待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
文化祭編は終わりと言いましたね? あれは嘘です。
「つーーわけで!! 文化祭お疲れっしたーーー!!!」
「お疲れ様ーー!!!」
二日に渡る雄英文化祭が終わり、今は夜。くらすめえと達全員で打ち上げをする事になったので、居間を使って盛大な夕食を食べることになった。つまり宴じゃの。全員疲労が滲んでいるくせに、元気なものじゃ。儂じゃって、今日は疲れているんじゃけども。まぁ明日は振り替え休日ということで授業は無いし、付き合うとするかの。
ちなみに、夕飯はすき焼きじゃ。材料費は、最初の内は全員で出し合う事になってたんじゃけど、どうせすき焼きをするなら良い肉が食いたいなどと男子達が宣っていたので、肉代については儂が全額出すことにした。結構な値になったが、別に問題は無い。これでも金は持っている方じゃ。子供達が喜ぶなら、儂はそれで良い。次にこういった機会が有る時は、くらすめえと達が負担するそうじゃが……別に気にしないで良いんじゃけどな。全員笑顔で居るなら、儂はそれで。
それに、くらすめえと達には負い目があるからの。儂、既に
「いやー、ほんと上手く行って良かったな! 練習中は爆豪がキレ散らかしてばっかでどうなるかと思ったけど!」
「そうなんだよ。ちょっとミスっただけでも直ぐキレるし怒鳴ってくるし、マジ怖かった……!」
「だが、狂乱と狂騒の果てに満足の行く成果を残せた。悪鬼羅刹も、使い方次第と言ったところか……」
「てかさーー! 廻道、あんな格好良くベース弾けるとか狡くね? 普段ポンコツのくせにギャップエグいって」
「廻道と言えばよぉ! 緑谷、今日お前女子を連れ回してたらしいな……!!? 渡我先輩に廻道に麗日とか……選り取り見取りかよぉ!!?」
少し離れた席に座る男子共が騒がしい。食事中なんじゃから、もう少し静かにしたらどうなんじゃ? まぁ宴の場故、騒々しくなるのは仕方ないんじゃけども。峰田、緑谷を睨みながら血涙を流すのはどうなんじゃ。常闇、舎弟を悪鬼羅刹扱いするのは構わんが……本人に聞こえてると思うんじゃが? 後で突っ掛かられても儂は助けてやらんからな?
まぁ、たまにはこんな騒々しい夕食も悪くはないか。すき焼き、美味い。金を出してでも良い肉を買いに行かせて正解じゃった。
「で、どうだったの麗日。緑谷とは」
「んぐっ!?」
「廻道ちゃん、二人はどんな感じだった……!?」
「……んくっ。そうじゃの、少しばかり進展が」
「わーーっ!? ちょっ、言わないで! 言うのはあかん!!」
悪どい顔をした芦戸や、悪どそうな雰囲気を出した葉隠からの質問に答えようとすると大慌てになった麗日に口を塞がれた。おい、食事中じゃぞ貴様。慌てるのは仕方ないとしても、もう少し手段をじゃな……。儂、すき焼きを堪能しとる真っ最中なんじゃけど? せっかく被身子が丁寧に拵えてくれたんじゃから、食事に集中させてくれ。お喋り自体は付き合うから、食事の邪魔は止さぬか。まったく……。
「―――お茶子、ちゃん……?」
おい被身子、包丁を逆手で持つな。そもそも、何で食事の場に包丁が? 具材は全て切り揃えて有るというのに、何故?
……まったく。没収じゃ没収。絵面が物騒なんじゃ。隣に座る被身子から包丁を取り上げると、不満そうに睨まれた。頬がどんどん膨れていく。ので、頬を指で摘んでみる。ついでに麗日の手を儂の口元から手で払う。
「麗日、儂は食事中じゃぞ。あと被身子、包丁は要らんじゃろ包丁は」
「ご、ごめん……! でも廻道さんが余計な事言おうとするから……!」
「幾らお茶子ちゃんでも、私の円花ちゃんに容易く触れるのは駄目なのです……っ!」
「そ、それもごめんね……!? 大丈夫、私廻道さんはそういう対象じゃないから……っ」
「お茶子ちゃんにその気が無くても、円花ちゃんの恋愛対象は女の子なのですっ。変に誤解したらどうするんですか……!!」
「そ、そうなの!? ってことは廻道ちゃんが渡我先輩を攻略して……!?」
いや、じゃから……、騒がしい騒がしいっ。何なんじゃもうっ。儂に静かに夕食を食べさせてくれ! せっかくのすき焼きなのに、何でこんなに慌ただしくなってしまうんじゃが……!
「ていうかそれ、二人を見てれば分かる事だけどさ。最初からそうだったの? それともどっちかの影響をどっちかが受けたとか?」
対面に座っている耳郎が、多少身を乗り出してでも変な質問をしてきた。これは、いかん。食事中なのに、があるずとぉくが始まってしまう……! いつぞやの恋ばなの続きか!? どうにかして話題を逸らさなければっ。いやしかし、こうなったら最後まで根掘り葉掘り聞かなければ気が済まないんじゃろうなぁ……。くそっ、食事中じゃなければ直ぐにでも席を外すというのに……!
「んー、円花ちゃんは最初からそうでしたよね?」
「……まぁの」
「ケロ。確か、円花ちゃんが被身子ちゃんに、出会い頭にプロポーズしたのよね?」
「そうなんですよぉ。いきなり笑顔でプロポーズしてきて、びっくりしたのです」
……あぁ、いかん。があるずとぉくが、始まってしまった。文化祭の打ち上げにするような話ではなくないか? 何で
「廻道さん。渡我先輩のどういう所に一目惚れなさったのですか? いきなりプロポーズなんて……相当惚れ込まなければ出来ないと思うのですけれど」
八百万……。お主まで恋ばなに意気揚々と参加しないでくれ。あと別に、一目惚れはしとらん。隣に座ってる梅雨みたいに、静かにすき焼きを堪能してくれてると儂は助かるんじゃけど?
それにしても梅雨、一口が大きいの。そんなに口いっぱいに食べ物を頬張れるのは、少し羨ましい気がしてならん。どうじゃ? 被身子のすき焼きは美味いじゃろ? 今日は宴じゃ、遠慮せず沢山食べてくれ。儂も沢山食べるとしよう。
「んー……モモちゃん。多分……というか絶対、円花ちゃんは一目惚れしてないんですよねぇ。トガは一目惚れだったんですけど」
……何? そうじゃったのか? まぁ、確かに思い返してみればそんなような気がしないでもない。あの日出会った時から、儂に対して一直線じゃった気がするしの。何なら今も一直線じゃ。相変わらず好意が大きいと言うか、愛が重いと言うか。まぁ文句は無いんじゃけど。むしろ、幾らでも愛してくれないと困る。
「え、そう……ですの……?」
「はい。だって、円花ちゃんがトガに恋心を抱いたのは今年の体育祭の時でしたし」
「えっ!?」
「えっ!!?」
「しかも、初恋なのですっ」
「初恋っ!? ちょっ、何で!? 何がどうなってんの!!? だって幼馴染みで許嫁だよね!?」
……。いや、まぁ……それはその……。……正直、話したくないんじゃけど。無視じゃ無視。すき焼きを食べよう。うむ、美味い。流石被身子じゃ。まっこと、儂の胃袋を掴んで離さん。お陰で、被身子と母の手料理以外は美味く感じないんじゃよなぁ。甘味は別じゃけど。
「小さい頃から、私の事を愛してくれてたのは本当なのです。でもそれ、どちらかと言うと親愛的な感じだったんですよね。お祖父ちゃんと孫……みたいな?
結局、実は我慢してたってだけなんですけど。気にする事はいつまでもウジウジと気にしちゃうんですよね、円花ちゃん。トガはとっくに、全部捧げる気だったのに。酷いですよねぇ……」
「ひ、酷い……! 廻道ちゃんっ、渡我先輩を弄んでたの……!?」
「幾らポンコツでもそれはあかんと思う……!!」
「廻道、ちゃんと責任取らなきゃ駄目だよ!?」
何ですき焼きを食べながら、
「そうですよぉ、責任取ってくださいっ」
「んぐっ!?」
じゃから、急に抱き付くのは止さぬかっ。儂は食事中なんじゃぞ! 危うく喉に詰まるところじゃ!
「まぁそんなこんなで、今はラブラブなのです! ちゃんと円花ちゃんが十八歳になったら、結婚しますし!」
「……んくっ。そういう訳じゃ。別に言われんでも、責任は取る」
今更被身子から離れるつもりなんて無いからの。こやつの事は、儂が一生面倒を見ると決めている。それを違えるなんてことは起きん。まぁ被身子が儂に愛想を尽かして離れてしまう、なんて事が起きたら話は別かもしれんが。
……ぐぬぬ。そんな未来は、想像するだけでも嫌じゃの。不快じゃ不快。二度と考えないようにしよう。
「てっきり、最初からラブラブなんだと思ってた。ほら、初めて渡我先輩が教室に来たときとかさ」
「あー、あれ……凄かったよねぇ。凄いと言うか、ヤバかった……」
被身子が最初に教室に来た時? ……あぁ。そう言えば常闇に嫉妬して、思いっきり
「体育祭の表彰式の時も結構……。ていうか廻道、外に出た時変なファンに声掛けられたりしてない? 知らない人に付いて行かないでよ?」
「耳郎、貴様……儂を何じゃと思っとるんじゃ?」
「雄英一のポンコツ。あと、超絶方向音痴で……愛妻家?」
聞くんじゃなかった。何でどいつもこいつも、耳郎の言葉に頷いてるんじゃ。ぽんこつ扱いは、いい加減にして欲しい。この際方向音痴扱いは続けても良いから、せめてぽんこつ扱いだけは止してくれ。ぽんこつって言う方がぽんこつなんじゃぞっ。まったく……!!
「でも廻道ちゃんさ。どうしてそんなにポンコツで方向音痴なの?」
「じゃからポンコツでは無いっ」
「はいはい。ポンコツじゃなくて偉いね〜〜。でも、もうちょっとしっかりしようね〜〜」
おい。おい葉隠。芦戸っ。何じゃその態度は……! 特に芦戸っ、聞き分けの悪い子供をあやすように儂の頭を撫でるな! 被身子が何をしでかしても儂は助けてやらんからな!? よし行け被身子、今だけは何をしても許す!
ってこら。抱き寄せるな。食事中じゃぞっ!!
「まぁおじさん……円花ちゃんのお父さんから遺伝した……って感じですかねぇ。すっごいポンコツなんですよね、あの人」
「え? 遺伝なの?」
「遺伝……ということにしておきましょう。それにポンコツしてる円花ちゃんはカァイイので、そっちは別に直さなくても良いのです」
いや被身子、遺伝などしとらんが? そもそもぽんこつではないが? それに儂は、前世からこうじゃけど?? 晩年、徘徊呆け老人扱いされてたことは今でも解せぬ。誰じゃって地図も無しに野道を歩けば、道に迷うものじゃろ? いや儂は迷ってはいないが。ただ道がいつまでも続くからいつまでも歩いていただけじゃが!?
「あと、方向音痴も遺伝してますね。おじさんは克服してるんで、円花ちゃんも多分克服……出来ますよね……?」
「……喧しい。阿呆、たわけっ。不安そうな顔で儂を見るなっ」
「あ、そうだ! 明日やろうよ! 廻道ちゃんの方向音痴克服訓練!」
は?
「は?」
は?
……、……葉隠。今、何を宣った? なぁ貴様等。何で全員、葉隠の言葉に頷いた? 儂、そんな訓練などしたくないんじゃけど?
「ってなると、まずは何処でやるかだよね。取り敢えず外出許可は取らないと。……取れるかな?」
「取れるんとちゃう? ほら、相澤先生も廻道さんの方向音痴っぷりに頭抱えてたし……」
「訓練という名目なら、恐らくは可能かと。ですが何処でどのような迷い方をするのか分かりませんから、捜索も考えて人手が必要ですわ」
「ちょっと男子ー! 明日廻道の方向音痴直すから、全員手伝ってー!」
「何!? 廻道くん! 迷子を克服するつもりになったのか!! では諸君! これからプランを立てて行こう!!」
「何? 廻道の方向音痴直すの? つーか直んの?」
「……無理難題では? それは深淵を覗くようなもの……」
「くだらねえ。やるだけ無駄だ、俺は出ねえからな」
「爆豪。迷子を導くのもヒーローだと思うが」
「ああ゛!? 今から迷子センター目指せや半分野郎!!!」
いや、おい。おい待て。何を勝手に話を進めているんじゃ貴様等……! 別に方向音痴の克服なぞ儂には必要無いっ。この時代は
「じゃあ、明日は廻道の方向音痴克服訓練ね! 朝八時に、寮前集合!!」
「は? それは余計なお世話じゃっ! 必要無いっ!」
「余計なお世話はヒーローの本質! いい加減、自身が方向音痴だと認めたまえ!!」
「じゃから方向音痴ではないっ! というか、流行っとるのかその台詞っ!?」
……こうして。儂は明日、方向音痴を直すために訓練する羽目になってしまった。くらすめえと達と、被身子の助力の下で。
良いじゃろう……! こうなったら、儂が方向音痴では無いことを教えてやる……! 後で謝ったって、どいつもこいつも許さんからな!?
円花過労死編と言いましたが、その前に方向音痴克服訓練を消化しようと思います。
次回、迷子の暴君。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ