待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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多忙の円花。振り回されて

 

 

 

 

 

「という訳で! 円花ちゃんを幸せにするパーティーを開催するのです!!」

 

 いや、もう……。何じゃこれ。何なんじゃこれは。おい、なんでこんな訳の分からん(たすき)を掛けなければならないんじゃ。何が『本日の主役』じゃ。頭に王冠まで乗せおって。八百万、被身子の言われるがままに変な物を創るんじゃない。まっこと便利な個性じゃの、創造。構築術式より遥かに有意義なのでは? その気になれば、家ですら創れるんじゃないのか? 将来、家を買う時は八百万に創って貰うとしよう。まぁ、家まで創れるかは知らんけど。大きな物を創るのは大変そうにしているしの……。

 

 ……はぁ。何でこうなったんじゃか。もう、何も考えずに流されてしまおう。被身子に振り回されるのはいつもの事じゃ。それ自体も、儂は幸せに思えるようになってしまった。出会ってからと言うもの、被身子には好き勝手されてばかりじゃのぅ。

 

 英雄(ひいろお)科の居間。八百万に用意された席は……いわゆる玉座じゃ。赤くて柔らかくて、無駄に綺羅びやかな作りをしておる。そこに腰掛けさせられた儂の前には、恐らく大理石製であろう(てえぶる)。これも八百万が創った。で、その上には被身子の手料理が並んでいる。山盛りのはんばぁぐが大皿に載せられていたり、鍋ごと味噌汁が置いてあったり。夕飯はまだ食べてないから、食べるには食べるんじゃけども……。

 

 もぐ……。美味い……。はんばぁぐ、美味い……。……もぐ……。

 

「ウェーイ! 廻道、飲んでるかー!?」

「んぐっ。……人が物を食べてる時に肩を組むな上鳴。喉に詰まるじゃろ……」

 

 しゅわしゃわした飲み物を片手に持った阿呆面に絡まれた。危うくはんばぁぐが喉に詰まるところじゃ。取り敢えずお椀に注がれた味噌汁を一口飲んで、肩に回された腕を払う。上鳴、後で被身子に刺されても儂は知らんからな? 今、被身子が満面の笑みで貴様を見ていたぞ。あれは刺す気満々の目じゃ。

 

「しかし何故このようなパーティーが?」

「知らぬが仏。俺達では、渡我先輩の考えは理解出来ん……」

 

 少し離れたところで、首を傾げた障子に常闇が説明になっとらん説明をした。まぁ、常闇の言う通りではある。被身子の考えは儂にも理解出来ん事が多いし、理解しようにも理解しきれぬ。

 ところで、常闇。さっきから、儂を見詰めるのは止さぬか。何か言いたい事が有るなら素直に口に出せ。そろそろ視線が鬱陶しいんじゃ。

 

「それでさー、廻道。渡我先輩に何したん? あれ、完璧怒ってるよね?」

「円花ちゃん。今度はどんなポンコツしたのかしら? ちゃんと謝らないと駄目よ?」

「……もぐ……」

 

 何故儂が、何かをやらかした事になっているのか。いや、被身子が暴走したのは儂の言葉が切っ掛けなのは事実じゃけども。しかし、しかしじゃな芦戸。あと、梅雨。何故儂が何かしたと疑って掛かるのか。そこは、儂の味方をしてくれんか? 儂としても、この状況は訳が分からないんじゃ。

 

「渡我先輩。どうして急にパーティーなんスか? いや、パーティー自体は歓迎なんスけど、理由を知りたいっつーか……」

「そこは俺も気になった。どうしたんですか、先輩」

 

 (てえぶる)の向こう側で切島と轟が、この会合(ぱあてぃ)を開いた理由を被身子に聞いている。それは儂も気になるところじゃ。被身子が何を考えているかは分からぬし、聞いたところで理解は出来ぬと思う。が、取り敢えず知っておきたい。取り敢えずの。

 

「円花ちゃんを、たぁっぷり幸せにする為なのです!」

「え……? ぁ、ウス……。もう充分幸せなんじゃないっスか?」

 

 うむ……。そうなんじゃよな。そうなんじゃよ、切島。今でも儂は充分幸せで。なのに被身子は、まだまだ儂を幸せにしたいようじゃ。困るのぅ。これ以上幸せになってしまったら、それこそどうにかしてしまう。今のままで良いと儂は思うんじゃけど……。しかしまぁ、何を言ったところで被身子は止まらん。一度暴走したら、満足するまで止まってくれん。で、儂は目茶苦茶に振り回されてしまうわけじゃ。時にはこうして、くらすめえと達も巻き込まれる。

 

 まったく。儂の許嫁は、少しも自重しないんじゃから。

 

「ところで廻道ちゃん。そっちに居る人は誰??」

「……あぁ……。ええっと、儂の……ううむ……」

 

 葉隠よ。その質問は、実は結構困るんじゃ。何と説明したら良いんじゃろうか。補助監督……は、秘匿規定に反する気がする。しかし、素直にながんと言ってしまうのも駄目じゃ。じゃってこやつは、秘匿釈放されてる身じゃからの。被身子によって施された変装のお陰で、れでぃ・ながんとは思われていないようじゃが……。

 

 と言うか。そもそも、くらすめえと達はながんと言う英雄(ひいろお)を知っているのか? 緑谷は知っていたようじゃけど、誰も彼もがあやつのように英雄(ひいろお)に詳し過ぎるわけではない。もしかすると、ながんと言ってしまっても分からないのでは?

 

 ううむ……。そう、じゃなぁ……。ひとまず……。

 

「……! も、もしかして……!? もしかしてなんだけど、廻道ちゃん……!!」

 

 あ、いかん。気付いた、か? だとしたら、まっこといかん。おい、緑谷。露骨に表情を固くするな。

 

 

「だ、駄目だよ廻道ちゃん! 私達の年齢で愛人なんて―――!?」

 

 

 んぐっ!? げほっ、ごほっ!!

 

「な、何を言ってるんじゃ貴様は!?」

 

 葉隠の発言が予想の斜め上……どころか斜め下過ぎて、はんばぁぐが気管に入ってしまった。盛大に咳き込む羽目になってしまったではないかっ。

 

「透ちゃん透ちゃん。火伊那ちゃんは愛人じゃないですよぉ。まぁ、浮気相手みたいなものですけど」

 

 ごふっ。げほっ、げほっ!!

 

 ひ、被身子……! 貴様も貴様で何を言ってるんじゃ!?

 

「やっぱり愛人じゃん!?」

「最近、よく二人で出掛けてるんですよねぇ。トガをほったらかしにして、朝まで帰って来ないのです」

「……廻道、ちゃん?」

「は? 廻道……?」

「廻道さん……! 幾ら何でもそのような真似は、渡我先輩に失礼が過ぎますわ……!!」

「待て待て誤解じゃっ!! こやつは儂の、わ……儂の……!」

「なーんて、冗談なのです。火伊那ちゃんは、円花ちゃんの専属ドライバーですよぉ。せっかくだから来てもらいました!」

 

 舌を出して被身子が笑った。貴様……儂を困らせて楽しいか……? おい。おい、被身子。悪びれもせず、楽しそうに笑うんじゃない。まったく、流石に言って良い冗談と悪い冗談が有るんじゃぞ!

 今回は、お説教じゃ。これは叱らなければ。分からせなければ。そもそも被身子、貴様は儂の浮気は真っ先に否定する立場じゃろうが。そこを便乗して、笑えん冗談を口にするなど……! 許さん。まっこと許さん……!!

 

「……おい、被身子」

 

 箸を置き、席を立つ。王冠は邪魔なので、側に居た葉隠に押し付ける。(たすき)は、……まぁそのままで良いか。動くのに邪魔にはならんし。

 普段よりも大股で歩き、席を立ってから数秒で被身子の下へ。その勢いのまま、背伸びして被身子の首に手を回し、無理矢理前に屈ませる。で、それから……。

 

「ん……っ」

「んっ♡」

 

 接吻(きす)をする。数秒、いや十秒だけ。その後、しっかり頭を両手で挟んで、真っ直ぐ睨む。

 

「あのなぁ。儂が浮気すると思っとるのか? 儂が愛してやまないのは、生涯貴様だけなんじゃけど??」

「えへへ……。ごめんなさい」

「駄目じゃ。許さん。反省の色が見えんな貴様……」

 

 まったく。誰が、誰と浮気した……じゃって? そんな真似はしとらん。する気も無い。絶対にしない。貴様と結婚すると決めた以上、操は立てる。なのに、儂を浮気者呼ばわりなどと……。

 

 ……おい。何を、挑発的に、笑ってるんじゃ?

 

「んん……っ♡ ぁはっ、すっかり……積極的なんですから……♡」

 

 うるさい。黙れ。貴様は黙って、反省してれば良いんじゃ。このまま大人しく、儂に唇を奪われて―――。

 

「ちょぉおおっとお!? だから何で直ぐそうやって、所構わずおっぱじめようとするのかなぁ!?」

 

 ぐえっ。お、おい芦戸! 襟を引っ張るなっ。被身子から引き剥がそうとするな! 儂、こやつ分からせるっ! 今日という今日は、反省させるんじゃ!!

 

「ぁ、はは……。二人共、相変わらずあけすけやなぁ……」

「ヤオモモー。座敷牢開けといてー」

「いやー、何かこれ……ホッとするよなー」

「闇の交わり。暗黒の常」

 

 き、貴様等。好き勝手言いおって……! おいっ、座敷牢に入れようとするな! 今のは被身子が悪いじゃろっ。と言うか被身子! 何で自分から座敷牢に入ってるんじゃ!

 よし分かった。お主だけ入っとれ! 一晩そこで反省しとったら良いんじゃっ。って、ぐえっ。座敷牢に放り込まれた。目の前で無慈悲に牢が閉められた。おい被身子、抱き寄せるなっ。そんな風に頭を撫でたって駄目じゃからな!?

 

 って、こら! 首の後ろに顔を埋めるな! 舌を這わすな! 何を考えてるんじゃ貴様ぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、もう。酷い目に遭った。儂は被身子を分からせようとしただけなのに、何故か座敷牢に被身子共々放り込まれてしまった。良いじゃろ別に、接吻(きす)ぐらいどこでしたって。それに今回のは、説教じゃったし。口で言っても分からんじゃろうから、体で分からせてやろうとしただけじゃ。なのに座敷牢行きになるとは……。解せぬ……。

 

 まぁ、とにかく。会合(ぱあてぃ)じゃったり、座敷牢に放り込まれて説教されたり。そんな事をしている内に夜も更けて、今夜はそろそろ寝ても良い時間となった。風呂にも入ったし、後は寝るだけじゃ。もっとも、今晩は朝まで寝れないじゃろう。じゃって、風呂場では結構せくはらされたからの。体を洗うと称して、体の隅々までしつこく触ってくるのは如何なものか。お陰で、何と言うか……その気になってしまったではないか。被身子の阿呆。へんたいっ。たわけ!

 

「ふふっ。今日は、どうでした? ちゃんと、楽しめました?」

「……」

 

 英雄(ひいろお)科の寮にある、久しぶりの自室。同じ布団の中で、儂の寝間着をはだけさせながら被身子が笑った。ので、睨んでおく。今日は調子に乗り過ぎじゃ、まったく。自制が何一つ出来とらんと言うか、暴走しっぱなしと言うか。お陰で、中々に騒々しかった。こうも大変じゃったのは、……十二になった夜以来かもしれん。あの時はあの時で大変じゃった。真夜中に被身子が突撃してきて、盛大に辱められた。……まぁそれも、今となっては幸せな思い出の一つとして数えて良い。

 

 それに、今日も。実のところ、久しぶりにくらすめえと達の顔を見れて気が抜けた。自分でも思っているより、あの騒々しい感じが嫌いではないようじゃ。とは言え。とは言え、じゃ。今日は色々と強引過ぎたのではないか? 楽しくないと言えば嘘じゃけど、気疲れしてしまったのも事実じゃ。

 なのにこやつと来たら。まだ色々とするつもりじゃ。現に今、儂が着ている寝間着の中に手を差し込んで来ているし。やる気満々じゃ。すっかり楽しそうに、嬉しそうに笑いおって。へんたい。

 

「……ヨリくん。楽しくなかった、ですか……?」

「……まぁ。たまには騒々しいのも悪くないが」

「幸せでした?」

「……まぁ、の」

「んふふ。良かったぁ」

 

 抱き締められた。結構強く。余計に寝間着がはだけたような気がするが、もう気にしないことにしておく。どうせ、後で全部脱がされてしまうんじゃろうし。こうして至近距離で見詰め合っていると、安心し切った笑みの向こう側に、物足りなさが隠れている。さっきから、儂の首に目が行っておるし。

 

「ヨリくん、やっぱり寂しがりですよねぇ。今日はみんなに甘えちゃって……」

「いや、甘えとらん甘えとらん」

 

 そんなつもりは、これっぽっちも無い。どちらかと言うと、くらすめえと達と被身子に振り回されていただけじゃ。儂がいつ、くらすめえと達に甘えたんじゃ。まったく、いい加減な事ばかり言いおって。何を考えているのかまるで分からん。いや、儂を欲しがってることは分かるが。

 

「知ってるんですよ? みんなと会えて、嬉しそうにしてたの。二人でお説教されてた時とか、特に……」

 

 いや、おい。それではまるで、儂が叱られて喜ぶ変態ではないか。そんな趣味はない。まぁでも、久しぶりにくらすめえと達に会えたことは……存外悪くなかった。顔を合わせる機会は、緑谷以外は皆無じゃったからの。連絡も特に取っていない。そもそも、意見の相違で出来た溝は埋まってはいないしな。お互いが妥協してるだけじゃ。

 

「そういうの、もっと見せなきゃ駄目なのです。言葉にしないと、伝わらないんですよ?」

 

 じっと、見詰められる。から、見詰め返す。こうして、大事に扱われることは……存外嬉しい。幸せなことじゃと思う。これも言葉にして行かねばならんのか……。気恥ずかしい限りじゃ。でも、まぁ……。

 

 それを、被身子が望むなら。儂はそうするべきじゃろう。こういうところ、なんじゃよなぁ……。こやつがこうなってしまった原因は。でもでもじゃって。甘やかしたいんじゃ。幸せで居て欲しいから、もう傷付いて欲しくないから。……じゃから。

 

「幸せじゃよ。……お主が、居てくれて。この時代に、産まれ直して」

「んふふっ。はいっ! 私も、円花ちゃんが居てくれて幸せなのです。とってもとっても、幸せなの!」

 

 こそばゆい。気恥ずかしい。顔が熱くなってきた。愛してるの次は、幸せ、……か。まったく、こやつは幾度儂を辱めれば気が済むんじゃ? まさか一生こうするつもり、じゃとか?

 

 ……有り得ん。とは言えないところが、恐ろしいのぅ。被身子がその気になってしまったら、結局儂は言う通りにしてしまうからの。

 

 照れ臭くて笑っていると、余計に抱き締められた。そのまま唇も奪われた挙げ句が、股に足まで差し込んで来た。あぁ、もう。これは始まるの。始まってしまうの。じゃから、儂も被身子の背中に腕を回す。でも、右腕では被身子を抱き締めない。しつこいぐらいの接吻(きす)の途中で、人差し指の先で少し強引に被身子の唇を撫でる。そしたら、指を口に咥えられた。から、血を出す。こうするとな、被身子が酷く興奮するんじゃ。で、儂は目茶苦茶にされてしまうわけじゃけど……。

 

 今はその、それが望ましい。

 

 こうして、何がとは言わんけど始まるわけじゃ。何がとは、言わんけども。

 

 

 

 

 

 







次回、ヒーロービルボードチャートJP

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