待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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多忙の円花。これからについて

 

 

 

 

 

 天幕(てんと)で一晩を過ごした、その翌日。日曜じゃって言うのに、朝から七山やおおるまいとがやって来た。何故か緑谷まで来ておる。それに、ほおくすまで。

 修理が施され、綺麗に直った居間。そこに今、八人も集まっている。少し狭苦しく感じるのは気のせいではない。三人掛けの椅子(そふぁ)には、儂と被身子とながん。対面にある同じものには、七山とおおるまいと。緑谷、相澤、ほおくすは立ったままじゃ。何で朝からこんな事になってるんじゃか。

 

「さて。今回皆さんにお集まり頂いたのは、ずばり英雄の呪霊をどうするか。その対策を講じたく思います」

 

 のおとぱそこん、を開いた七山が口を開いた。その一言で、大人達と緑谷は顔を引き締める。被身子は興味なさそうに膝上の参考書に目を落とし、儂は欠伸。対策なんて、そもそも出来るとは思えんからの。無駄な時間を過ごすそとになりそうじゃ。まぁ、情報共有は改めてしておくか。あの呪霊については、全員知っておいた方が良いじゃろう。

 

「ご存知の通り、昨日ここに英雄の呪霊が姿を現し廻道さんはこれを迎撃。結果、逃走。ひとまず、建物以外に被害はありません。どうやらその呪霊の目的は廻道さんも対話することだったようですが、対話は行われませんでした」

「廻道少女が追い払ったから。って事かな?」

「ええ、その通り。こちらとしては少しでも向こうの思惑を知りたいところでしたが、これについては仕方ないでしょう。廻道さんは呪術師として当たり前の事をしただけですから」

「ヨリミナ、質問。善良な呪霊って居るの?」

「知らん。少なくとも、儂はそんな呪霊を見たことがない」

 

 呪霊は、どこまで行っても呪霊じゃ。人に仇なす呪いでしかない。そんなものが儂との対話を望んでいると言われても、儂としては祓う以外の選択肢は無い。そもそも、気紛れな戯言を言っているだけとしか思えん。次に現れた時、仮に同じ事を宣ったとしても儂はあの呪霊を祓う為に動く。あれだけの実力を持った猛者が、人間の敵になる。そう考えただけでも、最悪じゃからの。

 英雄(ひいろお)の呪霊。あやつがあれ程までに強いのは、この国の英雄(ひいろお)への恐れや妬みが全て集約したからじゃろう。そう考えると、あれだけの強さを持っているのは納得じゃ。おおるまいとの姿形をしているのは、恐らく平和の象徴へ向けられた負の感情が濃かったから……かもしれん。何せおおるまいとは、日本の平和を支えていた英雄(ひいろお)じゃ。日本で知らぬ者など居ない程に有名じゃからの。

 

「……対話の余地があるなら、対話してみません? こう言っちゃなんですが、総監部に引き込めれば危険視する必要は無くなりますし」

「は? おい、ふざけてるのか貴様」

「大マジで言ってるけど? 現状、英雄側(こっち)は人手が足りなさ過ぎる。これは早急に改善しないと、全滅も有り得るでしょ。

 現状、君とオールマイト、それから緑谷くんの三人しか呪術師が居ないんだから」

「……それは駄目でしょう、ホークスさん。呪霊は何度か目にしていますが、知恵や理性が有るように思えない。英雄(ヒーロー)の呪霊とやらを、味方に引き込めるようにはとても」

 

 翼男の戯言に、相澤が食って掛かった。何じゃこやつ、たまには正しいことを言うんじゃな。少しは見直して……やる理由は無いか。儂、こやつは生涯許さんと決めておる。

 まぁそれはともかく。ほおくすの言い分には、心底反対じゃ。呪霊なんぞの力は借りられんし、借りれたとしても信用ならん。確かに現状、人手が足りないのは事実じゃ。どうしても無理が生じる。ある程度の犠牲には目を瞑って、大きな脅威のみを排除するというのが今出来る最善と考えるしかない。窓を設立したところで、大きく何かが変わるわけでもないしのぅ。

 

「大局で物を見ませんか? 長い目で見れば、件の呪霊を引き込んだ方が犠牲も少なくて済む。一応あの呪霊は、(ヴィラン)ばかりを死なない程度に呪ってますしね。やってることは、この間の警察署襲撃以外はヒーローのそれですよ」

「だからと言って、信用出来るわけじゃない。まして一度は悪事を働いているんですから、祓う方針を変えるわけにはいかないでしょう」

「では、子供二人を使い潰せと? それこそ、大人としては論外でしょう」

「そうならないように、雄英は呪術科を立ち上げたんですよ。むしろあなた方総監部の方こそ、うちの生徒を使い潰そうとするなよ」

「安牌切ってる状況じゃないんですよ。呪霊被害は広がっていて、この先何人が犠牲になるか分からない。対策は早急にしなければならないんです」

「……喧しい。大の大人が騒ぐな、少し黙れ」

 

 まったく。こやつ等は何を考えているんじゃか。ほおくすの言い分も、相澤の言い分もきっと何も間違いではない。呪霊を味方に引き入れようとする考えには賛同出来ぬが、現状を改善しなければならないのは事実では有るからの。それに、英雄(ひいろお)として少しでも犠牲者を減らしたいんじゃろう。

 

 くだらん。まっこと、くだらんのぅ。

 

「人手不足である以上、呪霊被害を抑えることは出来ん。犠牲には目を瞑れ。これはそれだけの話じゃ」

「それは、現状維持……ってこと? でも、廻道さん。呪霊被害は、少しでも多く食い止めなきゃ……」

「その為に少しずつ動いているのが、今の儂等じゃろ緑谷。今以上に呪霊被害を抑えることは出来ん。諦めろ」

 

 まぁ、お主がかつてのおおるまいと程に強くなれば話は少しばかり変わってくるがの。その場合は、今よりは呪霊被害を抑えられるじゃろう。しかしそれは、早くとも数年後の話じゃ。下手をすれば十年以上の時間が必要になる。それまでは、やれる事を一つずつ積み重ねていくしかあるまい。

 もっとも、儂は緑谷を呪術師にするつもりは無いがの。教えるのは身を守る術だけじゃ。そして、今以上に教える気は無い。呪力操作は出来るようになった。放出も、取り敢えずは出来ている。つまり、こやつはもう並大抵の呪霊が相手ならば、自衛出来るようになっとる。

 

「……今、全員を救けられないのは……分かるよ。でも、出来る事があるのに何もしないなんて真似は……僕はしたくない」

「じゃから?」

「僕も、もっと手伝うよ。七山さん、僕にももっと手伝わせてください。廻道さんの負担を、呪霊被害を、少しでも抑えたいんです」

「……ええ、もちろん。今後は緑谷くんにも、もう少し任務を与えましょう。ですが君は呪術科ではない。学業に支障が出ない範囲で働いて貰います」

 

 ……勝手に話を進めおって。いつぞやも、こうやって首を突っ込んで来たなこやつは。緑谷を呪術師として活動させることに、儂は反対なんじゃけど? 仕方ない。緑谷に仕事が振られないよう、後で総監部に釘を刺しておくか。いや、いっそ儂がこやつが受けても良い仕事を選ぶか。出来る限り簡単で、負担の少ないものを寄越させるとしよう。危険が伴うものは、儂とおおるまいとで受ければ良いからの。

 

「えーっと……。それで結局、ヒーローの呪霊はどうするんだい?」

「……そうですね。話を戻しましょうか。今日から、オールマイトもレディ・ナガンの護衛に付きます。またいつ、英雄の呪霊が姿を現すのか分かりませんから。

 廻道さん。あの呪霊について分かっていることを」

「……見た目は、おおるまいとじゃ。実力は、儂より上と見て良い。あやつと本気で呪い合ったら、儂は死ぬかもな」

「え……」

「大丈夫じゃよ、被身子。儂は絶対に死なんから」

 

 被身子の肩を抱き寄せて、ついでに頭も撫で回す。不安にさせてしまったの。大丈夫じゃ、儂は死なん。必ず生きて、被身子の下に帰る。そう決めている。そう誓っている。呪術師として死ぬ気は、一切無い。

 じゃから、強くならねばの。今よりもっと、儂自身を鍛え上げなければ。こうなってしまった以上、やはり一から鍛え直さねば。

 

「待て廻道。お前より強いだと……?」

「廻道少女より強い……? 本当に?」

「それが本当なら、もう彼女の護衛どころじゃないでしょ」

「儂が今より強くなれば良いだけの話じゃ。そう悲観することでもない」

 

 それに、あやつの実力が上じゃからって儂が確実に負けるわけでもないしの。出会った呪霊が格上じゃった、なんて話は呪術師なら幾らでもある話じゃ。前世でも幾度か有った。格上との戦いは何度でも経験しておる。死力を尽くすことにはなるじゃろうが、問題は無い。儂の攻撃の一切が通らない、なんてわけでも無かったからの。祓えない、なんてことは無いんじゃよ。

 

「……私が見たところ、そう絶望的に差があるように見えなかった。これからの過ごし方次第で、どうとでもなるんじゃないか?」

「ながんの言う通りじゃ。まぁ、鍛錬する時間は必要じゃけどな」

「……鍛錬すれば、埋められる差。それは間違いないんですね?」

「恐らくな。実際のところは分からん。ながんが言った通り、これからの過ごし方次第じゃ」

 

 正直言って、時間が欲しい。儂一人で出来る鍛錬にはどうしても限界があるが、それでもやらない理由は無い。とは言え、呪術師としての活動に勉強もある。被身子との時間も確保せねば。えりの様子じゃって、たまには見に行かねばならぬし……。強くなるには、どうしたら良いんじゃろうなぁ。ひとまず、時間に追われることになるのは間違いないのぅ。

 

「協力するよ、廻道少女。どんな鍛錬でも私が手伝おう!」

「僕も手伝うよ! 色々教えて貰ってばっかりだから、お返ししたいんだ」

「ならお主等には、領域の鍛錬に付き合ってもらおうかの。的ぐらいにはなるじゃろ」

「的……!?」

「ま、的……」

 

 残念ながら、今のおおるまいとや緑谷じゃ儂の鍛錬相手にはならん。精々が的じゃ。それでも呪力持ちということから、領域の必中効果を確認する為の的ぐらいにはなる。閉じぬ領域の洗練するために、少しばかり的になってもらおう。

 いやいっそ、手っ取り早く自身を底上げする為に縛りでも結ぶか? ううむ……しかしのぅ……。それは何と言うか、違う気がしてならん。強くなるなら、やはり猛者との戦いを繰り返さなければ。出来れば死合が良いんじゃが、それは高望みじゃの。試合でいい。儂が楽しめる程の猛者となると……。まぁ、居るには居るか。充分な鍛錬になるかは別じゃけども。しかし、僅かでも可能性が有るならそれに賭けるとしよう。

 

「……七山。ひいろおらんきんぐ、十位以内の連中と手合わせしたい。どうにか出来るか?」

「……どうにかするしかないでしょう。優先して手合わせをしたいヒーローは?」

「えんでゔぁ。それと、鯱頭かの。あやつも中々強いから、今度は本気同士でやり合いたいのぅ」

 

 ……うむ。わくわくして来た。じゃって、猛者と手合わせ出来るんじゃもん。そんなの、わくわくしない筈が無い。昨日は不満が残ったからの。今度は、心行くまで楽しみたい。今から手合わせ出来る時が楽しみじゃ。特にえんでゔぁ、あやつは個人的に呪ってやりたいしの。出来る限り近い内に会うことが望ましい。あの呪霊が、いつながんの側に転移(わあぷ)してくるのかも分からんし。それに、一つ目の対策をしなければならん。えんでゔぁは、恐らくうってつけの鍛錬相手じゃ。

 

「では、エンデヴァーとギャングオルカに協力を要請しましょう。そうですね……雄英への特別講師という体で行けば、何とかなるかと」

「何でも構わんよ。とにかくその二人、早急に寄越してくれ」

 

 ……良し。これで、一つ目への対策をより具体的に進められるじゃろう。同時に儂の鍛錬も、少しは捗る筈じゃ。何より、楽しみで仕方ない。事情が事情とは言え、猛者と手合わせ出来るのは非常に喜ばしい。

 

 

 けひっ。楽しく、なってきた……!

 

 

 

 

 

 







円花の武者修行が始まりそうです。不運にもこのバトルジャンキーに真っ先にロックオンされたのは、エンデヴァーになります。あーあ。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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