待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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寝落ちして毎日更新途切れました。あーあ。


A組の成長。彼等の場合

 

 

 

 

 

 生意気な舎弟に拳骨を落とした後。儂は着替えてくるよう命じられたので、わざわざ寮に戻って巫女装束(こすちゅうむ)に着替える羽目になってしまった。寝間着浴衣も半纏も、すっかり駄目になってしまったからの。後で被身子に謝る時が怖い。下手をしたら、話を聞いた直後に舎弟を刺しに行くんじゃないか? ……そうなっても良いように、警戒しておこう。それに、誠心誠意儂が謝れば許してくれる……と思いたい。許されなかったら、どうするべきか。それこそ儂に出来ることであれば何でもするしかない。

 

 とにかく。まだ、くらすめえと達との手合わせは続く。最初は舎弟との、一対一での手合わせじゃった。次は誰と手合わせすることになるのやら。相手が複数人、ということも十分あり得る。誰が相手じゃろうと負けてやるつもりはない。今度こそ正面から叩き伏せるとしよう。舎弟との手合わせは、中断されてしまったからのぅ。お陰で欲求不満じゃ。いい加減、思う存分暴れさせて欲しい。どうして儂の楽しみは途中で邪魔されたり、お預けされてばかりなのか。解せぬ。

 

「さて、次だ。廻道に単独で挑戦したい者は?」

「ウィ。僕がやるよ☆」

「ぁ、青山くん!?」

「行くのか、青山……!?」

「馬鹿、無謀だ! オイラどうなっても知らないからなっ!?」

 

 ……ほぅ? 次は青山か。てっきり轟や緑谷、後は切島や飯田……それと常闇辺りが挑んで来ると思ったんじゃけどな。別に相手が誰であれ文句は無いが、それでも青山が立候補してくるのは意外じゃった。こやつの事は、今となってもよく分からん。たまに乳製品(ちいず)を手渡そうとして来るぐらいじゃ。あぁそれと、少しばかり根性がある。神野では、儂を助けに来た一人じゃからの。花御の奴に引っ捕えられて怖い思いをして、心は折れ掛かっているように見えたが。

 

 どうやら、まだまだ英雄(ひいろお)候補生として藻掻いているようじゃ。成長しようと頑張る奴は、嫌いじゃない。良いじゃろう、次は青山と手合わせしてやるか。

 

「……マドモアゼル。今日は……僕が勝つよ☆」

「……まども、……? まぁ良いか。やれるものなら、やってみろ」

 

 青山。青山、か。臍から光線を出すこやつが、どのような成長を遂げたのか気になるところではある。先程の手合わせ、舎弟はとんでもない大爆発を引き起こした。個性そのものがしっかりと成長している。そんな気がした。であれば、青山も他の連中も個性を伸ばしているのじゃろう。鍛えられた個性から繰り出される攻撃には……うむ。少しばかり興味が有る。少しだけじゃけど。まさか儂を目指して鍛錬しておきながら、つまらん技を磨いてたりはしないじゃろう。

 

「……制限時間は五分。廻道、鉢巻きを巻け。新しいのは渡しただろ」

 

 ……そうじゃった。今日の手合わせには、つまらん決まり事が有ったんじゃった。仕方ないの。決まりは決まりじゃし、従ってやるとしよう。ただなぁ相澤。次こそは途中で止めるなよ? 止めたら、今度は殴り飛ばすからな貴様。まったく、誰じゃろうと儂の楽しみを邪魔した奴は許さん。

 再び鉢巻きを首に巻いて、青山から距離を取る。振り返りながら両手を叩き合わせると、相澤が開始の合図を告げた。その直後、青山が臍を光らせた。

 

 う、うむ……。光っているの。臍が。それはもう、眩しいぐらいに光っておる。しかし、何故か光線が飛び出て来ない。眩過ぎてよく分からんのじゃけども、あれは恐らく……光を圧縮している? 光って圧縮出来るものじゃったっけ? まぁ個性は何でも有りの力じゃからの。呪力も無しに術式を使用しているようなものじゃ。しかも、この時代に生きる殆どの人間が何かしらの個性を持っておる。

 

「行くよ、廻道さん……☆」

「……来い」

 

 何を目論んでいるかは知らぬが、受けて立とう。青山が相手じゃから、百斂は程々に。前回手合わせした時と同じ程度の圧縮じゃ。まずはこれで小手調べと行こう。手を抜いた穿血を上回ることが出来たのなら、次はより強い穿血を使ってやるとする。

 

「ネビルレーザー・コンプレス……!!」

 

 こんぷ……? 何じゃって? いやそれよりも、眩しさが増した。目が潰れる程ではないが、とにかく眩しい。舎弟と良い、目潰しが流行っているのか? いい加減にして欲しいのぅ。いちいち眼球を新鮮にするのは、……まぁ簡単じゃけども。

 

「Can’t Stop Twinkling Even More☆」

「穿血」

 

 臍から光線が放たれる。と、同時。穿血を放つ。何じゃその技名。いいぶん、もあ? 言い分もあ? 日本語で話してくれ、頼むから。

 

「お?」

 

 理由の分からん名前が付いた光線は穿血と激突し、穿血を突き破りながら直進してくる。と、認識した頃には儂の両手に光線が直撃した。

 ほぅ? 青山、お主……。中々、良い技を作り上げたの……! 良い、褒めてやろう! この手合わせの勝ちは、譲らんがなっ。

 

 光線で焼けた両手を反転術式(はんてん)で治しながら、駆ける。間合いを潰し、顔面を殴り飛ばそうと拳を振り被って―――。

 

「ぁ、ごめん。降参、降参っ!」

 

 寸止めする羽目になった。

 

 ……は? おい、何じゃと貴様。降参? 今、降参と言ったのか……!? ふ、ふざけるなっ。まだ手合わせは始まったばかりじゃろ! なのに何で、そんな直ぐに降参してしまうんじゃ……!!

 

「この必殺技使うと、お腹がすっごく痛くなっちゃうんだよね……。実は、ち、ち……、ちゅ、血が出てゅぇっ!」

 

 ……腹が痛い? 血が出る? おい、大丈夫か青山。酷く顔色が悪くなった上に、全身が震えて……。何なら呂律も回っていない。あぁ、そう言えばそうじゃった。こやつ、個性を数秒使うと腹を下すんじゃったな。しかもどうやら、先程の光線を放つと血が出てしまうらしい。流石に欠陥技じゃろ、それは。というか、おい。そんな直ぐに動けなくなってしまうなら、さっきの光線を撃つのはもう止めておけ。舎弟もそうじゃったが、どうして青山まで自損するような技を繰り出すんじゃ!

 

「……そこまで。廻道の勝ちだ」

 

 おい。こんな勝ち方は嬉しくないぞ? まっこと、嬉しくない。相手が呆気なく降参する手合わせなど、ただただつまらんっ。ふざけるな、こんなつまらん手合わせは許さんぞ……! おい、おいったらっ!

 

「青山、婆さんの所に行け。誰か付き添ってやってくれ。それと次、単独で挑みたいものは?」

「っし! 次は俺とやろーぜ廻道!」

「切島、俺にやらせてくれ」

「ぼ、僕もやりたいですっ」

「待った諸君! ここは公平に名前の順で挑もう!!」

 

 ……まだ単独で挑みたい輩が居るのか。それは構わんが、このままどいつもこいつも中断するつもりじゃなかろうな? そんな真似は許さんぞ。三度も四度も中断するようなら、儂はもう寮に帰るが!? 成長を見せたいのなら、半端な真似はするんじゃないっ。舎弟も青山もふざけおって……!

 

 儂を! もっと! 楽しませろ!! ぐぬぬっ!!

 

「名前の順でやるなら……次は俺だな!!」

「轟。割り込む形になるが、……俺も良いか?」

「……あぁ。名前順なら仕方ねぇ」

「かたじけない。廻道、切島の次は俺だ」

「じゃあ僕は轟くんの次に……!」

 

 何人かの男子は、儂に単独で挑みたいらしいの。成長が楽しみな輩が、こぞって手合わせを願ってくる。それ自体は悪くない。むしろ喜ばしいぐらいで、現状どこまで成長することが出来たのか楽しみじゃ。他の連中も、尻込みしとらんでどんどん願い出でれば良いものを。

 まぁ良い。儂は基本的に断らんから、誰じゃろうといつでも挑戦したら良い。

 

「はいはいはい!! 名前の順って言うなら、アタシ達が先ーー!!」

 

 男子達の後ろから、勢い良く手を上げた芦戸が割り込んで来た。連れ添うように、梅雨や麗日までおる。どうやら、単独では挑んで来ないようじゃが。

 この調子じゃと、くらすめえと達全員と手合わせすることになりそうじゃ。それは構わんが、頼むから中途半端な真似はしてくれるなよ? つまらん手合わせなど、したくないんじゃ。もっと儂を楽しませてくれ。さもなくば、途中で帰るからな??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回の手合わせは、どうにもつまらんものが多い。というのも、途中で中断されることが多いからじゃ。中断されるまでは、それなりに楽しめる瞬間が幾つもあったのが質が悪い。まさにこれから楽しくなるって時に、いちいち相澤が割って入ってくるんじゃ。

 芦戸にも、驚かされた。酸の扱い方、及び身体の動きの鋭さ。前とは比較にならん程じゃった。なのに途中で脱水症状になりおって。また自爆しとる。個性を強め過ぎたあまり、その反動で倒れることが流行っとるのか?

 梅雨は、全体的な底上げがなされていた。単純な身体能力の向上、個性の向上。判断力に、個性を活かした体術。大きく飛躍しているとは言えぬが、一歩一歩着実に。今回の手合わせで、もっとも感心させられたと言って良い。個性の強化に突出した奴が多い中で、基礎を怠っていない。何と言うか、優等生らしくて良いの。堅実なのは、良いことじゃ。

 麗日は……。同じく基礎の向上。ただし、空中戦での基礎じゃ。まぁ、儂に通用することは無かったんじゃけど。それに、踏ん張ることの出来ない空中で投げ技を使うのはどうなんじゃ? 進歩しているような、いないような。浮かした儂に下手に近付かなかった点だけは、褒めておくとしよう。

 

 そうそう。切島が、更なる硬さを獲得していた。手加減していては、砕けぬ程度に硬くなっておっての。個性の持続時間も伸びとるようじゃったから、本気でぶん殴るか悩んだ。唯一、時間切れまで粘ったのがこやつじゃ。そういう意味では、もっとも伸びたのはこやつかもしれん。もっともっと硬くなってくれれば、全力でぶん殴ってやるんじゃけどなぁ。

 

 儂の糧になったのは、轟じゃ。炎の操作はまだ覚束ない部分があるが、何かを試みて火力を上げ続けていた。何がしたいかは分かったが、まだまだ技量が追い付かぬ。しかし、ひとつ収穫があった。なんと儂の個性は、炎にも有効じゃ。空気を回せる上に、人体も回せるんじゃから炎も出来るのでは? と思っては居たが、まさか出来てしまうとはの。これがえんでゔぁの赫灼熱拳に通用するのか、それを早く試したい。あやつ、いつになったら儂と手合せするんじゃ。早くしろ早くっ。

 

 緑谷はなぁ。まだまだ未熟じゃ。進歩はあるが、牛歩というか。大きな飛躍は無かった。とは言え、儂の動きをひたすら先読みしてくることは少しばかり鬱陶しかったの。儂の速度に付いてくることが出来れば、もう少し良くなるんじゃけど。

 

 常闇は、論外じゃ。というのも、だあくしゃどうの制御がまだ出来ないようでの。あの姿にはかなりの期待をしていたから、それが披露されなかったのは不満でしかない。早く儂を楽しませてくれ。それだけの力を持っとるんじゃから。

 

 他の連中で言えば、……全体的に成長はしているんじゃけどな。個性を重点的に鍛えて、それを軸にした戦い方をそれぞれが会得しつつある。ただ、まだ儂には届かんと言うだけであって。儂に追い付くには、まだまだ経験も鍛錬も足りん。下手をすれば六十は掛かるじゃろう。そこまで待ってやるつもりはないが。出来れば、大人になるまでに追い付いて欲しいものじゃけども。流石にそこまで望むのは高望みか……? いやしかし、そのくらい強くなってくれると儂は喜ばしいんじゃが。

 ううむ……。こやつ等の鍛錬に付き合った方が良いんじゃろうか? しかしそんな時間は現状……。歯痒いのぅ。なんとも、歯痒い

 

「だぁあーー、勝てないっ! 勝てない……っ!!」

「ちくしょうっ、何で俺達はこんなに駄目なんだ……!!」

「でも、でもっ。きっと、ちょっとは前進してるよっ。だってほら、切島くんとか青山くんとか通用してたもんね……!」

 

 どいつもこいつも疲労困憊のまま、悔しそうに歯噛みしている。その姿勢は、褒めてやらねばな。悔しいと思えるのなら、まだまだ頑張れると言うことじゃ。うむ、更なる成長に期待しといてやろう。

 

「全体的に底上げはしとるようじゃの。その調子で励め。……ただなぁ、自損前提で個性を扱うのは止めておけ。緑谷じゃあるまいに」

 

 良くない点はそこだけじゃ。全体的に底上げはなされているし、個性も強くなっていた。しかし、自損前提で力を振るうのは正しいとは言えん。そうでもしなければ死ぬような状況に居るのであれば許容するが、儂との手合せで死ぬことは無いからの。

 

「お主等はまだまだ若い。成熟に時間が掛かるのは仕方ないことなんじゃから、変に焦るのは止さぬか。

 それとな、舎弟。後で被身子が何をしでかすか分からんから、先に逃げておけよ。以上、儂は帰って寝る」

 

 くらすめえと達の相手をしていたら、結構な時間が経ってしまった。今から寮に戻ったとして、三時間も寝れん気がするの。そろそろ放課後がやって来て、被身子が帰ってくる。夕食まで寝るのも良いが、被身子を放っておくのはなぁ。そもそも、浴衣や半纏を駄目にしてしまったことを謝らねばならんし。

 

「待て廻道。まだ戻るな」

 

 は?

 

「やじゃ。戻る。戻って休む」

「……今日は特別講師が来てるんだ。お前の為にも呼んだんだから、特別講義を受けて行け」

 

 特別講師に、特別講義? いや、英雄(ひいろお)学に時間を費やすような余裕は儂には無いんじゃけど? 今夜も任務が有るんじゃから、少しでも休んでおきたい。踵を返すと、後ろから捕縛布が飛んできた。ので、首を傾けて避ける。顔の真横を通り過ぎた捕縛布を掴んで引っ張るが、まるで千切れん。ちっ、相澤なんぞに呪具を作ってやるべきではなかった……!

 

「お前達も失礼の無いようにしろ。忙しい中、わざわざ来てくださったんだ」

 

 相澤が見た方向を、仕方ないから儂も見る。訓練場の端に、見覚えのある奴が立っておるの。何じゃ貴様、来るなら儂に一言連絡を入れろ。そもそも、最初からこやつが来ることを儂に伝えろ相澤。まったく、特別講師が来た程度で儂を引き止められると思うなよ……!

 

「ぇっ」

「えっ!?」

「は?」

「ぇ、エンデヴァー!?」

 

 ……そう。どうやら特別講師として此処にやって来たのは、えんでゔぁじゃ。くらすめえと達は顔面燃え男の登場に驚いているが、轟だけは露骨に嫌そうな顔をした。そりゃあそうじゃろう。学校に嫌いな親が突然顔を出したら、誰だってそうなる。

 

「お前達は、このNo.1ヒーローに見て貰うことが出来て運が良い。

 ―――などと言う気分にはなれないな。何故俺が、あの男の後継を育てねばならんのだ!!」

 

 おぉ……。なんか、勝手に苛立って勝手に燃え盛っておる。何じゃこの男。まっこと、仕方ない奴じゃ。もう少し、息子から落ち着きと言うものを学んだ方が良くないか? 轟に教えて貰え。と言うかまず、轟に土下座しろ。償いも贖いも、まずはそれからじゃろっ。

 

 

 ……とまぁ。そんなこんなで、じゃけど。儂はもう少し、この場に残ることにしてやった。何せ、この機を逃す術は無い。わざわざ雄英に顔を出したということは、儂と手合せするってことじゃからなぁ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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