待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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準備の時間。お茶子の場合

 

 

 

 

 

「えっ。来週末、A組の皆も那歩島に行くんですか……?」

 

 日曜日。朝から部屋で被身子と勉強をしていると、被身子の携帯電話(すまほ)が着信を告げた。相手は誰だか知らぬが、取り敢えず儂のくらすめえとの誰からしいの。相澤が言っていた何とかいうやつに、くらすめえと達は参加するようじゃ。まぁ英雄(ひいろお)科の面々は、強制参加みたいなものじゃろう。次世代の英雄(ひいろお)を育てる為に、公安が考えたことなんじゃから。

 

「……なるほど。ってことはぁ、緑谷くんとデートですね!」

『―――!? 違っ、―――!!』

 

 あ、麗日じゃこれ。被身子に電話をしたのは、麗日じゃ。今、少し麗日の悲鳴が電話越しに聞こえたからの。そうか、那歩島で逢瀬(でえと)するつもりなのか。奇遇じゃのう、儂等も逢瀬(でえと)じゃ。まぁ、ながんが同行することになってしまったから逢瀬(でえと)と言い切れんところはあるんじゃけども……。

 何とか、何とか被身子と二人きりになれんかのぅ? そしたらほら、逢瀬(でえと)と言い切れるわけで。

 

 ……後で、七山に交渉してみるとするか。何とかなると良いんじゃけども。

 

 まぁ、それはそれとして。次世代英雄(ひいろお)何とか言うやつの、日付はいつじゃ? いやそもそも、被身子は来れるのか? 相澤曰く、力業で被身子も同行出来るらしいが。儂だけ先に那歩島に行くのは違うし、すんなり同行出来るのならそれに越したことはない。ううむ……力業とはいったい……?

 

「駄目ですよぉ。約束は約束なのです。じゃあ、私の方から緑谷君に連絡しとくのでお茶子ちゃんは準備してくださいねぇ」

『―――!! ―――!!!』

 

 うむ、何やら電話の向こう側で麗日が叫び散らしておる。諦めろ麗日。恨むなら、儂と勝負して負けた緑谷を恨め。

 

「というわけで、ヨリくん。お茶子ちゃんと緑谷くんがこれからデートするので、覗きに行きましょう……!!」

「は?」

 

 また、訳の分からん事を口走っておる。まったくこやつは、すぐそうやって意味不明な事を宣うんじゃから。

 それにじゃな、被身子。儂は人様の逢瀬(でえと)を覗き見したいとは思わん。折角の逢瀬(でえと)を邪魔されるのは、良い気分ではないからの。なので、流石に今回は首を横に振ろう。被身子が首を突っ込んでしまうと、麗日も緑谷も落ち着かんじゃろ。あの二人に関しては、静かに見守ってやった方が良いと思う。焦れったくても、助け舟を出すのは最小限にじゃな……。

 

 まぁ、それはそれとして緑谷に連絡を入れてやるとするか。あやつが持っている服は逢瀬(でえと)向きとは言えぬが、少しでも見栄え良い格好をするように言っておこう。被身子が介入する気な以上、間違いなく麗日はかぁいい格好をさせられてしまう。そんな女子(おなご)の隣を変な格好で歩くのは、男子として許されない事態じゃと思う。とは言え、緑谷の服はなぁ……。こう、色々どうしようもないと言うか。

 

 あ、そうじゃ。こんな時こそ、顎でこき使うべき存在が居るではないか。どれ、たまには携帯電話(すまほ)で連絡してみるのも良いじゃろう。

 

「……舎弟に電話」

『連絡先が見付かりません』

 

 なぬ? 

 

「爆豪勝己に電話」

 

 ……よし、呼び出し始めたな。待つこと数秒……どころか数十秒。あやつめ、電話に出んわ。何じゃもう、儂が珍しく電話してやったというのに。こうなったら、出るまで鳴らし続けるしかないのぅ。さぁ出ろ、今直ぐ出ろ。

 

 

 ……。…………。………………。

 

 

 おいっ。出ろ! くそっ。こうなったら切島か上鳴辺りに電話して、何としても舎弟を電話に出させてやる……!

 

「通話終りょ」

『……てめえ、一体何の用』

「う。……あっ」

 

 間の悪い奴め。何で儂が電話を切ろうとした時に、電話に出て来るのか。仕方ない、かけ直すか……。

 

「爆豪勝己に電話」

『いったい何の用だてめえ!!』

 

 お、今度は直ぐに出た。直後に叫び声が聞こえて、耳が痛い。お主なぁ、電話越しでも叫び散らかすのか。片耳が聞こえなくなるかと思ったぞ。もう少し、慎ましさと言うか淑やかさと言うか……。とにかく、余裕を持って静かに過ごして欲しいものじゃ。何じゃっていつもいつも、周囲に対して怒鳴り散らすのか。

 まぁ良い。被身子が儂を睨んでるから、手早く用件を伝えるとしよう。あまり舎弟と長電話してしまうと、後でどうなるか分からん。具体的に、舎弟の方が。

 

「いや、緑谷がこれから麗日と出掛けるそうなんじゃけどな? お主、着ていく服を見繕ってやってくれんか?」

『あ゛ぁ゛っ!? んで俺がクソナードの服なんか!!』

「そうか。出来ぬなら良い。他の連中に頼むじゃけじゃからの」

『あ゛? 飾り殺したるわ!! 貸しひとつだかんなクソチビ!!』

「おぉ、そうかそうか。ではよろしくの、通話終了!」

 

 ……よし。これで、緑谷が変な格好で逢瀬(でえと)に臨むことにはならんじゃろ。舎弟に貸しを作ってしまったが、別に良い。先にわがままを言ったのは儂じゃからの。多少の無茶は聞き入れてやるとしよう。

 携帯電話(すまほ)を机の上に置くと、しかめっ面の被身子と目が合った。合ってしまった。これは……いかん気がする……! い、いかんぞ。まっこと、いかん。次の瞬間には、被身子がとんでもない事を宣う気がしてならんっ。

 

「……やっぱり爆豪くんは、一度刺すべきですねぇ……。円花ちゃん、止めないでくださいね?」

「待て待て待て……っ! 刺そうとするなっ」

「そーーやって爆豪くんを庇うと、トガはもっと不機嫌になるのです。良いじゃないですか、刺したって。絶対、刺します……!」

 

 いや、じゃから刺すな。すまん舎弟、全速力で逃げてくれ。大丈夫じゃ、貴様の目ならまず間違いなく被身子に刺されずに済む。……刺されたりしないよな? 如何に刃物を振り回そうと、流石に被身子に刺されるなんてことは……。こと、は……。

 

 いかん、心配じゃ。心配でしかない……!

 

「むーーっ。そうやって、爆豪くんすら甘やかそうとするんですから……! 爆豪くんなんかで、私の分を減らさないでくださいっ!」

 

 ぃ、いや別に、甘やかしてなどおらぬ。あんな奴を甘やかすような真似はしない。それにじゃな? 儂が今もっとも甘やかしているのは、被身子だけじゃ。こやつ以外の子供は……まぁ甘やかすことも有るかもしれんけども。でも、じゃからって被身子を甘えさせることを止めたりはしないんじゃ。儂はお主が第一なんじゃから。それは分かってるくせに、どうしてこう……直ぐに甘やかされることを望むのか。

 

 まったく、欲張りじゃぞお主! そんな事よりも、ほら。麗日と緑谷の様子を見に行くんじゃろう? 中々どうして不安な気持ちになってきたから、気乗りはしないが被身子の戯言に付き合うとしよう。

 

 ……ちなみに、これは後で緑谷に聞いた話なんじゃけども。緑谷の服の大半は、舎弟に爆破されてしまったそうじゃ。何でも、あまりにも意匠(でざいん)がおかし過ぎて吹き飛ばしたくなった……とのこと。取り敢えず、舎弟に頼んだのは間違いでは無かったようじゃの。

 まさか、服を爆破なんて真似をするとは思わなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、今日はどんなコーデにしましょうかねぇ……!」

「お、お手柔らかに……? じゃ、なくてっ。廻道さん、渡我先輩止めてっ!?」

「……これとか良いんじゃないか? 文化祭の時と、似たようなものじゃけど」

「遠い目で服を選ばないで!?」

 

 英雄(ひいろお)科の寮、儂と被身子の部屋にて。果てしなく調子に乗っている被身子をそのままに、儂は衣類の山から目に付いた物を引っ張り出す。麗日が慌てた顔と声で儂の肩を揺さぶっている。すまんの、儂にはどうすることも出来んのじゃ。別に悪い結果にはならんと思うから、そこは安心してくれ。被身子は、悪意で人を振り回してるわけじゃないからの。……た、多分……じゃけど。

 

「お茶子ちゃんにはこれが似合うと思うんですよねぇ。あとこれと、これとこれとこれも!」

「そんないっぱい出さなくてええからっ!? ちょっ、渡我先輩……!!」

 

 被身子が、くろおぜっとの中から大量の衣服を次々と取り出していく。量が尋常ではない。お主、いつの間にそんな服を買い漁って……。いやまぁ、被身子は少なくとも年に四回は散財しておる。季節が変わる度に、服を買い漁るんじゃ。尚、その資金源は大抵が儂の両親じゃったりする。父も母も、被身子を甘やかし過ぎではないか? 幾ら儂が金の掛からない娘じゃったとしても、限度と言うものがじゃな……。まぁ、この冬は儂が全額負担するつもりではいる。廻道家の家計がいい加減心配なんじゃ。

 なのに。任務で得た金を渡そうにも、母も父も何なら被身子さえも頑なに受け取ろうとしない。これには、実は困っておる。何が将来の為に貯蓄しておけ、じゃ。そろそろ親孝行させろ。いつまで儂や被身子を甘やかすつもりなんじゃ。

 

 ……まぁ、それはともかく。ともかく、じゃ。

 

 被身子は大量の衣類を持っておる。で、被身子と麗日は背丈が近い。ほぼ同じじゃ。なので、被身子の服の服の殆どを麗日は着ることが出来る。となると、麗日が自前で持ち合わせてる服と組み合わせることも出来るわけじゃ。ううむ、昼までは数時間ある。これは、長くなりそうじゃのぅ。儂に出来ることはそう多くない。麗日が逞しく生きれることを祈るのと、あとは……そうじゃなぁ。ひとつ、助言してやるか……。

 

「麗日、自分で決めた方が早く済むぞ?」

「え゛っ」

 

 これは、儂の経験談じゃ。被身子に任せきりにすると、着せ替え人形似させられてしまうからの。そうなってしまうと、時間が幾ら有っても足らんのじゃ。早いところこの地ご、……くではなく、この状況から抜け出すのはジブンで選ぶのが手っ取り早い。そうすると被身子は、何だかんだで尊重してくれる。まぁ、あれやこれやと追加されることもあるんじゃけども。

 

「んふふ……。どれが良いのか、じっくり吟味しないと……」

「ひっ!?」

 

 あぁ、駄目じゃこれ。被身子が悍ましい気配を醸し出している。麗日、怖がるよりも先に逢瀬(でえと)の前に疲弊することを覚悟しておけ。こうなった被身子はな、それはもう凄いぞ。鬼気迫る、とでも言うべきかの……?

 

 

「……大丈夫じゃ麗日。死にはしないから」

 

 

 代わりに、心の疲弊は凄まじいことになるがの……。

 

「だからっ!? 遠い目をしてないで、助けてくれへん……!!?」

 

 この後。麗日は被身子に目茶苦茶振り回された。最終的に、目を回した麗日が逃げるように服を引っ掴んだことで事態は収束した。取り敢えず、じゃけども。

 

 そして。ながんをも巻き込んだ、逢瀬(でえと)尾行が始まった。儂の許嫁は、何とも趣味が悪い。しかしのぅ、儂も儂で緑谷が心配じゃ。仕方ないから、様子を見守るとしよう。今日は出歯亀じゃ、出歯亀。

 

 

 

 

 

 







出茶デートが始まります。なお、出歯亀される模様。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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