待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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れっつ温泉

 

 

 

 

 

 胸が……高鳴る! わくわくが止められん!!

 

 駄目じゃ。駄目じゃ駄目じゃ。今の儂は心が子供なのじゃ。もうわくわくで堪らん。

 

 被身子はよ! はよせんか!  のんびりしている場合では無い! 急げっっ!!

 

「もう……。そんなに急がなくても温泉は逃げないのです」

「でもでもじゃって! 温泉! 温泉!!」

「はーい。今行きますよー」

 

 儂には好きなものがある。はんばあぐと甘いもの、それと風呂じゃ。前の二つは前世では縁が無かった故、今生では好きになってしもうた。じゃが、風呂。特に温泉。前世から大好きじゃ。

 産まれ直してから十四年。温泉はまだ行っておらん。小学生六年の頃、修学旅行で行く機会があった。じゃが逃してしもうた。当日に生理来たから行けなかったんじゃよ。あの時は初めての生理じゃったから、それはもう大変じゃった。しかし今月は大丈夫じゃ。

 

 何せ、先週来たからな!! くそっ、二度と来るなと言うとるのに何故来るんじゃっっ!! ふざけおって!!!

 

 うおっほん。憎きやつの事は、もう良い。折角の温泉なのじゃ。気分を下げとうない。

 今日、儂は被身子と温泉旅行中なのじゃ。一泊二日じゃぞ。儂の雄英合格祝いとして、両親が手配してくれての。今が三月と言うのが少し残念な気がするが、温泉は温泉じゃ。

 自宅から、ばすやら電車を乗り継ぐこと二時間以上。儂は被身子に連れられて温泉街にやって来た。ここは少し古ぼけた石畳の道に、街中ではあまり見ない建物がところ狭しと並んでおる。手配してくれた旅館は、昔ながらの建築じゃとかなんとか。昔と言うても、儂が生きていた時代よりずっと未来の昔なんじゃけどな。今の時代と平安は、余りに時間がかけ離れておる。

 

 ところで、廻道家の風呂も温泉になったりせんかのぅ。ちょっと地下を掘れば出てくるんじゃないか? 出んか。流石に夢物語が過ぎるわ。

 じゃけど。そうだったら良いのにと、つい考えてしまうぐらいに儂は温泉が好きなんじゃ。銭湯も好きじゃが……うっかり男湯に入ろうとして以来、連れて行って貰えぬ……。一人で行こうとしても営業時間内に辿り着けんからの……。何故儂は方向音痴なんじゃ。年々酷くなってる気がするのは、どう言うことじゃ。解せぬ。

 

 ……で、じゃ。旅館に着いた儂等は仲居さんに部屋を案内して貰った。儂は荷物を置いて、直ぐ部屋奥にある扉を開く。聞くところによると? この旅館、部屋に温泉があるとか?? いやいやまさか、そんな事があるわけ……。あったわ!!

 

「お、おお……っ! 温泉じゃあっ!」

 

 凄いな旅館! 部屋に温泉が付いてるなんて最高じゃの! もう儂ここに住む! この旅館の子になる!!

 着物は脱ぎ捨てた!! ぱんつもぶらもじゃ!! 他の準備は全部被身子がする!! 後は湯に浸かるだけじゃな!!

 

 がはははっ!!

 

「もう、はしゃいじゃって。今日の円花ちゃんは凄くお子様なのです」

「じゃって! 温泉!!」

「はいはい。まずは体を洗いましょう」

「洗う!!!」

 

 待ちきれん! 何なら今すぐ湯船に飛び込んでしまいたいっ。しかしそれは人として駄目じゃ。大人として駄目じゃ。いや待て、今の儂は子供じゃ。十五歳じゃ。もしや……許される? 温泉に飛び込んでも許される……?

 

 ……良し。

 

「だーめ。体を洗うのが先なの」

 

 ぐぬぬっ。何故止める被身子! 貴様、儂のわくわくを止められると思うなよ!! 裸で後ろから抱き寄せるな!!! 離せ!!!!

 

「はい、ここ座って。洗ってあげます」

 

 むぅうう。仕方ないのっ。素直に洗われてやるとしよう! 尽くせ被身子! 今日はもう儂に尽くせ!

 

 ……言っておくが! 淫らなことはせんからな!! おいこら!! どこ触っとるんじゃ貴様!!

 

 

 

 

 

 

 堪らん。温泉堪らん。あ゛ーーっ、湯がこの老体に染みるんじゃ……。今は子供じゃけどなぁ……。老いぼれた精神に……染みる……。染み……、しみ……。

 

「んふふっ。湯に浸かって、ぽけーっとしてる円花ちゃんもカァイイのです」

 

 何がじゃ。湯に入るなり儂を抱き寄せおって。良い、許すぞ。温泉に入った儂は機嫌が良い。どことも分からん山の風景が目に入ろうが、さっき体を洗う時に少しせくはらされてようが、これから何をされようが許してやろう。

 儂は知っておるんじゃぞ貴様。どうせ夜が更ければ何かしてくるんじゃろう? 良い良い。好きにせい、勝手にせい。お主がしたい事なら、なーんでも許してやる。何せ機嫌が良いからのぅ。

 

「改めて、合格おめでとう円花ちゃん。受かってくれて良かったのです」

「何じゃあ……? 儂が落ちるとでも思うてたのかぁ……?」

「甘く見て、半々ぐらいかなって。良かったぁ、合格してくれて……。これでまた、一緒の学校です」

「お主の考えた受験対策のお陰じゃよ……。感謝しとる……」

「んふふっ。どういたしまして!」

 

 真に……この一年は勉強漬けじゃった。ずうっと被身子に教えて貰ったからのぅ。こやつ自身も勉強を頑張らなければならないのに、儂に付きっきりで……。合格出来たのは、被身子のお陰じゃ。何かお礼をせねばならんが……何をしたら喜ぶかのぅ。あんなに儂に尽くしてくれたんじゃ。特に一月に入ってからは……儂よりも机に向かってる時間が長かったなぁ。

 こやつはこやつで大変なのに。儂の事ばかりやりおって……。なのに少しも、弱音は吐かなくて……。

 

「……なぁ、被身子よ」

「はい」

「愛しとるぞ」

「えっ……」

 

 えっ……。じゃないわ、たわけ。何じゃその反応は。儂が折角、自分から言ってやったと言うのに。まぁ自分でも驚くくらい、すんなりと口に出来たがな……。

「き、急に……どうしたの? 円花ちゃんが、自分から言ってくれるなんて……」

 

 ……うるさいのぅ。つい口から出ただけじゃ。そんなに言うなら、もう言ってやらんぞ。あと、何でそんなに照れてるんじゃ。分からん奴め……。

 

 まっこと、仕方ない奴じゃあ……。

 

「良いじゃろたまには。それとも、もう要らんか?」

「っっ、要る! 要りますっ。もっと、もっと言ってくださいっ」

「やじゃ。もう言った」

「むーーっ。一回じゃ足りないのにっ」

 

 残念じゃったな。諦めろ。今日は、……もう言わん。あと、いい加減に湯から上がるとしよう。急にのぼせそうになった。年甲斐もなく騒いだせいかのぅ。もっと浸かって居たいが、のぼせてしまっては勿体無いからな。少し休憩を挟んで、今度は大浴場とやらにも行ってみるとするか。

 

 

 って、おい。何で湯船に儂を連れ戻すんじゃ。何じゃその目は。待て待て、ここで始めたら収拾がつかなくなるじゃろ。折角の温泉を汚すつもりか貴様っ。落ち着け、落ち着かんかっ! ここをどこだと思っとるんじゃ!!

 

 いや、駄目じゃなこれ。止まりそうにない。どうしようもないな……。

 

 

 

 ……。き、今日だけじゃぞ! 今日だけなんじゃからなっ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一回行動のつもりでしたが、煽られたので二回行動しました。おらっ!!

なので腹いせに、代わりに今日書く予定だったえっちな方は書きません。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ

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