待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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迷子の暴君。

 

 

 

 

 

 月曜日。今日は文化祭の振り替え休日ということで休みなんじゃけども、何故か儂は方向音痴克服訓練とか言う訳の分からん訓練に参加することになった。それも朝から、巫女装束(こすちゅうむ)姿で、じゃ。現在、朝の八時と少し。まさか、舎弟を除いたくらすめえと全員が参加することになるとはの。しかも被身子まで参加じゃ。……どうしてこうなった?

 まったく、どいつもこいつも儂を方向音痴扱いしおって。今日という今日は、儂が方向音痴で無いことを証明してやろう。後で謝っても儂は許さんからな? ふんっ。

 

「各自、配置に付いたな? 渡我の協力で廻道にはGPSが付いているから、各自受信端末で廻道の位置を常に把握すること。少しでもルートを逸れたら、即座に確保しろ」

『はい!!』

 

 相澤が持つ通信機から、くらすめえと達の元気な返事が聞こえた。

 今、儂は雄英高校校門前に相澤と立っておる。今回のこの訳の分からん訓練、その内容は地図を片手に時間内に目的地まで辿り着くこと。初回と言うことで、一時間以内とこの教師は言っておったわ。徒歩三十分程度で着ける大型商業施設に一時間も掛かると思われている辺り、心外にも程がある。こうなったら、走ってしまおう。そしたら十分ぐらいで辿り着けるじゃろ。今に見てろよ……!

 あと、じぃぴぃえすって何じゃ? おい被身子、いつそんな物を儂に付けたんじゃっ。いつぞやも勝手に付けておったし……まったく。勝手な真似をしおって。

 

「廻道。ここから見えるショッピングモールまで地図を頼りに行け。遠くに見えてるあれだ。

 いいか? 地図に書いてある通りに進むんだぞ? 間違っても大通りから外れるな。迷子になったらその場から動くな。各ポイントに配置したクラスメートが迎えに行く」

「は? そんなもの必要無いが?」

「方向音痴を直してから言え。……では、始め。各自、気を引き締めろ」

 

 ……。……解せぬ。この扱いは解せぬ。が、仕方ないから取り敢えず儂が方向音痴では無いことを、今日こそは証明してくれる……!

 目的地は、校門の前から見えている。雄英は、もやは山と言っても良い丘の上に在る学校じゃからの。校門の前は、見晴らしが良かったりするんじゃ。じゃから、校門前の道は坂道じゃ。転落防止用の為に防護柵(があどれえる)が置かれている。地図が示すのは、校門を出て右。しかしの、儂は方向音痴では無い。断じて、方向音痴では無いんじゃ。じゃからこんな地図には従わんでも、目的地まで辿り着ける。三十分どころか十分以内に到着してやろう。その為には……!

 

「どいつもこいつも、今に見てろよ……!」

 

 赫鱗躍動・載に呪力強化を合わせる。防護柵(があどれえる)に足を掛ける。そして……跳ぶ!

 

「は……?」

 

 後ろで相澤が間抜けな声を出した。滑稽じゃの。どうやら儂が近道をするとは思わんかったらしい。想定が足りとらん。まったく、情けない教師め。

 それにしても、思ったより高く跳んでしまった気がするの。着地は……まぁ下には木々があるからそこに落ちれば大丈夫じゃろう。あ、いかん。風が吹いて地図が飛ばされた。目的地の方向は把握しているから、別に大丈夫じゃろう。懐には携帯電話(すまほ)もあるしの。いざとなれば誰か迎えに来るらしいし、それまでは自力で商業施設を目指すとしよう。

 さて、着地着地……。お、ちょうど良い所に木々があるの。よし。

 

 げっ。

 

 枝を掴んだら、枝が折れた。そのまま儂の体は枝葉に何度も引っ掛かりながら、最終的には背中から地面に落ちた。ぐえっ。

 

 ……骨が軋んだ気がするの……。ついでに少し、目が回った。一度、術式を解いて反転術式(はんてん)を回すか。何とも間抜けな姿を晒してしまった気がする。近くに人が居なくて良かった。こんな姿を見せたら、またぽんこつ扱いされそうじゃ。

 

 ……良し。問題無い。体は無事じゃ。切り傷もない。目も回っとらん。巫女装束(こすちゅうむ)は、やたらと頑丈に作られているので何も問題はない。あちらこちらに枝葉が引っ掛かっているのは……まぁ歩いてれば勝手に落ちるじゃろ。髪に引っ掛かって無ければ気にすることは無い。髪を汚すと、被身子が拗ねるからのぅ。気を付けなければ。

 

 さて。目の前に広がるのは森林なんじゃけれども、目的地の方角は分かっておる。雄英の校門から左斜め前の方角じゃ。左斜め前と言ったら北西か。森の中は方角が分からん。あぁ、そうじゃ。何故か地図と一緒に方位磁石を渡されてたんじゃった。確か懐に入れて……。お、あったあった。よし、方角を……。

 

 ……壊れてるわ。思いっきり砕けてしまっている。仕方ない、方向感覚を頼りに進むとするか。北西は左斜め前、北西は左斜め前……。いや、北北西じゃったっけ? まぁとにかく、左斜め前に真っ直ぐ進めば良いんじゃ。

 

『ガガ……ザ、ザーーーー、ま、ザザザザザ』

 

 む? 耳に付けさせられた通信機も壊れてしまったか。誰か何か言おうとしておるが、雑音が酷くて何を言ってるか分からん。うるさいから外してしまおう。壊れてるんじゃし、捨てても良いか? いや……一応懐に入れておくか。ほら、修理出来るかもしれないしの。

 取り敢えず、森の中を進もう。車の走る音がするから、そちらに向かえば道路に出る筈じゃ。もう一度全身を呪術で強化して、森の中を駆ける。

 走ること、数分。儂は簡単に森を抜けた。そして眼前に広がったのは、見覚えが有るような無いような住宅街。ううむ、職場体験の時にこの辺をおおるまいとと歩いた気がしないでもない。道は何となく覚えてるから、地図が無くとも大丈夫じゃろう! がははは!

 

 っと、待て待て。何で呪霊が何匹も居るんじゃ? ここら一帯の呪霊は、儂やおおるまいと、そして緑谷の三人で祓い尽くした筈じゃが?

 

 ……いや、この時代は呪霊が産まれやすい。それにここ最近は、悪党(う゛ぃらん)連合のせいで雄英そのものが世間に良く思われていない。つまり……負の感情が外部から注がれてる状況でもある。そもそも人が多い所には呪霊が産まれやすいものじゃし、儂等……まぁ英雄(ひいろお)科のせいで他の生徒達の不満も有った。であれば、まぁ。こうも短期間で呪霊が産まれるのもあり得ない話でも無い。と思う。

 

 呪霊は、捨て置けぬ。よし、目的地に向かうついでに少し寄り道じゃ。出来る限り、呪霊を祓ってしまおう。面倒じゃが、後で七山に方向しておくとするか……。

 

「しかし、骨が無さ過ぎる。まぁ、産まれたばかりの呪霊などそんなものか……」

 

 どうせ産まれるというのなら、猛者に産まれて欲しいものじゃ。まったく、つまらん。雑魚を潰して回るのは、蟻を踏み潰して回るのと大差無い。少しも楽しくないんじゃ。それでも、呪霊は軒並み祓わなければな。儂は呪術師、何より呪霊が子供に取り憑くかもしれないと考えたら……やはり捨て置けぬ。

 

「あーー! ブラッディ!!」

「む……?」

 

 呪霊を祓いつつ住宅街を歩いていると、右から子供の声が聞こえた。何かと思って見てみると、親に抱き上げられた幼児が儂を指指しておる。なるほど、これから保育園か幼稚園に向かうのか。

 

「ママ、ママ! ブラッディ、ブラッディ!」

「あら、噂の……。本当に小さいのね。小学生みたい」

 

 あ゛? 今……儂を小さいと言ったか……?しかも小学生みたい、じゃと……? これでも、この身体は十六歳なんじゃけど!? 高校生なんじゃが!! 誰が小学生じゃ誰がっ。儂とて、望んでこんな低身長になったわけじゃないっ。まったく……!

 

 くそっ。低身長は色々と不便じゃ。どうにかして身長を伸ばせたりはしないのか? 確か骨延長手術とか言うのを受ければ手足が伸びると聞いたが……。いや、手足だけ伸びても仕方ないんじゃ。どうせ伸ばすなら胴体も伸ばしてくれ。身長ばっかりは、何をどうしたって伸びぬからのぅ……。今更どうにかなるとは思っとらんけど、どうにかなるのならどうにかして欲しいとも思っとる。

 っと、いかん。幼児とその親に気を取られてる場合ではない。早く商業施設に向かわないと、方向音痴扱いされてしまう。地図は無いが、まぁ何とかなるじゃろう。方向は覚えてるんじゃから。

 

 そう、北西。北西に向かわなければ……!

 

 

「廻! 道!! くぅうううん!!!」

 

 

 む? 駆け出そうとすると、何処からか飯田の声が聞こえて来た。周囲を見てみると、遠くから飯田がこちらに走っているのが分かる。何で全力疾走しとるんじゃあやつ。ちょうど良い、どちらの足が早いか比べるとしよう。長距離なら勝てる気はしないが、短距離ならば勝算がある……筈じゃ。多分。

 

 よし、今度こそ目的地に向かって一直線じゃ! 簡単に追い付けると思うなよ!!

 

 

「違う! そっちじゃない!! 何で君はあらぬ方向に進んでしまうんだ!!?」

 

 

 は? 何を叫んでるんじゃこやつ。目的地は、北西じゃろっ! 黙って儂に付いて来れば良いんじゃ!

 

「ショッピングモールはここから北北西! 君が進もうとしてるのは北東だぞ!!?」

「方向音痴か貴様!? 目的地はこっちじゃろっ!!?」

 

 この後、儂は飯田に追い付かれるまで北西に向かって走った。そして、儂が向かっていたのは北東であることを方位磁石を以て解らされた。お、おかしいの……。そんなつもりでは……。

 

 はっ!? まさか儂の知らぬ間に、方角が変わっていたのでは!? 何故!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 解せぬ。まっこと解せぬ。儂は北西を目指して走っていたと思ったら、何故か北東を目指して走っていた。何がどうしてそうなったのか、儂自身分からぬ。いったい、どうなっとるんじゃ……?

 さては、迷子になる天与呪縛でも儂に掛かっているのか? いや、そんな天与呪縛は聞いたことが無いが? ではいったい、何故……? 何故こうも道に迷ってしまう……と言うか、間違えてしまうのか。謎じゃ。まっこと、謎じゃ……。儂、もう一人で出歩くのは止そうかの……。いやしかし、一人で出歩かなければならない事が多いのも事実じゃ。

 

 ……儂が方向音痴なのは、何か理由が有る筈じゃ。頼むから有ってくれ。でないと、我ながら恐ろしくなってしまう。いやもう、直さなくても良いのでは? 誰が常に儂を道案内してくれ。そしたら何の問題も無いんじゃっ。

 

 

 ……。…………。………………。

 

 

 うむ……。思考放棄はいかん。しっかりと考えよう。まず今回、何をどう間違ったのか考えるべきじゃの。近道をしようと崖下に飛び降りたのは良い。その後、北西を目指したのも間違いでは無かった。方位磁石や通信機は壊れてしまったが、進むべき方向自体は間違えていなかった。なのに気が付いたら北東に向かって全力疾走していた。何故?

 

 お、落ち着け。原因は何処かに必ず有るんじゃ。原因不明のままにしておくのは止そう。ううむ……。原因……北西が北東になってしまった原因……。

 

 あ。

 

 ……そう言えば、着地に失敗した時に少し目が回っておったの。そのせいで方角を見失ったのでは? うむ、そうじゃ。そんな気がしてきた。つまり今回、見当違いの所に走ってしまったのは目を回して方向感覚が狂ってたからじゃ。よし、原因解明が出来たな!

 

 

「がははは!」

 

 

 ……はぁ……。笑っている場合ではない。飯田に連れられて、大通りに出たんじゃからしっかりしなければ。新たな地図と方位磁石、そして通信機を渡されたんじゃから、今度こそ無事に目的地まで辿り着かねば。既に十五分以上の時間を使ってしまってるんじゃけども、まぁ急げば何とかなるじゃろう。……なるよな?

 

 取り敢えず……地図を見よう。飯田に渡された地図を広げると、赤く大きな文字で「現在地はここ!」と書かれている。目的地となる場所には「ここが目的地!!」と黒い文字で書かれているの。よし、では……目的地に向かうとするか。このまま地図の通りにしばらく左に真っ直ぐ進めば良いんじゃな? それなら迷うことも無いじゃろう。よし、では真っ直ぐ……。

 

『待て廻道。歩き出す前に方角の確認をしよう。ショッピングモールは、北北西に道なりだ』

 

 歩こうとしたら、耳に付けた通信機から障子の声が聞こえた。いや、方向はあってるじゃろ。地図もこの通りしっかり見て……。……あ、これ……地図の向きが違う。危うく西に向かうところじゃった。

 

 ……いや? 西に向かおうとしていたことに、言われずとも気付いていたが? 開いた地図の向きが、変な方向を向いてただけじゃけど??

 

 とにかく、地図は正しい向きに変えた。方位磁石は……ええっと、北がえぬで西がえす……じゃったか?

 

『円花ちゃん、西はWよ。Westよ、ウェスト。NWに向かってちょうだい』

「梅雨、流石にそんな間違いはせぬが……?」

『今、南に向かおうとしてたでしょう?』

「……い、いや……そんなことはない……っ」

『ケロケロ。気を付けてね、円花ちゃんはとってもポンコツだもの。被身子ちゃん風に言うなら、カァイイ……かしら?』

 

 うるさい。たわけ。梅雨の蛙っ! 雨の日に一人で歌ってたら良いんじゃっ!

 

「……とにかく、こっちじゃの」

 

 方位磁石を確認する。えぬだぶりゅぅ……は、こっちか。なるほど、この道を真っ直ぐ進めば良いんじゃな? 方角も分かったことじゃし、もう迷うことは無いじゃろう。時間は……まだあるか? 多分ある……じゃろう。よし、急ごう。これ以上方向音痴扱いされる前に……!

 

『おーし廻道、こっちだこっち。あんよは上手、あんよは上手!』

『ばっ、瀬呂っ。煽るなって。怒って迷子になったら、次は迎えに行くの俺等だぞ!?』

『もしかしたら、爆豪みたいに完璧になるんじゃね?』

『はっ!? そうか!! あんよは上手! あんよは上手!!』

 

 ……よし。瀬呂、上鳴。貴様等は後で殴る。拳骨じゃ拳骨。思いっきり馬鹿にしおって……! この訓練が終わったら覚えておけよ!? 本気で拳骨じゃからなっ!?

 

『瀬呂くん、上鳴くん。私の円花ちゃんに何か言いましたかぁ?』

『い゛っ!? か、廻道! その調子その調子!』

『そのまま真っ直ぐ行けば大丈夫だから頑張ろーぜ!?』

 

 ……通信機が騒がしいの。少し進む度に、くらすめえと達の声がいちいち聞こえてくる。瀬呂と上鳴は被身子に諫められてしまったようじゃが。儂を馬鹿にするからそうなるんじゃ。程々にしないと、いつか被身子に刺されて大変じゃからな? まぁ流石に、刺されそうになったら助けてはやるんじゃけども。儂が止めねば、被身子は警察に捕まってしまう。それだけは駄目じゃからの……。

 

 そう言えば。くらすめえと達はいったい何処からか儂を見守ってるんじゃ? 周囲を見渡して見るが、それらしい姿は見当たらない。いったい何処に?

 

 ……あ。何か、空に飛んでるの。あれは、何じゃったけ? 確か……どろおん? じゃったか? よく分からん機械じゃけど、撮影機器を搭載して空を飛べるらしい。なるほど、儂を撮影しているようじゃな。何故こうも、厳重に見張られなければならないのか。これでは訓練にならない気がするんじゃけど?

 

 なんて考えながら歩いていると、自販機が目に入った。ちょうど良い、走ったり何なりして少し喉が渇いていたところじゃ。水でも買おうかの? 確か、被身子に持たされた小銭入れが懐に……。うむ、あるな。これで水を買おう。

 

「ふ、廻道。喉が渇いてると思って、オイラが買っておいたぜ……!」

「……何しとるんじゃ貴様」

 

 自販機で飲み物を買おうとすると、自販機の物陰から峰田が現れた。手には、ぺっとぼとるを持っている。何を企んでいるかは知らぬが、わざわざ用意してくれたようじゃ。ありがたく貰っておこうかの。

 念の為に封を確認してみたが、開けられた形跡は無い。まだ冷たいし、買ったばかりのようじゃ。なら、何の心配も無いじゃろう。

 

 蓋を掴み、捻る。すると、勢い良く空気が抜ける音が聞こえて―――。

 

「ぷえっ」

 

 中身が、儂の顔に掛かった。おい、何じゃこれっ。炭酸ではないかっ! 貴様いったい、何のつもりじゃ!?

 

「なっ!? わ、悪い廻道! 噴き出すとは思わなかった!!」

『……峰田くん?』

「ひぃいっ!? ちが、違うんだよぉ! オイラは善意で用意しただけなんだ!」

『後で詳しく聞きますね。あと、円花ちゃんは炭酸飲めないので次は水かお茶にしてください』

「は、はいぃ!」

 

 峰田が怯えている。日頃の行いが良ければ、こうも怯えなくて済んだのはないかと思わないでもない。こやつはこやつで、色々と仕方ない奴じゃからの。

 それはそれとして、巫女装束(こすちゅうむ)が濡れてしまったの。後で被身子に洗濯を頼まなければ。いっそ峰田に洗わせる……のは、止めておいた方が良さそうじゃ。どんな意図が有ったかは知らぬが、せっかく用意してくれたんじゃからこの炭酸飲料は飲んでおくとする。くぴくぴ。

 

 ……うえっ。口の中が痺れるんじゃ。けぷっ。

 

 一応喉も潤ったところじゃし、目的地に向かうとしよう。既に結構な時間が経ってしまっているような気がする。方角は……どっちじゃったっけ? 確か北西……北西じゃったよな? で、北西は左斜め前じゃから……。こっちか。自販機の脇に、枝道がある。ここを通って行けば良さそうじゃ。大通りから逸れてしまうが、方角は間違っていない筈じゃ。

 

『ちっがーーう!! そっちじゃないそっちじゃない!!』

『何で廻道ちゃんは直ぐに変な所に行こうとしちゃうの!?』

「ぬぐ……っ。や、喧しい……!」

 

 枝道に入ると、芦戸と葉隠の大声が鼓膜に突き刺さった。通信機に向かって叫ぶのは止めてくれ。耳が痛くなるっ。だいたい、方角は間違ってないじゃろうが! 儂、北西に向かって歩いてるんじゃけど!?

 こうなったら、通信機から聞こえる声なんて無視じゃ無視っ! 

 

『あーもう聞いてないっ!? 聞いてないよねこれっ!?』

『尾白くん、そっち近いから捕まえて!』

『分かった。ちょっと行ってくる……』

 

 む、いかん。このままでは尾白がやって来て、大通りに戻されてしまう。しかし儂の勘が、目的地はこっちじゃと告げているんじゃ。よし、今度こそ走ってしまおう。追い掛けてくるのが飯田でなければ、捕まることは無いじゃろう。今度こそ、目的地まで一直線に走ってくれる!

 

『皆さんいけません! また廻道さんが、あらぬ方向へと走り始めて……!!』

『飯田、俺と緑谷で先回りする。そのまま廻道を追ってくれ』

『行こう、轟くん!』

 

 何? 尾白どころか、他の連中まで追い掛けて来るのか? 良いじゃろう、掛かってこいっ。そう簡単に儂を捕まえられると思うなよっ!?

 

『いやマジで、何でこうなるんだ……?』

『方向音痴って、極まるとマジやべーんだな……。もしかして、放っといたら街中で遭難するんじゃないかこれ……?』

 

 何故か切島と砂藤が戦々恐々としているが、放っておこう。そんな事より、儂は早く先に進まなければならん。くらすめえと達に追い付かれてしまうつもりは無いからの。とにかく全速力で、北西に向かって走るっ。

 

 あと、誰の方向音痴が極まってるって??

 

『……はぁ。もぅ……とんでもない方向音痴なのです……』

 

 被身子の呆れた声が聞こえた。じゃから、道はこっちであってるじゃろうがっ! 儂、北西に向かって突き進んでおるが!?

 

 まったく、どいつもこいつも……!!

 

 で、この後。儂は氷に行く手を阻まれたり、空から降ってきた麗日や緑谷に確保されて、大通りまで連れ戻された。儂が進もうとしていたのは、どうやら西じゃったらしい。左斜め前に行ってるのはあくまで儂の主観じゃったらしく、実際には左に突き進んでいたと。……解せぬ。じゃってそこに、左斜め前に進める道があったんじゃぞっ!?

 

 なお、目的地には一時間以内に辿り着けなかった。まさかの三十分も多く時間が掛かってしまった。……何でじゃ!!?

 

 

 

 

 

 







円花が迷子になる理由は、道を知らんのに道を開拓しようとすることと、方向感覚が乱れやすいこと(今回の場合自分が向いてる方が北だと思っている)、そして何よりポンコツだからです。これ、克服出来るんですかねぇ……?

三人称による補完は要りますか?

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  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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