」
「……うん。もっと、頑張るよ。早く、彼のようになる為に」
「そうしてくれ。それと、儂の被身子じゃからな? 儂だけの被身子なんじゃからな? 余計な心配は捨て置け。儂等は、絶対に大丈夫じゃから」
まったく。人の心配をする余裕など、緑谷には無いと言うのに。そんな暇が有るなら、もっと強くなれ。少なくとも儂に本気を出させるぐらいに強くなってくれ。そしたら、もう何の心配もしなくて良い。おおるまいとに匹敵する猛者が居るなら、儂がくらすめえと達を守らずに済む。
もっとも。緑谷が平和の象徴のように強くなろうと、儂は子供達に危険が迫れば必ず守るが。これだけは、変えられないからの。我ながら過保護じゃとは思うが……。
不覚じゃ不覚。子供にこんな心配をさせてしまうとはの。
「あれ、何の話しとるん?」
いつの前にか、
「何でも無いが? のぅ、緑谷」
「ぅ、うん……」
「……ほんまに? ならええけど……。あっ、りんご飴出来たよ。廻道さん、味見お願い!」
なんじゃ、もう出来たのか。なら、味見しなければ。楽しみじゃの、林檎飴。どんな出来栄えじゃろうか?
席を立つと、被身子が盆を持ってこちらに歩いて来た。盆の上には、出来立ての林檎飴が置いてあるんじゃけども……。
「何か、小さくないか?」
「あ、これはこういう品種の林檎なのです。小さくてカァイイですよね!」
なるほど。林檎といえば大きな物じゃと思っていたが、小さい林檎も有るんじゃな。さて、味は如何に? 取り敢えず一つ手に取って、食べてみる。
……うむ。ぱりぱりしていて、甘酸っぱい。小さいから食べ易くて良いのぅ。いつぞやに夏祭りで食べた林檎飴は、美味かったが食べ辛いかったし。儂にはこのぐらいがちょうど良いのかもしれん。えりがどう思うかは、分からんけど。
「うむ、美味い。食べ易くて良いと思う」
「えへへ、良かったぁ。じゃあきっと、エリちゃんが食べても大丈夫なのです!」
「早速届けに行こうよ! 喜んで貰えるかなぁ……!」
そんなこんなで。最後に林檎飴をえりに届けて、今年の文化祭は幕を閉じる。林檎飴は、好評じゃった。
被身子に振り回されてばかりの二日間じゃった気がするが、儂は結構楽しめた。今年の文化祭は、とても楽しかったと言って良い。まぁ、不満が無いと言えば嘘になるんじゃけど。その分は、夜になったらしっかりと解消するとしよう。
今夜は、絶対に寝かさぬからな? 被身子の浮気者っっ!!
あ、そうそう。麗日と緑谷は来月
文化祭編はこれにておしまいとなります。準備編も含めたら随分と長くなりましたね……。次回から、円花過労死編が始まります(遠い目)
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ