待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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多忙の円花。忙しい日々

 

 

 

 

 

「ほれ、相澤」

 

 何かと忙しい日々が続いている中。捕縛布の呪具化に成功したので、完成した物を相澤に向けて放り投げる。ついでに作った短刀(ないふ)色眼鏡(ごおぐる)もじゃ。まさか英雄(ひいろお)の装備を一式呪具として作成するのに、一週間も掛かるとはの。呪霊退治の任務に個人の鍛錬、その上での呪具作成はどうしても時間が掛かってしまう。この調子じゃと、窓十人分の呪具作成を年内に終わらすことが出来るのか、かなり怪しい。

 それでも、請け負った以上はどうにかして間に合わせるつもりじゃけども。取り敢えず相澤の分は済んだから、次はぷれぜんと・まいくの装備を作るとするか。並行して、ほおくすやながんの分の装備も作っていくとしよう。

 

 そうそう。この一週間で変わったことがある。何と、ながんが正式に窓の一員となった。秘匿釈放された身である以上、こやつは変装無しでは外に出てはならない。それでも、いつまでも儂と寮の中に引き籠っているわけにはいかんからの。主に儂が。総監部としては、儂にながんの護衛をしつつ他の任務もこなして貰いたいようじゃ。お陰で、何かと忙しい。それと、ほおくすが顔を出してくる。たまに、じゃけどな。何でかは知らんが、儂とながんの様子を見に来ているようじゃ。

 

 緑谷には、簡単な任務しか与えておらん。主に雄英近辺での、雑魚呪霊退治を任せている。あやつが祓うのは、主に蠅頭。たまに人に取り憑いた低級呪霊を、おおるまいとと共に祓わせておる。お陰でこの一週間、雄英付近で呪霊を見掛けることは無くなった。そろそろ与える任務が少なくなって来たから、一度学業に集中させようと思う。これはおおるまいとから聞いた話なんじゃけど、近い内にびぃ組との対抗戦が有るとか何とか。儂にも参加して欲しいそうじゃ。どうするかは、まだ決めておらん。

 

「……忙しい中、悪かったな」

 

 居間の椅子(そふぁ)で抜き打ち試験(てすと)の採点をしている相澤が、机の上に投げられた装備を確認していく。呪具となった捕縛布をさっそく首に巻いたり、色眼鏡(ごおぐる)を付けてみたり。部屋着の上に装備を付けるのはどうなんじゃ? まぁ良いか、こんな奴がどんな格好をしていようが。もう担任でも何でも無いからの。こやつ。

 

「一応言っておくが、壊したら承知せんからな?」

 

 貴様の装備一つを作り上げるのに、一週間も費やすことになってしまった。材料に大量の儂の血液と髪が使われた捕縛布は、しっかりと儂の呪力が染み付いて立派な呪具となった。呪霊に対する威力の程は、検証しておらんから知らん。強度については、前に儂が引き千切った捕縛布より遥かに頑丈じゃ。何せ、力では引き千切る事が出来なかったからの。

 

「早速試したい。この後、任務か? 俺も同行したいんだが……」

「断る。緑谷か、おおるまいとにでも同行しろ。もしくは窓として、勝手に低級呪霊でも相手にしておれ」

 

 確かに、この後も任務じゃ。しかし、こんな男を補助監督として連れて行くつもりはない。それについては、ながんで充分に間に合っている。何故かは知らんが、何だかんだでしっかりと働いてくれるんじゃよな。お陰で助かっておる。道案内も的確じゃし、事務処理までやってくれる。それに何と言うか、儂を扱うことに手慣れ始めている気がする。煩わしい些事を請け負ってくれる事も多い。

 例えば、任務に向かう途中で道行く通行人に話し掛けられる事が有る。儂をぶらっでぃと呼んで、まっさらな色紙を手渡してくることがあるんじゃ。儂は英雄(ひいろお)では無いんじゃけども、とにかく……ふぁんさ? とか言うのを求められる。これを、ながんは間に立って断ってくれるんじゃよな。お陰で時間を取られずに済む。

 

 極稀に、夜にも関わらず子供が話し掛けてくることが有る。大抵、親と一緒じゃけど。そういう子供には、仕方ないから差し出された色紙やら筆記帳(のおと)署名(さいん)してやるが。ただ、頼皆と書くと嫌がられるのは何でじゃろうな。ぶらっでぃと書き直せとお願いされることが多い。解せぬ。儂の英雄名(ひいろおねえむ)は、頼皆なんじゃけど??

 

 まぁ、とにかく。今夜も呪霊を祓いに出る。変装したながんも一緒じゃ。今日はどんな変装をさせられてるんじゃろうな、あやつ。日替わりで様々な格好を被身子にさせられて大変そうじゃ。変装の為とは言え、かぁいい服を着れることを実は楽しんでいることを儂は知ってるんじゃからな? じゃって最近、被身子に変装させられても文句を言わなくなって来たしの。

 

「じゃあ相澤くん。今夜は私と出ようか! ちょっとヤバそうな任務が有るんだよね。補助監督として同行してくれるとありがたいんだけど……」

 

 筋肉阿呆が、何か急にやって来た。訳の分からんことを相澤に提案している。じゃって、今宵のおおるまいとは休みの筈じゃが? 新たに総監部から任務を押し付けられた可能性は、……無いとは言い切れんか。

 

「……オールマイトさん。それは必要無いかと思いますが」

「んん……。いや、まぁほら……たまには教師同士でね? 親睦を深める為にも……」

「深めたいんですか? 俺と?」

「は、HAHAHA……。そ、そう! 仲良く、仲良くしよう!」

 

 ……うむ、放っておくとしよう。相澤も、筋肉阿呆も。儂はこれから任務じゃし、あまり居間でのんびりしているつもりは無い。今日は何処の呪霊を祓うんじゃっけ? 確か、車に乗って行くとか何とか言ってたような……。

 ところで、ながんは何処じゃ? まだ被身子に変装させられている最中なのか? 取り敢えず、ながんを部屋まで迎えに行くとするか。どうせ被身子に振り回されているんじゃろうから、そろそろ助けてやるとしよう。

 

「待て廻道。ひとつ頼みたいんだが……」

 

 居間を去ろうとすると、後ろから相澤に呼び止められた。が、無視じゃ無視。儂はこれから呪霊退治に出掛けるんじゃ。もう構ってやる理由は無い。じゃから必要以上に話し掛けるのは止めてくれ。

 

「……この装備、もう一組頼めるか? 出来れば、春までに」

「い や じ ゃ !」

 

 ふざけたことを言いおって……! 貴様、いいかげんにしろよ? そろそろ本気で呪うぞ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 呪霊、祓った。儂、車に乗って、帰る。

 

 今日の任務は、静岡の端にある廃業した温泉旅館での呪霊退治じゃった。何でもそこの温泉に浸かった客は軒並み体調不良となり、酷い場合は死んでしまったとのこと。温泉自体の水質調査なんかもかなり詳しく行われたそうなんじゃが、原因不明。もしかすると呪霊の仕業かもしれんということで、儂が派遣された訳じゃ。

 

 で。結果は、呪霊のせいじゃった。

 

 温泉を呪いで満たす呪霊など、儂からすれば到底許せん。ので、姿を見せたところを即座に祓ってやったわ。まったく、ふざけおって。呪霊を祓った後、ついでじゃから問題となった温泉にゆっくり浸かろうかと思ったんじゃが、ながんに止められてしまった。もう呪霊は祓ったから、何の問題も無いんじゃけどなぁ。なのに反対されてしまった。残念じゃ。まっこと残念じゃ。

 

 なので。この冬、被身子と温泉旅行に行こう。逢瀬(でえと)じゃ逢瀬(でえと)。最近は寒くなってきたからの。温泉が恋しい。

 

 あ、そうじゃ。今日は入浴剤を使ってしまおう。のんびり長湯して、それが済んだら被身子と添い寝して。……目を覚ましたら、勉強しなければな。あまり気乗りしないんじゃけど、英語の勉強を優先的に進めなければならない。まだ全体の二割程度しか進んでいないんじゃ。今の五倍以上の時間を苦手科目に費やさなければならないと考えると、どうにも気が重い。進級の為にはやらなければならない事なんじゃけど、他の科目だって有るんじゃ。後回しでは駄目なのか? 何じゃって被身子は、真っ先に英語をやらせようとするんじゃ……。

 

「ところでアンタ。イレイザーとは仲が悪いのか?」

 

 車の助手席で窓の外を眺めていると、運転席のながんが口を開いた。何じゃ急に。いちいち聞かなくとも分かるじゃろ。儂はあやつを一生許さん。何なら末代まで呪ってやっても良いんじゃ。一発どころか、何十発でも殴りたいぐらいじゃからの。

 

「見れば分かるじゃろ?」

「そうだな。とことん嫌ってるのは分かる。

 何か有ったのか?」

「箝口令じゃ」

「そうか。なら、私がとやかく言えることじゃないな」

 

 そう言って、ながんは口を閉じる。ついでに手を伸ばして、電信(らじお)を掛け始めた。よく分からん番組が流れ始めた。男二人が、何かを題材にして語り合っている。興味は無いんじゃけど、どうせ雄英に帰るまで車内では暇をすることになるしの。取り敢えず、座席を後ろに倒して目を閉じるとするか。帰るのにまだまだ時間が掛かるじゃろうし、電信(らじお)でも聞きながら仮眠するのも良いかもしれん。

 

 なんて、思っていたら。

 

「ぬおっ!?」

 

 車が急停止した。つい運転席のながんを睨むと、前面の硝子……の向こう側を指差された。何事かと思って前を見てみれば、……何やら黒煙が上がっておるの。火も上がっておる。よく見れば、幾つかの人影も見えるのぅ。真夜中じゃって言うのに、騒々しいことじゃ。

 

「どうする? 相手は呪霊じゃないが、行くか?」

「悪党か?」

「あぁ、悪党だ」

「迂回は出来ぬのか?」

「無理だ。高速道路だぞ」

 

 ……はぁ……。仕方ない。面倒じゃけども、黙って見ているわけにもいかんか。呪霊の後は悪党か。あぁ、やじゃやじゃ。儂はさっさと寮に帰りたいんじゃけどなぁ。何でこうなってしまうのやら。

 

 安全帯(しいとべると)を外すと、扉の鍵が開かれた。ながんは眼鏡を掛け、ますくで顔の半分を隠した。一応、人に顔を直視されるわけにはいかんからの。分かる奴は、ながんをながんじゃと分かるわけじゃし。

 

「ぶん殴って、捕らえて来る」

「あぁ。気を付けな」

「誰に言っとるんじゃ。たわけ」

 

 予定外じゃが、さっさと帰る為に悪党退治と行こう。英雄(ひいろお)活動に興味は無いんじゃけども、今回の場合は仕方ない。無視してしまうと、いつ帰れるのか分からんしの。

 

 まったく、悪党共め。手間を掛けさせるな手間を。

 

 

 儂は! 忙しいんじゃぞっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 








三人称による補完は要りますか?

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