待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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ハイエンド。不服

 

 

 

 

 

「っと」

 

 伸縮し、縦横無尽に動き回る両腕を避け続ける。跳び、身を翻し、時には拳で軌道を逸らす。ほおくすの羽根に引っ張られたお陰で、今戦場となっているのは大通りじゃ。周囲に民間人が居ないことは幸いじゃった。居たら、何人死んだか分からん。

 

 迫る右腕を、屈んで避ける。速さも力も凄まじいものじゃが、避けれない程ではない。縦に振り下ろされた左腕を半歩動く事で避け、後に足場代わりにして脳無へ向かって駆ける。あの脳みそは、相変わらず空を飛んでいる。何やら背中や肩から何かを噴出することで、空を飛び回っているようじゃ。

 腕の上を駆けながら血を飛ばしてみるが、脳無の胴体から噴出する水で迎撃される。血液の体外操作については、対策されてしまっている。

 

 ……ちっ。厄介じゃの。この脳無、中々どうして面倒じゃ。

 

「どっ、こいせぇ!!」

 

 もう一度、全力で顔面を殴る! が、今度はしっかりと右腕で防がれた。手応えはあるが、効いたとは思えん。次の瞬間、左腕が雑に振るわれた。それを大きく後ろに跳ぶ事で避けたが、足場が無くなってしまった。地面に着地するその時まで、儂はろくに身動きが取れん。

 じゃがまぁ、問題はない。何せ、勝手に儂を運ぼうとする輩が側に居るからの。出来れば脳無と二人きりで楽しみたいんじゃけども、どうもあの翼男と顔面燃え男はこの呪い合いに横槍を入れてくる。

 

 今じゃって、ほら。また巫女装束(こすちゅうむ)に赤い羽根が引っ掛けられて、地面に向かって高速で運ばれる。範囲の広い炎が、脳無の頭上から降り注ぐ。

 

 くそっ。つまらん、つまらんつまらん! 儂は一人で戦いたいんじゃっ。何でえんでゔぁもほおくすも、勝手に加勢してくるんじゃ! 貴様等、勝負の邪魔をするのは無粋じゃと思わんのか!?

 

「邪魔、ダ」

 

 脳無が、真上に上昇していく。その先には、炎を噴出することで空に留まっているえんでゔぁがおる。ほおくすが脳無に向かって羽根を幾つか飛ばしているが、足止めにはなっとらん。それどころか、まるで無視されているの。

 

「お前、じゃなイ」

「ちっ!」

 

 真下より突進してくる脳無を、えんでゔぁは何とか避けた。が、すれ違い様に体を掴まれた。体に巻き付いた腕を焼こうと炎を噴出しとるが、まるで駄目じゃ。えんでゔぁの攻撃で出来る傷は、せいぜいが大きな火傷。呪力強化と治癒、もしくは再生の個性を併用している脳無にとっては、大した怪我に入らんじゃろう。

 両手を叩き合わせると、振り回されていたえんでゔぁが儂に向かって、投げ飛ばされた。ので、肉弾とされた大男を跳び退いて避ける。直後、大きな鈍い音がした。

 

 えんでゔぁは、十二分の速度で叩き付けられた。無事を確認してやるつもりはない。そんなのは時間の無駄じゃ。英雄(ひいろお)なら、自力で立てっ!

 

「エンデヴァーさん! 無事!?」

「無事、だ……! 余計な心配より、動きに集中しろ!

 この脳無……狙いは、頼皆だ!」

「分かってます! 好き勝手には、やらせませんよ……!」

 

 あぁ、苛つく。苛々してしまう。脳無の狙いが分かってるのなら、横槍を入れるな。水を差すような真似をするな……!

 

 両手を叩き合わせる。すると、未だ空に留まっている脳無はその場から大きく動いた。百斂を始めると、噴出した水が儂に向かって飛んでくる。それを高速で動き回るほおくすの羽根が掻き消して、水流から水飛沫へと変える。空から多量の水滴が降って来て、突然雨に降られたかのようにさえ思えてくる。

 やはり、こうなってしまうと体外での血液操作は役に立たぬ。今後、遠距離での攻撃は全て水で溶かされる筈じゃ。となると後は、単純な呪力操作と体内操作で立ち回るしかなかろう。それに、領域も使えん。使ったとしても、血液が水で駄目にさせられてしまう。……ならば。

 

 赫鱗躍動と呪力操作。この二つを主に、戦うとしよう。問題は、儂が空を飛べぬということだけじゃ。まずはどうにかして、あの脳無を地上に引き摺り落とさねばの!

 

「頼皆、聞け。作戦を」

「要らん! 邪魔はするなよ!」

「おい!」

 

 話など、聞いてられるかっ。要はあの脳みそを、倒せば良いだけの話じゃろ!? 安心しろ、何も殺しはしない! あやつが動けなくなるまで、殴り続けるだけじゃっ。

 穿血を放つ。が、大きく避けられた。追うように軌道を変えるが、追い付かん。赤縛と苅祓を同時に飛ばしてみるものの、そちらは噴出する水に溶かされる。

 伸縮する腕が、空から降ってくる。それを跳び退いて避けると、地面に突き刺さった。だけではない。伸縮する腕を元に戻しつつ、脳無が儂に向かってくる。それを避けるのは別に難しくはないが、避け続けていては埒が明かんっ。

 

 じゃからっ。

 

「よし。……来い!」

 

 足を止め、両腕を広げる。貴様を、受け止めてやろう……!

 

「ばっ、何して!?」

 

 脳無が、高速で迫る。避けはせん。真っ直ぐ頭から突っ込んでくる脳みそを、受け止めてやろう。話は、それからじゃ!

 

 巨体が迫る。ぎりぎりまで引き付けて、体の位置を僅かに動かす。そして、首に腕を回して脇と腕で締め付けるっ。

 

 轟音が聞こえ、凄まじい衝撃が体を走る。脳無の肩と、地面に挟まれ体が押し潰される。 

 

 その直後、儂の体は宙に浮いた。儂に首を締められたまま、脳無は飛び回る。どうやら、これは有効では無いらしい。こんな奴を締め落とせるとは思っていない。こうしたのは、単に密着する必要が有ったからじゃ。

 

「赤縛!」

 

 狙いは、背中と肩にある穴。ここから何かを噴出し、空を飛んでいることは知っている。まずはその穴を、塞がせて貰おうか!

 

「げほ……っ」

 

 いかん。血を吐き出した。さっきの衝撃で、どこかの内臓が傷んだか? いや、良い。気にする必要は無い。こんな程度で、人は死んだりしないからのっ。

 背面の穴を塞いだからか、脳無の飛行性能が著しく落ちた。もう上昇はしていない。代わりに始まったのは、落下じゃ。

 

「無茶な真似を……!」

 

 あ゛? 喧しい……! 貴様は黙って見てれば良いんじゃ、顔面燃え男!

 

「ぷえっ」

 

 ぬおっ!? 水を全身から噴き出すな! こんなので振り解かれはしないが、穴に詰めていた血が流されてしまった。脳無は直ぐ飛行性能を取り戻し、再び加速する。何処へ向かっているかは知らん。知らんが、何をしようと儂が離れると思うなよ……!

 

 そう思った、直後。また背中に大きな衝撃が走った。どうやら、建物か何かに突っ込んだらしいの。体の内から変な音がした気がするが、関係無い。呪力を纏った上で、反転術式(はんてん)で傷を治す。二度、三度と衝撃が続き、何にもぶつからなくなる。その時、気付いた。どうやら儂に首を締められたまま、建物をぶち破ったようじゃ。お陰で、背中が痛む。

 

 もう一度、血を噴出口に向かって飛ばす。が、それは肉体から噴出した水で即座に溶かされてしまう。くそっ、いつまで飛ぶつもりじゃこやつ! そろそろいい加減にしておけよ……!?

 

「しつ、こイ」

「どっちがじゃ!」

 

 また背中に走る衝撃で、視界が揺れる。が、こんな程度ではまだまだ離してやらん。じゃけどこのまま飛び回っているのは、儂の望むところではない。じゃから思いっきり、両腕に力を込める! 骨をへし折ってやりたいところじゃが、殺すのは厳禁じゃ。まったく、面倒この上ない……!

 

「がッ」

 

 全力で首を締め上げると、一瞬ではあるが脳無の動きが止まる。よし、今じゃ……!

 

 動きが止まった瞬間。血液を噴射口に詰め直し、硬化させる。だけではない。苅祓を放ち、肉体を刻む。手応えは有った。しかし、もう首の治癒を終えたのじゃろう。脳無は動きを取り戻し、また水を噴出する。おいっ、いい加減にしろ……! そろそろ寒いんじゃ、たわけっ。冬に水浸しにされる儂の身になってみろ!

 

「無茶苦茶し過ぎ! お嫁さん泣かせても良いの!?」

 

 いつの間にやら、翼男が脳無の頭上を取っておる。振りかぶっているのは……羽根か? 羽根じゃの。やたらと長い。それを、勢い良く脳無の背中に叩き付けた。が、表皮に擦り傷が出来ただけじゃ。何じゃ貴様、随分と情けないのぅ……!

 しかし、速度だけは立派なものじゃ。これだけ高速移動している脳無に追い付けるんじゃからな。えんでゔぁは……、こちらに向かっては居るがまだ遠い。それはそれで情け無い。

 

 あとなぁ、ほおくす! 言うに事欠いて儂が被身子を泣かせるじゃと……!? そんな真似、するわけなかろうっ。儂は必ず、被身子の居る所に生きて帰ると決めとるんじゃっ!

 

 あとっ。いつまで首を締めさせるつもりじゃ脳みそ!! 未だ足掻きおって……!!

 

「ぬおっ!?」

 

 また、水が噴出される。気でも触れたかのように、目茶苦茶に飛び回る。いや、暴れていると言った方が確かか。そろそろ息が苦しくなってきたのか、それとも失神の直前なのか。どちらにせよ、締める力を緩めてやるつもりはない。貴様が大人しくなるまで、締め続けてやろう……!

 

「殺すなよ頼皆! 生け捕――、情――を―――!!」

 

 まだ追い付かないままのえんでゔぁが、何か吠えておる。風の音が喧し過ぎて、途中からまるで聞こえん。が、ひとつ確かに聞こえた。殺すなじゃと? そんな事、分かっておるわ!!

 

「ガ、ぁあアあ!!」

 

 くそっ、まだ暴れるのか。何かが背後に近付いている気がする。いや、儂等が何かに近づいているのか? どちらにせよ、壁にぶつけられた程度では儂は振り解けんぞっ。

 また、背中に何かがぶつかった。今度は、何か固くて鋭利な物が。それが何であるかは分からない。巫女装束(こすちゅうむ)が頑丈に作られていなければ、或いは体を貫かれていたじゃろう。いちいち、何がぶつかったかを確認するつもりはない。そんな暇が有るなら、一秒でも長くこの首を……!

 

 ぬおっ!? い、いかんっ。とうとう振り解かれた。水で滑ったか……!? お陰で体は空中に投げ出され、落下を始める。だけならまだしも、脳みそが儂を追撃しようと迫っている。

 

 ちっ。仕方ない。良いじゃろう、受けてやるっ。

 

 振り被られた拳が迫る。回避は出来ん。防御も無理じゃ。何せ、蹴る地面が空には無い。

 

「ヨリミナ!!」

「うげっ!?」

 

 脳無の拳が儂に届くよりも早く。ほおくすが儂の脇腹に突っ込んで来た。き、貴様……っ。勝手に助けるのは良いが、もう少し助け方というものをじゃな……っ!? ごふっ。いかん、また口から血を吐いた。

 

「げほっ! き、貴様っ。何するんじゃっ!?」

「今のは割って入らなきゃ危なかったでしょ!?」

 

 くそっ。不覚じゃ不覚っ。幾ら空中戦では分が悪いとは言え、こんな奴に助けられてしまうなど……!

 

「……ちっ。すまん、助かった」

「どういたしまして!」

 

 ひとまず、ほおくすに運ばれている内に反転術式(はんてん)で傷を治し血液を補充する。儂の腕から逃れた脳無は再び高く飛び上がり、しかし止まることなく再び儂の方へと向かって来た。

 それよりも早く、ほおくすが儂を地面に降ろす。着地と同時、その場から跳び退くと道路が砕かれた。脳無が、高速で突撃してきたからじゃ。

 

「おい、えんでゔぁ! これを殺さずに済ませるのか!?」

「これ以上被害が広まるのなら、最悪殺すしかない!」

 

 被害? あぁ、確かに酷いものじゃ。周囲に目を向けてみれば、幾つかの建物が大きく砕けている。脳無が儂を振り解こうと、あちこちにぶつかったからの。人的被害が出ていないように見えるのは、ほおくすが先に助けたからか……?

 なんにせよ。悠長に呪い合っている暇は無さそうじゃ。儂としても、周囲を荒れ地に変えたいわけではない。いや、この楽しい時間が続くのであれば周囲など気にする余裕など無いんじゃがな!

 

「お前、強イ。強、つよ、つよツよツヨ―――!!」

「……あぁ、そうじゃ。儂は誰よりも強いぞ、脳みそ!」

 

 両手を叩き合わせる。そしたらまた、脳無はその場から大きく飛び退いた。ので、飛び退いた先に狙いを定める。すると、今度は水をばら撒きながら縦横無尽に飛び回り始めた。狙いを絞らせるつもりは一切無いようじゃ。そこまでして、穿血を受けたくないようじゃなっ?

 

 じゃけどな、貴様。儂にばかり集中している場合ではない。まっこと不服じゃが、そこの二人は儂の邪魔ばかりする不躾な輩じゃ。あぁ、つまらん。つまらん、つまらんっ! 儂は! 貴様と! 楽しみたいのに……!!

 

「いい加減、閉じていろ!!」

 

 遅れてここまで来たえんでゔぁが、脳無の背中に取り付いた。そして、激しい炎を噴出する。狙いは恐らく、背中の噴出口じゃろう。

 

「邪、マ!!」

 

 背中に、脳無の気が取られた。あんな奴に意識と呼べるものが有るのかは分からんが、とにかく一瞬。儂から目を逸らした。ちっ、このたわけが……! つまらん真似をしおって!

 

 

「……穿血」

 

 

 今一度、穿血を放つ。そして、今度こそ脳無の体を貫いた。

 

 

 

 

 

 










三人称による補完は要りますか?

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