待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
ひとつの警察署が、英雄の呪霊によって壊滅した。怪我人は多数。後になって聞いた話じゃと、警察官の殆どが病院送りになってしまったらしい。社会復帰には当面掛かるじゃろうとも、耳にした。総監部からの報告では、これまであの呪霊は悪党にしか手出ししなかった筈じゃ。なのに今回、れでぃ・ながんの下に姿を見せた挙げ句が警察署を破壊した。よくよく考えれば、儂が辿った残穢はあの呪霊が暴れた痕跡そのものじゃ。あの呪霊、恐らく術式で距離を無視して移動出来る。どのような術式かは全く分からん。儂に強く反応していたとか、あやつは言っていたわけじゃが……。
まぁ、そちらは追々考えるとしよう。ながんから詳しく話を聞けば、少しは分かるかもしれないしの。
それよりも、じゃ。怪我人の応急処置が終わり、あら方が救急車で運ばれて行った後。遅れてやって来たほおくすに、儂等は咎められてしまった。現状、この翼男は儂の補助監督であり窓でもある。そして、公安……特に総監部と行動を共にする
そんな、当たり前のお説教の直ぐ後で。幾つかの事実確認の後、ほおくすの口から総監部の指令が語られた。筆談で、じゃけど。
何でも。警官に危害を加えた英雄の呪霊を、呪術総監部は無視は出来ない。じゃから、その対策をして欲しい。との事じゃ。そんな指令が有るなら、儂等を咎める必要は無かったのでは? と思わんでもない。
それで。ひとまずの処置として、儂を常にれでぃ・ながんの側に置いておきたいそうじゃ。再びながんの下に呪霊が
その為に、一時的に超法規的措置を行うそうじゃ。秘匿釈放、とか言っておったわ。それで、ながんには常に変な形の腕輪や
何でも、個性を使おうと思った時点で強力な電流が流れるそうじゃ。また、儂から一定以上離れても電流が流れるとか、何とか。大の大人でも簡単に気絶する代物らしい。これに伴い、儂もよく分からん腕輪を付けられた。本音を言うと煩わしいんじゃけども、ながんの行動を抑制する為じゃったり、檻の外に居させる為には必要じゃそうじゃ。
あと、よく分からんが儂の血流が一時的にでも遮断されると絶えず電流を流し続けるようになる、とも言っていたのぅ。これは、ながんから儂の安全を守る為に必要な機能らしい。儂の腕を切り落として自由を得る、何て事態を起こさない為とか抜かしておったわ。
で、じゃ。何とこの事態に、後になって雄英が首を突っ込んで来た。それも、おおるまいと越しに、じゃ。
何でも、雄英の敷地内……寮や校舎、そして各種施設や訓練場からも大きく離れた場所に新たな寮を建てると。そこで、儂とながんを二人暮らしさせれば場所には困らないと言い出しおった。ながんは、犯罪者じゃ。儂が気にしなくとも、世間はそう思っとる。見る人が見れば、犯罪者が雄英に居ると問題になってしまうから、儂に帳を降ろして貰って建物を丸ごと隠蔽すると勝手に言っておったわ。面倒この上ないの。
儂としては雄英から離れてしまいたいんじゃけども、それは断固として拒否されてしまった。何を考えてるんじゃ、あの鼠。下手をすれば、子供達が巻き込まれてしまうじゃろ。そんな事態を起こさない為にも、儂はいつ何が有っても良いように、雄英から離れたかったんじゃけども……。
なぜ儂を雄英の外に出さないのか。その理由はあれこれ言っていたが、聞き流した。聞いたところで、どうせ気に食わんからの。ただ、呪術師としてではなく廻道円花個人としては……ほんの少しだけ喜ばしい。じゃって、ほら。その気になれば直ぐにでも被身子に会えるわけで。しばらくは離れ離れになってしまうと覚悟しておったからの。
それでまぁ、そんなこんなで。手続きの都合で儂等は一旦解散し、同日の晩に再集合。納得はしとらんが、雄英の片隅……誰も近寄らんように侵入禁止となった森林の中で、儂とながんの二人暮らしが始まった。いや、正確には四人暮らしになりそうじゃ。保険ということで相澤も一緒に過ごすようじゃし、案の定……被身子が荷物を纏めて突撃してきたからの。儂が帳を降ろす直前に。それを見た相澤が捕縛布を使おうとしていたから、横から儂が取り上げて使い物にならなくなるまで引き千切った。中々に頑丈で、少し手間取ったがの。人の物を壊すのは良くないんじゃけど、この男の場合は別じゃ。じゃって、大嫌いじゃからの。ふんっ。新しい捕縛布は、儂が作ってやるからそれで良いじゃろ。
まぁとにかく。そんなこんなで、現在。一階建ての新たな寮の居間にて。
「トガですっ。渡我被身子! 円花ちゃんとは将来を誓い合った仲で、今日から此処で円花ちゃんと一緒に住みます!」
「……我ながら、訳の分からん状況に放り込まれたもんだよ」
「まったくじゃ。まさか雄英で、犯罪者と暮らすことになるとはのぅ」
ため息混じりのながんの言葉に、つい同意してしまう。じゃって儂も、訳が分からん状況じゃと思ってるし。何なんじゃ、この状況? よくよく考えると、意味不明じゃ。呪術師である以上、呪われてしまった奴が目の届く範囲に居るのなら助けてやらんでもないが。
まぁ今回は、珍しく大人を助けてやろうとは思う。普段なら勝手に死んでくれとしか思わんのじゃけども。
「おい、廻道」
「……犯罪者、ですか?」
「そう。こやつは犯罪者。とは言え呪霊に呪われとるから、何が有っても良いように儂が警護してやる事になった。じゃからまた寮が変わったわけじゃの」
相澤に咎められたが、無視じゃ無視。そもそも、隠してたって仕方ない。何より、儂の許嫁は犯罪者を前にしたって怯んだり嫌がったりはしない筈じゃ。いや正確には、ながんについては無条件で信頼することじゃろう。じゃって、儂がわざわざ面倒を見ようとしてる大人なんじゃから。
「……レディ・ナガンで調べな、お嬢ちゃん。私は歴とした犯罪者だ。分かったら、ここで暮らすのは止しなよ」
「んー……。そう言われると、ちょっと怖いですけど。でも、うーーん……」
「……、何じゃ?」
「円花ちゃんが守ってあげようとしてるなら、そんなに悪い人じゃないのかなって」
……。それについては、どうなのかは知らん。そもそもこやつが何故あの監獄、……たるたろす? に居たのか、儂は詳しい事情を知らんままで居る。大人しく服役していたように見えるし、話自体も通じる方じゃ。現に大人しく、総監部からの提案を飲んだしの。電流が流れる腕輪も、自分から着けてみせたぐらいじゃ。
まぁ、こやつ自身の事情はどうでも良い。過去に何をして捕まっていようが、被身子や子供達に危害を加えなければそれで。もっとも、そんな真似はしないじゃろう。自分を犯罪者と言う割には、悪党っぽさが感じられん。そもそも、元・
と言うかじゃな被身子。無条件に儂を信用するのはどうなんじゃ? 少しぐらいは疑ってくれても良いんじゃぞ? いや別に、信用も信頼も幾らでもしてくれて良いんじゃけども。ただ少し、心配になるというか何と言うか……。
まぁ、好きにさせてやろう。どうせ、儂が何を言ったところで被身子は考えを改めたりはしないんじゃし。むしろ、儂の考えを改めさせようとするぐらいじゃ。
それはそれとして。被身子をじっと見つめてみると、こやつは直ぐに儂の視線に気付いて……嬉しそうに微笑む。そのまま儂の肩を抱き寄せて、割りと強引に儂の頭を膝上に乗せおった。まったく、急なんじゃから。儂にじゃって、膝枕されたい時とそうでない時が有るんじゃけど?? 別に、毎日されたって構わんのも事実ではあるんじゃけども。
「それにナガンちゃんはカァイイと思うので、トガは一緒に暮らしても文句無いのです」
……は? おい、今……何と言った? 一緒に暮らしても、良い……じゃと……?
貴様……。さては浮気か? 堂々と浮気宣言か? 如何に寛容な儂でも、流石に浮気は許さんぞ?? それは一線を越えとるじゃろっ。おい、被身子っ!
「んふふ。すーぐ勘違いしてヤキモチなのです。円花ちゃんってほんと、私が大好きなんですねぇ……♡」
「……別に。やきもちなどしとらんが?」
「してるじゃないですか。ヤキモチすると、私を睨んで黙っちゃいますよねぇ。分かり易いのです!」
……いや、別にそんな事は無いが? そもそも、嫉妬などしとらんが? まったく。直ぐそうやって、いい加減な事を口走るんじゃから。好き勝手ばかりしおって。ふんっ、被身子のたわけ!
「なぁ、アンタ。この二人、何なんだ……?」
「……両方、雄英の大問題児だ。この二人に関わるなら、手を焼かされることを覚悟しておけ」
何か失礼な物言いをされた気がするの。まぁ雄英を卒業するまで、相澤の手なんぞ幾らでも焼いてやるつもりじゃけどな。儂の琴線に触れておきながら、平和な教師生活が送れると思うなよ。被身子は儂の味方じゃし、二人で思う存分その手を焼いてくれる。せいぜい困ってしまえば良いんじゃ。困れ困れ。そして、今後は二度と被身子を巻き込まぬように気を付けろ。
「そうみたいだ。前にも思ったが、こんなのがあの化け物と戦うって? 公安もヤキが回ったもんだ」
失礼な物言いが継続している。解せぬ。別に何処でいつ、被身子と求め合って居ても文句を言われる筋合いは無いんじゃけど? 好きなものはいつだって、大好きじゃと示しても良いじゃろっ。……さては、ながん。もしや誰かとこういう関係になった事が無いのでは? いや、なっていたとしても別れているか。儂も治崎を殺す為に、被身子から距離を置こうとしたしの。
まぁ、それはともかくじゃ。ながんも相澤も、二人して儂等を見て呆れるな。まったく、失礼な奴等じゃっ。
「んふふっ。また友達が増えそうな気がするのです。仲良くしてくださいね、ナガンさん!」
……。いや、ながん。別に被身子とは仲良くしなくて良いんじゃぞ? 悪いことは言わぬから、被身子と仲良くするのは止めておけ。じゃってほら、被身子じゃし。儂を盛大に振り回しては、意のままに弄ぶ悪女なんじゃ。抵抗出来ぬ分、そこらの悪党の数倍は質が悪い。
ってあぁ、そうじゃ。これは伝えておくとしよう。その上で、幾つか聞いてみたい事があるしの。
「そうじゃ、ながん。儂、公安に内定が決まったぞ」
「……止めときなって言った筈だよ」
「あれよあれよと決まっての。そういう訳じゃから、公安についてあれこれ教えてくれると将来の為になる。よろしく頼んだ」
「今からでも断りな。後悔したいのか?」
いや、別に。そんなわけではない。今更後悔が増えたって、何も変わらん。どうあっても、儂の生き方は変えられない。加茂頼皆は、廻道円花は呪術師としてしか生きられぬからの。ただし、今生での死に方はもう選んだ。被身子とな、死ぬまで……出来れば死んでも一緒に居るんじゃ。まぁ、あの世なんてものがあったとして、儂は地獄行きになるんじゃろうけど。そしたら天国とやらに殴り込んで、被身子を連れ出すしか無いのぅ。いや、そのまま天国に居付いてしまおう。そうしよう。
「前にも言ったじゃろ? 後悔の一つや二つ増えたって、わしは何にも変わらないんじゃよ」
ううむ……。それにしても、それにしてもじゃ。やはり被身子の膝枕は、良い感じじゃのぅ。まだ儂等はこの寮に引っ越して来たばかりじゃ。何の荷解きもしていない。じゃから居間で話し合ってないで、やるべき事をしなければならんのじゃけど……。
あぁ、いかん。段々と瞼が重くなってきた。被身子、何故早速儂を寝かし付けようとするんじゃ。まだ夕食も食べてないんじゃぞ。寝かせるのは、せめてその後にして欲しい。
このままだと、盛大に寝てしまう。ので、名残惜しいが体を起こす。
「とにかくじゃ。あの呪霊を祓うまでは、よろしく頼む。被身子の事は気にするな。好きにさせておけ」
ながんに向かって、右手を差し出す。取り敢えず握手と行こう。取り敢えずの。
「……訳の分からん状況だが、これをどうにかするにはアンタに頼るしかないみたいだ。こちらこそ、よろしく」
うむ。よろしくしてやろう。で、ながん。さっさと右手を出さんか。握手ぐらい応じぬか、この阿保っ!
補助監督にホークス、護衛対象にナガン。公安ヒーローと元・公安ヒーローに挟まれていく円花です。そこにトガちゃんが突撃してプルスケイオス……!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ