待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
京都では散々な目に遭ってしもうた。何故、心霊すぽっと巡りをしなければならなかったのか。幾ら呪霊被害を抑える為と言っても、物事には限度があると思うんじゃ。まさか二日間も呪霊を祓い続ける羽目になるとはの。儂の呪術師としての活動時間は日に四時間では無かったのか? 総監部め、さっそく雄英との取り決めを破りおったな……? これについては、後で根津校長に言い付けて……。
……いや。そんな真似はしない方が良いか。じゃって、この時代の呪術師は儂しかおらん。百歩譲って、おおるまいとを呪術師と認めたとしても、それでも二人しかいない。多少活動時間が伸びてしまっても仕方ないとは思うし、何より儂が動かねば呪霊被害が増えてしまう。そう考えたら、うむ……。目を瞑ってやった方が良いか。じゃけども、そうしたらそうしたらで被身子との時間が取れん。
ぐぬぬ……。一度は良い方向に向かったと思ったのに……! どうにかして時間を作らねばっ。ど、どうやって……!?
「ん、んん……? ぁれ、まどかちゃ……。んん……」
「む、すまん。起こしてしまったか? まだ起きるには早いから、もう少し寝てていんじゃぞ?」
「……おきま、ひゅ……。ヨリくん成分、補充して……」
儂が寮に戻れたのは、朝方じゃ。もうそろ日が昇りそうな、そんな時間。ひとまず部屋に戻って用意されていた着替えを片手に風呂に入ろうかと思ったんじゃけど、その前に被身子の寝顔を眺めてたら動くのを忘れていた。じゃって一昨日も昨日も、ろくに顔を見れんかったし。たまには寝顔を眺めてるのも良いものじゃ、なんて思っていたら、被身子が起きてしまった。儂としてはもう少し、無防備に熟睡してる被身子を眺めていても良かったんじゃけども。
「んん、ふわ……ぁ……。お帰りなさい、円花ちゃん。二日も居なかったんですから、たっぷり甘やかしてください」
寝間着姿の被身子が布団から体を起こした。と思ったら、両腕を大きく広げた。寝惚けた瞳に、不満が宿り始めている。じゃけど、ううむ……。儂、昨晩風呂に入って無いんじゃよな。最後に入ったのは、一昨日の晩じゃ。そう考えると、抱き付くことを少し躊躇ってしまう。ほら、その……汗臭いかもしれんし。そもそも服や体が汚れている自覚はあるしの。じゃから被身子が寝てる間に風呂に入って、しっかりと身を清めてから布団に入り込むつもりじゃったんじゃけども……。
「ほら、早く来てください。これ以上お預けなんて、我慢出来ないから」
いや、しかしの被身子。汚れた体で抱き合うのは……。じゃけどこれ以上待たせるのは、それはそれで忍びない。
……うむ、仕方ない。被身子優先じゃ。存分に甘えさせてやらねば。儂も甘やかしたいしの。ただ、臭っても儂は知らんからな?
「ただいま。ほったらかしにして、すまなかったの」
「ぎゅぅう〜〜〜っっ」
「んぐっ。これこれ、仕方ないのぅ……」
被身子が座る布団に、四つん這いで近付くと思いっきり抱き締められた。どころか、首に顔を埋められて臭いを嗅がれた。今は少し止して欲しいのぅ。鼻が曲がっても儂は知らんぞ?
「んん……ちょっと汗臭いのです……」
「風呂、まだなんじゃ。臭うなら入ってくるから、一度離し」
「嫌です」
押し倒されたわ。被身子が儂の上に覆い被さって、辛抱堪らんと言わんばかりの顔で迫ってくる。朝からそんなに熱っぽい目で見るのは、……狡じゃろ。儂、せめて風呂に入るまではって、我慢してたんじゃけど? なのにお主がそんな調子では、もう我慢するどころでは……。
「後で、みんなが起きる前に一緒に入るのです。だからぁ、もっと汚しちゃうから……♡」
「っっ……」
耳元で囁かれたと思ったら、勢い良く首を噛まれた。二日ぶりの感覚に、つい変な声を漏らしそうになってしまう。まだ誰も起きては居ないとは思うが、念の為に唇をきつく結んで我慢する。あと、被身子の背中に腕を回してしがみつく。そしたら。両腕……両手首を掴まれて、布団に押し付けられた。抵抗は許さんと、我慢も許さんと、そう言われたような気がする。
……こうなってしまったら、お互い満足するまで止まれない気がするんじゃけど。
良いか、別に。我慢する必要なんて、何処にも無いんじゃ。儂は儂で、被身子にこうされたくて一昨日の晩は寝辛かったしの。二日間程離れてしまっただけで、この調子じゃ。いずれ何日も帰れない日が来るかもしれないのに、今からこんな調子では先が思いやられると言うか……何と言うか……。
「んん……っ。ひみ、こ……っ」
心臓が跳ねる。期待が高まって、もうどうしょうもない。
駄目じゃの、これは。ひとまず満足するまで、このまましてしまおう。でないと、お互いに収まりがつかんからの。我ながら色呆けしているとは思うが、仕方ない仕方ない。じゃってほら、被身子にして貰いたいんじゃもん。
◆
まさか朝から裸の付き合いをすることになるとはの。自制が出来とらん、自制が。反省せねばなるまい。いやしかし、二日ぶりに会ったんじゃから盛り上がるのは仕方ないと言うか、何と言うか……。どうにも良いように転がされてしまっているような気がしてならん。それを不快に感じるどころか嬉しく思ってしまう辺り、儂も大概じゃのぅ。どうやら恋だの愛だのと言ったものは、人をおかしくしてしまうらしい。……もしや被身子がああなのは、儂を愛してるからか? いや、まぁ……。じゃからって困ることは無いんじゃけど。誰かに深く愛されることは、素晴らしくて素敵な事じゃと思うし。
じゃなら、ほら。もっと被身子を愛したって別に良い訳で。どうやってこれ以上愛するのかは、分からんけど。でも、被身子の愛は無尽蔵みたいなものじゃしなぁ。ううむ……。
っと、いかん。被身子の事ばかり考えている場合ではない。今日も儂には、呪術師としてやるべき事がある。それは出来ることなら避けたかったんじゃけど、総監部からの依頼も有って重い腰を上げることにした。まぁ一応、これから先の呪術界を担っていくのは儂じゃ。それも、望む望まぬには関わらず。おおるまいとも居るし、最悪の場合は緑谷の助力もあるんじゃけども、それでも日本全国の呪霊被害を抑えるとなると人手が足りん。それを少しでも改善させる方法が、有るには有る。今更なんじゃけど、儂一人でやろうとせずに最初からこうしていたら手っ取り早かったのでは?
……いや、無闇矢鱈に死人が増えるだけじゃ。そもそもあの時は、呪術総監部なんてものは無かったわけじゃし。
ともかく。儂はこれから、呪具を作る。
あぁ、いかんな。直ぐ被身子を想ってしまう。まだ色呆けが続いているの。流石に切り替えなければ。
「……よし、では行くとするかの」
目の前には、
扉に手を掛ける。それから扉を開こうとして……。凄まじく嫌な予感がした。ので、慌ててその場から跳び退く。念の為に呪力で体を覆った。その直後。やはりと言うか何と言うか、盛大な爆発が起こりおった。大爆発じゃ。扉は勢い良く吹き飛んで、爆炎とともに窓硝子を突き破って何処かへ飛んで行った。そして、扉前の床も壁も天井も熱で焦げた。どうやらまた、あの
今日も大爆発を引き起こしたであろう張本人は、廊下で大の字に倒れてるわけじゃけど。あんな爆発に巻き込まれて、よく生きているの? 死んでもおかしくないと儂は思うんじゃけど。
「ぁいたた……っ。あれ、貴女はいつぞやの」
「久しぶりじゃの。ちょいと頼みたい事が有るんじゃけども、良いか?」
「無理ですねぇ!! 私はベイビーの改良で忙しいですから!!」
「そのべいびいの改良を頼みに来たんじゃけど?」
取り敢えず無事なようじゃし、起きるのに手を貸してやるとするか。ひとまず発目の手を取ると、次の瞬間に発目は猛烈な勢いで起き上がった。何じゃこやつ、全然元気ではないか。儂の心配を返せ。と言うかおい、距離が近いんじゃ距離が。焦げ臭いぞ貴様。
「そういう事でしたら喜んで!! どんな改良がお望みで!?」
目を輝かせながら迫るのは止してくれ。こんな場面、被身子が見たら大変なんじゃぞ。儂が。
「眼鏡以外も作れるようにして欲しい。そうじゃな……ひいろお活動に使える道具を作れるようにしてくれると、助かる。各人の要望に応じて、様々な物が作れるようになるのが好ましい」
「なるほどなるほど……。となると全面的な改修と移設が必要ですね! 分かりました、やっておきましょう! ではまた!!」
「う、うむ……。またの……」
出来ればもう会いたくないんじゃが、今後こやつとは何度も関わることになるんじゃろうな……。どうにも苦手なんじゃよな、こやつ。何がどう苦手かと聞かれると、返答に困るのも事実なんじゃけど。自分が好きなものに一直線な姿は、被身子と変わらん筈なんじゃけども……。
まぁ、とにかく。焦げ臭い発目は、開発室の中へ戻って行った。これで呪具作成の心配はしなくても良いじゃろう。あんな奴じゃけど、発目の腕は確かじゃからの。
さて。それでは儂も一度寮に戻って勉強を……。……しまった。どうやって寮に帰れば良いんじゃ? もう授業は始まってしまっているから、被身子に案内して貰うわけにはいかん。しかし一人で出歩くのは、止しておきたい。いかん、いかんぞ……。これは、まっこといかん……!
仕方ない、こうなったら……っ。誰か教師が廊下を通るまで、大人しく待っているしかないのぅ……っっ。
久し振りの発目ちゃん登場でした。そして彼女に対して苦手意識が凄まじい円花です。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ