待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
もぐもぐ。肉、美味い。たまには、ばぁべきゅうも良いものじゃ。目の前で肉が焼かれていく様子を見るのは、食欲が刺激される。立食も悪くはないの。もぐもぐもぐもぐっ。
「もぅ。そんなに頬張っちゃうと、喉に詰まっちゃうのです」
「へふにふままんが?」
英雄の呪霊が来訪した後。中々大変な事になった。寮の中で派手に大暴れしたものじゃから、寮の居間が吹き飛んでしまった。呪具作成の為の機械が壊れなかったのは、運が良かったと言うしかない。不幸中の幸いじゃの。これで機械まで壊れていたら、それこそ大変じゃったかもしれん。
で。あのふざけた呪霊が姿を
……思い出したら余計に苛ついて来た。よし、もっと食べよう。今晩は自棄食いじゃ、やけ食い。あと、寝る前に被身子と昼間の続きをじゃな? むしゃむしゃ。ごくん。
それと。今晩は寮ではなく
そうそう。総監部も大慌てじゃったわ。七山にあれこれと聞かれたから、答えられる範囲では答えておいた。あの呪霊が、明らかに儂より強い事も伝えておいた。そしたら、更に慌て始めてしまったが。今後、ながんの護衛にはおおるまいとも参加するそうじゃ。あやつが居たとしても、何も変わらんとは思うが。
じゃって、今のおおるまいとは儂より弱いからの。平和の象徴は、もう以前のように活躍出来ないと知らぬ筈ではあるまいに。まぁとにかく、明日からあの筋肉阿呆も同じ寮で暮らすことになる。騒々しくなりそうじゃのぅ……。
そんなこんなで。今晩は
「アンタ、怪我は?」
「もぐ? きふひほふほほっへはんが?」
外用の椅子に腰掛けたながんが儂の体を気にしているようじゃが、何一つ問題無い。怪我はしたが、
ひとまず、ながんは無事じゃ。またいつあの呪霊がやって来るのかは分からぬが、それまでは無事のままで居られるじゃろう。というか、ながん。その膝上の皿。肉が残ってるではないか。食べんのなら儂が食べるぞ? なんたって、自棄食いしとるんじゃし。
って、おい。何じゃその目は?
「口の中のものを飲み込んでから喋ってくれ」
やじゃ。自棄食いしとるんじゃから、口の中のものは無くならん。儂の腹が満ちるまでは、儂と会話出来ないと思ってくれ。もぐもぐもぐ。
「火伊那ちゃん。今ちょっと、円花ちゃんは自棄食いモードなのです。こうなったら、お腹いっぱいになって寝ちゃうまで機嫌は直らないので」
「……子供か?」
肉体は子供じゃが? それに大人じゃって、自棄食いぐらいするじゃろ。もぐもぐごくん。もぐ……。
それと被身子。腹いっぱいになっても寝たりしないが? 後で昼間の続きをするつもりなんじゃから。途中で邪魔されてしまったし、欲求不満じゃし。これはしっかりと解消しておかなければ。もぐもぐ。けぷっ。
それにしても、肉が美味い。焼き加減が良い感じじゃ。味付けは文句無しじゃ。これは腹いっぱいまで食べねば、損じゃ損。
「火伊那ちゃんこそ、調子はどうですか? まだ痺れてます?」
「……大丈夫だ。心配しなくて良い」
む……? ながん、お主……。
「じゃあ、もっと食べてくださいよぉ。でないと、円花ちゃんが殆ど食べちゃうかもしれないので!」
「そうするよ。渡我も焼いてばっかいないで、食べな。代わるよ」
「んー、じゃあ少しお願いしますね!」
「あぁ」
……。ごくん。ながんよ、別に被身子と仲良くするなとは言わぬ。いつまで一緒に暮らすか分からないじゃし、会話は幾らでも必要じゃ。しかし、しかしじゃな? 儂の被身子なんじゃって事をしっかり頭に入れてから会話してくれ。それとお主、見たところ左腕が痺れたままじゃの? 人の心配をする前に、まず自分の心配をしたらどうなんじゃ?
「円花ちゃん円花ちゃん」
「もぐ?」
「ぎゅうぅ〜〜〜っっ」
「むぐっ」
おい、人が食事をしてる時に横から抱き着くな。ついでに体を撫で回すな。せくはらじゃせくはらっ。まったく、仕方のない奴め。お預けされて欲求不満なのは分かったら、もう少し我慢してくれぬかのぅ。せめて、夜が更けるまで待ってくれ。今は目の前の肉を食べ進めることに忙しいんじゃ。
「もぐ……。ひははのはいはふへ」
仕方ないから、せめて頭を撫でてやるとする。というか、お主も食べたらどうなんじゃ? せっかくながんが代わってくれたんじゃから、今の内に腹を満たしておけ。儂はまだ食べるぞ。自棄食いはまだ終わらん。
肉の咀嚼に飽きたので、今度は焼き野菜を頬張るとする。薄く切られたかぼちゃが、特に美味い。人参や玉ねぎも捨て難いんじゃけどな。うむ、美味い美味い。
「ご飯食べたら、お風呂に入りましょうねぇ。綺麗に洗ってあげるのです♡」
「……もぐ」
それ、絶対洗うだけじゃ済まんじゃろ。洗うと称して、せくはらする気満々じゃこやつ。何なら噛み付いてくるかもしれん。別に駄目とは言わんが、風呂ぐらいゆっくり入らせて欲しいものじゃ。しかしこうなった被身子は、満足するまで止まらないからのぅ。好きにさせてやるしかない。
「ごくん。……けぷっ。ところでながん、お主こそ体はどうなんじゃ?」
「平気だ。……一応、礼は言っとく。アンタ、強いね」
強がりめ。左腕に痺れが残ってるくせに。一応、気にかけてやるとするか。明日になっても痺れてるようじゃったら、保健室にでも連れて行こうかの。りかばりいがぁるが、呪いをどうこう出来るとは思えぬけど。一応、診るだけ診て貰うとしよう。
「お主の護衛が仕事じゃからの。礼は要らん」
「それでも礼は言うよ。……ありがとう、助かった」
……むず痒い。礼など要らんと言っておるのに、いちいち感謝しおって。儂としては、二度もあの呪霊に逃げられたことが不安じゃ。ふざけおって。あんなに強いんじゃから、途中で逃げ出すような真似をするな。儂の楽しみを奪うな、たわけ。次に出会った時は、今度こそ逃さん。逃げる前に祓ってくれる。というかあやつ、全ての悪党が居なくなったらまた会おうとか言っておきながら姿を現したのはどうなんじゃ? いい加減な奴め。実力以外はふざけてるとしか思えん。
もっと、もっと鍛えねばな。閉じぬ領域の扱いにも慣れておきたい。今日のでは、精々が慣らし運転じゃ。必中効果の程も環境要因による底上げも、然程体感出来とらん。それに、もっと磨き上げなければな。閉じない領域を会得しただけで、鍛錬を放り出すわけにはいかん。
……明日は日曜じゃから、少し鍛錬に時間を使うとするか。おおるまいとに相手をしてもらおう。それと、一つ目の対策も進めたい。轟に付き合って貰わなければ。出来ることならあやつより火力の強い奴が好ましいんじゃが、贅沢は言わん。
「ところで。アンタとあの化け物の戦いを見て、ひとつ気になったんだが」
「む?」
「穿血、といったか? 苅祓とかいうのみたいに、あれにも回転を加えないのか?」
は?
「いや、穿血を回転させてどうするんじゃ」
「螺旋回転が加われば、弾道の安定や貫通力の向上が出来ると思うんだが」
……何?
「あー、なるほど。詳しくは知りませんけど、多分拳銃と同じ理論なのです」
……なるほど。分からん。まったく分からん。拳銃とやらの見た目や機能は知っているが、実際に触ってみたことはないしの。そもそも、日本で拳銃は扱えん。法がそれを許していない。許されているのは、警察官ぐらいのものじゃ。一般人には、まるで縁が無い代物じゃ。
しかしまぁ、穿血を更に強くする手段があると言うなら試してみるか。穿血を、個性で回転させてみるとしよう。両手で触れたものは、螺旋回転するんじゃし。
む? そう考えると、普段の穿血の構えのままで螺旋回転を加えられるのか。個性を使うことに意識を割かなければ行けない分、面倒と言えば面倒じゃけども今度鍛錬する時に試してみよう。今より強くなれると言うのなら、やらん理由は無いからの。
「まぁ、覚えておく。もぐもぐ」
穿血の改良か。考えたことはなかったの。ついでじゃから、赤縛や苅祓も見直してみるとするか。手を加えられるところは無いと思うんじゃが、個性と組み合わせればもしかすると何か進化を遂げる……のかも。分からんけど。
それにしても。そろそろ腹が膨れて来たの。いい加減、腹いっぱいじゃ。そろそろ食後の甘味でも味わって、ゆっくり風呂に浸かりたい気分じゃ。
「あ、そろそろお腹いっぱいですか? デザートにします?」
「……うむ。もう肉も野菜も満足じゃ。今日のでざあとは何じゃ?」
「今日はシャーベットですよぉ。柚子味にしました!」
ほぅ、それは良いのぅ。脂っこい肉や焼き野菜を、たらふく食べた後じゃ。さっぱりした甘味は食事の終わりに丁度良い。ほれほれ、早く持って来い。儂、でざあと、食べたい!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ