待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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※呪術本誌のネタバレがあります。


多忙の円花。回らぬ穿血

 

 

 

 

 

 

 寮の近くに、鍛錬場を作って貰った。と言っても、木々の一部を伐採して多少の整地を加えただけのものじゃけど。広さも無ければ、設備も無い。有るのは、物凄く頑丈になるよう作って貰った的のみ。この鍛錬場は、儂が降ろしっぱなしにしている帳の内側に収まる範囲で作って貰ったからの。

 何かと忙しい、今日(この)頃。長時間の鍛錬は行えぬが、それでもやれる事はある。ひとまず、ながんの提案を受け入れてみようと思っている。じゃから今日は勉強をしない。別に、英語の勉強に嫌気が差して逃げたわけではないぞ? 少し体を動かして、気分転換がしたかっただけじゃ。鍛錬を終えたら、勉強に戻る。……つもりじゃ。うむ。

 

「さて。やってみるか……」

 

 作って貰った的から十数(めえとる)程離れて、両手を叩き合わせる。いつものように血液を呪力で圧縮し続けていく。そして今回は、ここに回転を加える。百斂を継続しつつ、個性の発動に意識を向ける。

 ながんは言っていた。穿血に螺旋回転を加えればもっと威力が高まると。気になって携帯電話(すまほ)で調べてみたんじゃが、拳銃には施条と言う細工があるそうじゃ。で、これがあると弾軸が安定したり直進性が高まるらしい。この効果を穿血に加えることが出来れば、更なる威力向上が期待出来る。

 

 ……呪術を極めるということは、引き算を極めるということ。術式発動までの工程を、如何に省略するかが大事じゃ。呪詞を排除したり、掌印を省略したり。なのに、儂がこれからやろうとしていることは足し算じゃ。術式に、個性を足す。工程を一つ増やすのは、単純に手間が増えるということ。穿血を放つまでに、いつもより時間が掛かってしまう。

 

 どうなんじゃろうな、螺旋回転。どの程度の回転を加えれば良いのかも分からぬし、手間に見合うだけの威力が手に入れられるのか。

 

 

「穿け、ぷわっ!?」

 

 

 ……。……痛い。そりゃあ、そうじゃ。たった今、手の内で血液どころか呪力まで回転してしまい、それが弾けた。この場に被身子が居なくて良かった。居たら、どんな顔をされたか分からん。じゃって今、儂の両手は炸裂した。指やら手のひらの肉が、文字通り吹き飛んだ。圧縮していた血液は呪力と共にあちらこちらに飛び散って、周囲が大惨事じゃ。血の雨が降ったかのようになってしまった。儂の肉片も転がっている。地獄絵図か何かか? 気の弱い者がこの光景を目にしたら、卒倒するのでは??

 取り敢えず、反転術式(はんてん)で傷を治す。何度か両手を握っては開いて、機能に問題無いことを確認する。

 

 ううむ……。これは、難しいかもしれん。儂の個性は触れたものを回転させる。つまりの、血液を螺旋回転させるよりも早く、百斂を回転させてしまうんじゃ。結果、呪力操作が乱れて血液の圧縮が上手く行かぬ。そして暴発。まさかこうなるとはの……。

 

 恐らく、呪力は回転させずに血液のみを回転させなければならない。ど、どうやって? じゃってほら、二つとも両手で触れてしまうんじゃ。

 

 ……まぁ、何度か試してみよう。穿血に螺旋回転を加える。まさかここに来て、試行錯誤を繰り返すことになるとは……。

 

 そうじゃ、これを機に穿血のおさらいと行こう。呪詞を口にするのは、いつ以来じゃったかの?

 

「流光・収斂・重なる流れ。集え。集え、集え。三度(みど)繰り返し、百の断層。

 赫血(しゃっけつ)・蒼血・瞬き貫く。

 

 ―――穿血」

 

 一切の手順を省略せず、穿血を放つ。呪詞を省略していない分、普段より僅かばかり勢いが強い。穿血は真っ直ぐ突き進み、狙った的に直撃した。そして的には、穴が開いた。

 ううむ……。頑丈に作って貰ったんじゃけどなぁ。一度の穿血で貫通してしまうのか。もっと頑丈にして貰わなければ。それは今度頼むとしよう。

 

 さて、次じゃ次。両手を叩き合わせ、今度は呪詞を唱えずに穿血を放つ。狙いは、先程作った穴の真上。先程より僅かに勢いが落ちた穿血じゃが、それでも的に穴が開いた。呪詞を省略しても、威力は大して下がらん。やはり、呪詞は必要無いようじゃ。

 

 それで、次じゃ。どうしたものかのぅ。呪力に触れずに血液のみを回転させる。これは無理な気がしてならん。穿血は、両手の内で呪力で圧縮した血液を放つ技じゃ。故に両手を重ね合わせなければ、そもそも百斂が上手くいかん。別に片手でも穿血は放てるが、両手を使った時と比べると速度と威力が落ちてしまう。となると、やはり両手でやるしかない。そもそも今回の目的は、穿血に螺旋回転を加えること。片手では右回転か左回転しか付与出来ぬ。

 

「穿け、ぬおっ!?」

 

 螺旋回転を付与しようとしたところ、また手が吹き飛んだ。ううむ、地獄絵図が更なる地獄絵図に……。まぁ良いか。そこらに散らばって指やら肉やらは、後で纏めて生ごみにでも出しておけば。千切れた子供の指が何本もごみ袋に入っているのは、回収業者からすれば恐怖かもしれんが。

 反転術式(はんてん)を回し、傷を癒やす。血液の補充もじゃ。いっそ、個性の鍛錬から始めるか? 穿血に螺旋回転を加える。それは前提として、個性の細かな操作が出来るようになった方が良い気がする。基本的に儂の個性の使い方は、力任せじゃからの。個性を使った小細工を考えたことは無い。

 

 ……個性、個性の鍛錬か。となると……。

 

 

「……出るか。ひいろお科の訓練」

 

 

 今更顔を出すのもどうかと思うが、強くなれる可能性が有るのなら避けては通れん。ひとまず、くらすめえと達と個性と呪力だけで手合わせしてみるか。術式は無しじゃ。いや、細かな個性操作を身に付ける為に、むしろ術式と併用して……。

 

 ……うむ。何じゃか楽しくなってきた。新たなものを身に付けようと努力することが、つまらない筈がない。強くなれれば、もっともっと楽しめる。

 

 猛者との、手合わせを。

 

 猛者との、力比べを。

 

 猛者との、呪い合いを。

 

 あぁ、いかん。楽しくて仕方ない。今から楽しみで仕方ない。

 

 

「……けひっ」

 

 

 強くなろう。今よりもっと。もっと楽しい時間を過ごせるように。被身子の下に、生きて帰れるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……次世代のひいろお育成ぷろじぇくと……?」

 

 鍛錬を終え居間の椅子(そふぁ)で一人静かに休憩していると、相澤が寮に帰って来た。と思いきや、儂の対面の席に腰掛けて訳の分からん事を言い出し始めた。

 よく分からんが、何じゃその次世代の何たらとか言う何たらは。字面から分かるのは、次世代の英雄(ひいろお)についての何かって事ぐらいじゃ。何でそんなものの話を儂にするのか。もう儂は英雄(ひいろお)科の生徒ではないんじゃけど? この話は儂に関係無いのでは??

 

「そうだ。次世代のヒーロー育成プロジェクト。ヒーロー免許を取得するつもりなら、参加しておいて損は無い」

 

 ……。まぁ、英雄(ひいろお)免許は取るつもりじゃ。総監部の力を借りて個性の自由許可を貰うつもりはない。免許については自分の力で取りたいからのぅ。そう考えると、相澤の宣う次世代の何とかに参加した方が良いのか。

 免許が欲しいだけで英雄(ひいろお)になるつもりはないが、免許を取ったら英雄扱いされるのは事実。言ってしまえば儂は、英雄(ひいろお)を目指していることになってしまっている。そんなつもりは無かったんじゃけどなぁ。ただただ免許が欲しいだけじゃし……。

 

 気乗りはしないが、相澤の話を聞いてやるとするか。免許を取るために、勉強は必須じゃ。次世代何とか何たらを受けることも勉強のひとつ。と、思うことにする。

 

「で? その何たらを儂に受けろと?」

「そうしてくれ。どの道お前は那歩島に行くんだから、呪霊退治のついでに今プロジェクトに参加するのは合理的でもある」

「……被身子は?」

「は?」

 

 は? ではない。被身子無しで、儂に那歩島まで行けと? それは気乗りしないのぅ。じゃって、那歩島には被身子と共に向かうつもりじゃった。任務はしっかりとこなすが、それはそれとして逢瀬(でえと)もするつもりじゃからの。真冬に海水浴とは何ともおかしな話ではあるが、とにかく儂は被身子と那歩島に行くと決めている。

 なのにその何たらいうやつに参加してしまったら、先に儂だけが那歩島に行くことになってしまうではないか。それでは何の面白味もない。別に被身子のように何でもお揃いが良いと言うつもりは無いが、二人で行きたい。二人で行かねば意味が無いんじゃ。せっかくの逢瀬(でえと)なんじゃから。

 

「……何を考えてるか知らないが、渡我は普通科だ。今回のプロジェクトに参加出来るのはヒーロー科のみで、普通科の渡我には関係無い」

「なら行かん。冬休みに任務として向かうから、儂は不参加じゃ」

 

 その何とか言う……事業計画? 課題? が免許を取る為に役立つとしても、被身子が居ないなら儂は無視する。知らん知らん。那歩島には任務で行くから、何とか言うのはくらすめえと達にでもやらせておけば良いんじゃ。儂は関与せんぞ。

 

「……まぁ、渡我も同行出来なくはないが。ただ、大分力業だ」

「なら行く。どうせ誰が何を言ったって、被身子は無理矢理にでも付いて来るからの」

「……お前、もう少し渡我を抑制しろ。許嫁なら、あまり好き勝手させるな」

「それは無理じゃな。がははは!」

 

 被身子を抑制? 無理じゃ無理っ。まぁその気になれば抑え付けることも出来るが、気が乗らん。じゃってほら、儂は被身子に振り回されるのが……。

 

 ……いや、これ以上考えるのは止めておこう。相澤如きに惚気け話を聞かせるつもりは無いからの。そもそも誰に聞かせるつもりも無いが。そういうのは、精々常闇ぐらいじゃ。思い返せばあの鳥頭には、何度も惚気話をしたようなしなかったような……。

 

「はぁ……。お前と渡我を纏めて抑え付ける方法が知りたいよ」

「は?」

 

 失礼な奴じゃの。やはり、この男は嫌いじゃ。儂と被身子を同時に抑え付ける方法など、存在すると思うな。儂を抑え付けたとしても被身子は好き勝手するし、被身子を抑え付けるつもりなら儂も好き勝手する。そもそもそんな真似は許さん。儂の被身子に何か出来ると思うなよっ? ふざけた事ばかり口にするつもりなら、いい加減本気で呪うぞっ!

 

 やはり、敵……! 相澤など敵じゃ敵っ!

 

「とにかく。渡我が来るなら参加するってことで良いんだな?」

「……」

「返事は?」

「……」

 

 まぁ被身子が付いて来るのなら、何とか言うやつに参加はしても良いが。ただ、どうも気に食わん。気に食わんから、相澤を思いっきり睨み付けるとする。貴様、わかっとるんじゃろうな? 再び儂を都合良く使う為に被身子を利用するというのなら、今度こそ命が無いと思え。安心しろ。儂が奪うのは英雄(ひいろお)としての命じゃ。その目を潰すか、或いは両手を回復不能な程にまで切り刻んでくれる。

 殺しはしない。くらすめえと達との約束があるからの、殺しはしない。

 

「被身子を利用するつもりなら、分かっとるんじゃろうな?」

 

 殺意を見せびらかして、睨み付ける。返答次第では、その目を潰す。この距離じゃ。しくじりはしない。確実に、貴様から光を奪ってやろう。

 

「しない。渡我を使おうとする輩は、もう雄英には居ない。総監部にも居ない筈だ。

 ……渡我がプロジェクトに同行出来ると自分で気付いた場合のみ、お前に参加して貰う形にする」

「……そうか。分かってるなら良い」

 

 取り敢えず、何とか言う件については分かった。被身子が何か理屈を付けて、力業で同行しようとするのなら儂も参加することにしよう。もっとも、儂が行かぬと言えば被身子は同行しようとしない筈じゃ。儂としては冬休みに行きたいからの。そうしないと、被身子の成績に関わるかもしれんし。じゃから、今回の話は聞かなかったことにする方針じゃ。

 

 さて。休憩は終わりじゃ、終わり。次は勉強をしよう。で、夜になったら任務じゃ。もちろん、任務に向かう時間まで被身子との時間を過ごすことも忘れない。相澤の話を聞いてやる程、儂は暇ではないんじゃ。

 

 それにしても、仮に儂が那歩島に行くとして被身子はどうやって同行するつもりなんじゃろうか? 気にはなるが、……ううむ……。

 

 まぁ……聞かないでおこうかの。聞いたら頭が痛くなりそうな気がしてならん。

 

 

 

 

 

 






呪詞ポエムは……難しいですね……。呪術本誌を見る限り単語の羅列で良いとは思うんですけどBLEACHリスペクトなら単語だけじゃ足んねえよなぁ!?って思うのでこうなりました。

穿血+回転はまだ会得しない模様。暴発する度に手が吹き飛ぶので、とても大惨事です。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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