待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
結局。えんでゔぁの顔面を、本気で殴り飛ばすことは出来なかった。これから
殴れなかった不満をそのままに、儂はおおるまいとの案内で会場に連れ込まれた。ほおくすの招待状に記載してあったのは、壇上前にある最前列の席。周囲に居るのは、主に
「こんにちは。廻道円花さん。今日はお疲れかしら?」
知らん声の誰かが、話し掛けてきた。仕方ないから瞼を少し開いて、右を見る。儂の隣に、誰とも分からん女性が座っておるの。年齢は、若いとは言えん。撮影機器の類は持っていないし、こやつもほおくすに招待でもされたのか? いや、まぁ。それはどうでも良いの。
で? こやつは、いったい儂に何の用じゃ?
「誰じゃ貴様は」
「公安委員会会長よ。火伊那がお世話になってるようね」
「……」
公安委員会会長? ということは、こやつが公安の頭か。総監部の最上層に位置する人間と言っても、過言では無さそうじゃ。何でこんな場所にお偉いさんが居るんじゃか。そろそろ行われようとしている、番付発表の為か?
確か……、公安が番付を決めてるんじゃったか? じゃとしたらまぁ、ここに居るのは納得じゃ。儂に話し掛けてきた意味は、よく分からんが。
「で? 何の用じゃ?」
「そうね。少し手短にお話を。
貴女、オールマイトの後継を名乗るつもりはないかしら? 貴女の実績なら、後継を名乗っても問題無いでしょう。
「は……?」
いや、じゃから。おおるまいとの後継は、儂ではない。それは緑谷じゃ。何より儂は、
何で儂を、おおるまいとの後継に仕立て上げようとする? いったい何を考えて……。って、あぁ。そうか。おおるまいとの弱体化が晒されてしまった現在、日々犯罪者の増加は進んでいる。それを少しでも抑止、或いは牽制する為に、新たなる平和の象徴を立てたいと。
まぁ、確かに。おおるまいとの後継が現れたとなれば、もしかすると犯罪者……悪党への牽制になるかもしれん。なるかもしれんが、ううむ……。じゃからってなぁ……。あの筋肉阿呆の後継を儂が名乗る理由は……。
無い。事も無い……か?
少なくとも、緑谷の存在を隠し通すことが出来る。世間は勝手に誤認していることじゃし、それに乗じて儂を隠れ蓑にしてしまえば長い事隠し通せるじゃろう。恐らくは、あやつが
とは言え、緑谷の面倒を見て良いのは緑谷が大人になるまでじゃ。成人するまでは、儂の保護下に置いて良い。成人するまでじゃからな? 成人しても守り通すのは、たった一人と決めている。そこに緑谷が加わるようなことは、絶対に無い。
……はぁ。また、面倒なことになりそうじゃのぅ。
「……その話、乗ってやろう。ただ、おおるまいとに許可を取れ。あやつが駄目と言うなら、駄目じゃ」
もっとも。わん・ふぉお・おおる……を、隠し続けるのなら。あやつとて、手段を選んでいる場合では無いじゃろう。あの背広男、或いはそれに準ずる悪党がまだ居るというのなら、警戒するに越したことは無い。死柄木の奴に、全てを話している可能性も有るじゃろうし。
「……断ってくれても、良かったのよ?」
「いずれこうなる状況じゃったのは、残念ながら事実なんじゃ。場合によっては、儂から提案してたじゃろうしな……」
あぁ、やじゃやじゃ。まっこと、気が進まん。が。子供を守る為ならば、儂はそれこそ何でもする。子供の命が最優先。同じぐらいに、被身子も最優先じゃけども。
後でこの件を被身子に話すのは、気が重いのぅ。心配させてしまうし、何より拗ねられてしまう。おおるまいとの後継ぎを名乗り出してしまえば、厄介事が増えるのは確実じゃろう。儂の見てくれは、まだ子供。社会的に学生でしかない。
……じゃから、ほら。平和の象徴の後継を名乗り出したら、悪党が儂を狙って何か悪巧みをする可能性も有る。それに、大して興味も無い
「……そう……。なら、公安は貴女を全面的にバックアップします」
「勝手にしろ。どうせ、現場じゃ役に立たんじゃろうけどな」
儂に話し掛けるこやつが、どんな表情をしているかは知らん。知らんが、声を聞けば何を考えているのかは何となく分かる。自分から提案しておいて、儂の答えを聞くなり憂いに沈むな。そんな声を出すぐらいなら、最初から提案するな。たわけ。
まぁ、良い。こやつとの話は終わりじゃ。番付に、興味は無いからのぅ。じゃから、残りの時間は寝てしまっても良いんじゃけど……。
気になる事が、有るんじゃよなぁ。
……仕方ない。もう少しばかり起きているとしよう。何であの翼男が儂を招待したのかも分からぬままじゃし、何より……。
おおるまいとの番付が何処に位置しているのか。それは知っておきたい。えんでゔぁの言葉が事実ならば。今日、平和の象徴は色褪せることになる。
◆
番付の発表が行われていく。通常、
……それはそれとして。壇上には、鯱頭の姿が無い。立っているのは、九人の
なんて、考えていたら。最後の三人が紹介され始めた。
『No.3! マイペースに! しかし猛々しく! とは言え、流石に平和の象徴には一歩及ばず!!
ウイングヒーロー、ホークス!!』
……ほぅ? 三番目? 貴様、三番目なのか。ほおくす。となると、その実力はそれ相応の筈じゃ。えんでゔぁと鯱頭の次は、翼男と手合わせさせてもらうとしよう。きっと楽しめる筈じゃ。そうでなくては、困る。
『……衝撃の、No.2! 神野の悪夢を終わらせた、我らがスーパーヒーロー! しかし、今回は首位転落……!! ナチュラルボーンヒーロー、オールマイト!!』
二位。そうか……。
『そして!! 永劫の二位から今日、正真正銘No.1の座へ―――!!
長かった!! フレイムヒーロー、エンデヴァー!!』
……で。顔面燃え男が、一位じゃ。残念ながら、一位のようじゃ。儂としては、どの面下げて
この男が轟にした事を、儂は許さん。仮に轟が許したって、世界が許したって、儂だけは許さないままでいる。あぁ、あの燃え面を見ていたら殴り飛ばしたくなって来た。今から、壇上に上がってぶん殴るか……? そのくらいなら別に、問題無いのでは?
一瞬。壇上のえんでゔぁと、目が合った。が、直ぐに目を逸らされた。……あ゛? 何か言いたいなら言えば良いじゃろ。本気で殴り飛ばすぞ、おい。
『それでは。一人ずつコメントをどうぞ!』
視界の隅で、司会者が壇上の
憎悪が溢れそうじゃ。抑えておけぬ。この男は、えんでゔぁは……。決して、決して許してはならない。何故、体育祭の時に殴り飛ばさなかったのか。それを悔やむ。
待て。落ち着け。流石に人前で殴り込めば、それは大問題となってしまう。周囲からどう思われようが知ったことではないが、下手に動けば被身子や両親に迷惑が……。
……。……、……。…………。
いや。無理じゃ。駄目じゃ駄目じゃ。何で儂が我慢しなければならん? 後のことは、やってしまってから考えれば良い。よし、そうと決まれば……。
「あー、その前に。今日この場で紹介したい人が居るんスよね。ちょっと、壇上に上がって貰いましょうか」
ほおくすと、目が合った。何か、嫌な予感がする。おい、儂に向かって羽根を飛ばすな。人の体を持ち運ぼうとするな。
くそっ。抵抗する間も無く、壇上に運び上げられてしまった。よし、逃げる。地に足が付いた瞬間、儂は逃げるぞ! ってこら!! 浮かせたままにするな!!
「ご存知の方も居ると思いますが、世間で噂になってる平和の象徴の後継者。ヒーロー名は……頼皆です。親しみ込めて、ブラッディと呼んでやってください」
おい……! おいっ!! 勝手に紹介するな! あと、ぶらっでぃなどと言う呼び名を広めようとするんじゃない!!
ブラッディ、全国デビューです。画面の向こうの緑谷くんの心中が目茶苦茶になっていることでしょう。次回はそのフォロー回ですかね……
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ