待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「おそーい! 何してんの廻道! 勿体無いよ!!」
「う、うむ……。すまん……」
屋外の訓練場に戻ると、何故か傷だらけの芦戸に早速文句を言われてしまった。遅れてしまったのは、被身子が中々離してくれなかったと言うか、開放してくれなかったと言うか……。まさか更衣室で、あれやこれやとされる羽目になるとは……。も、もう二度と被身子以外に肌は晒さぬ。でないと、身が持たん。
……それで、この状況は何じゃろうな? 燃え盛る炎に囲まれた訓練場の中で、悲鳴やら呻き声が充満しておる。地面に伏して痙攣してる者も居れば、叫びながら個性を使ってる奴と居るの。えぇ? 何じゃこの状況……。夏合宿での訓練も、こんな感じじゃった気がするの。
「遅いぞ廻道くん! 女性は着替えに手間取るものだが、それにしたって遅過ぎる! 貴重な時間を使ってくれてるトップヒーローに、何たる無礼だ!!」
「いや、その……。わ、悪かった……。反省しとる……」
「ならば良いが! さぁ、君も早く訓練に参加したまえ!!」
う、うむ。飯田の言ってることは何もおかしくない。何もおかしくないんじゃけど、こやつは何をしとるんじゃ? ひたすら高速で行ったり来たりを繰り返しておるの。声ははっきり聞こえるが、姿がろくに見えん。残像を残して走ってるように見える。赫鱗躍動を使えば姿を捉えられるとは思うが、別に会話する分には困らんみたいじゃし……放っておくか……。
「し、死ぬ……! 死んじまうぜこんなん……! か、廻道……救け……!」
「あ、円花ちゃん。峰田くんは無視してください」
「う、うむ……」
すまん峰田、そのままに地面に伏して居てくれ。頭から血が流れているが、それは大丈夫なのか?
「……!! き、キスマー、ク……!?」
それについては触れてくれるな。隠せないし、治せないんじゃ。治しても、また付けて貰わなければならんし……。あ、峰田が気絶した。それはもう、とても安らかな顔で。こやつも放っておこう、そのうち勝手に復活するじゃろ。
で、じゃ。訓練場の様子を眺めてみると……。なるほど。えんでゔぁが、くらすめえと達に指導しているのか。今は……片手で舎弟と取っ組み合っているの。右腕をろくに動かしとらん。拳が砕けてる上に、肘も痛めているようじゃ。
「クソがぁ!! 舐めプしてんじゃねえーー!!」
「ふんっ。片腕の俺を倒せんのが貴様だ! 溜めて放つ、これを瞬時に出来るようになれ!」
「ごあ……っ!?」
あ、殴り飛ばされた。片腕とは言え、相手はえんでゔぁ。現状、この国の頂点に居る
ところで、えんでゔぁの足元に何人か男子が転がっとるんじゃけど? あれは……上鳴に切島……? あ、砂藤に常闇もか……。口田は、何故か鳩に襲われとるの。いったいどうした??
「廻道、戻ったか。なら、俺と付き合ってくれ」
「は? 轟くん……?」
「おい待て被身子。刃物を取り出すな」
肩で息をして汗をかいている轟が、声を掛けてきた。のは良いんじゃけども、被身子が
「廻道さん……! 戻ったんだね! じゃあ早速訓練しようよ! みんなエンデヴァーから課題を貰って、それをこなしてる最中なんだ!」
お、おう緑谷……。大丈夫か?
遠くを見てみれば、梅雨が宙に浮く麗日に向かって舌を伸ばし続けておる。あと八百万も、あれこれと飛び道具を使っては麗日に向かって伸ばし続けとるな。瀬呂も、
葉隠の姿は……見えんな。何をしとるんじゃろうか。いや、障子が相手も無しに独りでに戦ってる。となると、葉隠はそこか。青山は、まだ保健室かの?
「やっと戻ったか貴様!! 戻ったなら早く来い! 貴様の個性で俺の炎を防いでみせろ!!」
「おい、待て。俺が先に声を掛けたんだ。アンタは後にしろ」
「焦凍ォオオオ!! お前は緑谷と組手だろ!?」
親御喧嘩が始まろうとしている。割って入るか? いや、今直ぐにえんでゔぁを呪うとしよう。轟から指示は無いんじゃけども、今のこやつは明らかに嫌そうな顔をしているからの。
「うげっ、おえ……っ!」
「うぎゃあぁあああ!!」
「ふっ! ふっ! ふっ!」
……あぁ、うむ。騒がしい。何と言うか、ただひたすらに騒々しい。訓練場がある種の地獄になってしまっている。えんでゔぁめ、子供達にいったい何を吹き込んだ? 相澤は黙って静観しとるだけじゃし。いったい、何がどうなっとるんじゃ??
うむ。もう考えるのは止しておこう。頭が痛くなるだけな気がする。せっかく、えんでゔぁが此処に居るんじゃ。この機を逃すことなど出来ん。轟相手に有用じゃった回転による防御が、えんでゔぁに通じるか否か。それを、しっかり試さなければ。
って、おい。轟。何で儂の前に立つ? 儂をえんでゔぁから隠そうとしとらんか??
「俺が先だ、No.1ヒーロー。廻道との時間を邪魔すんな。あと、ここで親ヅラすんのは止めてくれ」
「―――!! ……そうか……。そういうことか焦凍……!! だがそうあっては、尚の事黙って居られんぞ!!」
「は? 何言ってんだ。廻道、こんな奴は放って、付き合ってくれ」
「焦凍ォオオオ!!」
……はぁ……。頭痛が増した気がする。っと、いかん。被身子がとんでもない目付きでえんでゔぁや轟を睨んでいる。どうどう、落ち着け落ち着け。嫉妬深い奴め。儂はお主のなんじゃぞ? 何処にも行かんし、お主以外の誰のものにもならん。まぁ、お主も儂のものじゃし何処にも行かせんが。儂の被身子じゃ、儂の。
「この娘の役に立ちたいなら、まずは赫灼の習得からだ!! よく見ておけ、そして血肉に変えろ……!!」
「ああ゛……? 何で妙に張り切ってんだ……。No.1の自負か?」
「……はぁ。被身子、離れててくれぬか? これから訓練じゃから、側に居ると危ない」
「むーー……っ。じゃあ、見てますからね?」
「う、うむ。そうしてくれ……」
「キスしてください」
「……んっ」
ねだられたので、
少しして、被身子が振り返る。それなりの距離を離れては居るが、いつでも駆け付けられる距離じゃ。儂に何かあったら、直ぐにでも突撃してくる気がしてならん。
訓練とは言え、余計な怪我をしないように気を付けなければ。
「それで? どっちが儂の相手になるんじゃ?」
「俺が先だ」
「うむ。なら、来い」
「ああ」
轟が構えた。ので、儂も構える。構えなんぞ普段は要らんのじゃけども、今は傷一つ負いたくないからの。確実に避ける為に、いや防ぐ為に、これから起きる事柄に備えておく。
数
そろそろ、来そうじゃな。今回は、左手を使おう。左半身を前に、重心はしっかりと低く。前傾姿勢になって、機に備える。そして。
「点、溜めて……放つ……!」
儂に向かって一直線に、炎が飛んでくる。えんでゔぁのそれと比べたら、溜めが甘過ぎる。強烈な火炎放射ではあるんじゃけども、儂が求めてるのはそれじゃない。
「回れ」
迫る炎が、左手に触れる。と、同時。全開で個性のみを使う。手のひらが焼けた。が、轟から放たれた炎は儂の手の内で回り始めた。後から送り込まれてくる炎と、立て続けに回っていく。
数秒後。儂の手の内では高速で回転する炎があった。……うむ、悪くない。手のひらは少し焼けてしまったが、大火傷ではないと思いたい。直ぐにでも治したいところじゃけど、
「……うえっ」
あぁ、うむ。目が回り始めた。どうにも気持ち悪い。これ以上個性を使っていると、立っていられなくなる。轟から発せられる炎は消え、残ったのは儂の手のひらで回転し続けてまるで球状になった炎のみ。
よし、個性は止めた。そう言えば、回転で絡め取った? 炎は回転が収まるとどうなるんじゃ?
……お、おお。回転が弱まるにつれて、球状となっていた形が崩れていく。徐々に大きさを増して……。あ、いかんなこれは? ここから離れなければっ。
咄嗟に、後ろに跳ぶ。直後、炎が渦となって拡大していく。四方八方に飛び散って、これは……!!
あ、危ないところじゃった……! まっこと、危ない。危うく
「次は俺だ焦凍! よく見ておけ!!」
「は? おい―――!」
「頼皆! 今の要領で赫灼を防いでみせろ!! 焦凍、右の準備をしておけ!!」
は? いや、おい。轟が先じゃろ、先! 何で貴様が割り込んでくるんじゃっ。と言うか、待て! 左拳に炎を溜めるなっ。貴様、赫灼熱拳を使う気か!? それは、……望むところではあるけどもっ!!
「ジェットバーン!!」
「っ、回れ!!」
今度は、右手を突き出す。と、同時。熱線が儂まで届いたから、呪力強化した回転を使う。すると……。
お、おぉ。回っ……とるの。回っとる、回っとる。赫灼熱拳の一つが、回り回って球状に……。
よし、よし……! 炎は、個性で防ぐ事が出来る……! この調子じゃと、例え水であろうと防げるじゃろうっ。後は、何度も試して防御の精度を高めるとしよう!
って、おえっ。い、いかん。視界がぐるぐるして、気持ち悪い……!! は、吐きそうじゃっ。いや待て、その前にここから跳び退かなれば! じゃって、この後に起きることは……!!
「焦凍!」
「っ、穿天氷壁!!」
何とか跳び退くと同時、回り続ける熱線を巨大な氷壁が包み込んだ。直後。
氷壁が、猛烈な勢いで溶けて多量の熱湯となって周囲に流れ出る。い、いかん! 儂の後ろには、被身子が……!! くそっ!!
咄嗟に左手で熱湯に触れ、全開で個性を使う。すると、少なくとも儂や被身子の方に行く筈じゃった熱湯が回り始めて、まるで渦潮のようになった。あ、危ないところじゃった。これでどうにか、被身子は大丈―――。
「おえぇえっっ」
……吐いたわ。駄目じゃ、気持ち悪い。
「焦凍!」
「見りゃ分かる。―――穿天氷壁!」
どうやら。熱湯も渦潮も、氷に埋め尽くされて動きを止めた。……ようじゃ。多分、そうじゃ。視界がぐるぐるじゃから、何が起きてるのかよく分からん……っ。おえぇっ。駄目じゃ、これは駄目じゃ……!
あっ。使ってしまった……。それよりも、それよりもじゃっ。被身子は無事か!?
「ま、円花ちゃんっ。大丈夫……!?」
よ、良かった。被身子は、無事……のようじゃ。うむ、何事も無くて良かった。えんでゔぁめ……!! 離れているとは言え、儂の後ろには被身子が居たんじゃぞっ!? 儂が防ぎ損ねていたら、どうするつもりじゃったんじゃ!?
ゆ、許さん。許さんぞえんでゔぁっ。儂の被身子を危険な目に遭わせおって……!
殴る! 儂っ! あの男は許さん!!
じゃ、じゃけどもっ。そ、その前に……っ。駆け寄って、背中を擦ってくれている被身子に一つ……頼まねば……。
「す、すまん……。その……消えてしまったから、……そのっ」
「……、んふふっ。はぁい。新しく、付けてあげますね♡」
「ぅ、うむ……。頼んだ……」
取り敢えず……。痕をな? 付けて貰わないと……。また、首に吸い付かれる。それも、二度。被身子はたっぷり時間を掛けて、儂の首に
「はい、付きました。私のものって証なのです」
「ぁ、ありがとう……??」
礼を言うのは何か違う気がするの……。いや、良い。痕は付けて貰った。ので、えんでゔぁを殴りに行こう。絶対に、殴らなければ……!!
「えんでゔぁ!! 貴様ぁっっ!!!」
この後。儂は思いっきり、えんでゔぁを殴った。そこからはもう、殴り合いじゃ殴り合い! えんでゔぁが放つ炎は、赫灼じゃろうが何じゃろうが、全て回して防いでやったわ!! お陰で、個性による呪力強化にも慣れて来た。気がする……!!
まぁ、その。途中、酔いを治す為に
じゃ、じゃからの? 再び、痕を付けて貰う羽目になったのは……仕方ないことじゃ。うむ……。
回転による炎防御、及び個性そのものの呪力強化に慣れ始めた模様。ただし、その後で滅茶苦茶キスマーク付けられた模様。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ