待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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勝手な宣言。

 

 

 

 

 

 ……納得いかん。儂はまだまだ戦えたのに、途中で止められてしまった。呪力も六割以上は残っておるし、反転術式(はんてん)も回し続けることが出来た。なのに相澤が止めに入ったものじゃから、えんでゔぁも早々に切り上げてしまったし……。くそっ、何でこうお預けされてばかりなのか。いい加減、心行くまで暴れたいんじゃけど? 欲求不満じゃ、欲求不満。この分の恨みは、いずれ晴らすとしよう。ふんっ。

 ところで、儂はいつまで被身子に抱き締められて居れば良いんじゃ? 早く機嫌を直して欲しいところじゃけども、手合せとは言え盛大に心配させてしまったのは儂じゃ。殆ど半裸……どころか全裸に近い姿になってしまったのも良くなかった。巫女装束(こすちゅうむ)は殆ど燃え滓同然になってしまったし、新しいのを申請しなければの。次は、耐熱性も高めて貰わなければ。いっそ、呪具にしてしまうか? その方がより頑丈になるかもしれん。いやしかし、作る為に何日掛かるかも分からぬ……。これについては諦めた方が良い気がするの。所詮は消耗品じゃし、いちいち呪具化するのは面倒な気がしてならん。

 

「廻道、大丈夫か? 反転術式……だっけか? 幾ら治るつってもよ、エンデヴァー相手に無茶し過ぎだぜ?」

 

 未だ儂から離れようとしない被身子の頭を撫でたり、背中を軽く叩いたりしてやっていると切島が話し掛けてきた。気が付けば周囲にはくらすめえと達が集まっていて、儂を心配そうに覗き込んでいる。ううむ……、被身子だけではなく他の子供達まで心配させてしまったか。そんなつもりは無かったんじゃけども……。

 何と言うか、変な気分じゃ。儂が心配するのは良いんじゃけど、儂が心配されるのはどうにも……。

 

「そうだよ廻道ちゃんっ。あんまり渡我先輩の前で無茶しちゃ駄目っ」

「廻道ー、捨て身にも程があるって。見てて、かなり怖かった……!」

「あのような戦い方は、……身が滅びるだけですわ。万が一を考えてください」

 

 ……と、言われてものぅ。葉隠や芦戸、あと八百万や……他のくらすめえと達にも悪いと思うが、何でそんな心配するのかまるで分からん。いや、理屈の上では分かるんじゃけどな。目の前で友や同志が無茶をすれば、心配するのも怖くなるのも分かる。儂じゃって、子供が無茶やら馬鹿な真似をすれば心配になるし怒りもする。叱ったりもするじゃろう。しかし儂は、無茶も馬鹿な真似もしていない。術式の体外操作が役に立たぬ相手じゃったから、呪力強化と反転術式(はんてん)を頼みに殴りに行っただけで。

 

「……廻道、ひとつ聞く」

「何じゃ?」

「自分の命を、何だと思っている?」

「は?」

 

 ……常闇。おい、この鳥頭め。何故そんな事を今更になって聞く? 自分の命をどう思ってるか、じゃと? 儂が自分の命を軽々しく扱っているとでも思っているのか? 失敬な奴じゃの。不敬じゃ不敬。いや別に、こやつに敬って欲しいと考えたことは無いが。まぁ、ぽんこつ扱いは止せと思っては居るが。

 取り敢えず、答えてやるとするか。その上でどんな反応をしたとしても、儂は意見を変えたりはしないが。

 

「大事に思っとるが? 死ぬつもりは毛頭ない。儂は、何があろうと被身子の下に生きて帰ると決めている」

 

 呪術師である以上、儂の命は無いも同然ではある。が、それでも必ず生きると決めている。必ず生きて、被身子の居る所に帰る。その為に、えんでゔぁと手合せする必要があった。そして今回の手合せで、ひとつ確信を得た。やはり、早急に炎に対する対抗手段を獲得しなければ。途中で相澤に止められたせいで、試せなかった。いや、途中試せる機会は幾度も有ったんじゃけども。……どうも、頭から個性を使うという意識が抜けていた。最後、えんでゔぁに踏み付けられるまで失念していた。今日、轟と手合せした時は回転を主体として動けて居たんじゃけども。えんでゔぁを前にした時は、すっかり忘れてしまっていた。

 

 いかんな。これでは何も変わらん。何も得られない。……くそっ、せっかくの機会を無駄にしてしまった。炎相手の回転を、えんでゔぁで試したかったのに。何で途中まで、忘れてしまっていたのかっ。

 

「……傷が癒えたのなら、お喋りなどしてないで直ぐに立て。貴様には課題をくれてやる」

 

 くらすめえと達の向こう側から、えんでゔぁの叱責が飛んできた。確かに傷は癒えた。癒えたが、立ち上がるのは無理じゃ。

 

「見ての通り、立てんのじゃけど?」

 

 じゃって。被身子が離してくれないんじゃもん。立とうと思えば立ち上がれるが、今こやつを無下に扱うことは出来ぬ。盛大に心配させてしまったしのぅ……。せめて被身子の気が済むまで、こうさせてやらねば。

 

「……なら、そのまま聞いておけ」

 

 最初からそう言ってくれんかのぅ。

 

「術式とやらが使い物にならんと考えた時点で、近接戦を挑んだのはまだ良い。だが、貴様どうして回転を使わなかった?」

 

 耳が痛い。まっこと、耳が痛い。何故と聞かれてもじゃな、つい忘れていたとしか言いようがない。いやでも、使うつもりじゃったんじゃぞ? なのに相澤に止められてしまったし、それに便乗して切り上げたのは貴様じゃろ。

 ……文句は有る。色々と言いたい。反論したい。が、ひとまず話を聞くとしよう。

 

「触れたものが何であれ、回転させる個性。強力な力だ。扱いに長ければ、やれる事が増える。これは磨き上げろ、宝の持ち腐れだ」

「う、うむ……」

「次に、不利な相手に真正面から踏み込み続けるのは止せ。体格差も考慮しろ。手段が人より多いのなら、その強みを活かせ」

「……」

「分かるか? 今のままでは勿体無いんだ、貴様は。もっと個性を戦法に組み込め。呪術ばかりに頼るな。そうすれば、貴様は炎すら天敵ではない。

 まぁ、俺の炎は天敵のままかもしれんがな」

 

 ……ちっ。最後の一言以外、特に反論出来んわ、たわけ。痛い所を突かれてしまった。儂は、個性の扱いには長けていない。その上、どうも個性を使うという意識が薄い。これは、改善しなければな。えんでゔぁ相手に回転による防御を試したかったのに、結局一度も回転を使わなかった。つい、楽しむことに夢中になってしまった。

 

「呪術とやらに、個性。この二つが貴様の武器だ。それを肝に銘じて、個性を鍛えろ。呪術と同じだけ個性の扱いに長けろ。そうすれば、或いはこのエンデヴァーに追い付けるかもな」

 

 あ゛? ……おい、さっきから一言多いぞ貴様。耳が痛い言葉の後に、くだらんものを足しおって……! そもそも、貴様に追い付くつもりなど無いんじゃけど!?

 

「それと。貴様のような人間の行き着く先は、大抵が破滅だ。戦いに愉悦を感じ理性を損なうなど、イカれた犯罪者とそう変わらん」

「あ゛? 何じゃと貴様……!」

 

 人の趣味に、とやかく言う権利が貴様に有るのか? 無いじゃろっ。個性については、ひとまず聞いておいてやる。それは儂自身も感じていた事じゃ。しかし、儂の楽しみを否定するような真似は許さん……! それをして良い輩など、この世の何処にもおらんのじゃ!

 

「……聞くが、頼皆。貴様の原点(オリジン)は何だ? 将来、何を目指すかの明確な指針は?」

「は?」

 

 ……原点に、将来の指針じゃと?

 

 そんなもの、無いが? いつぞやに鯱頭にも聞かれた気がするの。何で英雄(ひいろお)は、原点とやらを大事にしたがるのか。そもそも、儂が目指すところは英雄(ひいろお)ではない。英雄(ひいろお)免許じゃ。将来、英雄(ひいろお)として活動するつもりは無いんじゃ。

 

「無いのか。平和の象徴の後継が、聞いて呆れる」

「は? ありますけど? 全然あります!」

 

 いや、被身子。急に話に割り込んで来たと思ったら、何を言い出すんじゃ。原点なぞ、儂には無い。ただ免許が欲しいだけ。それは、お主も知ってる事じゃろうに。

 

 ぐえっ。おい、腕に力を込めるんじゃないっ。く、首が締まる……っ!

 

 

「円花ちゃんの原点はっ!

 全ての子供達を救けて、子供のみーんなが幸せになれる世界を作ることですっ!」

 

 

 ぉ、おい……。おい、何を宣っとるんじゃ被身子っ。勝手な事を言いおって……! ぐええっ、首が、首が……っ! お主、こんなに力が強かったか?? 普段はもっと非力じゃろ!? 何で今だけこんなに腕力が強いんじゃ……っっ。

 

「……そうか。それは立派な原点(オリジン)だな。励めよ、頼皆」

 

 ぃ、いやおいっ。被身子の言葉を鵜呑みにするな……っ! 勝手に感心するな、えんでゔぁっ。被身子も被身子じゃっ、何をいい加減な事を口走って……! 確かに子供は助けたいし、子供達が幸せな世界になれば良いと思ったことはある! でもそれは、決して叶わんじゃろっ。

 あの時代も今の時代も、嘆かわしいことに子供に不幸が降り掛かっておる。そしてそれを、儂がどうこう出来たりはしないんじゃ。儂に出来るのは、精々この目に映る子供を守ることぐらいで……!!

 

「子供を救けて……幸せになれる世界を作る……。その為の……ヒーロー……!

 廻道くん!! そんな素晴らしい信念を持っていたのなら、何故言ってくれなかったんだ!? 水臭いじゃないかっっ!!」

 

 い、いやっ。何故目を輝かせるんじゃ飯田っ。乗るな! 乗せられるなっ! これが被身子の戯言じゃって気付け……!!

 

「そっか。そっか……! だから、だから独りで戦ってたんだ! 先を見据えて、なりたい自分になる為に……!!」

 

 み、緑谷?

 

「ははっ、子供が幸せになれる世界ね……。スケールでっけぇけど、廻道らしいんじゃね?」

 

 瀬呂?

 

「ケロケロ。円花ちゃん、すっごく立派よ」

 

 梅雨??

 

「ポンコツなのは、子供が親しみ易いからか……?」

 

 轟ぃ! 誰がぽんこつじゃって!? おい、誰がぽんこつじゃって!?

 

「闇の輝き。夜闇を引き裂く流星の如く……」

 

 何を言ってるんじゃ常闇っ。貴様なら気付けるじゃろ!? これが! 被身子の! 戯言じゃって!!

 

「何か、後継らしいね。廻道さん、凄いなぁ……」

 

 ぅ、麗日っ!! お主なぁ!? 被身子の言う事を真に受けるのは止さぬか!! そんな調子で居て、後でどうなろうと儂は知らんからな!?

 

「……ちっ。俺等もてめえの救ける対象かよ」

 

 おい舎弟!! その通りじゃけどそうじゃないっ。そうじゃないんじゃけどっ!?

 

「げほ……っ! ひ、被身子! 何を言ってるんじゃ貴様ぁっ!!」

「事実なのです! それに、私のことだって救けてくれたじゃないですかぁ。お陰で今、私はとーっても幸せなの!」

「……ぬ、ぐぅ……っ」

 

 そうしたいと思い、そうなれば良いと思っていたのは、事実じゃ。事実、じゃけども……! 今じゃって、子供を守るのは儂の主義で、それは揺るがないものじゃけど……! でもじゃからってなぁっ、今更子供達が幸せになれる世界など儂は欲しがっとらんっ。

 じゃってそれは、どうしたって出来ない事じゃ。どれだけ時代が変わっても、時間が流れても、全ての子供達が幸せになれる世界などやって来ない。そんな世界が有ったなら、お主じゃって辛い目には遭わなかった!

 

「私の円花ちゃんは、今度こそ子供を救けて幸せな世界を作る私のヒーローなのですっ。ねっ!」

 

 ねっ! ではない……! 何なんじゃもぅ! 勝手な事を宣うなっ、広めるな!! 何でどいつもこいつも、被身子の言葉を真に受けとるんじゃっ!!

 おいっ、疑え! 被身子を疑え……!! そして勝手に納得する前に、儂に話を聞かんか! 事実確認をしろぉっ!!!

 

 

 

 

 

 

 







円花、勝手な宣言をされるの巻。
そろそろ伏線回収したいところですが、いつになることやら!

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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