待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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多忙の円花。任務選定

 

 

 

 

 

「あぁそうじゃ七山。緑谷に適任の仕事は儂が選ぶから、仕事のりすとは一度全て儂に回せ」

「……はい?」

 

 なんてやり取りを最後にして、英雄呪霊対策の話し合いは一旦解散となった。で、その数時間後の昼頃に、分厚い一覧表が届いた。文字通り山のような書類が届いたものじゃから、目を丸くする羽目になってしもうた。確かに全て回せと言ったが、日本全国の呪霊被害一覧表を出してくるとはの。仕方ないから、全てに目を通して緑谷が一人でも達成出来そうなものを選ぶことにする。あやつに荷が重そうなものは、儂かおおるまいとと一緒に行って貰うとしよう。緑谷を呪術師として育てるつもりは、もう無いんじゃけどなぁ。教えられる範囲のことは教えたつもりじゃし。まぁ帳の降ろし方ぐらいは教えてやっても……。いや、駄目じゃの。そんな真似をしたら、それこそ何時でも何処でも一人で呪霊を祓おうとしてしまう。

 

 とにかく、そんなこんなで。今は昼飯のさんどうぃっちを片手で頬張りつつ、一覧表の山を片っ端から眺めている。話し合いが終わってから……と言うか、話し合いの最中から被身子が儂にくっ付いて離れないのは仕方がない。心配させてしまったのは儂じゃし、気が済むまで好きにさせてやらねばのぅ。

 

「それ、全部見るんですか……?」

「今日中に緑谷向けのものを選定しておく。面倒じゃけど、やらねばならん」

 

 何でこんな事までしなくてはならぬのか。こういう作業は苦手なんじゃけど、やらなければならぬ機会は多かった。頭を働かせるぐらいなら体を動かしたいんじゃけどなぁ。

 まぁ、これは緑谷の安全の為に必ずやらなければならぬ事じゃ。苦手は苦手じゃけど、しっかり最後までやり通すとしよう。取り敢えず、静岡県から出ることになるようなものは全て除外しよう。あやつには、主に県内で動いて貰う。何なら、一度儂自身の目で県内の呪霊被害地と思われる場所を全て見て回るとするか。その中から、緑谷一人で対応出来そうな簡単なやつをじゃな……。危険が少しでもあるようなやつは駄目じゃ。

 やる気になっている緑谷には悪いんじゃけど、手軽なものだけに挑んで貰う。少しばかり危険なものは、おおるまいとと一緒に向かって貰おう。(まこと)に危険が伴うものは、儂かおおるまいとのどちらかだけで出向く。となると……。

 

 は? 産土神(うぶすながみ)信仰による呪霊発生の可能性……? それも、日本の南海に位置する小島で? 論外じゃ論外。遠過ぎるし、信仰の類で産まれてしまった呪霊を祓うのは、それなりの危険が伴う。こんなのは、最低でもおおるまいとに動いて貰う。儂自身が向かっても良いが、被身子と長時間離れ離れになってしまうのは……。うむ、おおるまいとに押し付けよう。儂は知らん、何も見なかった。

 

 ……それより。こんなの危険なものではなくて、もっと手軽そうな……。お、これは丁度良いんじゃないか? 雄英から数十(きろめえとる)離れてはいるようじゃけど、廃墟となった団地を解体中に不可解な現象が頻発。作業員が得体の知れない生物を見たとの目撃情報。多分蠅頭じゃろ。これにしよう。それから……。

 

「緑谷くんに、どんな任務を振るつもりですかぁ?」

「簡単なやつ。危険が無くて、何なら呪霊被害ですら無さそうなものとかじゃの」

「……過保護なのです。それ、結構反対されちゃいますよ?」

「子供一人で呪霊退治じゃぞ? そんなもの、簡単なもので固めるに決まっとる」

「もぅ。すぐそうやって私以外を大事にしようとするの、好きじゃないのです」

「一番大事なのはお主じゃけど? 他は二の次じゃ、二の次」

 

 被身子が拗ね始めようとしているので、ぎゅっと抱き締める。それから頭を撫でて、頬を撫でて。あとは……そうじゃな。接吻(きす)しよう。まったく、こやつと来たら。そうやって機嫌を損ねるのは……まぁ、かぁいいから良いんじゃけども。仕方ないのぅ被身子は。甘えたがりの欲しがりの、やきもちめ。

 

「……アンタ、渡我を甘やかし過ぎじゃないか?」

 

 今は甘えん坊の被身子を甘やかし倒していると、対面の席に座るながんが顔を顰めた。何じゃその言い草は。別に、悪い事じゃないじゃろうが。

 

「良いじゃろ別に。許嫁なんじゃから」

「そうですよぉ、火伊那ちゃんっ。円花ちゃんは一生トガを甘やかしてくれるのです!」

 

 ……いや、それを高らかと声に出すのはこう……。何と言うか、少し気恥ずかしいじゃろ。確かに一生甘やかすつもりじゃけども。あと、儂が甘やかしてるんじゃから儂以外に目を向けるな。顔を向けるな。嬉しそうに笑うのは良いことじゃけど、今は儂を見て欲しいのぅ。まったくっ。

 こうなったら、顔を両手で挟むとしよう。で、少し無理矢理儂の方に顔を向かせる。おい、ますます喜ぶな。何か言われる前に、唇を重ねてしまおう。そうしよう。

 

「んん……っ♡」

「……まったく。儂が甘やかしてるんじゃから、よそ見するな」

「てへっ。だって、たまには見せ付けたいじゃないですかぁ」

 

 ……たまには? ……たま、には……?

 

 いや、何を言ってるんじゃか。ここ最近は、人前で接吻(きす)など幾らでもしておるじゃろうが。手も繋ぐし、抱擁(はぐ)もするし、何なら椅子(そふぁ)の上で寝転んで密着しあうことじゃって……。まぁ流石に、人前であれこれしてしまったことは一度も無いが。始まる瞬間に、くらすめえと達全員から止められるしの。

 

「ふーーっ、やっと部屋が整ったよ。流石にあれこれと持ち込み過ぎたかな……?」

 

 被身子の言い分に呆れていると、額から汗を流したおおるまいとが姿を現した。そうじゃった。こやつも今日からここに住むんじゃった。この筋肉阿呆と、同じ建物の中で暮らすのか……。早速、建物の中が狭くなりそうじゃ。貴様、いっそ寮の中では萎んでいたらどうなんじゃ? そしたら、むしろ丁度良いんじゃないか?

 

「ところで廻道少女。その書類は、さっき七山くんに頼んでた……」

「そうじゃ。この中から緑谷に単独で受けさせて良いものを選ぶ」

「……その、あんまり危険なのは振らないであげてね……?」

「言われずとも、簡単なものしか受けさせんよ。死なすわけにはいかんからの」

「オールマイトも、緑谷くんに過保護してるのです」

「い、いや。そんな事は無いよ? な、無いさ。HAHAHA!」

 

 それで誤魔化せてはいないと思うんじゃけど? まぁ、良いか。緑谷との関係性を邪推されて困るのは、こやつと緑谷じゃし。儂は別に困らん。変に問い詰められても、口を閉ざすだけじゃ。

 さて。もう一度、一覧表(りすと)の中から緑谷向けのものを探しておくか。ついでじゃ、おおるまいとの分も探しておいてやろう。どれどれ……。あぁ、そうじゃ。この産土神信仰のやつ、今の内に押し付けておこうかの。

 

「おおるまいと。那歩島とか言う小島で、呪霊が産まれたかもしれん。これ、緑谷には危険じゃからお主がやっとけ」

「えっ、那歩島? と、遠いね……?」

「……確か、日本の最南端だったな。そんな辺鄙(へんぴ)な所にも、呪霊ってのは産まれるのか」

「むしろ、辺鄙(へんぴ)じゃから産まれるんじゃよ。人の負の感情が下手に散ったりしないで、一箇所に集約し易い。ここは産土神信仰が有るらしいからのぅ」

 

 しかし産土神信仰、……か。いったい、どんな神を信仰しているのやら。どうせなら猛者が良いのぅ。いや、儂は行かぬからやっぱり雑魚が良い。

 

「産土神信仰……? って、なんです?」

 

 被身子が首を傾げた。学力特待生でも、流石に知らんようじゃ。まぁ、日々の勉強にこれは関係無いものじゃろうしな。知らなくて当然じゃ。

 

「産土神は、土地を守る神じゃよ。それを信仰するから、産土神信仰」

「つまり……、那歩島の守り神ってことですか? それが呪霊に?」

「そうじゃ。神なんてのは大抵、呪霊じゃしな」

 

 神に供物を捧げていると思ったら、実は神ではなく呪霊じゃった。なんて阿呆な話は、割りとよく有ったりする。(まこと)の神など、儂は見たことがない。目に見えぬものを神じゃと、非術師はどうしてか信じてしまうものじゃ。実に愚かしいが、見えぬものに縋りたいと思う気持ちは分からんでもない。一応、じゃけども。もっとも、見えぬものに縋るような暇があるなら死ぬ気で鍛えろとしか言えんが。

 

「えーっと。確か那歩島って、冬でも夏みたいに暑いんですよね?」

「そうなのか?」

「はい。だから冬でも海で泳ぎたい〜って人は、冬のバカンスに那歩島を選んだりするんですけど……」

 

 ……詳しいの? さては被身子。お主、何か悪巧みをしておらんか?

 

「今年はちゃんと海で遊んでないな〜って、トガは思ってたりしてるんですけど」

 

 あぁ、悪巧みしておる。悪どい笑みを浮かべて、強請るような目で儂を見ている。お主なぁ、儂に日本の最南端まで行って産土神を祓えと? しかも、それに付いて来る気満々じゃのこやつ。呪霊を祓いに行くのに被身子を連れて行く理由は無いんじゃけども、こうなったこやつが儂の言う事を聞くかと言うと……。

 

 ……残念ながら、聞こうとしない。しかし、しかしじゃな。呪霊退治に被身子を同行させるわけには……!

 

「昼間は海で遊んで、夜には呪霊退治。トガは宿で待ってるのです。それなら、連れてってくれますよね?」

「いや、おい……っ」

 

 せ、迫るなっ。

 

「連れてってくれますよね?」

「待て、儂の話を……」

 

 圧を掛けるなっ!

 

「く れ ま す よ ね ?」

 

 

 ……。……、……。…………。

 

 

「……まぁ、そういうことなら……」

「ぃ、やったーー! 二人で泳ぎましょう!! 水着っ、今度こそ水着を買うのです!!」

 

 押し切られてしまった。いつも通りと言えばいつも通りなんじゃけども、何でいつもいつもこうなってしまうのか。解せぬ……。何でじゃ……。くそっ、被身子め。そうやっていつもいつも、自分の意見ばかりを通しおって。たまには儂の意見も聞いたらどうなんじゃ? まったくっ!

 

「なぁオールマイト。この二人、いつもこうか?」

「え? あー……、うん。大体そうかな。ほら、廻道少女って渡我少女には逆らえないところあるし」

 

 大喜びで抱き付いてくる被身子を甘やかしていると、筋肉阿呆やながんが儂を見て何か言っておる。貴様等、聞こえているからな? 誰が誰に逆らえないって?

 

 たわけ共め。別に、被身子に逆らうぐらい簡単じゃ。そう、普段は敢えて逆らってないだけなんじゃ。分かるか? 敢えてじゃ、敢えて。

 

「んふふっ。楽しみですっ! ちゃあんと、連れて行ってくださいね!」

「……相分かった。おおるまいと、そういう訳じゃから那歩島は儂が行く。七山に伝えておいてくれ」

 

 何でこうなったんじゃろう? と、思わんでもない。思わんでもないんじゃけど、ひとまず儂は那歩島に行くことが決まってしまった。被身子も連れてくとなると、都合が良いのは冬休みじゃの。ではこの冬、海水浴に興じるとしよう。たまにはそんな冬休みが有っても良い。と、思うことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







とまぁ、そんなこんなでやります。ヒーローズ:ライジング。円花は産土神信仰に単身で挑むことになります。それはそれとして、なんかトガちゃんも付いてきます。真冬に水着デートするってことです。まぁ那歩島の気候は常夏なので、大丈夫ですね。

三人称による補完は要りますか?

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