待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
英語、分からん。まるで分からん。全然頭に入ってこない。んじゃけども、被身子の協力も有ってそれなりに進んだとも思う。それでもまだまだ英語課題を終えることが出来るのは、随分先な気がしてならんのじゃけど。何で英語なんて学ばなければならないんじゃ。日本で暮らしてく分には、まるで必要無いと思うんじゃけど?
儂、日本人ぞ。あいきゃんのっとすぴいくいんぐいんりっしゅ!
……はぁ。もうやじゃ英語。あるふぁべっとの並びなど見たくもないし、覚えたくもない。海外に行くことになったら、被身子に通訳して貰えば良いんじゃ。何たって、被身子は英語が喋れる。流石は学力特待生。相変わらず、勉強は頑張っているからのぅ。儂の勉強を見ながら自分の勉強も進めるとは……。褒めねば、たっぷり甘やかさなければ。と言うわけで、休憩がてら被身子を甘やかそうと思う。いや、被身子を甘やかしがてら休憩……か? まぁ、どっちでも良いか。
「ほれ、被身子」
座を正し、両腕を広げる。そしたら自分の参考書を読み込んでは
「えへへぇ。急に何ですかぁ」
「いや、甘やかしたくて……」
「円花ちゃんがそんなだから、トガは我慢出来ない子になったのです。少しは反省しないと駄目ですよ?」
「何じゃ? 甘やかされるのは嫌か?」
「もっと甘やかしてください!」
欲望に正直な奴め。そういうところじゃぞお主。そういうところが駄目なんじゃからな? 良いがな。儂が一生甘やかしてやろう。ひたすら甘やかしてくれる。じゃって、そうすると被身子は喜ぶ。嬉しそうに笑って、幸せそうにするんじゃもん。じゃから、甘やかさない理由がない。被身子の笑顔が一番じゃからの。
それに儂も、こうして被身子を甘やかすことを幸せじゃと思うし。
押し倒されてしまったので、そのままの姿勢で被身子の頭を撫で回す。すると擽ったいのか嬉しいのか、或いはその両方か。妙に甘えた声を出して、もっと撫でろと言わんばかりに頭を儂の胸に押し当ててくる。まるで犬か猫のどちらかを甘やかしているような感覚さえしてくる。まぁ被身子はどちらかと言えば……猫か? いや、犬のような気がしないでもない。どっちじゃろう?
「ん〜〜っ。ヨリくんはナデナデするのが上手なのです……♡」
「そうか?」
「そうですよぉ。最初の方は結構雑だったのに、今では立派なナデリストですっ」
なで、りすと……? 何じゃそれ。なで……撫で? りすと? りすとは、一覧表とか手首とかそんな感じの意味があった筈じゃ。撫で手首? 撫で一覧表……?
うむ、分からん。まっこと分からん。また訳の分からん事を口走っておるの。もっと儂に分かり易い言葉を使ってくれ。頼むから日本語を話してくれんかのぅ。まったく、こやつと来たら。
とにかく。こうなったらこのまま甘やかして骨抜きにしてやろう。ほれほれ、耳が良いんか? 首か? やはり頭か? 骨抜きになったら儂の勝ちじゃの。ふふんっ。
ってこら。体を起こすな。手が届かんじゃろ。もう少し撫でさせてくれても良いんじゃないのか?
「……ムラムラしてきたので、抱いて良いですか? 抱きますね?」
「は?」
おい。何で今、そんな発情した顔になるんじゃ。目を細めるな。覆い被さるなっ。こら被身子っ、耳に触れようとするな!
「直ぐそうやって、誘惑するんですから……♡ ほんと、誘い受けが上手なのです♡」
「誘っとらんが!?」
何で誘ったことになっとるんじゃ!? 解せぬっ! ま、待て被身子。待たんか。急に迫るな。唇を奪おうと距離を詰めるな……! そんな目で見られたら、その気になってしまうじゃろ……っ!
って、あぁ。もう駄目じゃ。直ぐ目の前に被身子の顔がある。何で急に、こんな発情したんじゃこやつは。こうなってしまっては、もう儂にはどうしようもない。ぐぬぬ、今日こそは勝てると思ったのに……!!
「んっ♡」
「んん……っ」
唇を奪われた。同時に、耳も撫でられた。その時。
―――酷く、背中が粟立った。気持ち良いから、では無い。感じ覚えのある気配が、急に近くに現れたからじゃ。
あぁ、覚えている。覚えているとも。この気配は、あの呪霊の気配そのものじゃ。まったく、こんな時に来るか? もう少し空気を読んで欲しいの。せめて三時間……いや、六時間後ぐらいにじゃな……。今来るのは、間が悪過ぎるじゃろっ。
とにかく。気配からしてあの呪霊は、居間に居る。ながんもじゃろう。こればっかりは、無視出来ぬ。
「んっ、すまん。また今度じゃ」
被身子の肩を押しながら、体を起こす。
呪力を練り上げ、身に纏う。並行して術式に呪力を流し込み、赫鱗躍動・載も扱う。それから膝上の被身子を、少し強引に退けてから立ち上がる。
「むーー……っ」
「すまん。後での。
被身子。
「……はい。呪霊……来たんですね?」
「そうじゃ。行ってくる」
不満顔の被身子に一度だけ
そこに、奴は居た。ので、苅祓を飛ばしながら、即座に距離を詰める!
「やぁブラッディ。今回は少しワタシと話をって、うわっ!?」
「喧しいっ!!」
どこぞの筋肉阿呆のような能天気な面に向かって、全力で右拳を打ち込むっ。が、儂の拳は容易く掴まれた。直ぐに振り払おうとするが、拳が手のひらから離れん。至近距離で苅祓を浴びせつつ、自由な左拳で腹を殴り続ける。
「だっ、ちょっ、痛っ!? イタタタタ!!」
―――けひ。ひひっ。あぁ、あぁ……! 強い、こやつは強い……! 儂にこうも好き勝手に殴らせておきながら、微動だにしないじゃと!? 苅祓も効果が薄い。良い、良いぞ。もっとじゃ、もっと楽しませろ!
「マジでワタシを祓うつもり……だな!?」
「祓うに決まっとるじゃろ!」
無防備に晒された足の甲を踵で踏み抜く。脇腹を殴り続けることも、苅祓を放ち続けることも忘れない。並の呪霊ならばとっくに消えている。なのに、こやつは。
硬い、固い、堅い……!
どうなっとるんじゃこやつの肉体は! ふざけた筋肉をしおって! 今直ぐに、ぶち抜いてくれる!!
左拳を血星磊で固め、もう一度脇腹へ。鈍く大きな音が居間に響く。それでも尚、この呪霊は健在じゃ。頑丈にも程が有るじゃろ貴様っ!
「あだぁ!? だからっ、話を聞いて欲しいなぁ!?」
「っっ!!」
左拳まで掴まれた。と、同時。儂の体は無理矢理な形でぶん投げられた。次の瞬間、凄まじい衝撃と共に何か鈍い音が背中からした。息が詰まる。受け身を取ると、壁をぶち抜く形で寮の外に投げ飛ばされたと理解する。くそっ、ふざけた膂力をしおって! 軽々と儂を投げおって!
直ぐにその場から駆け、迅速に居間へと向かう。壁に出来た穴に向かって跳びながら、両手を叩き合わせる。拳が駄目ならば、これはどうじゃ化け物っ!!
「穿血」
「ぐぅうううっ!?」
着地と同時。穿血を放つ。しかし両腕で防がれた挙げ句が、腕一本すら貫通しない。せいぜいが骨に食い込む程度。前回は手のひらから肩まで貫いてやったのに、今ではろくに通用しとらん。どうなっとるんじゃ、この化け物……!!
「だから、話を聞いてくないかなぁ!? ワタシは、マジで話をし来ただけなんだって!!」
「じゃから、喧しいと言っているじゃろうが!」
「分かった情報!
「要らん!!」
話し合いたいだの、悪党の情報だの、そんなものに興味はない。それよりも、それよりもじゃ。さっさと儂と呪い合え! 貴様は呪霊、儂は呪術師。向かい合ったら、意義も理由も必要無い!
再び間を詰め、右拳を振り被る。何やら焦った顔をした呪霊は、そちらに意識を奪われた。じゃから、もう一度足の甲を踵で踏み抜く。そしてそのまま、目の前の腹に拳を叩き込むっ。
……が。やはり通じとらん。手応えはある。あるが、何か壊せぬようなものを殴った感じじゃ。こやつ、どうなっとるんじゃ。幾ら何でも、硬すぎるじゃろ……!
「だからぁ! マジで話を聞こうよ!? こうなったら……!!」
呪霊が拳を振り被るのが見えた。その時、酷く背筋が……血が凍った。これは、いかん……!
咄嗟にその場から跳び退くと、一瞬前まで儂が居た場所を拳が通り抜けた。直後、壁や天井が荒れ狂う暴風で砕け散る。とんでもない呪力放出じゃ。あんなものが直撃したら、ただでは済まん。不幸中の幸いと言うべきか、床に伏したままのながんは無事じゃ。
さぁ、この化け物をどう祓う? 儂の攻撃は、然程通用しとらん。穿血ですらが、せいぜい手傷を負わせる程度。硬さで言えば、こやつは今まで戦って来た誰よりも……!
「まったく、君は何なんだ! いい加減にしてくれないかな……!」
おいおい。それは
呪霊が、掌印を結んだ。呪力が分かり易く膨れ上がる。ならば儂も、使うしかあるまい。こやつ相手に、彌虚葛籠では分が悪いとしか思えん。丁度良い、貴様で試させてもらうとしよう。
「領域展開」
「
……は?
英雄呪霊、英語で領域展開の巻。不意な英語に、円花は一瞬だけ宇宙猫になった模様。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ