待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「まァ取り敢えず。初めましてかな? エンデヴァー」
何せ今は、えんでゔぁが動けん。傷だらけの満身創痍で、それはほおくすも同じじゃろう。別にえんでゔぁのような怪我をしているわけでは無いんじゃけども、翼の数が明らかに減っている。何故かは知らんが、まぁだいたい想像はつく。えんでゔぁの背中にあった炎の翼が原因じゃろう。つまりじゃ、えんでゔぁもほおくすも戦力としてはまるで役に立たん。今この場で、十分に戦えるのは儂だけじゃ。
そういう訳で。ここからは儂が一人で戦うしかあるまい。それは望ましい事じゃから、文句は無い。むしろ喜ばしいぐらいじゃ。
脳無との呪い合いは、邪魔されてばかりじゃったからのぅ……! 今ならば、誰に邪魔されることも無いじゃろう。そうであってくれ。そうでなければ、困るっ。
「おいおい。いきなりやる気かよ、廻道円花」
「そうなると分かった上で、姿を見せたんじゃろ?」
「まぁ、そうだけどよ!」
荼毘が両手を振るう。その瞬間、周囲が青い炎に包まれた。おい、貴様も炎かっ。熱いんじゃたわけ! 何で
呪力を纏い、
「話す気は、無いってか!」
「無い!!」
呪力強化と赫鱗躍動で引き上げた身体能力で、本気で踏み込む。一足で距離を潰す為に飛ぶと、視界が青い炎で埋め尽くされた。から、両腕を交差させて盾とする。肉が焼ける、痛みが走る。が、それだけじゃ!
発せられた炎を突き破る形になりながら、距離を潰す。握った拳を突き出すと同時、荼毘が更に炎を繰り出した。熱が凄まじいが、そんな程度では儂は止まらんぞ悪党っ。
「ちっ。イカれてな……! 普通、火に突っ込まねえだろ!」
「やかま、しいっ!」
思いっきり放った左拳は、荼毘の脇腹に激突した。嫌な音が、拳を伝って聞こえて来た。荼毘の表情に、苦悶が浮かぶ。どうやら、肋骨がへし折れたようじゃの。その代わりに儂は肌を焼かれてしまったが、別に問題は無い。儂の
そして荼毘とやら! さっき募った不満を、貴様で晴らさせて貰う!!
「せぇ、のおっ!」
左拳の次は、右拳じゃっ。その火傷面を、思いっきりぶん殴ってくれる!
「っと、勘弁してくれよ。俺なんかが敵うわけないだろ。特級呪術師と、トップヒーロー二人によ」
……ちっ。避けられた。思いっきり振り抜いたのに、寸でのところで避けおったわ。それなりに動けるようじゃの、こやつ。何処か見覚えがある動きをしおって。戦うのは今回が初めての筈じゃが、……はて?
まぁ良い。考えるのは後じゃ。そんな暇があるなら、一発でも多くこの悪党を殴らなければ。お喋りに付き合ってやる理由は、儂には無い。それよりも、青い炎が厄介じゃ。呪力を纏っていても、肉が焼かれる。単純な威力で言えば、こやつの個性は相当強い。まだ一つ目程では無いが、場合によっては一つ目に匹敵するかもしれん。
焼けた肌は、後で治す。それよりも今は、こやつをひっ捕らえなければなっ。
両手を叩き合わせる。やはり、ここから始めよう。いつも通りに、穿血を以て対峙する敵の力量を測るとする!
「氏子さん」
……は? おい。おいっ、貴様……! 口から得体の知れない液体を吐くな! それには見覚えがあるっ。何なら経験済みじゃっ。それはは、転移するやつじゃろ!? さては逃げる気じゃな!? 逃がすか、阿呆!!
「また今度なNO.1ヒーローさんよ。また話せる機会がくるだろう。その時まで……
せいぜい頑張れ死ぬんじゃねえぞ! 轟炎司!!」
何故かえんでゔぁを煽り始めた荼毘に向かって、穿血を放つ。が、それよりも早く荼毘の姿は儂の視界から消えた。得体の知れぬ液体に、呑み込まれるような形で。
……くそっ! 逃げられた……! 何なんじゃいったいっ。
儂に! 憂さ晴らしを! させんか!! 悪党め!!!
◆
脳無と戦い、荼毘に逃げられた後。えんでゔぁは入院した。ほおくすは、羽根の殆どが燃えて無くなった。儂は怪我ひとつ無いんじゃけど、それでも念の為にということで病院まで連れて行かれてしまった。その後、精密検査とやらを受けることになってしまっての。儂としては、さっさと雄英に帰りたい。被身子に、直ぐに帰ると言ってしまったんじゃ。悠長にしている場合ではない。じゃからおい、医者。さっさと精密検査の結果を出せ。何で、二時間も三時間も待たされなければならないんじゃ。まったく……!
「あれだけ怪我をしてたのに傷一つ残ってないのは、反転術式ってやつ?」
精密検査の為に着せられた患者衣のままで病院の受付近くにある長椅子に座っていると、ほおくすに話し掛けられた。ちなみに、えんでゔぁは現在手術中じゃ。脳無に負わされた傷がかなり深く、放っておけば死んでいたかもしれなかったらしい。儂も
ところで、ほおくす。周りにはそれなりに人が居るのに、小声とは言え反転術式について聞こうとするんじゃない。呪術は秘匿せねばならんのじゃぞ。その辺り、分かっているのか?
まぁ良いか、別に。呪術が公になったとして、何が困るわけでもないからの。
「まぁの」
「それ、人に施すことは出来たり?」
「しない。今後の課題ではあるがな」
まだ儂は、反転術式を体外出力出来ん。それは前世からずっとそうじゃ。どれだけ試そうが、一度も出来ぬ。恐らくその手の才能が無いのじゃろう。ただ、
あ、そうじゃ。呪術師といえば、今日は気になる事が幾つか有った。
まず一つ。荼毘の動きじゃ。儂の拳を避ける際の動きに、どこか見覚えがあった気がする。何処で見たんじゃっけ? 思い出せん。
もう一つ。何故あやつは、儂が特級呪術師であることを知っている? その立ち位置になったのは最近の事であり、知っているのは総監部と呪術師。あと、一部の雄英教師じゃ。なのに
まぁ、良いか。儂が特級呪術師であることが知れ渡ったとして、何が変わるわけでもあるまい。
ううむ……。あれこれと考えるのは面倒じゃの。荼毘の動きについてはいずれ思い出すじゃろうから気にしないでおくとして、情報が漏れてる事は総監部に伝えておけば良いか。そこにほおくすが突っ立ってるんじゃからの。
「のぅ、ほおくす。どうやら悪党共が、儂が特級呪術師である事を知ってるんじゃけど?」
「それは俺も気になってた。何処かで情報が漏れた、とは考え難いから……オールフォさんの口から伝えられてたとか? 向こうは情報を掻っ攫って行ったからね。君を勝手に特級呼ばわりしてるだけかもしれない」
「……そうじゃの」
ほおくすが言う線も、なくはないじゃろう。向こうは呪術界に関する情報を多く持っている。あの背広男が全てを
まったく。これは早急に、炎相手の対策をしなければな。荼毘も炎を操るわけじゃし。それに、今回の脳無。あれは明らかに、儂の対策として作り出されたものじゃ。脳無の死体自体は、荼毘ごと転移させられていた。儂について更なる情報を得られていてもおかしくはない。
別に良いがな。対策されるのなら、こちらも対策し返すだけじゃ。えんでゔぁが回復したら、さっそく手合わせしてもらおう。
もっと、強くならねば。あの脳無ぐらい、儂一人で倒せる程度に。赤血操術の弱点を、克服しなければ。向こうは、わざわざ待ってはくれないじゃろう。それに英雄の呪霊の事もある。
……鍛錬の時間を増やそう。呪霊退治の任務は……おおるまいとにでも押し付けるとするか。とにかく、今の儂は時間が欲しい。今のままでは、いずれ悪党に追いつめられてしまう。
「ほおくす。早急に、ひいろお達と手合わせしたい。手配してくれ」
「……分かった。ただし、エンデヴァーさんと手合わせするのは彼が万全になってから」
「分かっておる」
えんでゔぁが万全に戻るまで、どの程度の時間が掛かることやら。結構な大怪我じゃったからの。個性があるこの時代、傷を癒やすのは早いとしても体力や気力を戻すのには時間が必要じゃ。早いところ回復してくれ。そして儂に呪わせろ。まったく、いつまで待ってたら良いんじゃか。
「廻道円花さーん。診察室へどうぞー」
看護師に呼ばれた。さて、それでは精密検査とやらの結果を聞きに行って……雄英に帰るとするかの。急いで帰れば、夜遅くには寮に着くじゃろうからな。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ