待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
精密検査検査、とやらは最終的に何の問題も無い。ということになった。しかし、人一倍怪我には気を付けてくれと通告された。何故かと言うと、それは儂の術式が関係しておる。
赤血操術者は、術式効果を底上げする為に血液が凝固しないように操作しておるんじゃ。その結果、何が起こるかと言うと血液が固まらない。つまり儂は、切り傷が出来ると出血が止まらん。そして、内出血も起こり易く治りにくいとか何とか。これについては特に問題無い。私生活では常に
なので。医者の心配はまるで的外れなんじゃ。血液以外については、物凄く健康だと言われた。まぁ、未だ乳歯のままであることに驚かれはしたがの。今更乳歯が抜けるまで
無意識でやってる事を急に止めろと言われても、止められないじゃろ? 呼吸が止められないのと同じようなものじゃ。儂が反転術式を回さない時は、術式を順転している間。それと、寝てる時と被身子に抱かれている時と……。あと、生理の時じゃの。もうそろそろ次の生理が来るのか……。えぇ……? やじゃあ……。
まぁ、とにかく。精密検査は異常無し。なんの問題も無かった。ので、雄英に戻ったわけじゃ。寮に戻るなり、物凄く心配そうな顔をした被身子に
なので。とにかく被身子を落ち着かせることに儂は時間を費やした。最後はやはりと言うか、案の定と言うか、思いっきり求められてしまった。相当遅い時間まで応えたのは儂じゃけど。
それで、じゃ。翌朝。
「いっきし!」
目が覚めたら、どうにも体の調子が変じゃ。盛大にくしゃみが出た。ついでに悪寒がして、どうにも呆けっとしてしまう。体が酷く怠い。あぁ、これ……懐かしいの。いやはや、随分と久しぶりの感覚じゃ。こうなったのは、前世以来何じゃけど?
流石に真冬に裸で寝惚けるのは良くないのぅ。幾ら布団を被って被身子と密着して寝ていたとはいえ、じゃ。面倒じゃけども、冬の間は事後に寝間着を着直すとしよう。
まさか、風邪を引いてしまうとはな……!
「円花ちゃん……?」
制服に着替え始めていた被身子が、儂の方を見た。怪訝そうな顔をしている。これはまた心配させてしまうのぅ。どうするべきか。隠すか……? いや、取り敢えず
「……すびっ。何じゃ?」
……鼻声じゃ。随分と変な声を出してしまった自覚がある。じゃって鼻水が……。ちり紙は何処じゃ? うえっ、息がし辛い。鼻詰まりは勘弁して欲しいのぅ。とにかく、
被身子が揺れながら近付いてくる。いや、揺れているのは儂の視界か。早いところ
「……明らかに風邪なのです。今日は一日休んでてください。七山さんには連絡しておくので」
「いや、平気じゃ。風邪なぞ直ぐに……」
「だーめーでーすーぅー! はい、直ぐ寝て! 今直ぐ大人しく寝てください!」
ぐえっ。押し倒された。布団を被せられた。横になると、少し気持ち悪さが収まったような、そうでないような。何で風邪など引いてしまったのか。気持ち悪さは次第に増しているような気がするし、何じゃか頭まで痛くなって来たような……。ぐぬぬ、どうしてこんな目に遭わなければならないんじゃ? 儂は風を引くような事など何もしておらんっ。
って、被身子? 何で制服を脱ぎ散らかしとるんじゃ。おい、素っ裸になって布団に潜り込んでくるな。風邪が移るかもしれないじゃろ……!
「ちゃんと体を暖かくして、今日は一日寝てましょう! ねっ!」
ねっ! では無い。分かったから、一日大人しく寝ているから、そんなにくっつくな。抱き締めるなとは言わんけど、力いっぱい
ううむ……。もう良いか。瞼を閉じてしまおう。もう一眠りして、とにかく体の回復に努めなければ。風邪を長引かせるわけにはいかんからの。
「後でお粥と、お薬を持ってくるのです。ちゃんと食べて眠って、今日はゆっくり寝てくださいねぇ」
「……んん。相分かった……」
「寝汗も拭いてあげます」
「それは自分で……」
「駄目です。今日はぁ、一日中お世話してあげますね♡」
……おい。なんで今、悪どい笑みを浮かべた? 貴様、いったい何を考えて……。いや、良いか。こんな調子では抵抗なぞ出来んし。そもそも風邪を引いてなくたって、その気になった被身子に抗うことなど出来んのじゃし。
とにかくじゃ。今は寝てしまおう。被身子が寝かし付けて来るし、この調子の悪さの中で起きていたいとも思わん。ひとまず、寝てしまおう。起きたら風邪など治っとるじゃろ。治っとる……よな?
◆
「はい、あーん♡」
「……もぐ……」
目が覚めると、水分補給と栄養補給をさせられた。
看護教諭の診察曰く、儂が風邪を引いた原因は主に過労じゃそうじゃ。体が疲れていた所に水を被ったり、急激な温度の変化に晒されたせいで体の抵抗力が落ちてどうたらこうたら。疲れていた自覚はまるで無いんじゃけども、りかばりいがぁるがそう言うなら、きっとそうなんじゃろう。知らんけど。
とにかく。今日一日大人しくしていれば風邪は長引かんらしい。ただ、体力を完全に回復させる為に三日は休めと釘を刺された。いや別に、風邪が治ったら動いても良いと思うんじゃけど。りかばりいがぁるの言っていた事は、無視してしまおう。風邪が治り次第、またいつも通りの日々をじゃな?
まったく、情けない。自らの体調の変化にも気付けないとはのぅ。疲れている気はしなかったんじゃけども、どうやら儂が思っているよりこの体は疲労していたらしい。
で。まぁ、それはそれとしてじゃ。ひとつ疑問に思うことがある。のぅ、被身子。その格好は何じゃ? 何で
「あと三日間、ちゃんと休まなきゃ駄目なのです」
「……ううむ。風邪が治れば動んむぐ……」
「駄 目 で す 。やっぱり、円花ちゃんはまだまだ働き過ぎなのです。ちゃんと休んでくださいっ」
叱られた。頬を膨らませた被身子に唇を摘まれて、喋れん。すっかり心配させてしまっている。そんな顔はして欲しくないのぅ。笑ってくれないと、困る。早く風邪を治して、体をしっかり休めなければ。でないと、また心配させてしまう。次は泣かれるかもしれん。それは避けたい。
しかし、しかしのぅ。三日……。三日も大人しくしてなければならんのか。それはそれで困る。三日も有ったら、色々とやれる事が有るというのに。よし、決めた。二度と風邪は引かん。何も出来なくなってしまうし、被身子に心配させてしまうのは忍びない。
「んぐ……。分かった、大人しくしとるから……」
「はい、そうしてください。トガも、色々我慢しますから」
「別に良いんじゃぞ? したければしても」
「……」
あ、いかん。被身子が拗ねた。思いっきり拗ねた。いきなり無表情になった上に、目を細めて儂を睨んでおる。大いに拗ねている。これはしばらくの間、許してくれんじゃろう。
「す、すまん。ちゃんと休むから、……その。色々我慢してくれ……?」
我慢など、させたくは無いんじゃけども。でも、今回の場合は我慢させないといかんらしい。ううむ……。風邪が治ったなら、たっぷり甘やかしてやらねば。
「はい。我慢します」
「すまん……」
「……」
「……」
仕方ない。あと三日、今日を含めたら四日は大人しくしておこうかの。その間、被身子には我慢してもらうとする。こやつが四日も我慢出来るかは、怪しいところじゃけど。じゃって、被身子じゃぞ? 昔っから我慢が出来ぬ質じゃ。したいと思ったら何でもしてしまうし、そもそも自制の二文字がこやつの中に存在しているのか大分怪しい。それにほら、儂もこやつを自制させては来なかったからのぅ。好き勝手させ続けてしまった結果、見事に出来上がったのは度を越えて自由奔放な悪女じゃ。いや、悪妻。恐妻かもしれん。
ごほん。まぁ何にせよ。被身子がこうなったのには儂にも責任があるわけで。
「……私、無茶させてました……?」
「は?」
「だって、明らかに過労だってリカバリーガールが。そんなつもりは無かったんですけど、やっぱりその……どこかで無茶させてたのかなって……。毎日するの、負担……ですよね……?」
「たわけ」
「ふぎゃっ」
いきなり反省した顔になったものじゃから、額を軽く小突いておいた。何を言い出すんじゃこやつは。今回の事は、儂の自己責任じゃろ。自分が思った以上に疲れていて、それに気付かずに水浸しになって。結果、風邪を引いてしまったというだけじゃ。そこで被身子が責任を感じる必要なんて無い。今後は、儂が気を付ければ良いだけの話じゃ。
……そうじゃのぅ。昼間はどうにか時間を作って、しっかり昼寝することにしよう。一時間……いや、二時間は何もしないで横になる時間を作る。そしたら、また過労になぞならんじゃろ。二度と風邪など引かんように、二度と過労になぞならんように。今後は気を付けていかねば。
「無茶などしとらんよ。お主との時間は大切じゃし、それ以外も大事な事じゃ。とは言え、今後は気を付けるからそんな顔をするな」
「んぐぐっ、ひょっ、まひょはひゃ」
「何言ってるのか分からんのぅ。がははは!」
口を開かせれば、らしくないことを言いそうじゃ。なので好き勝手に顔を弄り回して、喋らせぬ。口の両端を親指で押し上げて、多少不格好ではあるが表情を無理矢理笑顔にしてみる。ううむ、何か違う。目か? 目の形か? 目尻も指で動かしてみるか? ほれほれ、しょぼくれた顔などしとらんで、さっさと笑わんか。らしくない表情はしないでくれ。落ち着かんのじゃ。
「も、もぅ……っ。トガは心配してるんですっ。今は笑えませんよぉ……!」
手首を掴まれた上に、顔が遠ざけられた。何じゃつまらん。もっと触らせろ。空気の読めん奴め……。
「ほぅ? なら笑わせるしかないのぅ。どれ、くすぐってやろうか」
「ちょっ、ヨリく……っ!? くすぐっ、くすぐったいです……っ!!」
「ほれほれ、笑わんか被身子。儂は笑顔のお主が好きなんじゃけどなぁ」
「わひゃっ!? ちょっ、そこ……! あはっ、あはははっ!?」
お、とうとう笑ったな? そうじゃ。そうやって笑っていれば良い。お主の笑顔に勝るものは無いんじゃ。笑ってくれなければ、治るものも治らぬ。気がする。
「もぅ……っ! ちゃんと休んでくれなきゃヤですっ!!」
「ぐえっ」
押し倒されたわ。怒っているのか笑っているのかいまいち分からん顔が、直ぐ目の前にある。ので、首に腕を回してみる。ううむ、風邪を引いていなければ
「ちゃんとゆっくり休んでください。トガに出来ることなら、なーんでもしますから!」
……なんでも? ほう、そうか。何でもするんじゃな? 良いじゃろう。じゃったら、儂の気が済むまで言うことを聞いてもらうとしよう。では手始めにじゃな……。
「ん」
「ん……っ。もぅ、そういうのは風邪が治ってからにしましょうよぉ」
「良いじゃろ別に。ほれほれ、たまには甘えさせんか」
「……風邪、悪化しちゃいますよぉ。もぅ、円花ちゃんのえっち」
うるさい。誰がえっちじゃ。仕方ないじゃろ、
「風邪が治るまで、側に居てくれ」
「風邪が治っても、側に居ます!」
そんなこんなで。今日一日はあれやこれやと、被身子に世話して貰うことにした。食事も入浴も、まさか厠に行くことさえも付き添われるとはの。まぁでも、付きっきりでお世話されるのは存外悪くなかった。大事にされてるんだなって実感が急に湧き出て、むず痒くもあったんじゃけども。
被身子の献身的な看病のお陰か、翌朝には風邪が治った。それから三日間は体を労り、四日後からはいつも通りの日々を過ごし始めた。
……四日目の晩は、それはもう激しかったんじゃけどな。被身子のたわけ、阿呆。へんたいっ、えっち! まぁ、嬉しくなかったと言ったら大嘘になるんじゃけどなっ!!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ