待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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被身子の策。

 

 

 

 

 

 個性で炎や水、及び液体を防げることは分かった。儂の個性『回転』は対象が広い。手で触れる事が出来るものは、全て回せる筈……じゃ。人体に有効なのは、治崎相手に分かったことじゃしの。攻撃への転用はまだ無理じゃけど、防御手段にはなる。赤血操術は、炎や液体に対してほぼ無力じゃからの。それに個性とは、呪力を流し込まずに使える術式みたいなものじゃ。使い勝手というか、使い心地は妙な感じじゃけども、そのうち慣れるじゃろう。

 それとな。呪力を個性に流し込むことで、個性自体を呪力強化出来る。その場合の回転は呪力を帯びるので、呪霊にも有効ということじゃ。

 

 回転に悪い点があるとすれば、反動じゃな。使うと、直ぐに目が回る。そして吐く羽目になってしまう。反転術式(はんてん)で即座に治せるのが救いではあるが、どうも反転術式(はんてん)と合わせて使わねばならんようじゃ。個性は身体機能じゃから、使い続ければいずれ目が回らぬようになると思うんじゃけど……これまで個性はろくに使って来なかったからのぅ。反動を受けることなく個性を扱えるようになるのは、いつになることやら。下手をすると、青山のように個性を使う度に体が不調になるだけかもしれんな。

 

 

「げほっ、うぇえ……っっ」

 

 これは本日、何度目の嘔吐じゃろうか? 轟やえんでゔぁの協力のお陰で、炎の防ぎ方はある程度学べた気がする。えんでゔぁの放つ熱線が、一つ目が放つ熱線と同じには感じられないが。それでも、鍛錬にはなる。定期的に手合せしたいものじゃの。個性による防御が身に沁み付くまでは、続けたいところじゃ。

 反転術式(はんてん)……を回すのは、我慢しよう。別に人前で痕を付け直して貰っても良いんじゃけども、鍛錬のみに集中したいからの。それに、この気持ち悪さには慣れておきたい。

 

「大丈夫か? 辛いなら少し休むか……?」

「……んぐっ。いや、大丈夫じゃ。お主こそ、大分辛そうに見えるが?」

 

 轟は左の鍛錬、儂は防御の鍛錬。さっきからずっと、轟には炎を出して貰っている。こうして付き合ってくれるのは有り難い限りじゃが、そろそろ轟も辛そうじゃ。まぁ、儂が先に音を上げることは無いが。意地は張り通してこその意地じゃからの。

 ……そう言えば、緑谷の姿が見えなくなったの。少し周囲を見渡してみると、訓練場の隅で何やらおおるまいとと話し込んでいるようじゃ。そこには、舎弟も居る。何を話してるんじゃ、あやつ等は。緑谷の個性絡みか? 後で、聞いておくとしよう。

 

「……俺はまだ大丈夫だ。続けよう」

「うむ。……来い」

 

 少し離れた位置で、轟が熱を上げる。最初の頃と比べると、多少温度の上昇が早い……ように感じられる。分からん、今この訓練場は熱気が籠りっぱなしじゃからの。何で訓練場の周囲に炎の壁を作ったんじゃえんでゔぁは。お陰で、真冬なのに真夏よりも暑い。

 あぁ、それにしても気持ち悪い。あと何度嘔吐する羽目になるのか。既に、体内の水分を吐き尽くしてしまったように感じる。胃の中はとっくに空なのに、それでも吐き気が続くのは最悪の気分じゃ。

 

 噴き出される炎が、轟の左腕一本に集中していく。もうとっくに見慣れた眩しさの筈なのに、眩しくて堪らん。……あぁ、来るの。

 溜められた炎が、迫ってくる。から、右手を前に突き出す。迫る熱が皮膚を焼いた。追い掛けるように炎がやって来る。

 

「……うえっ。ま、回れ……!」

 

 手のひらを焼かれながら、個性を使う。炎が回転を始め、同時に凄まじく目が回り、物凄い吐き気もやって来る。ぐえぇっ。は、吐きそうじゃ……! また、吐きそうじゃ……!!

 

 炎は回転し、球状になる。うむ、あと何度か繰り返せば、炎に手のひらを焼かれる時間を短く出来る気がするの。炎よりも先に、まず熱が来る。それを見逃さず、しっかりと備えることさえ出来れば、熱線じゃろうと楽に回転させられる。炎対策は、順調じゃ。えんでゔぁと手合せしてる最中に、個性を使うべきじゃった。くそっ、次こそはもっと一方的に殴ってやる……!!

 

「穿天氷壁」

「ぬおっ!?」

 

 氷壁が、眼前で出来上がった。あと一歩でも前に出ていたら、また氷漬けになるところじゃ。轟ぃ、貴様……! 一声掛けんかっ。うえっ、気持ち悪い……っっ!!

 炎を防御出来るようになったのは良い。んじゃけども……回転させた炎の処理も課題のひとつじゃな。回転が弱まれば、収束させた炎が指向性を持たぬままに解き放たれてしまう。そしたら、周囲は火の海になりかねん。今は轟が氷を出して消火してくれるから良いが、儂一人の時はいったいどうしたものか。

 

 ぁあ゛っ、もう……! 気持ち悪くて敵わんっっ。流石に反転術式(はんてん)を回して、一度体調を回復させねば……! 

 

「全員、そこまで。今日の訓練は終わりだ、各自着替えて……今日は直接寮に戻れ。それと、エンデヴァーさんに礼を言っとけよ」

 

 ……は? 何じゃ、もう終わりか? って、周囲を見ると儂と被身子と轟……それと舎弟しか立っとらん。儂等四人以外と大人以外は、全員地面に倒れて呻いているの。何と言うか、死屍累々って感じじゃの。大丈夫なのかこやつ等? って、いかん。儂も倒れそうじゃ。反転術式(はんてん)反転術式(はんてん)っと。

 

 ……、……ふぅ……。よし、やっと気持ち悪くなくなった。久しぶりに、濃密な時間を過ごせたの。自分の実力が伸びていく実感というのは、良いものじゃ。もっともっと、自らを高めなければ。強くならなければ、生きて帰れぬ。

 

 それに。一つ目だけでは無いからの。一つ目は、言ってしまえば試金石に近い。ながんの呪いを解くために、英雄の呪霊を祓わねばならぬ。現状、首筋に痣がある以外に何の害も無いが、いつ牙を剥くか分からんからの。

 

 ともかく、じゃ。今日の訓練は終わりじゃ。終わりなんじゃけども……。

 

「……被身子」

「はぁい。また付けてあげますね♡」

「う、うむ……。頼んだ……」

 

 痕をな、また付けて貰わないといかん。寮に帰ったら、また滅茶苦茶にされるんじゃろうなぁ……。体が持たん気がしてならん……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで! 二人は更衣室で何してたのかなーー!? ねえっ、何してたの!?」

「洗いざらい吐けーーっっ」

 

 えんでゔぁに全員で礼を言った後。校舎に戻ろうと歩き始めたところで、儂と被身子は葉隠と芦戸に行く道を塞がれた。更衣室で何をしていたかなんて、聞かないで欲しいの。答えるつもりはない。じゃから儂からの返答は諦めてくれ。あと、首筋を注視するのは止めて欲しい。気恥ずかしいんじゃ。これ、自然に消えるまで放っておくしかないし……。しかも、隠せぬし……。

 

「てかさ、廻道。たまにはちゃんと顔出さない? 忙しくしてるのは、知ってるけど」

「ううむ……」

「そうですわ廻道さん! たまには授業に出てくださらないと、話も聞けませんし……!」

「うぅむ……」

 

 耳郎と八百万まで群がって来た。お陰で、しばらく寮に帰れそうにない。それはまぁ……別に良いんじゃけども、顔を出せと言われてもじゃな? 儂は色々と忙しい。それに、もう英雄(ひいろお)科ではなく呪術科じゃ。呪術師として活動してるだけで単位は取れるし、授業に出なくとも課題をこなすだけで良い。儂個人の鍛錬もしたいし、被身子との時間じゃって取る。やはりどうにも、時間が足りぬの。たまには顔を出さねばと、思わんでも無いんじゃが……。

 

「円花ちゃん。もう何ヶ月も教室に来てないけど、そこまで忙しいのかしら?」

「……うむ。忙しい。やるべき事が減らなくての」

 

 そもそも、減らしようが無い。呪霊退治の任務は三人ではどうしても手が回らぬし、なのに毎日増えてく一方じゃ。ここしばらくは危険が伴うものを率先してこなしてはいるが、小さなものを含めるとな。他県に出なければならん時もあるし、何故か帰り道に悪党を引っ捕らえる羽目になったり。睡眠時間は十分確保出来ているが、それでも教室に顔を出すのは難しいのぅ。

 しかしたまには、顔を出してやらなければ。それに、今日の鍛錬は……楽しかったしの。くらすめえと達との手合わせも、悪くはなかった。良くもないがな。

 

「円花ちゃんは、毎日忙しいのです。平日は呪術師として沢山働いて、休日はトガとイチャイチャするので!」

「……そういう訳じゃ。どうにも、顔を出す時間が無くてのぅ……」

「うわっ、平然と惚気けた……!?」

 

 葉隠。別に惚気てはおらん。事実を言っただけじゃ。

 

「んん……。じゃあ廻道さん、次世代ヒーロープロジェクトは? 廻道さんも参加するつもりだって相澤先生は言っとったけど、呪術師しながら参加はやっぱ厳しい……? A組は、那歩島に行くんやけど……」

「被身子が行けぬから行かん」

「え゛っ」

 

 え゛っ。では無い。当たり前じゃろ。

 そもそも那歩島には、冬休みに任務で行く予定なんじゃ。次世代何とかの為に先に儂だけで行くのは、不本意でしかない。昼間は被身子と海水浴をして、夜は任務。そうすると決めたんじゃ。なので、那歩島には行くが次世代どうたらに参加する気は無いんじゃ。まぁ、被身子が同行出来るのであれば参加しても良いんじゃけど。

 そう言えば、相澤が言っていた事は何なんじゃろうか? 被身子がその気になれば、同行が可能とか何とか言っておったが……。

 

「あ、それなんですけど。多分私、同行出来るんですよね」

「は?」

 

 ど、どうやって……? 無理じゃろ。お主は普通科なんじゃから、冬休みになるまでは遠出なんて出来ん筈じゃっ。

 

「な、何で渡我先輩が……??」

「何でって、普通科二年はインターンシップが有るのです。そこで那歩島に行けるような職業を選べば、ほぼ間違いなく同行出来ますよぉ」

 

 ……なん、じゃと……? それは(まこと)か? (まこと)なのか? 嘘を吐いたりしてないじゃろうなっ?

 もし今の被身子の発言が(まこと)なら、儂は次世代……何とかに参加することになってしまう。相澤に、被身子が同行するようなら参加してやると言ってしまったからのぅ。

 

 ……しかしのぅ。いったい何の職業を選べば、同行出来るんじゃ? そこが気になって仕方ない。被身子を見詰めると、少し強引に抱き寄せられた。何じゃもぅ。

 

「呪術総監部に、インターンしに行くんですよぉ」

 

 とんでもない事を囁かれた。ぉ、おい被身子っ。何を言ってるんじゃ……!?

 

「で、トガは火伊那ちゃんと一緒に補助監督をするのです! そういう要望は、実はもう七山さんに出してます!!」

 

 え、えぇ……? いや、いやいや被身子。そんな要望が通る筈なかろう? 絶対、門前払いされるに決まっとる。まったく、何を宣っとるんじゃお主。ほら見てみろ、訳の分からん事を唐突に宣言したものじゃから周囲が固まっておる。

 だいたいっ。儂がお主に補助監督なんてさせると思うか? 任務に同行など、以ての外じゃっ。

 

「えーーっと……。つまり、渡我先輩も那歩島に来るってこと? な、なんか凄いね……!?」

「これが愛の力……なのでしょうか?」

「うーん、とんでもないなぁ。まぁでも、そんだけ廻道から離れたくないってことだし。許嫁冥利に尽きるね、廻道」

 

 おい、何じゃその面は。他人事じゃと思って被身子の言葉を鵜呑みにするんじゃない。絶対ろくな事にならんじゃろうし、その結果どうなっても儂は知らんぞ? 助けてはやらんからか?? せいぜい悠長に構えて、被身子に振り回されてしまえば良いんじゃ……っ!!

 

 

 

 

 

 

 

 







気が付けば300話に到達していたという事実。あと何話で完結するんですかねこれ……。せ、1200話迄に完結してるといいなぁ……。

三人称による補完は要りますか?

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