待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
発目に頼み事をした後。儂はたまたま廊下を通り掛かった相澤を引っ捕らえ、寮まで案内して貰った。移動中、儂の方向音痴っぷりに小言を言われたような気がしたが、それは無視した。方向音痴は直していくが、じゃからって相澤と話すのは不服じゃからの。嫌いな奴とは話したくない。誰もがそう思う、当たり前の事じゃ。
で。寮に戻った儂を待っていたのは、なんと七山とほおくすじゃった。この時点で凄まじく嫌な予感がしたんじゃけども、じゃからって話を聞かぬわけにもいかん。仕方ないから、話を聞いてやるとする。今度はどんな仕事を儂に振るつもりなんじゃか。頼むから、もう空の旅は勘弁してくれ。
「こうして会うのは久しぶりですね、廻道さん」
「俺は昨日会いましたけどね。さ、座って座って」
「……いったい何の用じゃ?」
どんな思惑が有るのかは知らぬが、よくも昨日の今日で顔を出せたな七山。貴様、食べ物の恨みが如何に恐ろしいものか骨の髄まで刻み込んでやるから覚悟しろ。許さん。五食じゃぞ、五食。儂は五食も被身子の手料理を食べ損ねたんじゃ。それに、おやつも二回っ。添い寝も二回っ! 人の恋路を邪魔する奴は、馬……ではなく儂に蹴られて死ねば良いんじゃ。よし、蹴飛ばそう。儂は本気じゃぞ? 本気で蹴飛ばすぞ? 遺書を書く時間ぐらいは、まぁくれてやっても良いが。
まぁ、取り敢えず
「今日は、呪術師補佐……超常より以前の時代、窓と呼ばれていた人員の選定を行いたく、顔を出した次第です。廻道さんの目から見て、信用出来るヒーローを教えて頂きたいのですが」
なるほど、窓か。確かに窓の有る無しは呪術師の活動に影響が出る。必要な人員であるのは確かじゃ。その窓に
で? なんで儂が信用している
「それと。窓に就任したてのヒーローには、ある程度の期間を廻道さん及び緑谷くん……そしてオールマイトの補助監督として過ごして貰います。これは窓の仕事に理解を深めて貰うために必要な事かと」
まぁ、それも妥当じゃの。呪霊というものがどのような存在であるのか。そして窓は何をするべきか。それを知って貰うには、実際に呪術師に関わって貰うのが手っ取り早い。
「……なら答えるが、生憎と儂が信用をしているひいろおは居ないんじゃ。強いて言うならおおるまいとじゃが、あやつは例外じゃろ?」
「例外ですね。そうですか、居ませんか……」
「腕が立つひいろおなら、心当たりがあるが」
「それは誰でしょう?」
「鯱頭。ぎゃんぐ……おるか、じゃったっけ? 手合わせする機会が有ったんじゃけど、中々じゃったぞ」
「なるほど、ギャングオルカですか。そちらはリストに入れておきましょう。他には?」
……他に? 他に、か。ううむ……。他に腕が立つ
一応、言っておいてやるか。この話し合いの席に参加を認められてるようじゃしの、このたわけは。
「まぁ、この男も入れとけ。黒靄と交戦しとるから、他のひいろおよりは経験がある。言っておくが儂の補助監督にはするな。大嫌いなんじゃ」
「雄英教師は既に全員、リスト入りしています。何せ、総監部が立ち上がる前から呪術界を知ってますからね。
一応、こちらが総監部側で勧誘しようかと考えているヒーローのリストです。目を通しておいてください」
「……相分かった」
手渡された書類は、それなりに分厚い。少し内容に目を通してみると……。なるほど、総監部が目を付けた
それにしても、困ったのぅ。勉強もせねばならぬし、鍛錬もしたい。えりの様子を見に行きたくもあるし、くらすめえと達の訓練にも付き合いたくもある。もちろん、被身子との時間も欠かせない。それら全てをこなしながら呪術師として活動するとなると……やはり時間が足りぬの。その日に何をするか、しっかりと決めて動くとするか。もれなく全部を済ませるのは、流石に無理じゃ。日毎に、何かを選んで何かを諦めるしかあるまい。
まったく。呪術科に入ったら、時間が取れるのではなかったのか?
「七山さん。ヒーローを補助監督や、窓というものに就任させるより、ヒーローに呪霊退治をやらせるべきかと思いますが。オールマイトも居ますし、廻道一人に多量の仕事を振るのは止していただきたい」
「個人的にそうしたいのは山々なのですが、お恥ずかしながら総監部はまだごたついていまして。どうにも、特級呪術師である彼女に頼るしか無い状況でもあります」
「特級呪術師?」
……ほう? そうか。儂を特級呪術師として扱うのか。まさか最も高い位置に据えられるとはの。まぁ、それだけ総監部は儂を手元に置いておきたいんじゃろう。
「呪術師には、 ……まぁ呪霊にもですが、実力や活動実績、脅威度等から等級が割り当てられます。オールマイトは一級、緑谷くんは暫定準二級です。特級は、全ての等級の中で最も高い位置になります」
「……何故、廻道を特級呪術師と?」
「僅かに残った文献から、特級呪術師に認定する条件の一つに単独での国家転覆が可能であること、と記載されていたんですよ。廻道さんは、残念ながらその条件を満たしています」
……は? 儂が単独で国家転覆が可能……じゃと? いやいや、流石に無理じゃ。赤血操術では、国家転覆なんぞ出来ん。無下限呪術や、呪霊操術ならば有り得る話じゃけどな。
「……なるほど。確かに彼女の個性ならば、もしかすると可能でしょう」
個性? あぁ、まぁ……個性なら国家転覆の可能性はあるのぅ。周囲の被害など考えずに、ひたすら巨大な竜巻を作り続ければもしかするかもしれん。もっとも、竜巻なんて他の個性でどうとでも出来ると思うんじゃけどな。止めること自体は、別に容易じゃと思うし。
「あの竜巻を目撃した身から言わせて貰うと、あれは使うべきじゃないですね。ヨリミナがその気になった時点で、日本は終わりです」
「と言うわけなので、廻道さん。無闇矢鱈に呪術入りの竜巻を起こさないように」
「廻道、これは肝に命じておけ。お前の個性は、危険極まりないからな」
……何じゃ貴様等。儂を危険物かのように見るのは止さぬか。失敬な奴等じゃの。後になって謝っても、許さんからな?
それと相澤。危険極まりない個性なんて、それこそ幾らでもあるじゃろ。儂だけじゃない。轟や舎弟、そして緑谷の個性なんかが良い例じゃろ。じゃから、儂だけを危険物扱いするのは間違いじゃ。まったく。
「とにかく。これに目を通せば良いんじゃな? 他に用件は?」
「窓の設立に伴い、最低限の装備が必要です。出来れば年内に窓の配備をしたいところなので、
「総監部からの依頼をこなしながら、か?」
「……そうなりますね。ですが、学業に支障が出るようならばどちらか……或いはどちらも、廻道さんの判断で休止して貰っても構いません」
それは助かるの。年内までに呪具の量産を済ませるのは、はっきり言って無理がある。呪具作成だけを考えるならば、別に不可能でも無いんじゃけどな。その代わりに呪力切れが頻発して呪霊退治は出来なくなってしまうじゃろうから、儂としては呪具作成を休止したい。呪力が切れるような真似は、極力避けたい。戦闘となると話は別じゃけども。
「何人分必要なんじゃ?」
「取り敢えず、二十人分もあれば。また追加で発注することになりますが、今はひとまず二十人分で」
「……」
にじゅう、……にん……じゃと……?
おい。それ、呪具作成に付ききっきりになっても年内に用意出来る数ではないんじゃけど。じゃって、くらすめえと達に
「せめて十人にしてくれぬか? 年内に間に合わせるとなると、どう考えても無理じゃ」
「……では、ひとまず年内に十人分ということで」
ううむ……。また面倒な事になって来た気がするの……。呪具作成は毎日短時間でも良いから行うとして、となると鍛錬の時間を少し減らすしかないか。被身子との時間は、減らしたくない。こればっかりは、減らすわけにはいかん。あ、そうじゃ。呪術科は土日が休みじゃから、土日を呪具作成に割り当てれば……。いや、昨日一昨日での仕事の振り方を見るに土日が潰されてしまう可能性もある。やじゃやじゃ、土日は被身子の為に時間を使うんじゃ。誰にも何にも邪魔はさせぬ。
あ、そうじゃ。
「儂、今週はもう依頼を受けんぞ。じゃって既に二十時間以上活動しとるからの」
昨日と一昨日。そのどちらも、睡眠時間と休憩時間を除いた時間の全てを呪霊退治に費やした。総監部と雄英は、儂に週二十時間までしか活動させないと取り決めてた筈じゃ。これについては守って貰おう。と言うか守れ。
「……ホークス。まさか本当に二日で京都を回り切ったんですか?」
「急げば二日で回れる範疇でしたからね。俺としても一週間も事務所を空けたくなかったんで、そこは急ぎました。ほら、兵は拙速を尊ぶと言うでしょ? ヨリミナは仕事が早くて助かりましたわ」
……何? おい、まさかとは思うが昨日一昨日の京都巡りは、総監部からの指示ではなかったのか? 貴様の独断じゃったのか??
「……では廻道さん。また来週からよろしくお願いします。今週は……オールマイトや緑谷くんに頼むとします」
「……相分かった。緑谷には極力仕事を振るなよ? あやつはひいろお科のままなんじゃから」
取り敢えず、ほおくすは睨んでおくとする。すると。
「でも、早く帰れて良かったでしょ? ツクヨミから聞いたよ、えらく愛妻家で片時も離れようとしないんだって?」
「……」
「俺が補助監督の時はなるべく早く帰らせてあげるから。その分忙しくなるけど、そこは勘弁して」
へらへらと能天気そうに笑いながら、今後もあんな真似をするとこの翼男は宣いおった。七山も相澤も、ほおくすの口振りに黙って顔を顰めておる。何なんじゃこの翼男は。常闇がこやつを速すぎる男と言っていた理由が、今なら分かるような気がするの。あやつ、こんな男の事務所で職場体験をしたのか? まことに??
「……はぁ。もう良い。儂は休むから、後は勝手にしてくれ……」
何じゃか、急に疲れてしまった。明らかに気疲れじゃの。ほおくすのせいで、げんなりしてしまった。
取り敢えず、部屋に戻って七山に渡された書類に目でも通しながら、被身子が戻ってくるまでのんびりするとしよう。そうしよう。
そんなこんなで。儂は被身子が授業から戻ってくるまで、のんびり過ごすことに決めた。んじゃけども、資料を眺めながら寝転んでいたらいつの間にか寝てしまっての。そう言えば、昨晩から寝てなかったんじゃった。
で。すっかり熟睡してしまった儂が目が覚めたのは、夕方になってからのことじゃった。目が覚めると、隣で被身子が添い寝していた。そして儂が起きるなり
今後、ヒーローはどんどん窓になります。なお数が増えすぎると、呪眼の作成速度が追い付かない模様。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ