待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
今週は翼男に京都を連れ回されたり、ながん保護の為に雄英の隅に引っ越したりと何だかんだで忙しい日々じゃった。儂と被身子が当面寮に戻れぬ事については、緑谷とおおるまいとがくらすめえと達に説明してくれたそうじゃ。本来なら儂から言うべきなんじゃろうが、ながんの側を離れるわけには行かなかったからの。直ぐにでも用意されていた新居、或いは新寮? に入るしかなかった。結果、事情を聞いた被身子が後先など考えずに突撃してきたわけじゃけど。これについては案の定というか、想像通りと言うか……。もはや反対する暇も無かった。あの呪霊を相手にするのに、被身子を守りながらになるのは良くない所では有るんじゃけど。まぁそれを言えば、ながん監視の為に同居することになった相澤も邪魔じゃ。
幾ら呪霊対策の為とは言え、殆どながんを軟禁するような形になってるのは如何なものか。別に良いと思うんじゃけどな、他の生徒達に見付からなければ外に出たって。一切の外出を禁止されてるのは、窮屈そうじゃが……。いや、それでも牢屋の中よりは過ごしやすいのか。基本的に、この二階建ての寮の中であれば一部禁じられた行為を除いて自由に出来るわけじゃし。
「さて。始めるとするか……」
気乗りはしないが、ながん保護と並行して行わなければならぬ事が有る。それは、呪具作成じゃの。被身子やながんと朝食を食べていると、発目に頼んだ呪具作成機械が分厚い説明書と共に居間に届いた。昨晩の夜更けの話じゃ。何でも夢中になって改修し続けていたら、こんな時間になってしまったと油汚れ塗れの発目は大笑いしておった。何なんじゃあやつ。いい加減にしてくれ。
それと、こんな分厚いものは読みたくないのぅ。後で被身子読んで貰って、要点を纏めて貰った方が早い気がする。機械の様相自体、大きく変わってるしの。どうやら音声操作であることは変わりないようじゃから、使い勝手自体は変わらない……のか? ともかく、やるだけやってみよう。
今回は、
「起動」
両手を二度叩き合わせて、はっきりと発声する。そしたら、一見作業台のような……そうでないような得体の知れぬ機械が、音を立てて蠢き出した。おい、おいおい。上へ横へ広がるんじゃない。壁の隅や天井にぶつか……らずに済んだの。広がるに広がった作業台? のような物の上には、やたらと大きな……機械の腕か? これは……?
「……それで、何をどうすれば良いんじゃこれは……?」
音声操作であることから基本的な使い方は変わらない筈なんじゃけど、様相が変わり過ぎていて不安になってきた。大丈夫なのかこれ? 爆発したりしない……よな??
「円花ちゃん。説明書はちゃんと読みましょう」
居間に置かれた新たな機械を前に固まってしまっていると、洋服の上に
「……渡我。そいつポンコツなんだろ? 説明書なんて読めないだろ」
「まぁ細かい文字とか長い時間読んでると、投げ出しちゃうことは多いのです。それに、IT音痴で機械音痴で方向音痴なんですよねぇ」
「この子、今時をどうやって生きてたんだ……?」
「もちろん、トガやみんなに介護されながら……、です。円花ちゃんはポンコツ過ぎて、四六時中介護しなきゃですから」
は? おい、今なんと言ったこやつ等。何か物凄く失礼な事を口走っていたような気がするが、気のせいかの? のぅ、被身子。あと、ながん。もう一度言ってみろ。誰が? ぽんこつ、じゃって……??
……と言うか、昨日の今日なのに何でこの二人はすっかり馴染んでるんじゃ。被身子、お主もう少し警戒心と言うものをじゃな……。いや、歳上相手の方が話しやすいのは分かる。小学生の時は、嫁入り修行の都合で母と一緒に居る時間が長かったからの。
で、ながん。貴様、擦れた大人のように振る舞っておきながら、妙に被身子に気を許していないか? それとも気のせいか……?
「んふふっ。ところでぇ、やっぱりカァイイのです! 火伊那ちゃんも、飾り甲斐がありますね!」
「いや、これは趣味に走り過ぎた気がするんだが……。と言うか渡我、私は着せ替え人形じゃない」
「そんな事言ってぇ、途中からノリノリだったじゃないですかぁ」
「……気の迷いだ。気の迷い……」
……は? おい。おい、ながん。貴様……何故被身子と仲良くしてるんじゃ? 儂の被身子じゃぞ。儂だけの被身子なんじゃぞっ。それを貴様、儂の許可無く親しくしおって……!
許さん。許さんぞ、れでぃ・ながん……!!
「渡我。本当にこのお子様、公安直属か?」
「はい。こう見えて、私の円花ちゃんは雄英で一番……どころかプロヒーローと比べても一番強いのです!」
「どうにも信じられないな……」
何故疑いの眼差しを向けるのか。解せぬ。被身子の言うことは、そこまで間違ってはいない……と思う。まぁプロヒーローと比べたら流石に一番とは言えんがの。えんでゔぁ……とかとは相性が悪いしの。あと、あの翼男。ほおくすのあの移動速度を前には、少し手間取りそうじゃ。おおるまいとは……個性があった頃ならば苦戦するじゃろう。くそ、全力で手合わせしたかった。
「それで、何で固まってたんですか?」
「……使い方が分からん」
「だから説明書を読まないと駄目なのです。ほんと、仕方ないんですから……♡」
今の
「……あー、なるほど。使い方は、前のとそんなには変わらないのです。でも設計図の入力に関しては、円花ちゃんには出来なさそうですねぇ……」
「んっ……こら、被身子……!」
儂越しに説明書を手早く読んだ被身子が、儂を抱き締めつつそう言った。然りげ無く耳に
「材料の一部に円花ちゃんと血と髪を使うのは変わらないんですね……。むーー……」
「それは仕方ないじゃろ。呪力を定着させる為なんじゃから」
「直ぐ元通りになるのはわかってますけどぉ。私の分が減っちゃうことには変わり無いので」
「いや、減らん減らん。何を言ってるんじゃお主は」
血も髪も、使った側から元通りじゃ。どちらも反転術式で即座に回復出来る。血はともかく髪すら独占しようとする辺り、まっこと仕方ない奴じゃの。儂の細胞の一片すら独占するつもりか?
……まぁ、存外悪い気はしないが。儂じゃって、被身子を独占したいと思うし。
今日は土曜日じゃから……後で何も考えずに部屋で被身子と過ごそう。そうしよう。何なら明日の朝まで離れないで居ても良いじゃろう。ただ、その前にじゃな……。
「設計図の入力とやらは任せて良いか? 取り敢えず、相澤の捕縛布を作ってやらねばならん」
「あー……。昨日、引き千切ってましたもんね。駄目ですよぉ、幾ら嫌いだからってあんな真似しちゃ」
「ふんっ。あんな奴、どうなろうが儂は知らん!」
捕縛布を呪具にして返すのは面倒この上ないが、引き千切ったのは儂じゃからの。幾ら嫌いな奴とは言え、一応弁償はする。ついでに、あやつが戦闘時に着けている
取り敢えず。被身子の膝上から立ち上がる。今朝、相澤の奴に用意させた設計図を懐から取り出す。ゆうえすびい? とか言う保存媒体の中に捕縛布やら
「あ、それは差込口が有るので。説明書によると、……確か、この辺なのです」
遅れて立ち上がった被身子が、儂の手から保存媒体を取り上げ、作業台の縁に挿し込んだ。挿さるのか、それ。無理矢理挿したりしてないか? 随分と手慣れた様子な気がしないでもないが……。まさか、儂を刺す刃物捌きの応用で挿したりしてないじゃろうな……?
『設計図読み込み完了。呪具作成シークエンス開始。……呪具作成不可。材料不足。廻道円花の血液1リットル及び、毛髪40メートルが必要。補充してください』
「ぬおっ」
喋りおった。機械のくせに、喋りおった。どうなっとるんじゃこれ。まさか、中に人が居る……なんてことは無いよな? 発目?? 貴様、いったい何をどうして機械が喋るようにしたんじゃ??
「……むーー……。そんなに……」
喋る機械が不思議で眺めていると、被身子が拗ねた。いかん、これは本気で拗ねておる。後でたっぷり甘やかさなければ。それで許して貰えるかは怪しいところじゃが、とにかく許して貰えるように努めなければ……っ。
ところで、ながん。儂等を眺めてないで、少し被身子を押さえ付けておいてはくれんかの? ほら、昨日の今日で仲良くなっとるんじゃし。そのくらいは少しぐらい……できるじゃろ??
「一人で何とかしな。それはアンタが悪い」
は……? おい、
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ